「スーパー工務店」と普通の工務店は何が違う?
番組のオープニングのあと、天野さんは横浜のあすなろ建築工房を率いる関尾英隆さんを、業界で「スーパー工務店」と呼ばれる存在として紹介します。
天野さん、いい家って何ですか。
はい、皆さんこんにちは。天野保建築の天野洋平です。今日はですね、我々工務店業界の目指すべき姿といいますか、「スーパー工務店」と言われているあすなろ建築工房の関尾さんを、スペシャルゲストとしてお呼びしました。
神奈川県横浜市で設計事務所と工務店をやっております、あすなろ建築工房の関尾です。どうぞよろしくお願いいたします。
スーパー工務店ではありません。普通の工務店です。
で、いつもの相方の高橋さんです。
はい、いつもの高橋です。今日はよろしくお願いします。
じゃあ早速なんですけど、質問してもいいですか?スーパー工務店と工務店って何が違うんですか?
何が違うんでしょうね。
すごいね、気になってたんですよ、ずっと。
普通の工務店なんで、違いがわかんないんです。天野さんとこはスーパー工務店ですよね。
僕は「スーパー工務店」って言ったら、ほんとに恐縮しちゃうので、大工程度かなと。自分で言うのは小っ恥ずかしいので、口が裂けてもスーパーなぞ言いませんが。
自分でスーパー工務店を名乗ってるのは、オーガニックスタジオの相模さんぐらいじゃないかな。
そうですね、自他共に認めるっていう。
リスナーの方に、オーガニックスタジオの相模さんの説明を、天野さんからお願いします。
相模さんは、私が愛読しているエクスナレッジ社の『ビルダーズ』で特集もされて、作るものももちろんすごいですし、実際ちょっと陰ではベンチマークにしながら、学ぶべきところが多い(工務店です)。
やっぱり、僕も目指してるエコハウス大賞の大賞を受賞されたり、SNSも積極的に活用されて、大型パネルも複数棟されてると思うんですけど、時代の最先端っていうか、そういったことをされていまして。
私と関尾さんと相模さんの共通のつながりでいうと、西方チルドレンと言われていまして。なかなか3人同時に集まったことはないんですけれども。
雑誌の特集にされましたね。
じゃあ今度、チルドレン回やってもいいですね、ポッドキャストで。
いいですね。多分(3人で)ずっと喋ってると思いますけどね。
日建設計から工務店へ。「ビールがうまい」現場の記憶
高橋さんが関尾さんの経歴を紹介します。東京工業大学から日建設計へ進んだ関尾さんが、なぜ工務店へ移ったのかが問われます。
すごい引き込まれる素敵なトークをなさるからいいですよね。相模さん、私も大好きです。では、関尾さんのプロフィールのご紹介なんですけれども、東京工業大学卒業で。
今もうないんですけど。もう名前が変わっちゃって。今、東京科学大学って名前が変わっちゃいました。去年なんです。
えー、知らなかったです。
そこから、有名な建物のほぼすべてを設計してるんじゃないかという日建設計という超エリートコースを歩まれて、そこから横浜の工務店にお勤めなさってるっていうところですよね。
どういうところに魅力を感じて、日建設計という組織事務所から工務店に転職なさったんですか?
当時、今から20年前になるんですけど、ちょうど10年勤めてたんですよ、私は日建設計に。作ってたのが超高層ビルの再開発とかだったので。
最後にいたプロジェクトが、元防衛庁跡地で開発していた六本木の東京ミッドタウンで、私はリッツカールトンの、日本国内での設計をやるローカルアーキテクツをやっていたということで。
丸の内のフォーシーズンズホテルもやっていたので、設計を志した人にしてみると、花形といわれるいいお仕事をさせていただいてたんですよ。でも作ってたのは、やっぱね、超高層ビルのカーテンウォールですよ。
僕らも今、家作って予算オーバーしちゃうじゃないですか。で、VEでここで1万円下がるかな、5000円下がるかなって言ってたところが、あのプロジェクトだと100万単位で削ってくるんですよね。
「お、ここで200万下がった」「ここで1000万下がった」とか、そういうVEの仕方をする。全然規模が違うと。
個人的に、僕の小学校の先生とか親戚とか知り合いのお家の木造住宅を、休みの日に設計監理して、図面書いて。
日曜日は大工さんも休みなんだけど、土曜日に現場行って、大工さんと打ち合わせしたり、手伝いをさせてもらったりしてたんですね。
そんなにコストをかけられないということもあって、「すいません、ここ棚つけていいですか?」とか、ちょっと道具借りてやってたりしてたと。
その時に大工さんとかに、「あ、関尾くんね、ここ、こうしたらよかったのに」とか、すごいアドバイスをもらって、「あ、確かにな」っていうのがたくさんあって。
すっごい、自分も汗かいてるんで、ビールがうまいんですよ。喉越しが良くて。
次の日から会社行きます。仕事して図面書いて、夜の9時、10時、11時、終電で帰るぐらいですよ。
終電の前ぐらいに、同僚とかと帰り際に「ちょっとビールでも飲んでくか」って飲んで帰るんですけど、苦いの、ビールが。うまくない。苦いだけで、「苦いな」と思って。
「あの時飲んだあのビール、うまかったよな」って思って。そういうのが繰り返されていくと、「一生の仕事にするなら、あのビール飲んでる生活の方が良かったよな」って。
「元々俺、建築学科行った時って、なんでだっけ?あ、家作りたいとか思ってたよな」とかいう風になって。一生の仕事にするなら木造の住宅をやりたかったんじゃないかと。
35歳で「大工になりたい」と言った日
で、10年経ってたんで、ちょっと役職に就く年齢なんですね。今辞めないと、偉くなっちゃう、役職がついちゃうんで、もう辞められなくなっちゃう。
すごい悩んで、10年の節目で辞めようと言って、天野さんもよく知っているスズキアトリエの鈴木さんに相談したんですよ。
鈴木さん、実は僕の大学院の研究室の時に助手をやられてた、先輩っていうか先生なんですね。で、鈴木さんに相談したんですよ。「大工になりたい」って。
大工に、大工です。
木造やりたいんだけど、RCの建物とか鉄骨造の建物の図面は書いてるんだけど、木造の図面は書けないんですよ。当然ながら全然違うし。
しかも、設計やってる時に、いい加減な1本の線を書いてることって結構あるんです。昔は建築知識にCDがついてて、DXFのデータをコピーして置いたりして、図面っぽくしてた。
でも、この線の奥の線は何なのかってわからずに書いてることがあって、それがね、悔しくてしょうがない。
(図面は)書けるようにはなったんだけど、現場を知らなきゃいけないので、それは作る人が一番よく知っている。僕も大工さんからいろいろ学んだので、「じゃあ大工になる方が早い」って。
「木造やりたいから」って言って、その鈴木さんに(相談したら)、35歳だったんですね、その時。「35歳は遅えよ」って言われて。
「そりゃ無理だと。今俺が知ってる大工なんてね、15からやってんだよ、奴らは。中学を卒業したかしてないかわかんないぐらいの時から大工やってんだよ」と。
もう20年のキャリアの差があったら、「全然話にならないから、お前、大工は諦めろ」って言われて。「工務店で監督として修行すればいいんじゃないか」って。
監督として修行を始めたのが今から20年前なんですよ、実は。ちょっと話長くなっちゃったけど、昔そんなことがありました。
ここ最近の出来事で一番衝撃的でした。関尾さんのイメージは、もちろん経営者としての方が強いですけど、どっちかというと経営者兼設計者っていう印象が先にあったんで。
まさか大工を35歳にして希望していたとはっていうのは。
本当に志したんですよ。当時真剣にね、大工になりたくって、ものつくり大学の入学も考えたぐらいですから。
ああ、すごい。
家、ぶっちゃけいくらで建つの?
ここから話題は、この回の本題である建築費の高騰へ移ります。書き起こしでは関尾さんの発言として記録されていますが、文脈上、進行役の高橋さんによる問いかけと考えられる部分です。
知らない過去がやっぱたくさんあるんですね。そろそろ本題に入りましょうかね。
今日はですね、もう本当に家が高いっていうのをあちこちで聞きます。で、皆さんが気になっている「建築費の高騰に負けないコスパのいい家の作り方」っていうテーマでお話を聞いていきたいと思います。
まず初めに、「今の建築費ってぶっちゃけいくらぐらいなんですか?」っていう、現実の理解からいきたいんですけど。山梨と神奈川で、もしかしたら違ったりするのかな。
だいぶ違うと思う。
じゃあ先行は山梨からいきましょうか。天野さんから、どのぐらいかって。
山梨でっていうと、うちですと30坪のお宅が、大体今4200万とか4500万ぐらいいく感じですね。で、それこそウッドショック前が、3000万超えるか超えないかぐらいでやっていたので。
当時は僕も経営者として未熟だったの。本当はもう少し取っていかないと経営としては成り立たなかったんですけども、当時そのぐらいなので、本当に7、800万ぐらいは金額が跳ね上がってるなっていうイメージですね。
5年間で7、800万。
今日も基礎屋さんが来て、4月に生コンの値段が(上がって)、去年からにすると3回か4回上がってるので、本当にもう、どうしたらいいんだろうっていう、頭が痛い限りの話ですね。
我々じゃなくて、お客さんもみんな本当に頭が痛い話だと思うので。
今回コンクリート、関西の話ですけど、地域全体で3割上がるってね。3割、30パーセント、いきなり。
昔、30坪の家って、基礎は一軒当たり、僕らの原価で100万円あれば(できた)。お客さんの見積もりの中でも100万円ぐらい。今300万超えてるんで、3割です。
はい、超えて。
嘘。
嘘じゃないの。本当に。
RCのマンションが高くなったっていう、RCのマンションなんか倍になってるんですよ。10年前に比べたらね。
それぐらいコンクリートと鉄筋の値段が上がっているので、今、木造の非住宅っていうのが流行ってるんですよね。
木造も高くなった高くなったって言うけど、RCと鉄骨に比べればまだ上がり幅は少ないんですよ。僕らが3割上がったっつっても、向こうはもうそれ(コンクリートと鉄)で全部作ってるんで。
いや、そんなに上がってるとは思わなかった。RCで2倍なんですね。
一時期に比べると、15年前にしたら多分倍になっちゃってるかも。
なぜ横浜は「日本で一番」建築費が高いのか
そうだったんですね。じゃあ横浜だと、どのぐらいの値上げ幅なんですか?
値上げ幅は一緒で、価格は僕らは天野さんとこより、1000万とは言わないけど、800万とか高いと思うんです。
さらに?
さらに。高いんですよ、私たちの場所って。全国の工務店さんといろんなところで情報交換してるんで、僕らはやっぱり高いなと思ってて。
いろいろ調べてみたら、横浜ってね、日本で一番建築費が高いんだって。東京じゃない。
なんでですか。
人件費がもう高いんだけど、東京より横浜の方が高いんだって。不思議だと思いません?
その答えはね、東京は埼玉と千葉から物と人が入ってくるからだって。
横浜は、東京からは(物を)持ってこないんで、どちらかと言ったら圏央と言われる厚木とか平塚とかから持ってくるんですけど、平塚とか厚木は、実は横浜価格にほぼ近い価格帯なんです。
土地も高いし、横浜の人たちと同じ人件費で働いている。ドライバーさんも、運送会社さんの駐車場代や倉庫代も高いところで仕事をしている人たちの流通なので、物は高くなりますって言われて。
言われると確かにそうかも。埼玉とか千葉から、安い賃金、安い倉庫、地代で物流が入ってくる方が物は安いんですって言われて、横浜は一番高いんですって言われて納得しちゃったっていう。
大工さんの日給もね、5000円ぐらい違ったりするんですよ、1日が。
え、大きいですね。
大きいんです。
僕らのところに他の人たちが来ると驚かれるのは、やっぱり駐車場代。コインパーキングでも1日2000円とか、家づくりしてたら大工さんは1日2000円ずつ駐車場代払ってるわけだし。
他の職人さんも来れば、短時間でも1000円、2000円とか払うわけで。そうすると、そういう駐車料も全部やっぱり(価格に)乗ってしまうわけですよね。
家づくりを半年間とかしてると、駐車場代もかかるし、人件費も当然高いし、材料も高く買ってくるし、あと高速代とかも当然かかったり、などなどで、我々も高くなってる。
これが高くなったなって皆さん思われて、我々だけが、天野さんのピカイチの高性能と(いった工務店)だけじゃないんですよね。
もう公表されてる話なんで、積水ハウスさんが株主のために資料を公開してるんですけど、去年の2025年度の、スリークオーター、3期目か何かの資料を見てみると。
全部の売上に対する棟数で一棟当たりのが出てるんですけど、もう5000万超えてるんですよ。請負金額が5500万超えたんですね、去年の秋で。ハウスメーカーさん平均ですよ。
確か、つい最近の新建ハウジングのあれで、新築戸建てが(平均)4500万って言ってたんで、それ以上ですね、やっぱり。
トップのハウスメーカーさんですから、それ高いのは当たり前。しかも、外構別だったりするわけですね。僕ら外構込みでやっぱり話しちゃうんで。
外構込みで、やっぱりね、僕らが5000万前後なんですよ、請負金額。
それでも高いですよね。500万か。
最高で500万近く(外構に)使ってますもんね、僕らね。
給料上がんないですもんね。
給料が上がる前に物価が上がっちゃったので。
建築費は、これから下がるのか?
これから(建築費が)下がる見込みってあるんですか?私ちょっと心配なのが、この原油高?200円行くとか行かないとか言ってるじゃないですか。そしたらまた輸送コストとかも上がりしますよね。
輸送コストだけじゃないですからね。
その資材作るのとか、作れないかもしれないじゃないですか。そういった不安もありつつ、下がる見込みってあるの?ないの?どっちですか。
でも過去にね、建材って下がったことって一時的にはありますよ。乱高下するんですけど、経済成長が始まってから(長期的に)下がったことって一度もないんですよね。
リーマンショックとかで一時的に下がったりとかはあるけど、結果的にやっぱり上がるんですよ。一瞬は下がるけど、年単位で見てたら常に上がり続けてる。
それはやっぱり、日本の経済もインフレではあるのは間違いない。で、さらに今インフレ基調が高いので、石膏ボードが一時的にちょっと下がりましたとか(はあるかもしれないけど)。
なので残念ながら、下がるっていうのは期待しても、よっぽど日本の経済がどうにもならんっていうような大事件ですね。ミサイル撃ち込まれるとかね。
そういう話になったら消費がドーンと落ち込んで、そういうのはあるかもしれないけど、まあ嫌ですよね。家建ててる場合じゃない状態ですから。
そしたら、高いまま、いち早く買った方が安いってことですよね。
そういうことです。インフレなので、今、天野さんのとこで4500万で家建てたとしても、来年は5000万になるかもしれないし、5年後にはそれが8000万かもしれない。
1年前の見積もりがもう全くもってあてにならないっていうか。うちも少数でやってるんで、我慢してなるべく抑えつつ、施工性とかを簡略化しつつ。
なんとか利益を出そう、お客様にいいものを出そうとやってるんですけど、1年経つと、見積もり金額が全く別物に変わってる感覚があるんで。
1年前は基礎とか、このぐらいの金額でやってたけど、新しい見積もりを取ると、「え?え?」っていう、二度見するぐらいびっくりするんで。
ウッドショックの時に急激に上がったんですよ、ものがいろいろと。今となっては笑い話だけども、とある工務店さんが設計事務所さんと一緒に仕事をしてて。
当時は急に上がったんで、設計事務所さんは「3500万もあればできますよ」って言ってたのが、4500万になっちゃって、「全然話になりません」みたいな話で。
「じゃあ1000万もオーバーしたから、バリューエンジニアリングでコストを下げなきゃ」って、設計事務所さんが40坪の家だったのを35坪とか、面積を小さくしたり、仕様も落としたり。
いろいろ頑張って図面を修正して、「VE案を盛り込んだので、これで見積もりをお願いします」って出したら、その1ヶ月の間に物価がまた上がっちゃって。
見積もりしたら、元の見積もりより高くなっちゃったっていう笑い話。5坪も減らしたのに。今なら笑えるけど、当時笑えないような話があったんですよ。
でも、そこからさらにまた上がってるんですもんね。
はい、石油由来のものは確実に上がる。これから作るものは高いので。
コスパのいい家とは「一生涯で払う金額が一番安い家」
恐ろしいけれども、高いまま買うとしたら、どう賢く建てるのかっていうところが、工務店さんの腕の見せ所ですね。
工務店さんが考えるコスパのいい家って、そもそも何なのかっていうところを、お話しいただこうかなと思うんですけど。家のコスパって、どう考えていくんですか。
私も『家づくりのお金の話が全部わかる本』っていう本を書いてて、毎年出て、2026年版も11月に出てるんですけども、これにも書いてるんですけど。
住む家族が一生涯で払う金額が一番安くなるのが、コスパがいいと私は思うので。
地震とかで壊れちゃって住めなくなったら、そこで価値ゼロになっちゃうっていうんじゃダメなので、地震に強くて、燃費がいいお家。
あと、30代で建てたならば、今100年時代ですよ。35歳の人は、そこで65年も住むんですよね。できれば自分の家で最後まで生きたいじゃないですか。
65年もその家で住もうと思うと、最低でも2回ぐらい大きなメンテナンスとかリフォームを入れないと住めないわけですよね。外装全部塗り替えるだけでも350万から500万ぐらいかかっちゃったりする。
その後、機器更新っていうのが、機械ものは10年に1回は壊れる、設備系はね。大きなものでも20年に1回は壊れる。給湯器とかも必ず壊れる。
30年後に(リフォームで)1000万とか2000万とか、規模にもよりますし、程度にもよるけど。って考えたら、天野さんが作ってるお家とかは、丁寧にメンテナンスしていけば、1回のメンテナンスが安上がりなんですよ。
2回やったとしても、全部作り直す必要はないけど、世に言うローコスト住宅って60年持たないから、頑張って35年から40年ぐらいで建て替えっていうのをやんなきゃいけないとか。
そうなんですか。
だって周りの家で、30、40年以上のお家って、もちろんありますよ。でも、その人たちが満足して住んでるかって言ったら、僕らも40年、50年になると建て替えすること多いもん。
50年以上またそこでメンテナンスして住み続けようっていうのは、やっぱりレアケースになってきてる。もちろん、今時と違って(今の家は)性能はいいとはいえ。
天野さんは、コスパのいいっていうところでいくと、お客様にどんな風にご案内してますか?
やっぱり関尾さんと同じで、耐震性、断熱性っていう基本的な性能は、国の言うところの最高等級を満たすレベルはやっていた方がいいですし。
税制優遇とか、耐震性ですと地震保険等(で優遇)が入れるので、使えるものは使いたいし、補助金等も手厚く出ているので。神奈川で出てるんです?
神奈川でも出てるし、横浜でも出てる。耐震はね、そんなに期待するほど出てないです。
山梨ですと、既存の住宅に耐震性能がないっていうことを証明すると、建て替えの補助で174万円ほど出たりとか。
おお、大きい。
あと、山梨快適住宅っていう制度が去年からスタートして、国の言うところのGXっていう水準を満たす住宅を作ると、国の補助制度と合わせてプラスで160万円出るので。
全部で300万円を超える金額が県と国から補助が得られるので、うちだと「そういう性能は満たしてるんで活用してください」っていうことと。
天野さんはここで、補助金と並ぶ「本当にコスパがいいもの」として、無垢の床材を挙げます。
一番コスパが本当にいいっていうと、お客さんのところ(関尾さんのところ)もそうだと思うんですけど、無垢の床材とか。そういったところでいうと、もう最たる所だと思うんですね。
2000年代ぐらいは、逆に無垢の床材って高級品みたいに思われる方が多かったと思うんですけれども、いいものはいい、本当に素性がいいっていうか、メンテナンス性がいいんですよね。
子供がへこみ傷を作っても、普通にスチームアイロンを上から当てるだけで戻ったりとか。最近は、表面を薄くサンダーがけして削ってくれる、床をリペアしてくれる業者さんも(いる)。
子供の成長とともに、それはまた計画すればいいんですけど、ただ無垢の床だからできるんですよ。
新建材って呼ばれてる、一般的な合板フローリングは、もう傷ついたら補修も何もできないんで。長く住み続けるっていう意味だと、全然(無垢の床は)替えが効く。
あと窯業系のサイディングとかですね、流行り廃りがあるので、すぐ廃盤になったりとか。何かの事故があった時にもう廃盤になっちゃってると、そこだけ一部違う色っていうか。
外装の塗り替えでやると、その当時はいいんですけど、今度塗装をやると全部めくらで潰しちゃうんで。
落とし穴になっちゃうんですよね。
うん。もう一緒くたになっちゃうんで。
木の外壁とかですと、関尾さんのところは防火もあったりするので、いろいろあるかもしれないですけど、うちのような防火があまりない地域で、うちがよく杉の板張ってるところですと。
杉って日本全国どこでも手に入るので、交換がしやすいんですよね。かつ、その色が、期間を置いてしまうとすぐ馴染んじゃうんで、どこ直したんだっていう話になっちゃうんで。
もちろん色をつけることもできますし、いい意味で、また新築に戻るような色をつけたりすればですけどね。そういった面白さは、木とかの材料がいいのかなって思います。
僕らの方も、例えば外構の仕上げを見てもらうと、既製品がないんですよ、基本的には。リクシルとかYKKさんとかの、外部で使う用の製品はほぼない。ポストとインターホンぐらいかな。
アルミの支柱ぐらいは使うけど、どこのメーカーというより、ただのアルミの角を立てて、そこにヒノキの荒板、僕ら「荒し」って呼んだりするんですけど、その板を普通に貼っていくと。
要はモルタルの壁の下地で使うものなので、ホームセンターや材木屋さんに行けば普通に売ってるもの、1本350円とかするぐらいのものなので。
そういうのを貼ってって、塗装するもよし、そのまま放っておいてもよし。15年、20年ぐらいすると、ダメになったり、剥がれちゃったり割れちゃったりしたら、そこの1枚だけ取り替えればいい。
ダメなとこだけ取り替えてけば、法隆寺みたいに1400年とか、そういうふうに持つわけですよ。っていうようなことをよく言ってて。
メーカーのフェンスとか、さっきのサイディングもそうだけど、5年後、10年後に張り替えたいって言ったら、同じものをもう売ってないので、全部張り替えなきゃってなってくる。
全部張り替えるの高いなってなると、そこが割れたまま放置されてたりっていうこともある。全部やろうと思うと、そこだけでまた数百万ってなるけど、さっき言った350円(の板)を張り替えればいいだけなので。
ちょっとずつ直してく。ヒノキの板が世の中からなくなりゃしないので。
もしホームセンターに売ってなくっても、規格が変わったとしても、その1枚を、山行って切ってきてもらって、「4尺で切ってくれ」って言えば製材所は切ってくれるんで、必ず手に入る。
そこから?そこからですか。
そんなことはないよね、規格品で。けど、ある意味極端な話、そういうことっていう。
漆喰もそうですよ。漆喰っていうのは石灰石を高温で焼いたものなので、絶対世の中からなくならないんですよ。
メーカーが作るのやめたって言っても、自分で頑張って高温で焼けば作れるんで。焼くやつはいないだろうけど。
自然素材の良さって、そういうメンテナンス性の良さにもあるんですね。健康にいいとか、割とそういうところにフォーカスしがちですけど、長い目で見たら、いつまで経っても山に行けば手に入るっていう。
そうそうそうそう。
メーカーが作るのやめたら急に手に入らないっていうものを、僕らは極力使わない。それが一番コスパがいいかも。
なるほど、そういう視点は新しかった。
補助金は最大いくら?県産材の「大人の事情」
あともう一点、国の脱炭素の流れから補助金が今めっちゃ出てますもんね。マックスで使うとなると、一棟あたりいくらぐらい出るんですか?
地域による。全国だと160万かな、今は。GXか。160万でプラス、山梨だと先ほど言った「快適住宅」っていうのがあるんで、それを併用して使うと、多分320万。
大きいですね。
(それだけ)入ってくるので、本当に積極的に使える方は使っていただけたり。GXはいい補助金なんですけど、太陽光の設備を載せなくてはいけないので。
やっぱり建築コストが上がってる中で、その縛りがどうしても出ちゃうんですよね。
今、その「屋根貸し」っていうのもあるんで、それでもいいんですよ。そういったのを活用してもらって、うまくやってもらうっていうことと。
あと、長期優良住宅っていうのが標準でやらなくちゃいけないことなので、それをやっていただけると税制優遇も受けれます。
地味にっていうか、聞いてきて「おおー」ってなるんで、やっぱり賢く使っていただきたいなっていうのはありますね。
神奈川県は(県の補助金が)、もちろんあるんですけど、県産材だけど、県産材自体がそんなに流通してないのと、県産材がやっぱり高いので、補助金のメリットがほぼなくなっちゃう。
山梨と一緒ですね、そこは。山梨も県産材の縛りが少しあるので。
縛ると高くなるのも、どうかと思うんですよね。
ちょっと業界話ですけど。
大人の事情がね。
各県に林政部っていうものがあって、日本の山にお金が落ちてないので(補助金を出している)。もう切っていい木ばっかりなのに、それが切られずに今、日本の山にあるので。
すごいそれを使っても欲しいけど、なかなかコストとかで合わないっていうところで、使われない。そこに補助金を、ばらまいてるって言い方したらあれですけど、ばらまいているので。
ただ、そういったもの(県産材)を使うと、手厚い補助金は出ているんですけど、耐震性っていうところになると、極端に弱くなっちゃったりするんですよ。
木の強度が、そもそも。
そう、木の強度が無等級っていうもので、大体構造計算をするので。柱とかだったらまだいいんですけど、梁とか桁とかの横架材を構造計算すると、特定の場所で強度指定が出てるんですけど。
うちで使ってる山長さんとかは、その辺ができるんですけど、それ以外のものになってくると、なかなか難しかったりするのがあるので。
(梁の)サイズが1サイズ、2サイズ大きくなっちゃったりするんですよね。
全然知らない話でした。単純にその地産地消がいいとか、輸送コストがかからないとか、メリットにすごい目を向けてたんですけど、内部の話を聞くと。
地域差があります。
ありますね。僕らも使いたいんですよ、県産材。使うこともあるんですけど。
なかなか流通量がそこまでないということ。価格がそれなりに上がってしまうということ、補助金の額を使ってしまうということもあるんで。
僕らも毎年、県内で伐採ツアーを見に行ったり、植林してみたりしてるんですけど、でも県産材なかなか使えないっていう事情があります。
ここまで、「コスパのいい家って何ですか?」っていうところを聞いたんですけど、一回ここで一区切りして、後半戦に行きたいと思います。
まとめ
前半では、日建設計で超高層ビルやホテルの設計に関わっていた関尾さんが、休日の現場で飲んだビールの味をきっかけに木造住宅へ転じた経緯が語られました。後半の本題では、山梨・横浜それぞれの建築費の実額と、横浜が日本で一番高いとされる物流と人件費の理由が明かされます。関尾さんは、建材価格は長期的に下がる見込みが薄いと話し、コスパのいい家を「一生涯で払う金額が一番安くなる家」と定義しました。無垢材や杉・ヒノキ、漆喰など手に入り続ける素材と、補助金や税制優遇の活用が、その具体策として挙がっています。
- 山梨では30坪で4200万〜4500万円ほどと、ウッドショック前から7、800万円上がっている
- 横浜は人件費や物流、駐車場代の影響で、関尾さんによれば日本で一番建築費が高い
- コスパのいい家は、地震に強く燃費がよく、部分的に直しながら長く住める家
- メーカーが廃盤にすると手に入らない建材は避け、無垢材や漆喰など手に入り続ける素材を選ぶ
- GXや県の補助金、長期優良住宅の税制優遇は活用したいが、太陽光や県産材の縛りには注意が要る






