朝ランは「言語化できない気持ちよさ」なのか
この回の入り口は、いなけんが最近始めた朝ランの話でした。朝起きてから仕事の前に、30分ほど走るようにしていると語ります。
いなけんは家から走ると川沿いに出るといい、桜が咲くなかを走る心地よさを挙げます。朝日を浴びながら風を切って走る感覚がよかったようです。
家から走ってくると、ちょっと川沿いみたいなとこがあんのよ。今だと桜とか咲いてて、「わー気持ちいいな」みたいな。
しもちゃんが筋トレとの違いを尋ねると、いなけんは同じ運動でも訴えかけてくる場所が違うと説明します。
筋トレよりフィジカルに訴えかける気持ちよさだけど、朝ランは(体の)ホルモンに訴えかける気持ちよさというか。朝日を浴びて、なんかセロトニンみたいな。
いなけんは、痩せたい気持ちが先行してはいるものの、目的というより「やってる感そのもの」を得たくてやっている面があると話します。世の中の人がなぜ走るのか、なんとなく腑に落ちてきた感覚だといいます。
一方でしもちゃんは、以前していた筋トレを今はやめていると打ち明けます。エネルギー量を増やす手段として筋トレを選んでいたものの、その速さが遅いと感じたためでした。
次(は)筋トレしてる時間あったら走ろうかなと思って。だからこの話(に)興味持ったんすよ。
話題は、その「セロトニン的な気持ちよさ」とは具体的にどういうものか、という追及に移ります。しもちゃんが言語化を求めますが、いなけんはやってみないとわからないと返します。
ここでいなけんは、AI時代における身体性の価値へと話を広げます。いいと思っている感情そのものは、完全には言葉で他人に手渡せないという主張でした。
いなけんは、ランニングの良さを学術的に並べることはできても、自分が感じた感情をそっくり伝えることはできない、だから「やる方が早いからやってくれ」というアドバイスにしかならないと結びます。しもちゃんも、それはそうだと納得しました。
なぜ実家に帰る? 大阪の仕事と生活コストの話
次にいなけんが持ち出したのは、しもちゃんが最近実家に帰っている理由でした。しもちゃんは、大阪で仕事があり、お金をあまりかけずに生活したいから実家にいると説明します。
食費が浮くという利点がある一方で、いなけんは移動コストがかかる分、トータルでは損ではないかと指摘します。しもちゃんもその点は認め、いっそホテルを取ることも考え始めていると話します。
しもちゃんの働き方は、大阪のクライアント先に月水金で出社し、それ以外は実家でウェブ会議のモニターをつなぎながら仕事をするというものでした。実家は「帰る場所」というより、ホテルより安い手段として選ばれていたわけです。
(実家は)ホテルに泊まるんじゃなくて、ホテルと実家どっちの方がコスト安いって言ったら、コスト安い方を選んでるっていうだけでしかない(のか)。
ただ、そのバランスも変わりつつあるとしもちゃんはいいます。実家に居づらさを感じることが増えてきたため、ホテルを取る方向に傾いていると打ち明けました。しもちゃんの実家には弟がいて、妹はすでに結婚しているそうです。
新幹線グリーン車に5000円の価値はあったか
いなけんが新幹線移動が好きだと話すと、しもちゃんはその非日常感がなくなってきたと告白します。行き来が増えたため、この日はグリーン車に乗ったといいます。
いなけんはグリーン車の良さがわからず、差がわからないから乗りたいと思わないと率直に語ります。そこでしもちゃんが、どんな人に価値があるかを説明します。
サービスに対しての手厚さとかですごく自分がワクワクするとか、テーマパーク好きとかいう人やったら、まあ価値はあるんじゃないかなとも思いますね。
物理的な違いとしては、通常の3席と2席の並びが2席と2席になり、一人分ほど広くなる点をしもちゃんは挙げます。ただ、感想としてはやや控えめでした。
しもちゃんにとって差分は5000円ほどで、今の自分にその価値を感じられるかというと、あまりなかったといいます。収入が増えれば価値を感じるかもしれないが、今は指定席でいいという結論でした。
(差分の)5000円の価値(を)今感じれるかなっていうところは、あんまりなかったかもしれないですね。
もっとも、気分を上げたいときにはグリーンを選ぶともいいます。しもちゃんはそれを、ラーメンに味玉をトッピングするようなノリだと表現しました。
グリーン車と「エフェクチュエーション」はつながるのか
しもちゃんがグリーン車の判断を「アイシールドの蛭魔」に例え、さらにエフェクチュエーションの話につなげようとしたことで、いなけんは戸惑います。
エフェクチュエーションとグリーン車と味玉の話(が)つながってこないやろ。
しもちゃんの主張はこうでした。お金も含めてリソースだと考えると、体験として一目散にグリーン車に乗るのが本来は合理的だが、それをやっていない時点で合理的ではない判断になっている、というものです。
そのうえでしもちゃんは、エフェクチュエーションの原則の一つを持ち出します。うまくいくかを考える前に、失敗しても問題ない範囲でリスクを取るという考え方です。
(収入が)ちょっと上がってきたから、多分これぐらい贅沢してもまだなんとかいけるなっていうラインになったから、僕はやった。
つまり、収入が上がって許容できる損失の範囲が広がったから、先にグリーン車という体験をリソースとして集めておく判断ができた、という理屈でした。いなけんは「理解したことにしておこう」と受け止めます。
関西は「商売人」、その正体は状況に合わせる力
話はハンドルを切り、地元が関西でありながら東京で仕事をするしもちゃんの、土地についての所感へと移ります。しもちゃんはどちらにも好きなところと嫌いなところがあると前置きしつつ、関西の特徴を語ります。
関西はやっぱ商売人やなと思います。
その例としてしもちゃんが挙げたのは、大阪のタクシー運転手にサービス精神が多い割合が高いという実感でした。運転がロボット化していく時代を見据えた話として展開します。
しもちゃんの論理はこうです。タクシー運転手が残っていくには、ロボットには出せない自分にしかできない部分を発揮するしかなく、お客に合わせてコミュニケーションを取ることがその最適解になる、というものでした。
状況を見て「あ、この人は多分これがいいんじゃないかな」っていう、そういう最適なコミュニケーションを取れる人が、タクシー運転手でも残っていく属性としては強いんかな(と思う)。
いなけんは、これはタクシーに限らず大阪に根ざした人に多い傾向という理解でよいか確認し、しもちゃんも同意します。移動手段ではなく「この人の体験」にお金を払いたくなる、という捉え方でした。
「関西のタクシーはサービスが悪い」との矛盾をどう見るか
いなけんは、関西のタクシーは臭い、サービスが悪いと聞くことが多かったと、先ほどの話との食い違いを率直にぶつけます。しもちゃんは、それも同時に起こりうると答えます。
しもちゃんによれば、その独自性は裏を返せば「人の目を気にしないサービス」でもあります。顧客ではなく自分がやりやすいように向いてしまう場合が、一定数あるということでした。
パーソナライズしようと思っても、それがありがた迷惑というか、はまらない人も中にはいるよね(ということか)。
つまり、状況に合わせて色を出す関西のスタイルは、相性が合えば心地よく、合わなければ過剰に感じられる。良し悪しではなく程度と相性の問題だと、ふたりは整理しました。
しもちゃんは、関西のサービスが悪いという評判自体を、悪く言えば東京側のマーケティング手法だとも表現します。いなけんがホリエモンの発言を引き合いに出すと、しもちゃんは東京が好きだからそう言っているだけだと返しました。
状況に合わせて色を出す、人にしかできないコミュニケーション。移動そのものより体験に価値を感じる人に響く。
人の目を気にしない、自分本位に映るサービス。過剰さがはまらない人にはありがた迷惑になる。
東京は「効率」の街、人を介さない仕組みが多い理由
反対に東京についてしもちゃんが挙げたのは、人が多いがゆえの徹底した効率でした。流れる水の量が多いから、最適化しないと管がパンクしてしまう、という比喩で説明します。
その結果、東京は人を介在させない仕組みが多く、システマチックになるとしもちゃんはいいます。接客の回数自体が少ないため、相手に合わせてコミュニケーションする人も少なくなる、という見立てでした。
(東京は)マニュアル通りやから、これが正解。そんな感じですね。
いなけんはモバイルオーダーを例に、お客がメニューを聞くやり取り自体がなくなっていく流れを挙げます。しもちゃんはこれを、東京を象徴するわかりやすいエピソードとして示しました。
効率を突き詰めると、自分の色を出すことはノイズや再現性のない部分になり、東京ではそれが切り捨てられている。それをどう見るか、というのがしもちゃんの視点でした。
「東京の人が冷たい」は性格ではなく構造の話
ここでいなけんは、よく言われる「東京の人が冷たい」という話に触れます。地方から来た人も多いのに東京に染まっていくのだから、性格ではなく構造が振る舞いをそうさせているのではないか、という考えを示します。
その人の性格がとかじゃなくて、東京っていう構造がそうさせてるんだなっていう俺の(考え)。
東京の人が歩くのが早いという話も、無意識にそうなっているのではといなけんはいいます。しもちゃんはそれに加えて、電車のサイクルが短いことを理由に挙げました。
しもちゃんは、電車の時刻に生活リズムが左右されることで、時間の流れの感じ方が関西と根本的に違ってくると語ります。ふたりは、この時間感覚の差が土地ごとのスピードの違いを生んでいると納得しました。
最後にいなけんは、地方から上京する感覚を自分は得られないから、こうした話を聞きたくなると話します。しもちゃんは、土地によってもらえるものが違うから二拠点の方がいいと応じ、回は締めくくられました。
まとめ
この回は、朝ランや新幹線グリーン車という身近な雑談から、関西と東京の違いへと自然に流れ、最終的に「土地が人の振る舞いを形づくる」という視点にたどり着きました。良し悪しではなく構造の違いとして地域を捉える見方が、通底するテーマになっています。
- 朝ランの良さは学術的に説明できても、感じた気持ちよさそのものは言語化して手渡せない、というのがいなけんの主張だった
- グリーン車の差分5000円に今は価値を感じないが、収入が上がり許容できる損失が広がったから体験として乗ってみた、としもちゃんは整理した
- 関西の「商売人」的なサービスは、状況に合わせて自分の色を出す力であり、相性次第で過剰にも映る両面がある
- 東京の効率や「人を介さない仕組み」は、人の多さゆえの最適化の結果だとしもちゃんは捉えている
- 「東京の人が冷たい」は個人の性格ではなく、東京という構造が振る舞いをそうさせている、というのがいなけんの見立てだった



