Photo・Designer・Publisherが1つのアプリになるまで
五藤晴香さんがこの回で取り上げたのは、11月4日にリリース予定のAffinityのiPadアプリです。AffinityPhoto、AffinityDesigner、AffinityPublisherという3つのアプリが、1つのアプリの中で切り替えて使える形にまとまります。
五藤隆介さんは、このAffinityを大まかにAdobeのアプリ群にたとえて説明しています。
Affinity、大雑把に言うとAdobeのやつやんな。Photoshopみたいなのと、Illustratorみたいなのと、何かみたいなのがセットになった(アプリ)。
晴香さんによると、Affinityは2017年にAffinityPhotoとして登場しました。Photoshopと同じようなことができる、サブスクではなく買い切りのアプリです。
確か、アーリーで2400円ぐらいで売ってて、その後値段上がっても6000(円)はしないぐらいだったかな。
晴香さんは、この買い切りのAffinityが登場した頃から、Adobeだけではない選択肢として脱Adobe ── 定額制のAdobe製品に頼らず、買い切りアプリや無料ツールなど別の選択肢でデザイン作業を行おうとする動きのことの流れがじわじわ広がっていったと振り返ります。
Affinityの歩みは、晴香さんの説明では次のように進んできました。
晴香さんによれば、去年の10月にCanvaはMacやWindowsで使えるデスクトップ版のCanvaアプリを無料で出しました。それに伴い、それまで買い切りだったAffinityのV2アプリも無料でダウンロードできるようになったといいます。
統合版の「.af」形式は、なぜiPadで困ったのか
デスクトップ版のAffinityは、Photo、Designer、Publisherをタブで切り替えられる統合アプリになりました。晴香さんは、統合そのものは良かったと話しています。
問題になったのは、統合版のAffinityでファイルが「.af」という拡張子で保存されるようになったことです。この.afファイルは、iPadにあるV2アプリでは互換性がなく、開けませんでした。
逆に、iPadで作った古いファイルはMacの統合版で読めます。ただし晴香さんによると、読んだ瞬間にファイルが更新されてしまい、iPadでは扱えない形式に戻せなくなります。
触った瞬間もう戻らんくなるってことやんな、iPadに。
そこで晴香さんは、Macでも独立版だった頃の古いV2アプリを使い続け、ファイル形式が変わらないようにして作業してきたといいます。この状態が去年の10月から約1年続きました。
え、アップデート来ないのこれ?iPadアプリのアップデートされないの?互換性ないの?
統合版の.afファイルはiPadのV2アプリで開けず、Mac側は古いV2アプリで耐え忍ぶ
新しいiPad版の登場で、パソコンと昔のようにやりとりできるようになると期待
隆介さんは、この10年ほどの変化の多さに、逆にAdobeの歴史の信頼度が上がってしまうと冗談まじりに話しています。
新しいiPadアプリはAppStoreにすでに並び、予約注文を受け付けている状態です。晴香さんは、アイコンが現在のデスクトップ版と同じことから、互換性の問題は解消されるだろうと見ています。
Canvaはなぜ無料でAffinityを配れるのか
新しいAffinityのiPadアプリ自体は無料です。晴香さんによると、基本機能は無料で使え、生成AI系の機能を使う場合はCanvaプロなどのサブスクプランが必要になる見込みです。これはデスクトップ版の統合アプリと同じ仕組みだといいます。
隆介さんが「Canvaはそれだけ儲かっているということか」と尋ねると、晴香さんは多分と答え、Canvaの強みを挙げていきます。
- 難しいことをしなくても整うテンプレート機能が豊富
- 無料で使える範囲が大きい
- 名刺やTシャツ、カバンなどを作ったものからそのまま注文できる
- 有料プランを5、6人のチームで共有できる
注文機能について晴香さんは、裏側では別の会社とつながっていても、ユーザーとしてはCanvaの中だけで完結する点を「上手だな」と評価しています。隆介さんも、Tシャツを作れるならお金がかかっても違和感はないと応じます。
こうした点から、晴香さんはCanvaは成功しているのではないかと見ています。買収後のAffinityについても、Affinityとして残っており、そこまで悪い方向には進んでいないという受け止めです。
セミナー画像はAffinityからAIの自作ツールへ
隆介さんの「Affinityはまだ使っていたのか」という問いに、晴香さんは、一から全部作ることはなくなったと答えます。少し前までは、iPadセミナーの告知用アイキャッチ画像をAffinityで作っていました。
ところが、パソコンとiPadでファイルが連動しなくなってから、作業がかなりやりにくくなりました。加えて、iPad版のAffinityは日本語入力に問題を抱えていたといいます。
(日本語入力で)文字がダブっちゃうとか、正しく入力ができないとか。
晴香さんによると、Mac版ではこの問題は起きません。iPadOSとの相性もあるかもしれないとしつつ、長く指摘されながら直らない状態だったと話しています。
そこで晴香さんは、アイキャッチ画像の素材をレイヤーに分解し、プログラムで合成して自動で作る仕組みをAIで用意しました。
情報を渡す
スクリーンショットからセミナーのタイトルや日付、時間をAIに読んでもらう
自動で生成
レイヤーを合成するプログラムが画像を作る
微調整
ウェブのダッシュボードで位置、フォントサイズ、背景グラデーションの色を変える
隆介さんは、晴香さんの中にレイヤーという概念があるから、それをコンピューターに合成させる発想ができたのだと受け止めています。
このダッシュボードは、8月ごろCursor ── AIによるコード生成や編集の機能を組み込んだコードエディタ。指示を出しながらプログラムを作れますを契約していた時期に作ったもので、今はAntigravityで調整しながら改良しているそうです。文字の打ち替えも頼めばやってくれるため、Affinityより楽になったといいます。
ロゴ作りで見えた、自分で手を動かす価値とは
一方で、晴香さんがAffinityDesignerを使った場面もあります。gotoharuna.comのロゴのような、ベクター形式のロゴデータを作るときです。
晴香さんは、生成AIにSVG形式で頼むこともできるものの、あまり綺麗には仕上がらないと話します。隆介さんも、AIでロゴを作ったときにおかしな結果になった経験を挙げています。
晴香さんの考えは、叩き台はAIで作り、完成形に持っていく段階では人のスキルが必要というものです。
ゴールが見えていて、それ通りに作るのであれば指示は出しやすいんだけど、ゴールが見えない。何がいいかがちょっとわかんなくて。
AIに色やテイスト違いのA、B、Cパターンを出してもらうこともできます。ただ晴香さんは、時間がかかるため、自分で動かしながら見比べるほうが好きだといいます。
A、B、Cなど案を出してもらえるが、待つ時間がかかる
スライダーをグリグリ回しながら、途中を見て「この色いいかも」と選べる
隆介さんは、ある程度までは誰でも到達できても、その先はその人の能力になってくると付け加えます。晴香さんは、iPadで使えるクリエイティブアプリが増えること自体がうれしいと話しています。
さらにiPad、Macとちゃんと連携できるようになったとしたら、AIにMacで作ってもらった後、iPadで微調整とかもできるわけや。
新しいAffinityのiPadアプリはAppStoreで予約でき、自動ダウンロードを有効にしておけばリリース時に入ってくるだろうと晴香さんは案内しています。
まとめ
Canva傘下で統合されたAffinityは、iPad版の登場でようやくMac版との互換性が戻る見込みです。AIで叩き台を作れる今も、試行錯誤しながら仕上げる場面では、自分で操作できるアプリとスキルが生きると二人は考えています。
- 新しいAffinityのiPad版は、Photo・Designer・Publisherを1つにまとめた無料アプリとして登場する
- 統合版の.af形式がiPadの旧アプリで開けず、晴香さんは約1年、古いMacアプリで耐えてきた
- Canvaはテンプレートや注文機能、チーム共有で、無料提供を支えるサービスを築いている
- 定型の画像はAIの自作ツールで作れるようになった一方、ロゴや色選びでは手で試す価値が残る



