なぜ今「変化する組織」を考えなければいけないのか
第14回のテーマは「変化する組織の作り方」です。宇尾野さんは、変化を考えなければいけない状況が世の中に広がっていると切り出します。
背景として挙げられたのは、収録時の8月に行われた参院選のような政治の動きや、AIの急速な発達です。困ったときにAIが分析して返してくれるなど、周りの状況が大きく変わっていると指摘されました。
周りの状況がすごい変わってる中で、じゃあ自分個人もそうですし、自分の会社、チームがどうそこに合わせていくのか、乗り越えていくのかっていうのはすごい難しいテーマだなと思って。
池原さんは、経営を意識する前はニュースを見ても「大変そうだな」ぐらいだったと振り返ります。事業をやる立場になると、その受け止め方が変わったと話します。
具体例として、AIによる社内プロセスの変化、飲食業でのお米の値段やアルバイト賃金、輸入輸出における地政学的な変化、そして猛暑のような天気まで挙げられました。これら全てが事業のリスクになり得ると整理されています。
どうやってチームとかメンバーの意識とかやり方を変えていって、そこに最適化していくかっていうのは永遠の課題だなと思いますね。
宇尾野さんは、個人なら冷房の効いた部屋に行く、水分を取るといった対策で環境変化を凌げると例えます。ただ、これがチームや集団になると、対策も環境変化への対応も一気に難易度が上がると指摘しました。
池原さんは、外で働く人を雇用する会社では命を守ることまで考える必要があると補足します。去年と同じでいい、というビジネス環境はほぼないというのが、二人の共通認識です。
今の「型」をどう見直すか、イベント化という工夫
最初の出発点として置かれたのは、去年や先週やってきた動きが今も適切なのか、という「型」の見直しです。宇尾野さんは、これが変化する組織をつくる上での起点だと話します。
一方で池原さんは、現場のメンバーには抵抗があると率直に認めます。せっかくできあがったオペレーションを「また変えろ」と言われる感覚は、自分でも持つだろうと語ります。
現状維持って人は心地よいし、変えるのってすごく労力かかる。それをどうやったらそういう柔軟性が組織に持たせられるのかなって、いつも考えますね。
宇尾野さんは、うまくやっている会社の工夫として「イベント化」を挙げます。定期的に見直すこと自体を楽しくやってしまうというアプローチです。
たとえば毎月、これまでやってきたことへの賞賛と、変えるところをセットで発表する。変え方もみんなでワークショップのようにアイデアを出し合い、形にしていくという進め方が紹介されました。
池原さんは、このイベント化を前回話した「儀式」と結びつけます。突然「変えるぞ」と来るのではなく、「そろそろ変える時期だよね」と仕組みにはめ込むことが重要かもしれない、と受け止めました。
見直しの頻度は組織の規模やテーマ数によって変わるといいます。宇尾野さんによれば、週次で棚卸しとアクションプランを決める会社もあれば、月1回、あるいは四半期に1回「捨てる会議」を行う会社もあります。
なぜ「他責な人」が組織に必要なのか
池原さんは、変化の場面には号令をかける人、現場で指揮を執る人、決まったことを運用に乗せる人など、得意領域の違う人がいると整理します。だからこそ、それぞれに役目を最初から設定するとよいと提案しました。
その役目の一つとして宇尾野さんが挙げたのが、意外な視点です。経営者は自責的な人を好みがちですが、変化の場面では「あえて他責な人を採ろう」と話します。
ここでいう他責とは、責任転嫁のことではありません。宇尾野さんは他責になれる人 ── 自分以外の仕組みや環境に問題の所在を見つけられる人。責任転嫁ではなく、課題に早く気づける視点として語られているという意味で使っています。
(他責な人は)ここが問題ですよねとか、こう変えたらこうなりますよね、なんでやらないんですか?って言ってくれる。実は問題に気づけたり、今の習慣の癖にいち早く白羽の矢を立てれる人だったりする。
理想は、その人に責任も負ってもらうことだといいます。他責な人でありつつ、責任を負える人という掛け算が組織にいると、物事がスムーズに回ると宇尾野さんは語ります。
池原さんは、これを個人への依存ではなく仕組みに目が向くかどうかの話だと受け止めます。宇尾野さんも、人のうまくいっている・いないよりも、場や仕組みの引っかかりに気づけることが大事だと同意しました。
「怒られたら片付ける」ループから抜け出すには
池原さんは、よく聞く悩みとして、指摘されたときは変えても、しばらくすると現状維持に引っ張られて戻ってしまうケースを挙げます。子どもが怒られたときだけ片付けて翌日には元通り、という例えで表現されました。
どうやってその、昔に、前に引っ張られない、前に進む組織になるか、そこをどう思われますか?
宇尾野さんは、この場面を乗り越えることが変化に適応する組織づくりで最も大事だと言い切ります。「怒られる→片付ける→綺麗になる→ほったらかす→また怒られる」というサイクルを、まずみんなで見渡すことを勧めます。
その上で、ホワイトボードやポストイットを使い、なぜ今のサイクルになっているのかを一緒に考えます。たとえば「毎日片付けるのを習慣にする」という一手を入れるだけで、怒られる前提のループ自体が発生しなくなる、という発想です。
池原さんは、人の行動を変える方法には2つあると付け加えます。ネガティブな点を指摘して変えさせるか、ポジティブな行動をさらに強化するかです。
池原さんによれば、人が動くのは後者だといいます。片付けたときに「すごいじゃん」と言葉で認め、recognition ── 行動を承認・評価すること。ここでは、うまくいった行動を言葉で認めることで、その行動を心地よくし定着させる意味で使われているすることで、その行動が心地よくなると説明されました。
怒られたくないっていうよりも、褒められたいの方で動くので、そういう人の心の変え方もあるのかなっていう気はしました。
「なんで片付けないの」と問題行動を指摘して変えさせる
片付けたときに認めて評価し、良い行動を定着させる
動いていたものが動かなくなる、組織衰退の兆し
宇尾野さんは、負のループにも落とし穴があると指摘します。怒られれば片付けるループは、意外にうまく回ってしまうことがあるといいます。親や社長が毎回気づいて動いてくれるからです。
「社長あんだけ言うけど、なんだかんだ優しいし」みたいな感じになって、変えないっていうパターンになっちゃうのかもしれないですね。
問題は、その起点になっている人が諦めた瞬間です。問題に気づいて動く人がいるからループは回っていたわけで、その人が動かなくなると、これまで回っていたものまで止まってしまいます。
宇尾野さんは、どう変化を促そうかと努力し続けることこそが、変化を生む起点だと語ります。その動きを止めた瞬間に、変化そのものが動かなくなる入り口に入ってしまうという警告です。
乗り越えるための近道として挙げられたのが、試行回数です。とにかくアクションを取ることが、最終的に良いものを見つけるきっかけになるといいます。週次の振り返りやループの見立ても、その一環として位置づけられました。
起点の人が努力を続ける
問題に気づき、変化を促し続ける
努力を止める
気づいて動く人がいなくなる
動いていたものが止まる
普段回っていたものすら動かなくなる
組織衰退の始まり
変化そのものが起きなくなる
変化と学習は対になる、越境で外に触れる
池原さんは、リーダーが引っ張るだけでなく、メンバー一人ひとりが自発的に外部環境に目を向け、自分たちは何をすべきかを考える学習が重要だと提起します。
変化と学習って多分対になるぐらい重要。学習しないと変化しないし、変化したら学習するし。でも日本人って大人になるとほぼ学ばないじゃないですか。
宇尾野さんは、学習しない状態を逆から捉えます。長期の展望がない、今起きていることに気づいていない、目の前の仕事しか見ていない、といった状態が変化に気づけなくなるポイントだと言います。
そこで提案されるのが、うまくいっている組織へのフィールドワークです。「こんなやり方もあったんだ」と自分以外のベストプラクティスに触れ、対象を外して視野を広げてもらうというアプローチです。
池原さんは、社外メンターをマネジメント層にマッチングする自社サービスの経験から、多くの人が「社外の人と喋るのが久しぶり」と話すと明かします。社外のベストプラクティスに触れることが、実はすごく重要だと、宇尾野さんの話を受けて実感したと語りました。
普段やっぱり自分のうちにうちにって言ってるエネルギーを、ちょっとだけ視点を外してあげたり、ちょっとだけ違う外のフィールドに身を置いてみる。
宇尾野さんによれば、経営者は基本的に外を向いているため自覚しにくいものの、組織の中の人は内側に向きがちです。だからこそ、時々越境させることが学習のポイントになると整理されました。
「よそ者、若者、バカ者」が組織に必要な理由
外部の目線について、宇尾野さんは地域のイノベーションでよく言われる「よそ者、若者、バカ者」という言葉を引きます。外の人、世代が違う人、あえてバカになって言ってみる人が組織にどれだけいるかが問われます。
これは多様性という言葉でひとくくりにしてもよいといいます。普段の当たり前や習慣にちゃんとメスを入れられる人がどれだけいるかが、変化する組織の条件の一つだと語られました。
池原さんは、歴史が長く成功体験の多い組織ほど、それを否定して乗り越えるには抵抗勢力も多いと指摘します。ただ、過去の成功体験にしがみつくと、時代に合わせた変化は絶対にできなくなると強調しました。
いろんな人とコラボするとか、入ってもらうとか、あるいは代替わりするとか、そういうことで新しい製品が生まれるっていうケース、すごく多いですよね。
宇尾野さんは、いきなり常態化させるのではなく、業務委託で少しだけ入ってもらう、月1回はそういう時間をつくる、といった小さな一歩を勧めます。経営者自身も組織も、少しずつ変化に慣れていくという道筋です。
経営者自身が学び続ける姿勢を見せる
池原さんは、一連の話から、経営者やリーダー自身が学び続ける姿勢を見せなければいけないという点を受け取ります。自分が変わらないのに、人に変われとは言えないという指摘です。
僕もちゃんと変わらなきゃなっていうのを、なんかこういう場で話すとブーメランで自分に返ってくるんですけど。
最後に池原さんは、この回のキーワードを2つに整理しました。1つは「楽しむ」こと、もう1つは「学習し続ける、自分が変わり続ける」ことです。
いいものをもっとワクワクしながら作ろうぜっていう雰囲気が大事っていうのと、学習し続ける、自分が変わり続ける、学び続けることが大事。
宇尾野さんは、冒頭で宣言した「明るく楽しく」を実践できたかはリスナーの判断に委ねると笑い、楽しく話せたと締めくくりました。
まとめ
第14回は、変化に適応し続ける組織のつくり方を、型の見直し、他責な人の活用、学習という観点から掘り下げる回でした。楽しみながら変わり続ける仕組みと、経営者自身が学ぶ姿勢が鍵として語られています。
- 去年と同じでいいビジネス環境はほぼなく、型を定期的に見直すことが変化する組織の出発点になる
- 見直しをイベント化・儀式化し、賞賛と変える点をセットで扱うと、変化への抵抗を和らげられる
- 問題点や仕組みの引っかかりに気づける「他責になれて、責任を負える人」が変化のドライバーになる
- 負のループは起点の人の努力で回っており、その人が諦めると組織衰退が始まる。試行回数を増やすことが近道
- 外部への越境や「よそ者・若者・バカ者」の視点、そして経営者自身が学び続ける姿勢が変化を支える



