夏休みの食卓と「誰のために作るか」
冒頭は、収録日がちょうど夏休みに入っていたという話から始まります。宇尾野さんも池原さんも子どもがいるため、料理の話題で場が温まっていきます。
宇尾野さんは最近、家族と離れて移住していたものの、夏休みで一緒に住んでいると話します。意外にも、一緒に暮らすことで自分では料理を作らなくなったそうです。
妻が作ってくれたりとか、一緒に作るみたいなのもあってですね、一人で食べてるご飯とみんなで食べるご飯は違うなと。
池原さんは、誰のために作るかが大事だと応じます。一人のための料理はつい効率やスピードを優先してしまう、という宇尾野さんの実感から、話は自然と組織づくりへと重なっていきます。
組織作りも、誰のために作るかっていうところを意識して作ると、作る過程も楽しめそうですよね。
番組タイトルの「おいしい組織」には、組織づくりを楽しんでもらいたいという趣旨が込められていると宇尾野さんは説明します。池原さんは、自分が板前気質なのか、みんなでバーベキューするタイプなのかを考えるきっかけになったと話します。
(自分は)みんなでバーベキューしようぜウェーイではないのは確か。ちょっと隅っこでお皿洗ってる感じ。
池原さんは、自分一人で下ごしらえから完璧にこなすタイプではなく、上手な人を集めて気持ちよく料理してもらう役回りだと語ります。この自己認識が、この後のリーダー論の伏線にもなっていきます。
熱量が高いチームとは、どんな状態か
ここから本題のリーダー選びに入ります。どんな人をリーダーに選び、採用し、育てるのかは永遠のテーマだと池原さんは切り出します。
宇尾野さんは、外から見て熱量が高いチームもあれば、淡々としっかりやる「青い炎」のようなチーム、火が消えかかっているチームもあると、これまで見てきた現場を振り返ります。
熱量とは何か。宇尾野さんは、盛り上がっている雰囲気だけでなく、目標やゴールに対する執着という言葉でよく表現すると話します。
何が何でもこのゴールを達成しようとか、今日これを決めたことを今日やりきろうみたいなものが高いチームが熱量が高い。
逆に、ゴールや目標が曖昧だったり、遠すぎてどう行けばいいかわからない場合は、熱量を高くしたくても高くできないと宇尾野さんは指摘します。
熱量を生む「目標・執着・リソース」の3点
池原さんは、目標への執着が生まれるには、簡単すぎず遠すぎない、少し頑張れば届くストレッチな目標設定が必要だと整理します。ストレッチゾーン ── 今の実力より少し上の、頑張れば達成できる負荷の領域。簡単すぎても難しすぎても人のやる気は続きにくいとされる。
宇尾野さんは、そこに加えて見落とされがちなのがリソースだと付け加えます。目標にたどり着くためのスキルや時間、人が足りていない状態では熱量は生まれにくい、という指摘です。
北極を横断しようみたいな時に、1日分の食料しかなかったら、最初からもう行く気ないじゃないですか。
号令はかかっているのに、そこへ行く方法や資源がない。宇尾野さんは、この状態がメンバーのエネルギーを空回りさせてしまうとよくある落とし穴を挙げます。
目標が明確
簡単すぎず遠すぎない、少し頑張れば届くストレッチな目標を設定する
一人一人の執着
そのゴールに対して各自が「何が何でも」と行動できる状態を作る
リソースがある
たどり着くためのスキル・時間・人が明確に足りている
池原さんは、熱量が高い組織を「とにかくテンションが高い人がいっぱいいる状態」だと誤解していたと打ち明けます。しかし目標のないただのテンションの高さは、本当の意味での熱量ではないと二人は確認します。
見た目おとなしくても、一人一人が青い炎で温度低くてもしっかり燃えてるっていうところだと、熱量は実は内なるものがある。
宇尾野さんは、この熱量はある程度組み立て可能な領域であり、上手にやっている会社ほど設計をうまく組み立てていると話します。
誰をリーダーに据えるか、という最大の悩み
話はミドルマネージャーやリーダーの人選へ移ります。人数が増えるほどリーダーは必要になりますが、そのリーダーによって炎が消えることも、点火することもあると池原さんは言います。
多くの人の悩みって、誰をリーダーに据えればいいのかと。ここを悩んでる人めちゃくちゃ多いですよね。
池原さんは、起業したての人のメンタリングで最も多い悩みが、現場のリーダーとの関係だと明かします。仕事ができるから、長くやってくれているからと任せた結果、組織がうまく機能しなくなるケースが多いといいます。
仕事ができる、長くやってくれているからこの人しかいないと思って任せると、もう組織がガタガタになっちゃったり。
リーダーの役割は、ただ仕事ができる、社歴が長いということだけではないはず。そんな問いかけから、宇尾野さんが選出の切り口を提示します。
リーダーを見る3つの軸「Will・Skill・Power」
宇尾野さんがリーダー選出でよく使うのが、Will・Skill・Powerという3つの切り口です。仕事によって必要なWill、Skill、Powerがあり、その重なりが活躍を左右すると話します。
その仕事に対する意志・やりたい気持ち
その仕事を遂行するための技術・能力
権限・肩書きなど、人を動かすために会社が渡せる力
宇尾野さんは、技術がなくても権限や肩書きといったパワーを渡せば人を動かせると説明します。逆に、優れた人でも期待する仕事量に対してこの重なりが小さいと、物足りない状態になってしまうといいます。
最初にどう設計するかが大事だと宇尾野さんは強調します。人選そのものだけでなく、任せる仕事とWill・Skill・Powerをどう噛み合わせるかが出発点だという考えです。
参謀・COO採用でつまずかないために
宇尾野さんは、よくある相談として「COOを採用したい」というケースを挙げます。CEOが営業や商品開発に特化する間、それ以外を全部推進してもらう、いわば相棒のような存在です。COO ── Chief Operating Officer。最高執行責任者。経営トップの方針を受け、日々の事業運営全体を統括する役割。
しかし、この採用がうまくはまらなかったという苦労話は、ニーズ以上にたくさん転がっていると宇尾野さんは言います。池原さんも、トラブルに発展したり会社が大きなダメージを負ったという話をよく聞いてきたと応じます。
宇尾野さんの助言は、任せる範囲を最初から会社の全部にしないことです。まずは営業部門だけ、まずはチーム作りだけ、というように分割して渡すことを勧めます。
(任せる範囲を)もうちょっと分割してください、まずは営業部門だけやりましょう、と。徐々に範囲と本人のWill・Skill・Powerがマッチする状態で渡していく。
難しいのは、本人はWillが強く出るため、「参謀をやりたい」という思いから期待範囲を超えて任せてしまいがちな点です。宇尾野さんは、「あとよろしく」にはならない、つまり任せた後も期待値を調整し続けることが必要だと話します。
リーダーは「翻訳者」であり報連相の達人
池原さんは、リーダーは翻訳者であるべきだと持論を語ります。現場のニーズを上に伝えるだけでなく、会社の方針と現場に乖離があるとき、その理由をメンバーに説明できる人だといいます。
経営者だけ熱量が高く現場がついてこないケースは少なくない、と池原さんは指摘します。だからこそ経営の熱量を現場に伝播させられる人が一流のリーダーになる、という見立てです。
宇尾野さんは、いろいろな会社で副社長を務める「プロ副社長」の知人の言葉を紹介します。仕事をうまくやる一つのパターンは報連相だと、その人は言い続けているそうです。
(うまくやれる一つのパターンは)報連相だ、とずっと言ってるんですね。とにかくうまい、とにかく質が高い。
池原さんも、自社でマネージャーに期待することとして報連相が出てきたと共感します。それも「あれどうなった?」と聞かれる前に、自分から定期的にしてほしいという内容でした。
報連相が頻繁であればあるほど信頼関係ができていくし、ここちょっとチューニングしようっていうのがお互い見やすくなる。
報連相は新入社員のお作法と思われがちですが、実はリーダーの超重要作法だと二人は確認します。若い頃に学び途中でやらなくなる技法を、うまいチームは情報流通の仕組みとして残しているという指摘です。
ストーリーメーカーであるか
宇尾野さんは、リーダーにすべき人の要素としてもう一つ、「ストーリーメーカーであるか」を挙げます。マネージャーはどの会社でも通用する再現性の高いプロの仕事だ、という池原さんの言葉を受けての話です。
会長や社長が言っていることを、どんなストーリーで伝えれば目の前の人が気持ちよく動けるか。宇尾野さんは、その語り手であることをポータブルスキルとして重視すると話します。ポータブルスキル ── 業界や会社が変わっても持ち運んで使える汎用的な能力。特定の業務知識と対比して語られることが多い。
ストーリーメーカーであり、ストーリーテラーであることを、気持ちを高ぶった状態で伝えきれるかっていうのは、一つの技法として大事。
下がった熱量を、どう取り戻すか
池原さんは、熱量が下がってドヨーンとした組織をどう回復させるかと問いかけます。宇尾野さんは、これは個人の行動習慣に近いと見立てを示します。
まず反省し、次にどう変えるかを考える。自分たちに解がなければ外からの刺激をもらって立て直す。宇尾野さんは、最初の反省とチームがそれを受け入れられるかが大事な入り口だと話します。
過去をなかったことにして「明日からこうしよう」と言われても、メンバーは前の失敗を引きずり現状維持に流れてしまう、と宇尾野さんは説明します。
池原さんも、自分ではうまくいっていると思っていた組織が実は崩壊寸前だった、という経験を振り返ります。そうした時にうやむやにせず立ち止まることが大事だといいます。
何が原因だったのか、自分に不足があるなら率直に謝るし、現場にいかんともしがたい課題があるなら断固とした態度をとる。
組織が復活する時の「儀式」
宇尾野さんは、うまくいかない状態から再起した組織の振り返りには、共通して「儀式」があると語ります。
たとえば、なんでこうなったんだと全部を吐き出し切った日があったり、社長が涙ながらに語りそれが皆に伝播したり。そうした象徴的なシーンが、V字回復の起点になっているといいます。
(皆が)罵詈雑言じゃないですけど全部吐き出し切った1日があったとか、社長が立って涙ながらに語り、それが皆に伝播した。
宇尾野さんは、こうした場を意図的に設計しておくこと自体が、熱量を注入したいリーダーにとって一つの演出だと話します。内部でやりきれない時は、場を一緒に作る外部のサポーターを入れるのも手だといいます。
その前提として、熱量が下がってきていること自体を認識し、認めることが必要です。宇尾野さんは、一人で全てを理解するのは不可能だからこそ、メンバーの声を拾い、自分から見に行くことが最初の入り口だと語ります。
料理に例えると、圧力鍋で中が見えない時にちゃんと温度を見てる。低いなと思ったら火を入れなきゃいけない。
一緒に考えられる仲間をそばに置く
池原さんは、うまくいっていないものを自分で見に行く作業はメンタルが削られると率直に語ります。その時に支えになったのは、一緒に経営する仲間や、同じ経験をした社外の人の存在でした。
わかるよって言いながら飲みながら、ちょっとすっきりして現実に向かう。そういうわかってくれる人をそばに置けるかが肝心。
宇尾野さんも、悩みを一緒に考える仲間をあらかじめ増やしておくこと、そして苦しい時こそ対話の機会を作ることを勧めます。大勢の前でなくてよく、一人二人と話すことが大事だといいます。
最後に池原さんは、印象的だった言葉を紹介します。つらい時期を乗り越えた話をあるVCにしたところ、経営者として一つ抜けたと言われたそうです。
うまくいかない局面をどう乗り越えるか、その経験そのものが尊い。二人は、乗り越えてきた先輩経営者に話を聞いてみることを勧めて、この回を締めくくります。
まとめ
リーダー選びと熱量の高いチーム作りは、感覚ではなく設計で扱える領域だという回でした。目標・執着・リソースの3点、Will・Skill・Powerの見立て、報連相と翻訳、そして下がった熱量を取り戻す儀式と仲間の存在が語られました。
- 熱量は「目標への執着」であり、明確な目標・一人一人の執着・十分なリソースの3点で生まれる
- リーダーはWill・Skill・Powerの重なりで見立て、任せる範囲を最初に設計する
- 参謀やCOOは会社の全部を一度に任せず、範囲を分割して期待値を調整し続ける
- リーダーは経営と現場の翻訳者であり、報連相とストーリーテリングが重要な作法になる
- 下がった熱量は、過去の振り返りとリーダーの自己開示、象徴的な「儀式」、そして一緒に考える仲間で取り戻す




