西田幾多郎編のあとに届いた、同窓会の誘い
このエピソードは、過去最長の16話になった西田幾多郎編を終えたあとの雑談回です。タッシーさんは、内容もヘビーだった西田幾多郎編のあとの「箸休め」として、気楽に話そうと切り出します。
しながわさんが話したかったのは、1週間ほど前にFacebookのメッセンジャーで届いた連絡のことでした。送り主は高校の同級生で、サッカー部の仲間です。
(同級生から)同窓会をやろうと。高校の同窓会。で、まあなんか幹事やろうぜみたいな感じだったんですよね。
しながわさんの高校の学年同窓会は、9年か10年ほど開かれていません。前回はコロナが広がる前で、しながわさん自身も幹事チームの一員として参加していたといいます。
しながわさんの記憶では、前回の同窓会の場で、今回連絡をくれた同級生が「今度はお前が幹事な」という流れになったようです。しながわさんたちは2006年卒業で、来年の開催なら卒業から20年あまりの節目になります。
ゴールキーパーでプロを目指していた、サッカー部時代
しながわさんは、高校時代の自分を幹事のようなキャラではなかったと振り返ります。それでも誘われた背景には、サッカー部にいたことがあるようです。
やっぱりサッカー部って結構その学年の中ではこう人数も多かったし、うちの場合は。クラスになんかもう5、6人とかサッカー部いるみたいな。で、8クラス。
しながわさんの高校では、サッカー部は「かなり主流派」で、元気があって目立つ存在でした。文化祭などの行事でも、サッカー部の面々が中心になることが多かったといいます。
タッシーさんは、しながわさんがサッカー部だったことを今も信じきれないと笑います。しながわさんはゴールキーパーで、入部当初はプロを目指していたものの、2、3年生になって自分には無理だと気づいたそうです。
しながわさんの母校は都立国分寺高校で、入学したころから進学校としての取り組みに力を入れ始めた時期でした。部活も文化祭も頑張る学校だったと話しています。
同窓会が得意ではないしながわさんと、毎年のように集まるタッシーさん
しながわさんは、これまで同窓会があまり得意ではなく、行けば楽しいけれど少しドキドキする、という距離感でした。ところが今回の幹事の誘いには、意外と「一緒にやりたいな」と前向きな気持ちになったといいます。
タッシーさんは、学年全体の同窓会では脈絡のない会話が次々に生まれるので、雑談が苦手なしながわさんは嫌いだろうと突っ込みます。
そんなその虫唾が走るほど嫌いとかではないですよ。
一方のタッシーさんは、どんな場でも全体に合わせて、回し役にも聞き役にも笑い役にもなれるタイプです。タッシーさんの高校は卒業生のコミュニティが強く、卒業回生の一の位が同じ学年が一堂に集まる会が、10年に1回あるといいます。
タッシーさんの場合、学年の同窓会もちょくちょく開かれ、東京で活動する同級生が多いため、不定期に「飲もうよ」と集まる機会もあります。高校時代にほとんど話さなかった人と、社会人になってから仲良くなることも珍しくないそうです。
学年の同窓会は9〜10年ぶり。毎年会うのは部活やクラスで特に仲がよかった一部の友人だけ
10年に1回の合同の会、学年同窓会、不定期の飲み会があり、会ったことのある人が多い
なぜ幹事を引き受ける気になったのか?
タッシーさんに心境の変化を尋ねられたしながわさんは、今さらだけれど、高校の友達は大事だと思うようになったと答えます。
しながわさんはここ2、3年、自分の活動を通じて、同じ興味関心で集まった人たちと話す機会が増え、それをとても楽しんでいます。ただ大分に住んでいることもあり、ランダムな出会いは減っていったといいます。
大学、あ、高校はね、楽しかったんですよ。本当に。
高校時代が本当に楽しかったからこそ、幹事として「こうなったらいいのに」という同窓会を自分たちの手で作れることに、しながわさんは魅力を感じたようです。
「ウェーイ」だけではない同窓会をどう作るか
しながわさんは誘いを受けてすぐ、同窓会にはドキドキしながら来る人がたくさんいるはずだと考えました。卒業後の人生は、会社員、海外暮らし、結婚、離婚や再婚など、本当に人それぞれだからです。
多分それぞれなんかこう、恥ずかしさとか、こう、こんなんでいいのかなとかって思いながら、ちょっと初めゾワゾワしながら来るみたいなところが同窓会、そういうもんだと思うんですよね。
サッカー部のような元気な面々が主催すると、どうしても「ウェーイ」な雰囲気になりがちです。しながわさんはそれも認めつつ、もう少し「しっぽり」した会にしたいと話します。
しながわさんが思い描くのは、卒業後に積み重ねてきた対話の方法や、ゆっくり落ち着いて話せる場作りを少し活かした同窓会です。哲学をやろうとは言わないけれど、高校時代に話さなかった人同士も出会えるような場を考えています。
元気なメンバーが主催して「ウェーイ」となる、立食と余興中心の会
ドキドキしながら来た人も含め、落ち着いて話せて「行ってよかった」と思える会
タッシーさんも、高校時代に絡まなかったタイプの同級生と大人になって話し、「めちゃめちゃいいやつじゃん」と気づくのが同窓会ならではの楽しみだと共感します。
しながわさんはさらに、今ならAIで準備の負担を減らせることや、30代半ばの子育てで出づらかった世代が、39歳前後になって一段落しつつあるかもしれないことも、前向きになった理由に挙げています。
タメ口で話せる友人は、高校時代までしかできない?
タッシーさんが同窓会の良さとして挙げたのは、社会人になってから仲良くなった人とは、たいてい敬語で話すという点です。
もうタメ口で喋れる友人って多分高校までなんですよね。っていう感じがして。あ、大学までか。そうか。
バンドマンの世界でも、本当にタメ口で話せる相手は意外と少ないとタッシーさんはいいます。同級生と会うと、大人になって価値観に深みが増していても、一瞬で高校時代のノリに戻れるのが良さだと話しています。
しながわさんが同窓会の中身を尋ねると、タッシーさんは数年前の合同の会の様子を紹介しました。10歳上と10歳下の卒業生も集まり、ビジネスの世界で活躍する卒業生のトークセッションが開かれたそうです。
その会で、Aqua Timez ── 2005年にメジャーデビューした日本のロックバンド。「決意の朝に」などで知られ、2018年に解散しました。タッシーさんはドラマーとして在籍していました解散後にLiBで働いていたタッシーさんは、「セカンドキャリア枠」として登壇したといいます。
お膳立てしすぎず、放置もしない場作り
タッシーさんの学年の同窓会は、担任の先生などに来てもらい、挨拶のあとは自由に歓談する、よくある形だそうです。しながわさんは「どんな同窓会だったらみんないいんだろうか」と悩み、高校を訪ねてみたいという案も口にします。
タッシーさんは、高校時代のヒット曲や流行を振り返るコンテンツなら一瞬でその時代に戻れると提案し、AIに相談すれば目的を聞き返しながらアイデアを出してくれるとも話します。
なんかもうリブのなんかその上司と同じみたいな感じで。あの、タシさん目的は、そもそも目的なんなんすかみたいな。
一方でしながわさんは、同窓会はそこまでお膳立てしてはいけないものかもしれない、と迷いを見せます。タッシーさんは「絶妙なさじ加減」だと応じ、全部フリータイムにすると仲のよいグループで固まって終わってしまうと指摘しました。
タッシーさんの例は、LiBの半期に一度の総会です。誕生月や、長男・末っ子といったカテゴリーで30分に1回ほど席を替え、強制的にいろんな人と混ざる仕組みがよかったといいます。
コンテンツを作り込みすぎて、同窓会らしさが薄れるかもしれない
ただ集まるだけになり、仲のよいグループ同士で固まって終わる
自分の近況をうまく説明できないのはなぜか
アイデアを聞くうちに、しながわさんは「ドキドキしてきた」と言い始めます。ここ数年で考えていることも変わり、親から今何をしているのかと聞かれても、簡単には説明できないからです。
何してるかよく説明できないです。なんかそんな簡単に言えないじゃないですか。
タッシーさんは、超相対性理論 ── Podcast番組の名前。会話の中で、最近似た話をしていたとタッシーさんが言及していますでも「一個のタグじゃ語れない」という話が出ていたと応じます。そのうえで、伝わらないことこそがいいのだと話しました。
タッシーさん自身も、同窓会で「バンド辞めて何やってんの?」と聞かれ、LiBの事業を説明しきれない経験をしています。「人材」と言えば「派遣」と思われる、といったことが起きるそうです。
伝わらなさも楽しんでますね。
しながわさんは、今の自分が哲学や人文知に関心のある人たちという「伝わる人たち」の中で生きていて、違う世界の人にわかってもらう努力をしていないのかもしれない、と気づきます。
タッシーさんは、高校時代には同じコミュニティにいた同級生が、10年、20年でどれだけバラバラになったかを楽しめるのが同窓会だと話しています。
丸ごとわかってほしいけれど、5分では伝わらない
しながわさんは、久しぶりに会う人には自分を全部わかってほしいと思ってしまい、高校卒業から時系列で話したくなるといいます。ゲスト出演の自己紹介でも、同じ衝動があるそうです。
やっぱり日々なんか年代を見てるからさ、時代を見てるから。ちょっとね、ここだけ輪切りで喋り喋りたくないなみたいなのもあって。
幹事としては近況を事前に集めて共有する案も浮かびますが、書きたくない人もいるでしょうし、その後の人生がヒエラルキーのようになるのも避けたい、としながわさんは迷います。タッシーさんは、事前準備のコストはかけないほうがいいと応じました。
しながわさんは、丸ごとわかってほしいのに、5分の場ではそこまで求められていないと感じて「だったらいいや」と思ってしまう自分に気づきます。
タッシーさんも、ミュージシャンからLiBへ移った経緯は「だいぶ端折って」話しているといいます。ベンチャーのエレベーターピッチのように、30秒や1分でちょうどいい伝え方をするイメージです。
しながわさんは、上辺だけでなくじっくり知りたいし知ってほしいという、キャリア相談のようなモードが好きだと認めます。タッシーさんがそれだと深い話を3人として終わってしまうと言うと、しながわさんは「40分掛ける3でね、2時間ですよ」と笑いました。
そうか、伝わらなさを楽しむ。それは大事なことな気がしてきたぞ。
しながわさんが怖がっていた「ポカン」
しながわさんの気づきは、同窓会だけの話ではありませんでした。大分の地域の人やパパ友と話すときも、「どうせ伝わらない」と思って丁寧に説明しなかったり、照れたりする癖があるといいます。
(家族に対しても、)自分のことをわかってもらえるっていう場でしか喋らないみたいな感じになっちゃうと。狭まっていく気がしてて。
言わなくていいかと思ってしまう理由について、しながわさんは、頑張って話したのに反応が薄いのが怖いのかもしれないと話します。伝わっていないと感じて「ごめん」となるのが嫌なのだといいます。
想像
相手が食いついてこないだろうと、とっさにイメージする
不安
頑張って話してもポカンとされるのが怖い
回避
丁寧に説明せず、話すのを止めてしまう
結果
わかってもらえる場でしか話さず、世界が狭まっていく
そこでしながわさんがたどり着いたのは、「それってどういうことですか?」と聞いてもらえるように話せばいい、という考えでした。タッシーさんは、日々もっとわかりやすく伝える努力もしていると話します。
しながわさんは、この癖を変えていけそうだと感じたことで、同窓会が楽しみになったと話します。同窓会は1年後くらいの開催になりそうで、タッシーさんは結果をまた雑談回で聞かせてほしいと締めくくりました。
まとめ
同窓会の幹事を引き受けたしながわさんは、どんな会にしたいかを話すうちに、相手の反応を恐れて自分の近況を語らずにいた癖に気づきました。タッシーさんの「伝わらなさも楽しむ」という姿勢が、その気づきのきっかけになっています。
- しながわさんは、ドキドキしながら来る人も楽しめる、落ち着いて話せる同窓会を目指している
- お膳立てしすぎず全部フリータイムにもしない、さじ加減が場作りの鍵になる
- タッシーさんは、同級生がどれだけバラバラな生き方になったかを楽しむのが同窓会の良さだと語る
- しながわさんは、相手にポカンとされるのが怖くて説明を止めてしまう自分の癖に気づいた




