段原瑠々とは対照的な「ヒーロールーキー」
この番外編は、前月に語ったJuice=Juiceのリーダー段原瑠々さんの話の続きとして始まります。段原さんは、カントリー・ガールズ、こぶしファクトリー、つばきファクトリーのいずれにも入らず、2017年にようやくデビューした苦労人でした。
中川どっぺるさんによると、その段原さんが加入を逃したグループの一つ、2015年デビューのこぶしファクトリーで最年少だったのが、現在のJuice=Juiceのサブリーダー井上玲音さんです。
私は、先月までの私なら(この企画を)もうええわって言ってた。
でも私は11人分これ聞きてえんだよ、今。
井上さんのこぶしファクトリーは2015年9月にメジャーデビューしており、中川さんは段原さんと比べて「相当順風満帆」だと表現します。
メジャーデビュー前のインディーズ曲『念には念』では、「忘れんなアンブレラ」という一節をこぶしを効かせて歌い、ハロプロファンの間で話題になりました。歌ったのは当時13歳の井上玲音さんでした。
この最年少の子はなんだ、めちゃくちゃこぶし聞かせるじゃねえか、めちゃめちゃかっこいいじゃねえか。
はじめちゃんは、今のサブリーダーという立場から、段原さんに続いて頭角を現した人だと思っていたと言います。実際の井上さんはデビュー直後にオハガール ── テレビ東京系の朝の子ども向け番組「おはスタ」に出演する女の子たちの呼び名。番組内で歌やコーナーを担当しますにも選ばれた、早熟なヒーロールーキーでした。
Berryz工房の後を継いだ実力派グループ
こぶしファクトリーのデビューは、Berryz工房が活動を終了した直後のことでした。はじめちゃんの世代にとってBerryz工房は、アニメ『イナズマイレブン』の主題歌で知られたグループです。
中川さんは、実力派のBerryz工房が去ったあとに現れたこぶしファクトリーを、歌の実力で見せるグループだったと説明します。今のJuice=Juiceに近い雰囲気だといいます。
メンバーはハロプロ研修生時代から歌唱力やパフォーマンス力が高かった人たちで、8人でデビューしたのち、まもなく5人体制になりました。デビュー年にはレコード大賞の最優秀新人賞を受賞しています。
一方で同じ頃、段原瑠々さんはまだハロプロ研修生としてもがいていました。2人の歩みが同時並行で進んでいたことに、はじめちゃんも改めて感じ入ります。
こぶしファクトリー最年少としてデビューし、最優秀新人賞も受賞
ハロプロ研修生のまま、デビューの機会をうかがう
アカペラ動画がSNS以前にバズった
ハロプロがまだバズやSNSを意識していなかった時期に、こぶしファクトリーはある動画で話題になります。5人がアカペラとボイスパーカッションだけで『念には念』や『LOVEマシーン』を歌い、YouTubeに公開したものです。
中川さんによると、この動画は2017年頃から公開されており、ハロプロファンだけでなく、アイドルファン一般のおすすめにも表示されるほど広まりました。
はじめちゃんは、当時ペンタトニックス ── アメリカのアカペラグループ。動画投稿をきっかけに世界的な人気を得ましたが流行り、画面分割でアカペラやボイパを重ねる動画がYouTubeやニコニコ動画で盛んだったことを思い出します。
これ(アカペラ動画)今でもYouTubeで見れるんで、見たことない人に見てほしいんですけど。
コロナ禍で無観客となった解散ライブ
順調に見えたこぶしファクトリーは、2020年に解散します。中川さんは、メンバーそれぞれの方向性ややりたいことの違いがあり、引退したメンバーもいたと話します。
こぶしファクトリーの解散は2020年3月で、コロナ禍で最も観客を入れられない時期と重なりました。1月の発表時点では観客を入れられる可能性もあったものの、最終的に解散ライブは無観客の生配信になりました。
うわ最悪。もうマジで。
中川さんは、メンバーが配信越しでも「おいおい」と煽りを入れ、ファンは家で泣きながら一人で声を出していたのではないかと振り返ります。井上さんにとって、解散が無観客になったことは大きな挫折でした。
異例の単独加入と歌姫の穴埋め
5人のうちハロー!プロジェクトに残ったのは井上玲音さんだけで、当時18歳前後でした。そして2020年4月、井上さんは異例の形でJuice=Juiceに加入します。
モーニング娘。にソロの藤本美貴が入ったとか、それぐらい大きな、大きなことなんです。
中川さんによると、解散したグループのメンバーが別の既存グループ、しかもJuice=Juiceのような大きなグループに1人で入るのは、それまでにない出来事でした。
翌年には、Juice=Juiceを歌で引っ張ってきた高木紗友希さんが脱退します。その歌姫の穴を、実力派の井上さんが歌声で埋め、グループを救うことになったと中川さんは語ります。
ひなフェスで会場を埋めた白と紫
2023年春、ハロプロ全体が集まる「ひなフェス」では、まだ声出しができませんでした。ひなフェスにはくじ引きでソロやデュオの組み合わせを決める企画があり、中川さんもハロプロファンが最も好きな企画だと話します。
井上さんがくじで組んだのは、同じJuice=Juiceの入江里咲さんでした。2人が歌ったのは、こぶしファクトリーの曲『明日天気になあれ』です。
私がこぶしファクトリーの曲を改めて歌いたいっていうのは、これ(井上さんは)絶対やらないらしいんです。
井上さんは、Juice=Juiceの他のメンバーにこぶしファクトリーの曲を強いることはしないといいます。この曲を歌おうと提案したのは入江さんで、「井上さんと歌いたいです」と申し出たそうです。
『明日天気になあれ』は、何度でも立ち上がればいいという内容の曲です。解散を経たこのタイミングで井上さんが歌うことで、曲の意味合いが大きく変わったと中川さんは語ります。
会場には、Juice=Juiceでの井上さんのメンバーカラーの白と、入江さんの紫のペンライトが広がりました。偶然にも、紫はこぶしファクトリー時代の井上さんのメンバーカラーでした。
Juice=Juiceでの井上玲音さんのメンバーカラー
入江里咲さんのメンバーカラーで、こぶしファクトリー時代の井上玲音さんの色と同じ
会場が「こぶしの井上玲音」と「Juice=Juiceの井上玲音」の色で埋め尽くされ、声を出せないファンは声を殺して泣いたそうです。
25周年公演で戻ってきた『念には念』の歓声
2023年秋、ハロプロ25周年のコンサートで、ようやく全員で声を出せるようになりました。各グループが過去のグループの曲を歌う中、Juice=Juiceが2日目の夜に歌ったのはこぶしファクトリーのインディーズ曲『念には念』でした。
中川さんによると、井上さんが歌い出した瞬間、2020年の解散ライブでは出せなかった歓声が会場中に湧き起こりました。13歳の頃に注目された「忘れんなアンブレラ」も当時のように歌い、ファンは号泣したといいます。
本人は泣かないんですか?そういう時。
本人は泣かない。まっすぐ歌ってる。
中川さんは、こぶしファクトリーの思いも受け継ぎつつ、井上さんがJuice=Juiceで活動していると話します。
新曲とモデル仕事、いまの井上玲音
中川さんは、Juice=Juiceの新曲『結論から言ってちょうだい』に「こぶしみ」があり、井上さんの歌がぴしゃりとはまるとすすめます。
また井上さんは今年、EARTHMUSIC&ECOLOGYのモデルの仕事も始めたそうです。デビュー当時からやりたかった仕事で、グループ活動と自分のやりたい仕事を両立していると紹介されました。
この時間マジでありがたいわ。
まとめ
井上玲音さんは、こぶしファクトリーで早くから注目された一方、コロナ禍で無観客の解散を経験しました。Juice=Juiceに単独加入後、ひなフェスや25周年公演でこぶしファクトリーの曲を歌い、ファンの思いを受け止めてきた歩みが語られました。
- 井上玲音さんは13歳で『念には念』の一節が話題になった、こぶしファクトリーの最年少メンバーだった
- 2020年3月のこぶしファクトリー解散ライブは、コロナ禍により無観客の生配信になった
- 2020年4月にJuice=Juiceへ異例の単独加入し、高木紗友希さん脱退後の歌を支えた
- 2023年のひなフェスと25周年公演で、こぶしファクトリーの曲が再び歌われ、ファンを泣かせた





