物より健康に投資する年頃?出張枕と睡眠の雑談
本編に入る前の雑談は、最近買って良かったものの話から始まります。
小平さんが挙げたのは、出張用に買った膨らませるタイプの枕でした。
出張行くと大体枕が合わなくて、首が痛くなって帰ってきたのが、これを使うことで首の痛みがあんまりなくなって、出張の体の負担がすごい減ったなと思ってます。
ぐるぐる巻きにすれば手元に収まるサイズになり、開けると空気で自動的に膨らむ仕組みだといいます。価格は1万5000円ほどとのことです。
桺本さんも、敷布団と枕を買い替えたら快眠になり、睡眠の大切さを再認識したと話します。
小平さんは、睡眠などを計測するスマートリングのソクサイも注文したと続けます。
だんだん物から経験とか健康に投資する年になってくるんだなという感じですね。
後継ぎと社長で変わる「お金の覚悟」
話題はメインテーマの財務へ移ります。桺本さんは、専務を務めるアナテック・ヤナコの財務はあまり見ておらず、去年買収した田中製作所で代表として資金繰りを見るようになったと明かします。
そこで桺本さんは、後継ぎから社長になったときにお金への向き合い方が変わったかを尋ねます。
後継ぎの時は他人のお金を使って何かやってるって感覚がすごくあったんだけど、社長になってから自分のお金に感じるようになった。
覚悟の差みたいなものは、すごく大きく変化したなと思ったりしますね。
赤字3年をどう乗り切ったか
小平さんは会社を大きく変える「第四創業」に取り組みましたが、その最中は赤字が続いたと振り返ります。
真面目に会社に就いてから3年は赤字で、4年目に過去最高益となり、それまでの分を取り返したといいます。
その3年間は結構キツキツでしたね。地方経営者で金がないのってこんなに辛いんだっていう。今はめちゃくちゃ楽って感じです。
桺本さんが、支払いや給料、金融機関からのプレッシャーのリアルを尋ねると、小平さんは組織改革が先だった事情を語ります。
赤字の主原因が組織の問題にあったため、まず理念と組織に手をつけ、最後にビジネスを黒字化させたといいます。
そのため出費が先に生まれ、成果が出るまでの期間が長く、割とプレッシャーだった時期は長かったと振り返ります。
桺本さんは、組織への投資が最高益につながったと解釈しつつ、そのスイッチを切る怖さに共感します。
組織に投資しておいたから最高益につながったと思うんですけど、そのスイッチは絶対怖いですよね。本当にこれでいけるのかなと。
3期赤字で分かった「地銀を大切にしろ」の意味
赤字が続いた原因について、小平さんはガス事業自体は儲かるものの、外部環境が重なったと説明します。
プーチンの侵攻と円安がダブルで来て、むちゃくちゃガスの仕入れ価格が上がったんですよ。
さらにインフレで部材コストも一気に上がり、30年のデフレのなかで曖昧になっていた値決めや契約を、適正価格や仕入れ連動制へ変えていったといいます。仕入れ連動制 ── 仕入れ価格の変動に合わせて販売価格を調整する契約方式。原材料が高騰しても利益を確保しやすくなる
この赤字期に、金融機関の対応がはっきり分かれたと小平さんは語ります。
3期赤字になるとメガバンクはすべて引き、メインバンクではない一部の地銀も態度を変えたといいます。
それまでずっと借りて借りてって言ってた人たちが、来月から利息が上がりますとか、枠を減らしますとか言ってきた。そういうところは一生忘れないと思っています。
一方で、親身に付き合ってくれたメインバンクの地銀には足を向けて寝られないと話します。
小平さんは、かつてメガバンクの偉い人から言われた言葉を覚えていました。
絶対に地銀を大切にしろと。俺らは数字で全部引き上げるぞと。だから必ず地域のメインバンクを大切にしながら付き合っておけよって言われて。
桺本さんも同じ感覚だといいます。京都信用金庫がメインバンクで、20年弱前に工場移転の数億円の借り入れに掛け合ってくれた恩から、今も関係を続けていると話します。京都信用金庫 ── 京都府を営業基盤とする信用金庫。地域の中小企業への融資などを行う地域金融機関
貿易・製造・ITで違う「借りやすさ」
話題は業種による資金調達のしやすさに移ります。小平さんの会社には貿易事業があり、赤字だと為替の条件が悪くなる難しさがあったといいます。LC ── 信用状。輸出入取引で銀行が代金支払いを保証する仕組み。貿易のリスクを下げる
赤字だと良い条件が取れなくなる。それがだいぶ改善して、良い条件で為替が取れるようになると利益も上がるので、貿易に関してはいいところもあったなと。
桺本さんは、製造業やインフラは担保や資金用途が明確で借り入れしやすいと銀行から聞いていると話します。
一方で借りにくいのはITだと小平さんは指摘します。当たり外れがあり、新規ソフト開発では人件費の適正性まで見られるといいます。
ITの人材って高いじゃないですか。もうちょっと人件費を削らないとダメですねと言われると、どうやってそれでジュニアを取るんやみたいな話になっちゃう。
SaaSモデルでは一度落ち込んでから回復する計画を説明しても、想定通りにいかず詰められることも多いと語ります。SaaS ── ソフトウェアを買い切りではなく、月額などで継続利用してもらう提供形態。初期は赤字でも後から収益が積み上がりやすい
担保や資金用途が明確で借り入れしやすい。貿易も条件が決まっており回収が見込めるため借りにくくはない
当たり外れがあり、高い人件費の適正性や回復計画の実現性を厳しく見られる
金利上昇と補助金・国債。資金調達の考え方が変わる
桺本さんは、デフレ下では金利が低く借りられるだけ借りる発想だったが、金利上昇でその考え方を変える必要があると問いかけます。
個人的には、やっぱり借入は抑制する方向に行くんじゃないかなと思うかな。
一方で、インフラ系の投資では補助金と組み合わせる方向を考えているといいます。100億宣言 ── 中小企業が売上高100億円を目指すと宣言し、設備投資などに手厚い補助を受けられる国の支援策
さらに小平さんは、国債など安定した運用先の金利が借入金利を上回るなら、寝かせている資金をそちらに回す選択肢もあると話します。
国債が4パーぐらいあるんだったら、10億あれば年間4000万じゃない。何もしなくても。
桺本さんは、10億円の事業で4000万円の利益を出す大変さと比べ、その発想の面白さに反応します。
ただし小平さんは、本格的な運用はまだ考えておらず、余剰資金があればM&Aに回すのではないかと補足します。
今はどっちかっていうと、金があったらM&Aするんじゃないかなと思ってますね。
借入は抑制
金利上昇で、頼まれて借りるような借入は減らす方向へ
大型投資は補助金と組み合わせ
インフラ系は補助金を使い、返せる形で投資する
余剰資金は運用やM&Aへ
国債など安定運用や、M&Aに資金を回す選択肢を検討
手形廃止と下請け法。資金繰りを変えた法律
桺本さんは、メーカーであるアナテック・ヤナコでは、仕入れの支払いが早く販売の入金が遅いため、資金繰りで銀行借入に頼らざるを得ない時期があると話します。
一方で、法律の変化が資金回収を改善したといいます。買収した田中製作所にあった手形も、制度変更でほぼなくなったと説明します。
今年の1月1日から、入金までのサイトが納品から60日以内に着金しないといけないという風になったので、手形を使う理由がなくなった。
小平さんの会社でも手形はほぼなくなり、資金回収に関してめちゃくちゃなことはなくなったと評価します。
エクイティかデットか。スタートアップと後継ぎの違い
小平さんは、桺本さんがスタートアップも経験していることに触れ、当時と今の資金繰りの違いを尋ねます。
桺本さんはエクイティを入れず、個人である程度収益が上がったものを事業化してきたため、資金が回る状態でスタートできたパターンが多かったといいます。エクイティ ── 株式を発行して投資家から資金を集める調達方法。返済義務はないが株式=経営権の一部を渡すことになる
小平さんはエクイティ調達の経験を、毎晩悪夢を見るほど嫌だったと振り返ります。
エクイティで入れた時のことはもう毎晩悪夢を見て、あんな嫌なことはないと思ったので、もう絶対にエクイティでは調達したくないと思っています。
当時のSaaSは根拠なくバリュエーションを高く出せる時代で、高く調達すると次のラウンドが厳しくなることを学んだといいます。バリュエーション ── 企業価値の評価額。高すぎる評価で調達すると、次回の資金調達でさらに高い成長を求められ苦しくなることがある
一方で後継ぎ企業は、マーケットが縮小していても、大きな方向へリフレーミングし資金繰りさえ回れば突っ走れる楽さがあると話します。
マーケット自体がシュリンクしてるから未来はない感じだったけど、それをでかい方にリフレーミングさえすれば、あとは資金繰りがなんとかなるので突っ走っていける。
相続税20億の衝撃。後継ぎ最大のネック
台本になかったテーマとして、小平さんは事業承継に伴う相続税を切り出します。
小平さんの家では、こびら社の株を赤字が最も大きかった時に売却し、相続税をかなり抑えられたといいます。その支払い分は借り入れ、一時的に給料を上げて相殺したと説明します。
承継における株について、小平さんはおじの言葉を紹介します。
株とは金を産まず金だけかかる謎の紙だと言っていて。跡継ぎにとって株式って本当に金だけかかる謎のものだなとすごく思いますね。
桺本さんの会社ではホールディングス化で株を集約しており、最後はホールディングス側の資金で買い取る必要があると話します。そのための借入返済を頑張らねばならず、後回しにしているのが現状だといいます。
さらに小平さんは、先日会った大企業の後継者の話を挙げます。
相続税で20億払ったって言っていて。それってもう人生を破壊するから、本当に相続はどうにかしてもらわないと。
代が変わるごとに資産が半分ずつ取られると、3代で8分の1になり、増やして減らしてを繰り返す経営は難しいと指摘します。
事業を伸ばして利益を出せば出すだけ、自分が払うお金が増えるという。
小平さんは、事業承継税制が社員数の維持を求める点も問題だと語ります。
これからのAIやアンドロイド時代に、人を増やさないと適正性が失われるってもう無茶苦茶だと思っていて。
鹿児島の労働人口が2040年ごろに大きく減る見通しのなかで人を増やす要件は無理があるとし、身売りやスモールIPOに流れかねないと危惧します。事業承継税制 ── 後継者が株式を引き継ぐ際の相続税・贈与税の納税を猶予する制度。雇用維持など一定の要件を満たす必要がある
地域にお金を流し続ける仕組みをどう作るか
最後は明るい話題として、地域ファンドやソーシャルインパクトの取り組みを聞きます。
小平さんは、鹿児島県日置市のような地域を良くするビジネスの資金をどこから出すべきかを議論していると話します。ソーシャルインパクト ── 事業を通じて社会や地域に与える良い影響。利益だけでなく社会的な成果を重視する考え方
企業が収益の一部を地域に投資する形は行っているものの、持続性がなく社長が代われば終わってしまう点が課題だといいます。
そこで、より続く仕組みづくりを考えていると語ります。その一つが休眠預金の活用です。
相続人が不明のまま国に没収されるお金が年間200億ぐらいあって、それを使って社会にとって良いことをしようという団体があって、それを使った地域ファンドも結構増えてきています。[[休眠預金::長期間取引のない預金。一定の手続きを経て、民間公益活動の資金として活用される仕組みがある]]
小平さんは、社債やDAO的な手法、助成金や投資的な資金の設計が今の興味の中心だと話します。DAO ── ブロックチェーンを使い、中央の管理者なしに参加者で運営する分散型の組織。地域コミュニティ運営などへの応用が模索されている
こびらがまた赤字になったとしても、地域のことに対してお金が流れ続ける仕組みをどう作るのか、というのが今の興味関心の中心ですね。
週末には沖縄のカンファレンスに参加し、先行する事例を学んで鹿児島やローカルへ横展開したいと語ります。
桺本さんは、地域に貢献する取り組みには相続税の減免があってもよいのではと応じます。
そういうのにお金を入れるんだったら、相続で減免してくれたりすればいいのにな。
まとめ
第9回は、後継ぎ経営者の視点から中小企業の財務のリアルが語られました。赤字期の資金繰り、地銀との関係、金利上昇下の調達、そして相続税や地域ファンドまで、きれいごとではない現実と向き合う姿が印象的な回となりました。
- 社長になると、他人のお金から自分のお金へと財務への覚悟が変わる
- 3期赤字ではメガバンクが引き、地銀の対応も分かれる。支えてくれるメインバンクとの関係が要になる
- 金利上昇下では借入を抑制し、補助金・運用・M&Aへと資金の考え方が変わる
- 手形廃止や支払いサイト短縮など、法律の変化が中小企業の資金回収を改善している
- 相続税と事業承継税制は後継ぎ最大のネックで、地域への資金循環の仕組みづくりも今後の課題





