雑談から始まる、アトツギ甲子園振り返り
この回は「もう雑談みたいなもの」という前置きから始まります。柳本さんはアトツギ甲子園をYouTubeの追っかけ再生で視聴し、小平さんはその後の合宿にも参加していました。
まず話題になったのは、決勝進出者などを対象にした経営合宿でした。3月14日ごろに開催され、小平さんはメンターとして参加したそうです。
決勝進出者だけじゃない、充実の経営合宿
この合宿は決勝出場者だけのものではなかったようです。準ファイナリストや過去のファイナリストまで参加できる、幅広い顔ぶれの集まりでした。
今回3月の14日ぐらいだったかな。アトツギ甲子園の決勝進出者と地方大会の準グランプリの人らまでを対象にした合宿があって、すごく充実した内容でした。
メンター陣も豪華な顔ぶれだったと小平さんは話します。GOGOのミウラさんをはじめ、各分野の後継ぎ経営者が集まっていました。
一人30分のメンタリングもやったし、最後は飲み会みたいな場があって、夜の11時ぐらいまでひたすら語るみたいなやつもプログラムの中にあって、結構充実してましたね。
ピッチコンテストで終わらず、その後も学び合える機会があることに、柳本さんは強く反応します。
普通ってピッチコンテストで終わるのが普通だと思うんですけど、そこからまたいろんなメンターが来てワイワイできる機会、めっちゃいい。僕もめっちゃ行ってみたいな。
応募するだけで得られる、意外なメリット
合宿で小平さんが知って驚いたのが、アトツギ甲子園に応募すること自体のメリットでした。ピッチの結果とは別に、本業にとって美味しい制度が用意されているのです。
書類審査に通過しただけでも、ものづくり補助金とか中小企業新事業創出補助金とかM&A補助金とかの優遇措置があるんですよ。
さらにファイナリストや準ファイナリストになると、補助金の加点や重加点措置を受けられるといいます。書類審査の通過率はおよそ5割ほどで、地方大会に進めた時点で数千万単位の補助が視野に入るとのことでした。
柳本さんは、優勝したサトウさんが複数回出場していたことに触れ、こうしたメリットも継続出場の背景にあるかもしれないと補足します。
M-1にたとえる、進化したピッチの型
去年と今年を比べて、ピッチのレベルはどう変わったのか。中部地方の審査員も務めた小平さんは、戦略性が上がり「ある程度の型ができた」と感じたそうです。
その変化を、小平さんはM-1グランプリにたとえて説明します。
今まで面白いやつを決めればいいみたいなところを、令和ロマンがある程度構造をハックして二連覇したみたいな感じで、構造のハックからさらにそれを超えた佐藤くんが優勝した。すごくいい流れだなと思って見てます。
柳本さんも全編を視聴し、佐藤さんの入賞は確実だろうと感じていたと話します。見ていて勉強になり、面白かったと振り返りました。
後継ぎピッチはなぜ難しいのか
小平さんはnoteでピッチを分析していました。きっかけは、中部大会で「もったいない」と感じるピッチが多かったことです。型を整えれば良いビジネスとして伝わるのに、という思いがありました。
後継ぎの事業は、そもそも伝えるのが難しいと小平さんは指摘します。
どこまでが親がやって、どこまでが息子がやって、息子が出したバリューがどこで、そのバックグラウンドによってどのように可能性が広まるかを、ちゃんと4分間で伝えないといけないので、かなり忙しいです。
通常のスタートアップピッチが3段階で構成できるのに対し、後継ぎピッチには5〜6のステップが必要になると小平さんは分析します。
自分の経歴、マーケット、どれだけグロースするか。おおむね3段階で伝えられる
親と自分の役割の線引き、自分のバリュー、その背景で広がる可能性まで。5〜6ステップが必要で忙しい
柳本さんは、家業のリソースをどう組み合わせるかが後継ぎならではだと言います。先代と自分の代の線引きをした上で、社会課題の解決と実現可能性のバランスを取ることが大切だと話しました。
佐藤さんが勝った理由と、時間配分の妙
家業の多くは斜陽産業だと小平さんは言います。そこで重要になるのが、ビジネスモデルの再定義です。
人口減少とか時代の流れで減っている中で、そこをいかにしてリフレーミングするというか、ビジネスモデルの再定義をして、価値の与え方を変えて、いかに大きくできるか。
一方で、家業への思いは大事だが、語りすぎると後半の数字面が弱くなるという構造的な難しさがあると小平さんは指摘します。佐藤さんはその配分が巧みでした。
祖母が亡くなったというエモい部分を短く出しつつ、業界課題や自社ができる理由はあまり深掘りせずに言い切った。それが説得力を増すと同時に、後半の数字を補強する時間の確保にすごく役に立った。
その巧みさが計算なのか素なのか、小平さんは面談で本人に直接尋ねたそうです。
本人曰く「素でやりました」みたいなことは言ってるんですが、周りの人は「こいつめちゃくちゃ計算してますよ」って言ってて、どっちかはわかんなかったんですけど。
熱量は前提に。評価軸から見た勝ち筋
今回の評価軸は、実現性・社会性・資源活用・熱量・新規性だったと柳本さんは振り返ります。去年と比べて、熱量の扱いが変わったと感じたそうです。
熱量っていうところが、去年と比べて今年はもう大前提というか。そこだけをアピールするんじゃなくて「そこはあるよね」みたいな状態でピッチが進んでた。
その上で柳本さんは、佐藤さんの勝因を複数の評価軸の掛け算にあると見ています。
小平さんは、社会性も実は前提になっていると補足します。特にものづくりは、日本が生き残るために必要という文脈から一定の社会性を自然に得ているため、その説明を省いて前に進めると分析しました。
好きなピッチと、評価されにくいプロダクト改善
採点とは別に「好き」なピッチもあると小平さんは言います。重機の遊園地「重キング」など、目の前のことに全力なタイプに惹かれるそうです。
もうここ目の前しか見えてませんみたいなのがすごい好きなので、好き嫌いと採点はまた違うんですけど、多様なピッチがいろいろ生まれるのが楽しみだなと思ったりしてます。
柳本さんが個人的に好きなのは、今あるプロダクトを最大限良くするタイプでした。ただ、そうしたアプローチは評価されにくい面もあると感じています。
マーケティングだったりするので評価されないところが実際ある気はするんですけど、実際に中小企業でやるならあれがセオリーだよねっていうやり方なので、もっと評価されていいんじゃないかな。
話題は、仲が良いというアメの中村さんの決勝の様子にも及びます。中部大会では調子が良かったものの、決勝では緊張していたようだと2人は語り合いました。
自分が出るなら?後継ぎ2人のリアルな悩み
小平さんが「もし自分が出るなら」と問いかけます。柳本さんの答えは意外なものでした。
もし自分が出るんだったらどんな話します?
小平勘太 さんからの質問
会社のリソースをあまり使わないタイプなので、アトツギ甲子園は自分には向いていないと柳本さんは答えます。AIが好きで無理やり家業と合わせることはできるが、シナジーが最大限生かせない事業は作りたくないという考えでした。
小平さんも同じだと共感し、新規事業の起こし方を3つに整理して説明します。
今の事業とは全然違うことをする
既存事業を3割ほど変え、7割は今の顧客を対象に新しいビジネスをする
DXや組織変革で現状をひたすら磨いていく
そしてアトツギ甲子園の性質を、この分類で言い当てます。
2人ともシフト以外が得意なタイプだと認め合います。過去のキャリアやスキルを生かそうとすると、それが自慢っぽく見えてしまうという悩みも共有されました。
説得力を持たせるために過去にこういうことをやってましたと言うのは、あんまりここでは評価されないなと思ってて。自慢っぽくなるなっていうのが。
ロジカルに証明したくなる2人の性格も、この大会とは相性が良くないようです。
書類選考は多分受かると思うんだよね、AIで作るから。でも地方大会で敗退するタイプですね。
出場対象の柳本さんに、小平さんが背中を押す
話は柳本さん自身の出場可能性へと移ります。柳本さんはまだ出場対象で、出なければという雰囲気も感じているそうです。
小平さんは具体的な事業案まで提案します。田中製作所のプラスチック成形技術を軸に、環境改善や子ども向けの知育玩具といった方向性なら勝負できるのではないかという提案でした。
プラスチック樹脂なので、環境配慮系の樹脂を使って3Dプリンターで何かやるとか、BtoBなのでBtoC系の事業を作るとかにはなるんですけど、今から作るので多分間に合わないんじゃないかな。
今からClaudeで壁打ちすればLPくらいは作れるのではという小平さんに対し、柳本さんは案だけでは今のアトツギ甲子園は勝てないと現実的な見方を示しました。
第7回への期待。何度でも挑戦できる大会へ
最後に、来年の第7回への期待が語られます。小平さんは、イベントで「来年出たい」という声を聞くことが増えたと話します。
そういった方にはぜひ出てほしいです。壁打ちとかはメッセンジャーでご連絡いただけたら、僕の方でも対応しようかなと思っております。
小平さんは、アトツギ甲子園が一定のカルチャーになってきたと感じています。補助金の加点は親へのPRにもなり、大会のプロセス自体に価値があると強調します。
アトツギ甲子園のプロセスを経ることで、親とのコミュニケーションや、家業の棚卸し、今の事業のトレンドについて見直す機会にもなるので、良い機会だと思う。
さらに、落選しても諦める必要はないと励まします。
柳本さんもあと3年の猶予があると語り、出られそうな事業が作れたら挑戦したいと締めくくります。今回は中村さんの相談に乗るなど関わってきた経験から、来年出る人からの相談も歓迎したいと話しました。
まとめ
番外編として語られたアトツギ甲子園の振り返りは、進化した大会の姿と、後継ぎ事業ならではの難しさ、そして自分たち自身の向き不向きまで、赤裸々に掘り下げる回になりました。
- アトツギ甲子園は書類通過や入賞で補助金の加点が得られ、本業にとってもメリットが大きい
- ピッチは戦略性が上がり「型」が確立。エモさと数字の時間配分が勝敗を分ける
- 熱量や社会性は前提となり、複数の評価軸の掛け算が勝ち筋になっている
- 大会は既存事業を変える「シフト」型に向いており、出場者の適性が問われる
- 39歳まで何度でも挑戦でき、プロセス自体が家業の棚卸しや親との対話の機会になる





