前回の収録を終えて、伝統工芸ならではの悩みとは
冒頭は前回の収録を振り返る雑談から始まります。中村さんは「硬い」と言われることを気にしており、今回は緩めに話したいと語ります。
いや、硬いって言われるので、ちょっと今回はゆっ、緩めで話させてもらえたら。
中村さんはポッドキャスト出演の経験もあり、ものづくり系の番組に招かれたことがあると話します。組紐という伝統工芸的な要素を持つ事業だからこそ、声がかかったようです。
一方で、伝統工芸の世界には独特の大変さもあると言います。相続や税金、県・自治体からの認定をどう受けるかなど、話題は多岐にわたるそうです。中村さん自身は食品なので該当しませんが、家具や仏壇の跡継ぎからはシビアな話を聞いて面白かったと振り返ります。
跡継ぎ甲子園に出た、意外と不純な動機
桺本さんと小平さんが中村さんと親しくなったきっかけは、中小企業庁が行う跡継ぎ甲子園でした。39歳以下の跡継ぎ向けのピッチ大会で、中村さんは2年出場し、2年目の中部地方大会で優勝しています。
その大会で小平さんは審査員を務め、桺本さんは事前にピッチの壁打ちをしていました。二人は中村さんにとって「裏メンター」のような存在だったと語られます。
では、なぜ跡継ぎ甲子園に出ようと思ったのか。中村さんが挙げた動機は、意外にも実利的なものでした。
まず一つが新規事業のPRになるのかなと思っていたので、そこが出る第一の目的でした。本当に認知拡大が一番の目的でした。
二番目に、補助金や助成金が通りやすくなるよという話を聞いたので、その取得をしやすくするために頑張ろうというのがありました。本当にこの二つです。
小平さんは「動機は割と不純だったけど、最後なんか熱くなってたよね」と指摘します。中村さん自身も動機は不純だったと認めつつ、周囲から熱量が必要だと言われ、それをどう演出するかを相談していたと明かします。
淡々としたピッチが「じいちゃん、工夫したよ」に変わるまで
初年度のピッチは、スタートアップのプレゼンに近い、抑揚のない淡々としたものでした。地方大会で敗退した後、2年目に向けて大きく作り変えていきます。
転機になったのは、埼玉の跡継ぎである声磨きの佐藤さんとの壁打ちでした。中村さんは自社の歴史が浅いことを踏まえ、祖父の話をどう扱うかを考えます。
最初にじいちゃんの話をして、最後「じいちゃん工夫したよ」という言葉で締めくくったら、エモさを補完できるんじゃねと思って。
さらに中村さんは、締めくくりを情感で終わらせるヒップホップの手法を参考にしたと語ります。パンピーとスラックという兄弟のラッパーが、最後を家族への感謝で締める表現から着想を得たそうです。
桺本さんの壁打ちについて、中村さんは「陰で一番支えていただいた方」と振り返ります。桺本さん自身も、構成の流れやキャッチコピーの面で助言していたと語ります。
割と僕も戦略家な方なんで、このタイミングでこれを言った方がいいんじゃないかとか、エモさの演出はこうした方がいいんじゃないかとか、起承転結の違和感みたいなところを指摘してた覚えがあります。
作り直しの核心は、最初に結論を持ってくることでした。まず印象づけをして前提条件を作り、そこから戦略を立ててディテールにこだわる。最後に足りなかったのがエモさだった、という順序で仕上がっていきます。
抑揚のない淡々としたピッチ。スタートアップのプレゼンに近く、地方大会で敗退。
最初に結論を提示し、祖父の物語でエモさを補完。中部地方大会で優勝。
会場が沸いた優勝ピッチと、決勝で崩れた理由
本番では、審査員だった小平さんも心を動かされたと言います。最後の「じいちゃん、工夫したよ」というフレーズにやられ、コメントを求められた際に思わず言葉を間違え、少し泣いてしまったと振り返ります。
最後の「じいちゃん俺やったよ」で割とやられちゃって。コメントを求められて「よかったよ」って審査員が間違えて言って、ちょっと泣かすっていうね。
一方、決勝大会では思わぬハプニングもありました。開始直後、2歳になりたての娘さんが会場に響き渡る声を上げ、中村さんに飛びかかってきたのです。
僕が喋ったタイミングで娘が「オッパ〜」って大声で言って、飛びかかってきて、一気にそこで崩れてしまいました。開始3秒から5秒ぐらいの時ですね。
海外からYouTubeで観ていた小平さんは、バンコクのラウンジで笑ってしまったと話します。中村さん自身は「悪くはない」と受け止めています。
決勝で全国優勝に届かなかった理由について、中村さんは審査基準の違いを挙げます。地方大会と決勝では評価軸が変わり、そこに対応しきれなかったと語ります。
決勝大会は地方大会と審査される基準が変わるので、難しい部分があって、そこに対応しきれなかったのが敗因ですね。M1決勝でもやっぱり違うっていう。
受賞後に起きた「導入ハードルの低下」
中部経済産業局長賞を受賞したことで、中村さんの事業には具体的な反響がありました。単価が比較的低いため、大きな会社からの問い合わせがすぐ発注につながりやすいと言います。
カーボンニュートラルキャンディーの導入や、小平さんの会社との輸出に向けた動きも生まれました。中村さんが強調するのは、認知そのものよりも導入への心理的なハードルが下がった点です。
メディアに刺さる企画を逆算するPRの考え方
小平さんは、中村さんがSNSで「誰か壁打ちしてください」とあけすけに助けを求める姿と、戦略的なPRの両面を持つ点に注目します。PRが得意な理由を尋ねます。
中村さんは、拡散自体はお金をかければできると考えており、むしろどうファンになってもらうかを重視していると答えます。特徴的なのは、掲載してほしいメディアから逆算して企画を作る発想です。
例えばロケットニュースだったら取り上げてもらえるだろうという切り口で企画を考える。個別のメディアに刺さる企画を作るのを主軸に考えています。
代表例として、Instagram創業者に飴を届けたエピソードがあります。東京でInstagramが初のリアルイベントを開いた際、勝手に作った旧ロゴの飴を担当者にアポなしで手渡したところ、大変喜ばれたそうです。
その後、共同創業者の来日パーティーの土産にと依頼が入り、招待も受けます。伝統をどう守るかをInstagramで考えていると話したところ、創業者から強い共感を得たと言います。
もう一つがベッカムの息子から注文が来た話です。きっかけは、Instagramに投稿した飴の動画が1日で約300万再生された出来事でした。当時は1再生1アカウントで、コメントの多くが外国人からのものだったと言います。
妻が好きなメディアVICEに、ASMRとスライム動画に関する寄稿があったことから、中村さんはトレンドの正体に気づきます。PPAPや焚き火、石鹸を切る動画のように、言葉にできない気持ちよさを世の中が求めていると分析したのです。
その分析をもとに、映像美を意識した長尺の「飴がとろける動画」を発信したところ、今度は約500万再生に達しました。戦略的にスライムやASMRを狙った結果、ブルックリンから連絡が来たと言います。
なんか博報堂の人と話してるみたいで。アメというメディアをめちゃくちゃ得意なプランナーの人みたいな。
SNSとSEOで、資本をかけずに顧客を集める
仕事の受注経路について、中村さんはSNS経由もあると答えます。ただし着色料の関係で輸出が難しく、外国の顧客とはつながるだけになりがちで、ほぼ国内で完結していると言います。
最近のSNS経由の需要は、カバンに入らない大きさのペロペロキャンディーが中心だそうです。持ち歩く広告のように使えるため、イベンターやアパレルからの依頼が多いと語ります。
マイアメの売上や認知度が伸びた背景にも、こうしたPRの積み重ねがあります。中村さんは、当時の顧客のリピート率の高さを具体例として挙げます。
2年以内のリピート率が60パー超えてる部分もベストセールスにつながっていて、その時のお客さんがいまだに来ていただいてます。
広告代理店や企画会社からの受注は、ほぼWeb経由です。桺本さんが尋ねると、中村さんはSEOに徹底して力を入れていると答えます。一方で、Web広告はお年賀飴など季節商品を除きほぼ出していないと言います。
SEOは、妹の夫が営むグループのWeb制作会社と取り組んでいます。金太郎飴というワードが使えない事情から、それ以外の切り口で上位表示を狙う工夫をしてきたそうです。
飴オーダーメイドは確実に弊社が一位になるようにはなってます。ページ数も写真もコンテンツ量も多いので、自動的に一位になるようになってます。
桺本さんは、いいものを作れば売れるという既存のメーカーや問屋の考え方とは根本的に違うと感じたと語ります。中村さんも、いいものを作るだけでなく、発信して適切にリーチさせる設計を重視していると応じます。
ホームページには制作実績、お客様インタビュー、読み物のブログ、動画がそろっています。BtoB向けに確実に刺さるよう、決裁が降りやすくなる導線まで設計されている点が特徴です。
SEOで上位表示
飴オーダーメイドなどのワードで検索上位を取り、Web経由で流入を集める。
事例で信頼を担保
大企業のお客様インタビューを網羅的に載せ、導入の安心感を作る。
決裁を後押し
担当者が上長の決裁を取りやすいよう、コンテンツと導線を設計する。
採用も広告に頼らない、オウンドメディアの底力
制作実績やインタビューの写真には、中村さん自身が全国を回って写っています。正直あまり写りたくないものの、経営者が出た方が採用につながるという理由で出演しているそうです。
採用も、マイナビやリクナビを使わず自社で完結しています。マイアメのサービスだけで毎月1万人から1万5000人ほどのアクティブユーザーがアクセスしており、一定のファンがついていると言います。
ある程度ファンがついているので、採用を始めますと言っただけで正社員は来るような形になってます。
さらに、次回のテーマにつながる話として、オフィスを改修したことが地元採用に大きく寄与していると明かします。パートの採用に至っては、会社に募集を貼るだけで足りるレベルだと言います。
話題は桺本さん自身の会社にも及びます。正社員10人、パート9人という規模で、今は人員が足りている状況だと共有します。中村さんはマイアメの納期が短縮され、1カ月半ほどになったと伝え、桺本さんは施設オープンに合わせた発注を検討すると応じます。
桺本さんは、これが跡継ぎにとって正攻法であり、見習うべき事例だとまとめます。中村さんは、その要点をあらためて言葉にします。
そんな資本かけてないっていうのと、本当にWebに集中してSEOとどう集客するか、ターゲットのソリューションをどう満たすかに徹底的にリソースかけてる感じですね。
この回はPRを中心に語られ、次回はオフィスを銭湯風にした話や、地域との連携について掘り下げる予定だと締めくくられます。
まとめ
跡継ぎ甲子園への挑戦を入り口に、資本をかけずWebとPRで顧客と採用を集める中村さんの戦略が語られた回でした。動機は実利的でも、最後は熱量とストーリーで勝ち、その後の受注や採用の設計まで一貫していた点が印象的です。
- 跡継ぎ甲子園は認知拡大と補助金取得という実利的な動機から始まったが、最終的には熱量とエモさが勝負を分けた
- 淡々としたピッチを「最初に結論、最後に祖父の物語」という構成に変えたことが優勝の転機になった
- 掲載してほしいメディアから逆算して企画を作るのが、中村さんのPRの主軸
- Web広告に頼らず、SEOと事例コンテンツでBtoBの受注と信頼を積み上げている
- オウンドメディアにファンがついているため、広告を使わずに採用まで成立している






