ブランドとは何か。価値が高まると起こること
この回のテーマは「ボドゲ作者ブランドの統一感」です。作者や同じサークルで長く活動する上で、とても重要な考え方だとManaさんは話します。
ブランドという言葉は表現が難しく、「そもそも何なの?」と考えてしまう人も多いかもしれません。
Manaさんは、ブランドを次のように定義しています。
一発でそれがどこが作ったものなのかがわかる、似たようなものを見るとそのブランドを思い出す。そういったものをブランドと定義しています。
そしてブランドの価値が高まると、第一想起される、思い出してもらえる、気づいてもらえるという効果が生まれます。
さらに品質や「面白い」という評価が積み重なると、安売りしなくてよくなるという大きなメリットがあります。
逆に、誰が作ったのかわからないものは、どうしても価格勝負になってしまいます。これはボードゲームに限らず、世の中の小売業全般に言えることだと語られています。
高級ブランドの服とボードゲーム。原価と価格の話
今回このテーマを扱ったきっかけは、Manaさんが映画「プラダを着た悪魔2」を見に行ったことでした。高級ブランドを扱う雑誌の話だったそうです。
シャネル、プラダ、ディオールといった高級ブランドの服は、一着何十万、ものによっては何百万という価格がつきます。
ただ、原価で考えると、その辺で売っている洋服とそこまで大きな差はないはずだとManaさんは指摘します。
こだわった生地や、多くのデザイナーが関わる過程、ファッションショーのような宣伝広告費など原価はかかりますが、実体としては布とデザインの部分だと語られています。
ボードゲームも同じで、小ロットで作ると原価はかさみ、利益を取りにくい売り方しかできなくなります。
1000円で作ったものを5万円で売ることは基本的にできません。ただ、同じ1000円のものでも1500円で売る人、2000円で売る人、3000円で売る人といろいろいます。
利益を残すためにブランドが効いてくる理由
原価を下げるのは企業努力や作者のテクニックですが、利益がないと販促活動やクオリティアップ、コンポーネントの充実に回すお金がなくなります。
本来かけたかったところにお金をかけられなくなるため、ある程度の利益はしっかり残す必要があるとManaさんは考えています。
この利益を担保するために、ブランドがとても重要になってきます。
たくさん作れば原価は下げられて利益は上がる。そこにブランドが乗っかってくると、さらに利益が担保できて、より自分がいいなと思う商品作りに集中できます。
そしてブランドは、一作品ごとの面白さやクオリティだけでは成し得られないものだと強調されます。
購入する前、商品を見る前からの信頼度。「このブランドはこういう価値があるよね」という認識を、サークルや作者として徐々に高めていく必要があると語られています。
認知・信頼
誰の作品かわかり、過去の信頼が積み重なる
安心して購入
信頼があるから安心して買える
利益の確保
原価に依存しない価格設定ができる
作品への投資
コンポーネントを充実させ、次の作品に投資できる
なぜ「誰が作ったか」がわからないと評価が積み上がらないのか
まず誰が作ったのか、どこが作ったのかを認知してもらえないと、作品ごとに評価があるだけで、サークルや作者としての評価は高まっていきません。
特にインディーズでは、「面白かったんだけど、作者誰だっけ?」ということが起きがちだとManaさんは話します。
一方で、国内でブランドとして成功している例として、オインクゲームズが挙げられます。ゲームを見れば「これオインクだな」とわかるといいます。
オインクのゲームは小箱でも3000円近い価格帯があります。内容物がしっかりしているためですが、大量に生産してコストを下げつつ、ブランドを成立させていると語られています。
販売価格自体にも統一感があり、「オインクだな」というものを高めている点が特徴です。
こうして認知と信頼が高まると、新作を出したときの動きも変わります。
一つ一つのルール説明や作品の良さはもちろん伝えますが、すでにサークルや会社への信頼感ができているため、「新作が出たから買う」という動きが出てきます。
ある意味、極端な例だと、何でもいいから新作だったら買う、そういった動きも出てくると思います。
もちろん、買ってくれた人に「面白かった」と思ってもらえる作品作りは絶対に必要です。その信頼の積み重ねが、先々の新作の売れ行きにも伸びてくると語られています。
統一感の第一歩は色味とタイトルの雰囲気
ここからは、ブランドをどう統一し、高めていくかという具体的な話に入ります。
信頼を勝ち取るにはサークルとしての認知が必要で、そのために各作品の統一感が重要になります。
ただ、ゲームによって内容もテーマも世界観も違うため、全部をきっちり整えるのは難しいものです。そこで、部分的に統一していくのも十分ありだとManaさんは提案します。
一つ目の方法が色味を整えることです。たとえば「自分の作品は緑を基調にする」といった形です。
そうすると「緑色のゲームといえばあの人だよね」と思ってもらえたり、ネットショップや商品棚でパッと見分けてもらえたりします。
ただManaさん自身は、作風が作品ごとに違いすぎて色味の統一は断念したそうです。作品ごとのテーマ性を重要視しているためだと話します。
二つ目がタイトルの雰囲気で整える方法です。最初の作品は「バーストオブマナ」で、「バーストオブ」で全部統一しようと考えた時期もありました。
二作目もバーストオブなんちゃらというシリーズ化をやっていった方がブランドが高まるよねと思って考えていました。
しかし実際の2作目は「ルース」と「鬼遊灯」でした。強引に「バーストオブなんちゃら」につなげようとしたものの、作品の雰囲気に合わず断念したといいます。
ブランド化と作品のこだわりが対立したとき
統一化はした方がいいと言いつつも、Manaさんは作品の雰囲気を優先させたと振り返ります。
ここにはインディーズならではの良さがあり、自分がこだわるポイントには集中した方がいいという考えが語られます。
むしろブランド化を意識しすぎて、作品が自分の思った通りでなくなると本末転倒になりかねません。
むしろそういった信頼感、ブランドとしての信頼感は、あまりそっちに引っ張られると失ってしまう恐れもある。そういった危険性もあると思います。
それでも何かしら統一したかったManaさんが選んだのが、箱のサイズを整えることでした。
バーストオブマナ、ルース、鬼遊灯はバラバラでしたが、鬼遊灯あたりから箱のサイズをできる限り統一するよう心がけたといいます。
パッケージの見た目は違っても、箱のサイズだけは揃える。オインクも箱のサイズが統一されていて「オインクサイズだ」と感じさせる点がヒントになったそうです。
鬼遊灯、パロパロ、麒麟、セントオブジェラシーはすべて同じ箱のサイズにしています。家に並べたときにも統一感が出ると話されています。
Manaさんが使うのは一般的なポーカーサイズですが、統一の仕方は他にもあります。
- レトルトパウチの箱で毎回作る
- DVDケースで統一する
- スーパーファミコンの箱のサイズで作る
「DVDケースといえばあの人だよね」と思われるだけでも、印象は大きく変わると語られています。
イラストのテイストが揃うと何が起きるか
もう一つ強力なのが、イラストのテイストを揃えることです。オインクは箱のサイズもイラストのテイストも揃っていて、それがブランド認知に直結しているといいます。
その強さを実感した出来事として、Manaさんは電車の中吊り広告のエピソードを紹介します。
見ていたのは薄毛治療の薬の広告でした。シンプルで色がはっきりしたデザインに、アイコンがボンと置かれたパッケージだったそうです。
それを見た瞬間、あ、オインク新作出したんだ、ついに電車広告出したんだと思ってしまうほどでした。
まったく違う業界の商品なのに「オインクかな」と思わせるのは、アートワークがそれだけ明確になっている証拠だと語られます。
しかもその広告を見て「オインクやりたいな」とまで思ったといい、思い出して遊びたくなるという点でも効果があると話します。
特にアートワークを自分で作っている人は強いとManaさんは言います。外注をあちこちに分けると統一感が難しくなるからです。
自分でやっているなら、せっかくなので統一感を狙った方がいいと勧めます。パッケージの文字を置く場所やイラストを載せる場所を工夫するだけでも、統一感は出てきます。
最近勢いに乗っている例として、イブインクも挙げられます。もともと自分でイラストを作っていて統一感があり、タイトル付けもリズミカルで整っていたといいます。
さらに最近はパッケージも整えてきて、真ん中にアイコン、その上にタイトル、下にイラストという形になり、「これイブインクさんだ」と思えるほどのインパクトがあると語られています。
整えられない人でもできる統一の工夫
どうしてもパッケージやイラストを整えられない人もいます。Manaさん自身も、整えなきゃと思いつつ整えられていないと正直に話します。
そこで提案されるのが、宣伝に使う素材の体裁を整える方法です。
Manaさんの場合、SNS投稿用の宣伝バナーの体裁を揃えています。左側にタイトルとカット、右側にパッケージ画像、下側にキャッチ、そして額縁のような枠を入れる形です。
ゲームのジャンルもアートワークもバラバラになってしまう分、宣伝バナーくらいは整えようとしていると語ります。
もう一つ、ゲームマーケットなどでのブースのレイアウトも統一感を出せるポイントです。商品がバラバラでも「この作者から出ている商品たちだ」と伝われば、それはブランドになります。
ただし、イベントで伝わるのは会場に来た人だけです。だからこそ、パッケージや商品タイトルで少しずつブランドを統一していった方がいいと語られます。
最初はバラバラでも、ブランド認知が高まってきたタイミングで、過去作品を第二版のようにデザインリニューアルして一気に統一化するのも効果的だと提案されています。
利益は儲けのためではない。オインクの直営店が示す到達点
Manaさんは、前半で高級ブランドの話をしたものの、販売価格を高めてお金を儲けようという話ではないと念を押します。
ボードゲーム制作者には原価ギリギリで安売りする人が目立ち、「1000円のものが2000円で売れるかな」という感覚があるといいます。
よくわからないものにガツッと2000円以上、3000円以上を出すのは怖いですけれども、しっかりと信頼感を確保していければ、そういったこともできるんじゃないのかな。
つまり、信頼感を積み重ねることで、原価に依存しない価格設定ができるという意味合いの利益確保です。
そうしてブランドの最低限の力が高まっていけば、一発一発の作品で勝負をかける必要がなくなります。
その到達点の一例として、オインクの直営店が挙げられます。Manaさんは実際に原宿の店舗へ行き、店舗自体が「オインクって感じ」の作りだったと話します。
商品はイラストの体裁も箱のサイズも揃い、店舗が美しかったといいます。海外でも評価が高く、ボードゲームのブランド成功事例として今オインクが走っていると語られています。
Manaさん自身は、こだわりが強すぎてブランド統一化が弱いと認めつつ、やった方がいいことは重々わかっていると話します。
これから作る人は最初からブランド作りを意識し、すでに多く出している人はこれからの活動を寄せたり、過去作品の表現を見直したりして統一化を図るとよい、というまとめでした。
まとめ
ブランドの統一感は、誰の作品かをわかってもらい、信頼を積み重ねて安売りから抜け出すための土台です。色味や箱のサイズ、イラストのテイスト、宣伝バナーなど、できるところから部分的に統一していくことがすすめられていました。
- ブランドとは「一発でどこの作品かわかる」「似たものを見ると思い出す」もの
- 信頼が積み重なると価格勝負を避けられ、原価に依存しない価格設定ができる
- 利益は儲けのためではなく、より良い作品への投資に回すためのもの
- 統一は全部でなくてよい。色味・箱サイズ・イラスト・宣伝バナーなど部分的でよい
- 作品のこだわりとブランド化が対立するときは無理をせず、揃えられる要素から始める




