そもそもブースカットとは何か
今回のテーマは「いいブースカット」です。ブースカットとは、ボードゲームの祭典であるゲームマーケットのカタログに掲載される、サークルごとの展示・説明用の画像を指します。
コミケでいうサークルカットにあたるもので、ゲームマーケットに出展すると事務局から提出を求められます。
もうゲームマーケットに出展しようってなると、事務局からブースカット提出してくださいねというようなご連絡をいただきます。
サイズは決められていて、しかもグレースケール、つまり白黒での入稿が求められます。この条件が、後で触れる「作りにくさ」につながっていきます。
埋もれるブースカットに共通する落とし穴
カタログが出来上がると、Manaさんのもとにさまざまなブースカットが届きます。作品に特化したものもあれば、サークルそのものを紹介するタイプもあり、千差万別だといいます。
そうして数を見ていると、いいブースカットと、そうでないブースカットの違いが見えてくると話します。まず気にすべきは「色」です。
多くの人はカラーで作り、それをグレースケールに変換して送ります。ただ、グレースケールは黒から白までの濃淡しか表現できません。
ほんとあの水墨画のような、そんなものになります。淡い色合いのブースカットを作ってしまうと、結構目立たないというか、はっきりしないというか、そういったものになってしまう。
そのため、グレースケールで実際にどう見えるかを、自分で印刷して確認するのがよいと勧めています。
次の落とし穴はフォントサイズです。ブースカットは1つの紙面にずらっと並ぶため、小さすぎる文字は読めなくなってしまいます。
さらに、複数の作品を詰め込むと画面がごちゃごちゃし、何を見ればいいのかわからなくなります。情報量が多すぎると、そもそも読む気が失せてしまうのです。
- 淡い色合いでグレースケールにすると目立たない
- フォントが小さすぎて紙面上で読めない
- 情報を詰め込みすぎて何を見ればいいかわからない
- 世界観を知らないと理解できない押し付けになる
並んだ中で目立つかどうかは、わかりやすさと見せ方、そして魅力的かどうかにかかっていると考えられます。
「いいブースカット」を仮説で終わらせないための仕組み
とはいえ、何がいいブースカットなのかは、作り手にとってあくまで仮説にすぎません。Manaさんはブースカットを作るたびに、その答えを探していたといいます。
もういいブースカットって何なのかをみんなに選んでもらえばいいじゃんっていうような考えに至ったんですね。
そこでManaさんは、ゲームマーケットのたびにX上で「ブースカットコンテスト」を開催しています。企画投稿のリプライに、各サークルが自作のブースカットを投稿する形式です。
反響は大きく、募集投稿だけで数万インプレッション、数百のいいねが集まり、参加サークルも毎回100を超えるといいます。
優勝の決め方が、この企画のミソです。ブースカットを見た人が押す「いいね」を、そのまま投票として扱っています。
開催期間中に一番いいねを集めた人が勝ちっていう風にしております。みんなが評価をするようなブースカットって何なのかっていったものもわかってきます。
X上ではグレースケールではなくカラーで載せられるなど、実際のカタログとは条件が異なる点もあります。それでも、評価されているブースカットはいいものだろう、というのがManaさんの考えです。
優勝作「なみコレ」に詰まっていた勝ちパターン
いいねが集まる作品には勝ちパターンがある、とManaさんは見ています。2026年のゲームマーケット春のコンテストでは、つきあかりゲームズさんの「なみコレ」が優勝しました。
なお、画像はポッドキャストでは見せられないため、ManaさんのXで確認してほしいと補足されています。
Manaさんがまず評価するのは、ユーザーが知りたい要素が端的に載っている点です。1つ目が、ゲームジャンルやシステムです。
わかりやすさを優先して、こういうゲームですみたいなものがポンと1個入ってればいいんですね。それだけでちょっと興味というか理解が進む。
なみコレの場合は「セットコレクション」と書かれており、カードを集めて役を作るゲームだとひと目でわかります。
2つ目が、遊ぶためのスペック情報です。プレイヤー人数「2人から4人」、対象年齢「6歳から」がアイコン付きで示されています。
対象年齢には「子供も大人も楽しい」という吹き出しが添えられています。6歳からと聞いて子供向けすぎないかと感じる人への、うまい補足だとManaさんは評価します。
さらに所要時間「10分」も明記されています。これらが揃うことで、買いたい人かどうかの判別ができる状態になっているのです。
要素を絞るからこそ伝わる、世界観と売りの見せ方
世界観の説明も、文章を連ねずに絞られている点がいいと話します。ロゴとして使われている「なみコレ」が大きく置かれ、小さくなっても判別できるサイズになっています。
さらに「波打ち際のお宝コレクション」というサブキャッチが添えられ、世界観が伝わるようになっています。この時点で、検討には入るだろうとManaさんは言います。
そのうえで、ゲームの売りとなるシステムを1つに絞っている点を高く評価します。作り込むほど全部説明したくなるものだからです。
なみコレでは「満潮」と「干潮」が示され、満潮のときは「集めるワクワク」、干潮のときは「見つけるドキドキ」と書かれています。
多分この干潮と満潮のシステムがこのゲームのポイント、売りなんだと思います。もうすごく魅力的ですよね。
載っている情報はこれだけです。だからこそ、小さな文字ではなく、しっかり見える状態でポイントが並んでいます。
そして、より深く知りたい人向けにQRコードも載っています。紙のカタログから詳細を調べるのは面倒ですが、QRコードがあれば興味を持ったその場で読み込み、予約まで進めます。
興味を持たせてから予約へつなげる動線が、しっかり組まれているとManaさんは分析しています。
スペックで判別
人数・年齢・時間で自分向けか見極める
ジャンルで理解
セットコレクションだとわかる
売りで惹きつける
満潮・干潮のシステムで興味を持つ
QRで詳細へ
読み込んで内容を確認し予約する
キャッチコピー頼みの落とし穴と、届けるための姿勢
過去のコンテストを振り返っても、傾向はほとんど同じだといいます。大きく判別できること、スペック情報が載っていることが大前提です。
そのうえでゲームシステムの特徴を、なみコレのようにシステムで見せるか、キャッチコピーで見せるかに分かれます。
ただしキャッチコピーは、雰囲気だけ、かっこいいだけになりがちです。そうなるとユーザーはついてこられません。
よほど魅力的なキャッチコピーにしない限りは、キャッチコピーを雰囲気だけで押すのは厳しいかな。どんなゲームなのかをわかりやすく端的に伝える、それがやっぱり中途半端なキャッチコピーよりは全然いい。
世界観をモリモリに詰め込んで押し切りたくなりますが、それではユーザーが置いてきぼりになります。かっこいいと思っているのは自分だけ、という状態になりかねません。
もちろん、作ること自体が目的なら、自分がかっこいいと思う世界観でまとめてよい、ともManaさんは言います。
ただ、たくさん販売したい、広く広めたいなら話は別です。マーケティングの視点や、ユーザーの立場に立って考える姿勢が必要になると考えられます。
自分がかっこいいと思う世界観でまとめてよい
ユーザーの立場に立ち、端的に売りを伝える
コンテストが生む三者win-winの構造
このコンテストは、いいブースカットを知りたいという動機から始まりましたが、結果として複数の価値を生んでいます。
X上のスレッドを開くと、ブースカットがずらっと並びます。しかも画像だけでなく、リプライに作者が予約情報や詳細を書き込んでいます。
見る人はそれを楽しみながら、いいと思ったものにいいねで投票します。繰り返し見に来る人も多く、投稿されたブースカットのインプレッションはかなりの数になるといいます。
何万って超えるようなインプレッションを叩き出す人もいますし、何千とかも全然いたりします。ただの一位を決めようっていうコンテストの要素だけではなくて、露出を増やす、宣伝にもつながる。
つまり、答えを探す主催者、宣伝になる出展者、楽しめる閲覧者の三者にとって、win-win-winの仕組みになっているのです。
今回のナミコレ以外にも、どの作品にどれだけ票が集まったかは、市場の反響を測る指標になります。過去のコンテストと合わせて見れば、自分の作風に合った参考例が見つかるはずです。
まとめ
いいブースカットは、大きく判別できること、スペック情報が載っていること、売りを1つに絞って伝えることに集約されます。ナミコレの優勝は、要素を欲張らず、ユーザーの立場から動線まで設計した結果だといえそうです。
- ブースカットはグレースケールとフォントサイズを前提に、印刷して見え方を確認する
- 人数・年齢・所要時間などのスペック情報を、大きく判別できる形で載せる
- ゲームの売りは1つに絞り、雰囲気だけのキャッチコピーに頼らない
- QRコードで詳細や予約への動線をつくると、興味を購入につなげやすい
- Xのブースカットコンテストは、市場の反響を測る指標として過去回も参考になる



