プレイするだけでも「一つのスキル」では足りない
この回のテーマは「ボードゲームは総合格闘技」です。総合格闘技という言い方には、様々なスキルが必要だよねという意味が込められています。
その多様さは、作る側にもプレイする側にも当てはまるとManaさんは話します。
まずプレイする側から。頭がいい、交渉が上手い、といった一つのスキルだけでは、ボードゲームで勝つことも楽しむことも難しいといいます。
たとえば将棋やチェスでは、場の状況を読む力や先を見る力、論理的思考や戦略的思考が求められます。
一方で、相手の手札を読み、ブラフで有利に進めるような心理戦のゲームもあります。
さらに大喜利のようなパーティーゲームでは、場を盛り上げる力やアイデア、幅広い知識が生きてきます。
いろんな要素を駆使して遊んでいくところに、ボードゲームの良さと難しさがあるとまとめています。
一つのゲームを作るだけで、これだけのスキルが要る
これだけ種類が多いからといって、ボードゲーム作家がすべてに対応しなければならない、という話ではありません。
作家には好きなジャンルや、考えるのが得意なジャンルがあります。
それでも、一つのゲームを作ると考えただけで、様々なスキルが必要になってきます。これが総合格闘技と言われる所以です。
ボードゲームを作る人には、もともと何かしらのスキルがあることが多いといいます。ルール作りが得意な人もいれば、アートワークやデザインからボードゲームを作ろうとする人もいます。
ですが、その単体のスキルだけでは、作って売ってヒットさせることはなかなかできない、とManaさんは指摘します。
一つのゲームを作る過程だけでも、複数の作業があります。
ルール作り
そもそものゲームのルールを設計する
アートワーク
パッケージデザインやイラストをつくる
説明書
正しく遊べるように内容を伝える文章を書く
説明書がなければ遊べないため、説明書作りも必要になります。
そこでは、ルールを正しく遊ぶ人に伝える、分かりやすい文章の力が求められます。
「文章が書ける」でも足りない、3つのライティング
文章の力といっても、ボードゲーム制作では一種類では足りません。
説明書ではテクニカルライティング、つまり説明のしやすさや分かりやすさが重視されます。
一方で、テーマやアートワークと連動した世界観を訴求するには、より文学的・芸術的な表現のライティングが必要になります。
同じ文章でも、ここまでで方向性の異なる2つの力があることになります。
さらに「売る」という段階になると、もう一要素が加わります。
文章私書けるんだよっていう人だったとしても、結構パターンがもうまずこの時点で3つあるんですね。
説明書向け。正しく遊べる分かりやすさを重視
世界観の訴求向け。魅力的に感じさせる表現
3つ目が、キャッチコピーや宣伝文句、セールスレターといった売り文句の力です。
文章が書けるという人でも、この時点で用途の異なる3つのパターンがある、というわけです。
売る段階で一気に増える、宣伝・販売のスキル
さらにブログなどで宣伝するなら、コピーライティングだけでなくブログ向けの文章スキルも要ります。
宣伝には写真も撮れたほうがよく、写真のスキルも挙げられます。
加えて、世の中の市場動向を察知し、どう情報を届けるかを考えるマーケティングの力も必要になってきます。
今はインターネットでの宣伝が大前提のため、SNSマーケティングや、SNS投稿の企画力も求められます。
動画マーケティングも効果的なので、撮影・編集・サムネイルデザインといったスキルも関わってきます。
ここまで挙がった宣伝・販売まわりのスキルを、Manaさんは次々と列挙しています。
- コピーライティング・ブログの文章スキル
- 写真の撮影スキル
- マーケティング・SNSマーケティングの知識
- 動画の撮影・編集・サムネイルデザイン
- イベント販売でのコミュニケーション・営業スキル
- ルールを説明するコーチングのようなスキル
イベントで販売するとなると、コミュニケーションスキルや営業スキルが必要ですし、人にルールを説明するコーチングのような力も求められます。
さらに広めようとすると、問屋との交渉やBtoBの営業活動も出てきます。
自らボードゲーム会や大きなイベントを主催して顧客を集めるなら、イベントの企画力や設営の力まで必要になります。
ボドゲに限らない――インディーズは「個人の社長」
思いつく限り並べただけでも、一つの作品を売るには大量のスキルが必要になります。
すべてに強いのが理想ですが、誰にでも得意分野と苦手分野があります。
それでもインディーズは、ある程度は自分の力でやっていくしかありません。もしくは、それぞれの力を持つ人が集まり、サークルとして団体で動くやり方が主流だといいます。
何が総合なのかというと、ビジネスで捉えれば、ものができて売れていくまでの流れ全てだ、とManaさんは説明します。
もっとも、これはボードゲームが特別なわけではありません。インディーズで何かを世に販売する業種は、そもそも全部そうだといいます。
たとえばアクセサリーのハンドメイド作家でも、デザイン、商品企画、SNSでの撮影・販売と、全部が必要になってきます。
個人で動くなら、作って売れていくまでを、ある意味全部自分でやり、全部勉強する必要が出てきます。
外注に発注する場合でも、上がってきたものの良し悪しや効果を判断できる目が、どの分野についても必要になります。
だからこそ、個人の社長ぐらいな気持ちで挑んだ方がいいとManaさんは話します。そこにはお商売の基本が凝縮して詰まっているといいます。
規模が増えれば、この部分は人に頼もうと少しずつ人が増えていく。それが理想の形だと考えられています。
娘とのボドゲ活動から見えた「学びの多さ」
ボードゲームには、印刷会社への発注という経験を積める良さもあります。
小ロットなら大きな金額はかからず、小資本でも始められます。様々なビジネスの流れをつかめる点が、インディーズ活動の楽しさだといいます。
Manaさんがこの話をしたのは、娘と一緒にボードゲーム活動をしているからでもあります。
第一作目の「バーストオブマナ」は、娘が考えたルールがもとになっています。モックのプロトタイプを作って遊んでみたら面白く、製品化しようと始めたのが活動のスタートでした。
どうせ作るなら売らなきゃね、と考え、ものを売る経験や一緒に考える作業を娘とやっていきたい、という思いがあったといいます。
初めそのくらいの気持ちでやったんですけども、知れば知るほどめちゃめちゃ勉強になるなって思っています。
印刷会社との交渉や、箱の仕様の相談も娘と一緒に行い、あれこれ決めているそうです。
デザイナーに発注して上がってきたものについても、どうチェックバックを返すかを娘と議論しているといいます。
ビジネス的な経験もできて、娘にとって良い経験をさせられているのではないか、とManaさんは振り返ります。
他の業種の考え方も見ると、もっと勉強になる
ボードゲームを作る人は、若い人から年配の人まで年齢層が幅広いといいます。
そこでManaさんが勧めるのは、自分のスキルをどう伸ばすかだけでなく、他の分野・他の業種ではそのスキルをどう考えているかも見ていくことです。
特に、もともと違う業界で働いていた人や、すでに力がある人がボードゲームを作るパターンは多いといいます。専業の人は少なく、普段は別の仕事をしながら、その力をもとに個人で活動する形もあるためです。
Manaさん自身、DiscordやX、ツイキャスなどで、みんなの作品やそれに対する思い、考え方を読むのが好きで、とても勉強になると話します。
ゲームルールだけでなく、なぜそうしているのか、どうしてその活動をしているのかという背景を気にしながら見ると、学びが多いといいます。
本当なら一つ一つのスキルの向上方法も話したいものの、総合格闘技ゆえに、スキルの伸ばし方や正解は人それぞれで一概に言えない、とも述べています。
「これしかできない」という状態だと難しく、突出したスキルで周りに認められバックアップされる人でない限り、大半はそうはいきません。
ビジネススキルは様々なものに転用できるため、総合的に全部のスキルを高めていこうぐらいな感覚で挑んでほしい、というのがこの回のメッセージです。
まとめ
ボードゲームが総合格闘技と呼ばれるのは、プレイにも制作にも多様なスキルが必要で、さらに一つの作品を売り切るまでには、ルール・アート・文章・宣伝・営業まで幅広い力が求められるからです。Manaさんは、インディーズ活動を個人の社長のような気持ちで捉え、他業種の考え方も学びながら総合的にスキルを高めることを勧めています。
- プレイも制作も、一つのスキルだけでは足りず多様な力が求められる
- 一つのゲームを作り売るには、ルール・アート・複数種類の文章・宣伝・営業など大量のスキルが要る
- これはボドゲ特有ではなく、インディーズで作って売る活動全般に共通する
- 外注しても良し悪しを判断する目が必要で、個人の社長のような姿勢が役立つ
- 他業種の考え方や活動の背景まで見ると学びが増え、総合的にスキルを高める意識が大切





