試遊とは何か、なぜボードゲームで重要なのか
今回のテーマは「試遊」です。試しに遊ぶと書いて試遊と読みます。
試遊に近いものは世の中に広くあります。食べ物なら試食、音楽なら試聴、家電なら販売店での試用などです。ボードゲームでも、試遊はとても重要な位置づけにあると考えられています。
ボードゲームは、パッケージを見ただけでは実際に遊んで面白いかどうかがなかなかわかりません。説明書を公開している作者もいますが、読むのと遊ぶのとでは全然違うと話されています。
かといって、とりあえず買って遊ぶのも難しくなっています。最近のボードゲームは安いものでもなく、色々買ってガンガン遊ぶのは簡単ではありません。だからこそ試遊が重要なポジションを持つ、というのが出発点です。
「面白そう」だけでは続かない、口コミが持つ強さ
Manaさんは、そもそもボードゲームをどう売っていくかにも焦点を当てて話を進めます。ボードゲームの種類が少なかった頃は、買って遊ぶのが主流でした。選択肢が少なかったからです。
今はボードゲームがたくさん出ていて、どれを買うか悩ましい状況です。そこで重要とされているのが、面白いというよりも「面白そう」と思ってもらえるかどうかです。宣伝、キャッチコピー、セールスレター、見せ方、デザインが大事だと言われています。
ただし、宣伝で面白そうと思って買ったのに面白くなかった、となると問題が起きます。次も同じ作者から買おうとは思いにくく、友達に勧める気持ちも起こりにくいからです。
一方で、実際に遊んでとても面白いとなると、これはとても強いと話されています。
説明書を見ただけではわからない、面白そうと思っても自分に合うかわからない。そういうときに、実際に遊んだ人の声はとても重要になります。
だからこそ、いかに口コミを増やし、SNS上で遊んだ人の声を目にしてもらえるかを考える必要がある、と整理されます。
遊んでもらうジレンマを打開する「試遊」
ここで一つのジレンマが生まれます。たくさんの人に遊んでもらえれば口コミも増えますが、遊んでもらうには買ってもらう必要があり、買ってもらうには遊んでもらう必要がある、という順繰りの構造です。
それを打開するのが試遊だ、というのがこの回の核心です。
買うとなると高額なお金を出す必要があり、遊ぶためのハードルはとても高くなります。一方、試遊は基本的に無料でやっている人が多いと話されています。
購入しなくても実際に遊べて、遊んだ結果を人にも共有できる。試遊は買う人にとっても、広めたい製作者にとってもウィンウィンな試みだと考えられています。
だからこそ、売る前からたくさん遊んでくれる人をいかに増やせるかがポイントになり、遊ぶハードルをどんどん下げていく必要が出てきます。
リアル試遊会の効果と、その限界
ボードゲーム界隈では試遊が活発で、試遊会があちこちで行われています。一番大きいものとして、ゲームマーケットの前に開催されるフォアシュピールが挙げられます。
フォアシュピールは販売ではなく試遊オンリーのイベントです。参加すれば新作を遊べますし、出展すれば事前にたくさんの人に遊んでもらってゲームマーケットに挑めます。
ただし、リアルの試遊には限界もあると話されています。ボードゲームは対面のコミュニケーションツールで、人数を揃え、同じ場所に集まり、1つのゲームに少なくとも30分ほどかかるからです。
仮に30分区切りの4人プレイで考えると、その30分で4人しか遊べません。1時間で8人、2時間で16人という計算になります。
そうすると、試遊会で遊んでくれた人が全員買ってくれたとしても、大ヒットには繋がりにくいと語られます。遊んだ人がSNSで告知したり誰かに紹介したりすれば広がりますが、時間もかかり、分母としては少ないという見方です。
試遊会に来られない人へどう届けるか
リアルの試遊会には、参加できる人が限られるという問題もあります。特に地方や会場から遠い人は、なかなか参加できません。
ゲームマーケットに遠征してドキドキしながら買う人もいれば、そもそも参加できず通販で買うしかない人もいます。そうした人にゲームの情報を届けるとなると、説明書ではイメージが湧きにくいと話されています。
そこで動画で遊んでいる雰囲気を見せる方法もありますが、限界もあります。インフルエンサーを含め、動画では楽しそうに遊んでくれるものの、自分や自分の仲間の環境で盛り上がれるかどうかはイメージでしかないからです。
だからこそ、地方の人でも試遊できて、面白かったら通販で買うようなスキームを作れないか、と常々考えてきたと語られます。もっと手軽で、分母の垣根がなく、たくさんの人が試遊できる環境として浮かぶのがオンラインです。
オンライン試遊という選択肢
ボードゲームはアナログや非電源のイメージが強いものですが、今の時代、インターネットは強力なツールになり得ると話されています。オフラインでしかできないものもある一方、オンラインでもできるゲームはたくさんあります。
オンラインでボードゲームができるツールとして、ココフォリアや、最近ではユノナリウムコネクト{要確認: ユノナリウムコネクト}といったものが挙げられます。作者が作ったカードのデザインや駒を配置し、オンラインで友達とつなげて遊べるものです。
他にもテーブルトップシミュレーターが有名です。Steamで買え、物理演算を内蔵しているため、カードゲームだけでなく駒を使ったゲームも再現できます。積み上げるゲームで、バランスが崩れると倒れる、といった挙動もオンラインで表現できます。
駒に触れる感覚や所有感、顔を合わせて遊ぶ体験が得られる。ただし人数・場所・時間・製品数に限りがある
遠方の人とも同時に遊べ、分母が無制限。1つ作れば何人でも試遊でき、製品を消費しない
オンラインで遊べる状態を作れば、試遊会に参加できない遠方の人にも試遊のアプローチができます。しかも分母が無制限で、離れた人とも同時にできる点が強いと話されています。
製品数の壁とオンラインの強み
リアルで試遊を同時にたくさんやろうとすると、製品自体もたくさん必要になります。超大量に刷っている制作者は少なく、小ロットの場合、売る用とプロモーション用のバランスが重要になります。
プロモーションに製品を使いすぎると、売るものがなくなるという事態に陥ってしまいます。100人に同時に試遊してもらおうとすれば、100製品ほどが同時に必要になります。
一方でオンライン版なら、1個作れば何百人でも何千人でも、それを使って試遊してもらえます。無料で試遊してもらうことを考えても、1個作って展開するコストならかけられる、という考え方です。
発売後も試遊を続けるという発想
試遊が一番重要になるのは発売前だと考えられがちです。遊んでみて、発売されたら買う、という流れが多いからです。
ただしManaさんは、試遊は発売後も続けていいのではないかと思い始めていると話します。無料で提供すると実物が買ってもらえなくなるのでは、という声もあるだろうと想定した上で、次のように語られます。
遠方の人と会わずにできるのはオンラインの利点ですが、駒を触っている感覚、物を所有している満足感、友人と顔を突き合わせて喋りながらできる体験を得るには、実物の製品が欲しくなると話されています。
そのため、オンラインで無料配布しても、実物の売り上げに悪影響は起こらないのではないか、という見立てです。
むしろ下手に隠して、買って初めて面白いかどうかを繰り返させるよりも、遊べる環境を用意して、面白かったら実物を買ってもらうスキームの方がよい、と整理されます。分母が大きく、場所の問題もないため、通販向けにもイベント向きにも合うという考えです。
旧作についても、新作が出れば告知は新作に向かい、すべてを平等に告知し続けるのは不可能です。だからこそ旧作は、告知宣伝よりも口コミの広がりに舵を切った方がよく、無料のオンライン試遊を広める意味があると語られます。
最強の宣伝は「たくさん遊んでもらうこと」
リアルの試遊会にはできる限り参加しつつ、離れた人やいつでも遊びたい人向けにオンライン版も用意する。とにかくいろんな人にまず遊んでもらうことが、ある意味で最強の宣伝だと話されています。
地道な活動ではありますが、じわじわ効いてくる、という見方です。謳い文句が良くてバンと売れるのではなく、本当に面白かったというボードゲームの価値を元に広がるものです。
遊んでもらうための工夫として、「遊んでください」という告知だけでなく、作者自ら「一緒に遊ぼう」と誘ってしまう方法も挙げられます。時間を決めて一緒に遊ぶ人を募集するやり方は、Xやグループラインでも見られると話されています。
一度遊んだ人は、オンライン版で他の人を誘って遊べるようになります。そうして徐々に輪を増やしていくやり方がよいと語られます。
VTuberにも届く、オンライン試遊の副次的効果
副次的な効果として、ボードゲームVTuberの存在が挙げられます。実写で遊ぶインフルエンサーだけでなく、最近はボードゲームVTuberも増え、活発に活動していると話されています。
リアルのものだけだと、手元が映ってしまうなどの理由でVTuberはプレイしにくい面があります。オンライン版を用意しているだけで、VTuberに紹介してもらえる可能性が高まり、宣伝や告知の間口自体も広がるという見立てです。
だからアナログゲームだからとオフラインだけに固執するのではなく、オンライン版にも積極的に手を出していくのがよいと考えられています。
まとめ
ボードゲームを広めるには、宣伝だけでなく試遊を駆使し、買ってもらう前にたくさんの人に遊んでもらう環境づくりが必要だという回でした。対面のリアル試遊が最強である一方で参加者は限られるため、いつでもどこでも遊べるオンライン版も併せて用意するとよい、という考えが示されています。
- 試遊は、買う人にも広めたい製作者にもメリットのあるウィンウィンな試み
- リアル試遊会は効果が高い反面、人数・場所・製品数に限界がある
- オンライン試遊なら分母が無制限で、遠方の人とも同時に遊べ、製品を消費しない
- オンラインで遊んで面白ければ実物が欲しくなるため、発売後や旧作にも有効
- 最強の宣伝は、たくさん遊んでもらって口コミを広げること

