安くすれば売れるのか、という問い
この回のテーマは、ボードゲームの販売価格が購買にどう影響するのかです。売れ行きと価格の相関関係について考察されます。
Mana(マナ)さんによると、他の作り手の頒布価格を見ていると、あえてすごく安くしようという動きが見受けられることがあったといいます。これがきっかけで、価格戦略を取り上げることにしたそうです。
世の中で売られているものは、何で勝負するのかがそれぞれ違います。品質やブランディングで勝負するものもあれば、安ければいいだろうという動きもあると指摘されています。
もちろん、お客様に安く届けるために安く作る努力は必要なポイントです。ただし、安くすればそれで売れるのか、という点には疑問が投げかけられます。
買う理由として「安い」は一つの要素かもしれません。しかしゲームとしての面白さやテーマ、アートワークの魅力など、買うか買わないかを判断する基準は他にもたくさんあると話されています。
安さっていったものを売りにしてしまうと、それはゲームとしてどうなのかっていったところが結構あやふやになってしまいがちです。
安さより「高すぎると売れない」が問題
結論として、安くすれば売れるかというと、そうでもないとMana(マナ)さんは考えています。かといって高くても大丈夫かというと、それはそれで問題があるといいます。
ポイントは、安くすれば売れるというより、高すぎると売れないという点です。内容から逸脱した価格帯だと、当然売れないと整理されています。
例えばカードが3枚しか入っていないのに5000円で売れば、明らかに高い感じがします。逆にカードが100枚ほど入り、木駒もたくさん入って3000円や5000円なら、そこまで高い感じはしないと具体例が挙げられています。
さらに、価格帯のイメージは商品そのものの見た目でも決まると指摘されます。ここで言っているのはゲームのルールやクオリティではなく、パッケージなどの商品自体の作りです。
トランプで使われるようなキャラメル箱なのか、それとも蓋と身が分かれた化粧箱なのか。こうした内容物や作りで、ある程度の価格帯のイメージがついてしまうといいます。
キャラメル箱のトランプに5000円なら高いと思われますが、化粧箱に部材がたくさん入っていれば割安感が出ます。ただし、内容物がリッチだからといって無理して安くしても、それで売れるようになるかは微妙だと話されています。
安いから欲しくなるわけではない
価格的なハードルは下がるかもしれませんが、そこまでの効果はないとMana(マナ)さんは見ています。
その理由の一つが、インディーズ界隈の事情です。市販の流通しているボードゲームに比べると、インディーズは全体的に価格が高い傾向があります。
小ロットであることや、製造費がどうしても高くなることから、販売価格はある程度高くなります。そのため、そもそもコスパはそこまで重視されていない世界だと説明されます。
もう一つの理由が、安いからといって欲しくなるわけではない、という買い手の心理です。アートワークが魅力的だ、面白そうだと思えれば、安いから買うわけではありません。
逆に、その部分が微妙なら、安くても買わないとMana(マナ)さんは言います。面白くもなさそう、アートワークも魅力的ではないものは、安いからといって手に取られないというわけです。
たとえ1000円であろうが500円だろうが、もういらないものはいらないわけなんですよ。
ボードゲームを買う人は、最終的に遊ぶことをゴールにしています。面白くなさそうなものは、買っても家で積んでおくだけになり、限られたスペースを圧迫して邪魔になってしまうという指摘です。
無理な安売りが利益を圧迫する仕組み
無理して安くしたときの弊害として、利益が取りにくいことが挙げられます。安売りをすると利益が圧迫され、その分だけ販売しなければいけない個数が増えていきます。
Mana(マナ)さんは具体的な数字で説明します。1000円のものを100個売れば10万円の利益ですが、5000円の商品なら20個で同じ10万円になります。
100個売る必要がある。数を売る分プロモーションの負担が大きい
20個で済む。刺さる層を見つけられれば達成しやすい
100個売るのと20個売るのとでは、販売する個数が少ないほうが楽です。販売価格は、必要な購買数や損益分岐点にダイレクトに影響すると整理されています。
そのため、たくさん売れましたと言っている人でも、1000円や500円と価格を無理している場合は、なかなか利益につながらず、次につなげるのも大変になると話されています。
薄利多売はなぜ難しいのか
数を売るには、プロモーションにも相当力を入れなければなりません。手に届く人数を増やすには、その人たちに情報を届ける努力がかなり必要になります。
一方、5000円のものを20個なら、それに刺さる層を20人見つければクリアできます。刺さる層を100人見つけるのと比べると、見つける手間そのものは大きく変わらないと指摘されます。
つまり、安い価格帯では販売数が増える分、プロモーション費用もかさんでいきます。ビジネスの世界でも、高価格帯を少数売るのと薄利多売を比べると、薄利多売のほうが圧倒的に難しいとされています。
なかなかそれ(薄利多売)を安定的に売り続けるっていったものも難しいです。
高額商材は、刺さる人を見つけるためにできるだけ低燃費で動き出し、売れたらペイできるという形にできます。ビジネス的にはこちらのほうが楽だと言われています。
ただし世の中で目に触れるのは薄利多売の戦略が多いため、ボードゲームを作って売ろうと考えると、それを参考にして薄利多売へ向かってしまう人が多いと注意が促されます。
どうしても安さを売りにするなら
では価格を売りにしたい場合はどうすればいいのか。Mana(マナ)さんは、特別感を出すとよいと提案します。
例えばイベントで値引きをする、予約した特典はさらに安くなる、といった形です。ゲームマーケットに来てほしい、その中から予約もしてほしいという狙いがある場合です。
すでに欲しいと思っている人を、より離さないための施策なら、価格戦略としてありかもしれません。しかし定価自体を下げるのは、自分を苦しめるだけだと話されています。
結局は市場価格に合わせるのが正解
欲しいものは欲しいが欲しくないものはいらない、逸脱して高いと逆に売れなくなる。この両方を踏まえると、どうすべきか。答えは市場価格に合わせることだと整理されます。
Mana(マナ)さんが挙げる価格帯の目安は、キャラメル箱のものでおよそ1000円から2000円、化粧箱に入っているもので2000円から3000円ほどです。ボリュームゾーンはこのあたりだといいます。
| 箱のタイプ | 価格帯の目安 |
|---|---|
| キャラメル箱 | 1000〜2000円 |
| 化粧箱 | 2000〜3000円 |
市場価格から1000円安くしても、そこまで目立たないとMana(マナ)さんは言います。通常2500円で売るような化粧箱のものを1000円にしても、安いなと思われる程度だというわけです。
それなら市場価格に合わせて2000円で売るほうがよいと考えられています。1000円と2000円では売上が倍ほど違い、販売しなければいけない人数も、例えば100人から50人へ下がるからです。
仮に2000円で50人に売れるとして、それを1000円に下げたところで、残りの50人がその値引きを理由に買ってくれるかというと、微妙だと話されています。
原価計算と、上げるという選択肢
市場価格に面白さや工夫、ブランディングが乗ってくると、逆に販売価格を上げられるとMana(マナ)さんは考えています。
ボードゲームを作るコストは、印刷や製造費だけではありません。プロモーション費、アートワークやデザインにかかるお金もかかってきます。
本来は、デザイナーにいくら払ったか、広告宣伝費を何パーセント確保するか、販管費がどれくらいかかるかを計算して価格を決めるべきです。ただ、そこまでしっかりやるのは難しいと率直に語られています。
そこで、計算に慣れていない人は市場価格に合わせるのが一番よいとされています。もし市場価格に合わせて原価が圧迫するなら、原価を安くする工夫を再検討するか、内容物がしっかりしているはずなので販売価格を上げられないか検討すべきだと提案されます。
赤字覚悟の宣伝より、魅力を伝える
市場価格という妥当な水準があるにもかかわらず、たくさん売りたいから安くするのは悪手になってしまうとMana(マナ)さんは指摘します。これは多くの人がやりがちだといいます。
赤字覚悟でいくらで出します、実質赤字ですがいくらで出します、といった売り文句の投稿を目にすることがあるそうです。しかし、それを見たからといって欲しくなるものではないと話されています。
そんな赤字覚悟でいくらですって言うぐらいであれば、ほんと魅力的なキャッチコピー一つ足した方が売れ行きは伸びると思います。
安さを売りにすることは、この価格でも欲しいと思ってもらえるかという挑戦から逃げているようなイメージがある、とMana(マナ)さんは表現します。
長く続けるためにも、安売りはせず、面白いボードゲームを作り、みんなに欲しいと思ってもらえるものに真摯に向き合うべきだと語られます。安売りは、価格でも欲しいと思わせる挑戦からの逃げだという整理です。
製造数と価格は連動している
いくらで売るかよりも、何個売れないと厳しいのかが大変なポイントになります。損益分岐点は、販売価格や製造数を決める前に気にしておくべきだと話されます。
もっとも、これは実際に作って売ってみないとわからない面もあります。Mana(マナ)さん自身も、何個作るかは毎回悩ましいそうです。
Mana(マナ)さんは、作る前から「こんなゲームを作るよ」「デザインはこんな感じだよ」と投稿しているといいます。早めのプロモーションであると同時に、反響を見る目的もあるそうです。
アートワークが良く魅力的なときは、出しただけで反響があります。ゲームの概要を伝えただけでも注目されることがあり、その反響を見て、これまでの実績をベースにしつつ製造数を調整していると説明されます。
販売価格は原価に、原価は製造費に、製造費は何個作るかに影響します。これらは意外と連動していると整理されています。
理論で決めた後はいろんな調整をする、考えを行ったり来たりさせながら、最終的な着地点を決める、そういった動き方がほとんどだと思います。
割高に見えるなら、価格ではなく問題を直す
正規の価格で割高だと思われてしまうものは、何かしら問題を抱えているとMana(マナ)さんは考えます。化粧箱で内容物もそれなりなのに高いと思われるなら、原因が別にあるということです。
そこで価格を下げるのではなく、その問題を解決すべきだと主張されます。例えばデザインが手書きで白黒だと、カード枚数があっても素人感が出てしまいます。
箱も、化粧箱ではあるものの、その辺で買ってきたものを組み合わせただけに見えてしまう場合があります。こうした点は、安くすれば解決する問題ではないと指摘されます。
だからこそ、市場価格に合わせても高いと思われない、納得感のあるものにするにはどうすればいいか、そこに目を向けるべきだとまとめられています。
まとめ
ボードゲームは安ければ売れるわけではなく、むしろ高すぎると売れないというのがこの回の要点です。無理な安売りは利益と販売数の両面で自分を苦しめるため、市場価格に合わせたうえで魅力や面白さで勝負することが勧められています。
- 安くすれば売れるわけではなく、内容から逸脱して高いと売れなくなる
- 欲しいものは欲しく欲しくないものはいらない、安さは決め手になりにくい
- 薄利多売はプロモーション負担が大きく、高価格帯を少数売るほうが楽
- キャラメル箱は1000〜2000円、化粧箱は2000〜3000円が目安で、市場価格に合わせる
- 割高に見えるなら価格ではなくデザインや作りの問題を解決する





