ボードゲームの印刷はなぜ高いのか
ボードゲームを作るとき、多くの人はボードゲーム専門の印刷会社に発注します。ただ、この印刷は相当お金がかかるとManaさんは話します。
印刷費が高いと原価が上がり、販売価格や利益率にも影響します。そのため、どれだけ安く作るかが制作の工夫どころになります。
特にインディーズ界隈では、長くやっている人ほど安く作る知見を溜めていて、コストを抑える方法を学んでいくとManaさんは説明しています。
そんな中で話題になるのが、ボードゲーム用のカードとしてではなく、世の中に出回っている名刺の印刷を活用するという方法です。
名刺印刷が安い理由と、そのメリット
名刺印刷が安いのは、名刺が超広く一般的に使われるサイズだからだとManaさんは説明します。特注品ほど高くなるのがビジネスの常で、その逆が名刺です。
ボードゲーム制作者だけでなく、ビジネスパーソンも広く名刺を印刷します。需要が多いぶん、印刷会社自身が安く作る工夫をして対応してくれるわけです。
具体例として、プリントパックや名刺印刷.comといった会社の費用が挙げられました。名刺の印刷は100枚で数百円程度で作れることもあるといいます。
名刺を印刷するところの費用を見ると、100枚で数百円で作れたりするんですね。ボードゲーム専門の会社に頼むと、その安さは出せないと思います。
最大のメリットは、やはり価格です。よくあるのは100枚が1ロットというパターンで、それが数百円、400円ほどで作れることもあります。
カード1枚あたりの原価が4円ほどで済むのは、大きな強みだとManaさんは話しています。
名刺は「同じデザインを100枚」が基本という盲点
使えそうに見える名刺印刷ですが、製造の仕方がボードゲーム専門の印刷会社とは違います。ここが盲点になりやすいとManaさんは指摘します。
ボードゲームの1作品では、カードの絵柄が複数種類になります。トランプなら53枚がすべてバラバラの絵柄です。
ボードゲームの印刷会社は、こうした様々なデザインをまとめて印刷することに特化しています。一方、名刺は同じデザインをたくさん印刷するスタイルです。
つまり、名刺の「100枚1ロット」は、同じデザインで100枚という意味です。トランプを名刺印刷で作ろうとすると、53種類ぶんのロットが必要になります。
53種類ということは、53個100枚のロットを作るということになります。なので5300枚とかの印刷は必要になってきます。
複数の絵柄をまとめて印刷することに特化している。作品ごと・パッケージごとに分けて納品してくれる
同じデザインをたくさん刷るのが基本。100枚1ロットは同じ絵柄で100枚を指す
小ロットで安く、は名刺印刷には向かない
名刺印刷は安く作れますが、小ロットで安く作るのには向かないとManaさんは話します。100枚より少ないと、いきなり単価が高くなってしまうためです。
1種類のデザインを100枚と考えると、絵柄がバラバラのゲームでは製造数が最低でも100個になります。100個を超えると小ロットとは言えなくなります。
ゲームマーケットで1日に100個売る人は少なく、初期製造数で多いのは50個ほどという印象だとManaさんは述べています。名刺印刷の100個は、製造数としては多めになります。
さらに、名刺はデザイン単位で納品されます。53種類を100個ぶん印刷した場合、それぞれの名刺から1枚ずつ取って1作品に組み上げる作業が発生します。
それぞれの名刺から1枚ずつ取っていって、一つの作品に組み上げる。そういった手間も注意点としてありますね。
ボードゲームの印刷会社なら、作品ごと・1パッケージごとに分けた状態で納品してくれることもあり、調合作業がとても楽になります。ここが大きな違いです。
安さの裏側にある「色ムラ」の正体
安いからと名刺印刷を選んだ人が陥りがちなミスとして、Manaさんは色ムラを挙げます。特に安いところほど色ムラが出やすいといいます。
印刷は職人の技でもあり、機械による個体差、製造時の気温、インクの種類や乗りによって、若干色味が変わります。
安い印刷会社は、日本中の印刷工場の空いている機械を使うパターンがあります。ネットでまとめて注文を受け、稼働していない工場に振り分けるやり方です。
今稼働してないよ、空いてる工場ってどこですか、うち空いてるよ、じゃあこれ印刷お願いしますよみたいな。日本にある機械を有効活用することで印刷費を下げる手法です。
注文が来ないと機械が遊んでしまうため、印刷所は安くても空いていれば刷りたい。だから安く受けられる、というのが安さの理由だとManaさんは説明します。
この仕組みだと、同じ作品のカードが別々の印刷所で刷られることがあります。たとえばエースは神奈川、ジョーカーは北海道、というように分かれる場合があります。
気温も機械も製造タイミングも違うため、カードを見比べると色味が違う、ということがよく起こります。
注文をまとめて受注
ネットの印刷会社が全国から注文を集める
空いた機械に振り分け
稼働していない各地の工場に印刷を割り振る
製造条件がバラバラに
工場・気温・機械・タイミングが異なる
色ムラが発生
同じ作品でもカードごとに色味が変わることがある
色ムラがゲームを壊すとき
色ムラはゲームにとって致命的になる場合があるとManaさんは話します。手札を相手に見せないタイプのゲームでは特に問題です。
カードの背面の色味が違うと、それだけで手札の中身がバレてしまいます。ババ抜きでジョーカーだけ裏面の色が違えば、見ただけでわかってしまいます。
ジョーカーだけ色味が違うという形ですと、裏面見ただけでもうバレバレだと。それってそもそもゲームとして成り立たなくなってしまうわけなんですよ。
この色ムラは名刺印刷に限りません。同じ印刷会社・同じ機械でも、増版や拡張版を出すときは印刷タイミングが違うため、色ムラが起こり得ます。
そのため、拡張版だけ色が違うといったことにも陥りがちだとManaさんは述べています。
色ムラを目立たせないデザインの工夫
色ムラへの対策として、Manaさんはデザイン面での工夫を挙げます。背面が黒一色や白のようなベタ塗りだと、色のムラがすぐわかってしまいます。
そこで、あえてカードの裏面に複雑な絵柄を使い、色ムラがあっても違いがわかりにくくします。カードが透けたときにも中身をわかりにくくする効果もあります。
色ムラがあったとしても違いがわからないように、あえてカードの裏面は複雑な絵柄を使っていたりもしますね。
トランプの背面が複雑な幾何学模様なのも、印刷のムラが出ても問題なくするための工夫だとManaさんは説明します。
気をつけていても色ムラは起こってしまうため、デザインで吸収するのがコツです。これを意識せずに作ると、ゲームマーケット直前に悲鳴を上げることになります。
ゲームマーケット直前に、よっしゃ調和するぜって頑張って調和した。だけれども、色ムラにそこで気づいた。え、これってバレちゃうじゃん、ゲームにならないじゃん、どうしようみたいな。
あらかじめ色ムラが起こると知っていれば、デザインで対処したり、バレても影響しない箇所に名刺印刷を使ったりと工夫ができます。作る前に意識してほしいとManaさんは話しています。
薄さ・角・オプション費用という物理的な注意点
名刺印刷のもう一つの問題点は、カードの物理的な薄さだとManaさんは指摘します。名刺は薄いものほど安く、通常はそこまで厚くする人がいません。
名刺は基本的にバラ撒く消耗品なので、安さ重視で薄く作られます。普通に頼むと薄いため、裏から透けて手札の中身がわかってしまうことがあります。
さらに、名刺は角がしっかり角張っています。遊ぶゲームとしては角が邪魔ですし、名刺だとバレる原因にもなり、シャッフルもしにくくなります。
角丸加工のオプションを用意している名刺会社は多いものの、オプションを足すほど値段は上がります。安くするつもりが、意外と費用がかかる点は注意です。
では自分で角を丸く切ろうと考える人もいます。ですが、トランプなら52枚が100枚ずつで5200枚、しかも1枚につき4つの角を切ることになります。
1枚やるのにカチカチカチカチって4回頑張ってやると。それを5200回やるっていうようなものがあります。もう手も痛くなるでしょうし、時間もかかります。
そこまで手間がかかるなら、オプションで頼んでしまった方がいいのではないか、というのがManaさんの見方です。
「名刺っぽさ」という安っぽさをどう扱うか
品質面だけでなく、世間のイメージにも懸念があるとManaさんは話します。名刺には安いというイメージがつきまといます。
紙質もサイズも名刺のままだと、「これ名刺だな」と気づかれて安っぽく見えてしまいます。すると商品価格を上げにくくなり、安物という印象がついてしまいます。
名刺サイズであること自体が「名刺?」と思われる懸念になる、とManaさんは述べています。
名刺ケースを外箱にした「ルース」での工夫
Manaさんは自身の作品「ルース」を例に、安っぽさへの対策を語ります。ルースはたった9枚で3つの遊び方ができるゲームです。
カード枚数が少なく、手軽に持ち運んでほしいという思いから、化粧箱では大きすぎ、キャラメル箱でもスカスカになる問題がありました。
そこで思いついたのが、パカパカ開くアルミの名刺ケースを外箱に使うことでした。枚数が少なくてもコンパクトに収まり、持ち運びの丈夫さもあります。
ただ名刺ケースなので、入るカードのサイズは名刺サイズになります。名刺ケースに入っていれば、なおさら安っぽく見られる懸念がありました。
印刷は名刺屋ではなく普通のボードゲーム印刷会社に頼みましたが、そこでも念を押されたといいます。
最近わざわざ名刺サイズとして発注する人がいないですけど、本当に合ってますか、いいですかっていうことを聞かれました。
わざわざ確認されるほど、名刺サイズには懸念がある。Manaさんはそう受け止めています。
オプションをフル活用して高級感と丈夫さを出す
印刷所が違うだけでは、名刺サイズは名刺のままです。そこでManaさんは、高級感と丈夫さを出すために印刷会社のオプションをフル活用しました。
まずカードは、その印刷所で扱う中で一番分厚い「特厚」を選びました。名刺に比べてかなり厚く、簡単には曲がらないほどの厚みです。
さらに、布目エンボス加工も施しました。表面に糸のような模様が入る加工で、シャッフルしやすく滑りも良く、カードとしても丈夫になります。
めちゃめちゃ分厚いし、印刷も布目エンボスだしみたいな、そういう品質にめちゃめちゃこだわりました。名刺のサイズ感だからこそ、そうしておかないと厳しいよねっていうところであります。
オフラインのゲームマーケットでは、まずパッケージを見て「名刺ケースだね」と言われたそうです。ですが、実際に手に取ってもらうと印象が変わったといいます。
実際にカードの品質はめちゃめちゃこだわってるんですよと話して商品を見ていただくと、これすごいね、ちゃんとしっかりしてるねみたいなことを言われました。
手に取れば良さは伝わるものの、名刺サイズはやはりそこでも言われる。Manaさんはそう振り返っています。
名刺印刷は「使いどころ」で判断する
名刺印刷は工夫次第で安くできるものの、安っぽさをどう捉えるかが判断ポイントになるとManaさんはまとめます。
価格・販売価格・利益の確保を優先するなら妥協してもいい。ただ、自分の作品として自信満々に出せるかが判断の分かれ目だといいます。
自分の作品としてそれを自信満々に出せるのかっていったところが、やっぱり判断ポイントになるのかなっていうふうに思いますね。
結局は自分のこだわりの強さ次第でもあり、お金の事情は一概に言えないとManaさんは話します。名刺を活用している人も多く、それ自体が悪いわけではありません。
大事なのは使いどころです。デザイン面の工夫や、どのパーツで使うか、手札ではなくその場に並べる用に使うなど、活用シーンを意識した方がよいとManaさんは述べています。
何も考えずに名刺印刷をすると、色ムラで結局売り物にならない可能性もあります。そこを意識して進めるのがいいという結論です。
最後にManaさんは、初期製造数を抑えるコツや、百均グッズを製品としてうまく見せるコツなども、情報が溜まったら今後この番組で話していきたいと述べています。
まとめ
名刺印刷はボードゲームを安く作る有力な選択肢ですが、「同じデザインで100枚1ロット」という仕組みや色ムラ、薄さ、名刺っぽさといった注意点があります。安さと自作への納得感を天秤にかけ、使いどころを見極めることが大切だとManaさんは語っています。
- 名刺印刷は100枚で数百円と安く、カード1枚あたりの原価を数円に抑えられる
- 名刺は同じデザインで100枚が基本のため、絵柄が多いゲームでは製造数が大きくなりやすい
- 安いネット印刷は空き工場に振り分けるため色ムラが出やすく、手札で持つカードには致命的になり得る
- 薄さ・角の加工・名刺っぽさも懸念で、厚さや布目エンボス加工などのオプションで対策できる
- 色ムラがバレにくいデザインや、並べる用など使いどころを選ぶことが失敗を防ぐ鍵になる





