ボードゲーム市場は一枚岩ではない
番組冒頭で、この回のテーマは「ボードゲームをどの市場で売るか」だと示されます。ここでいう市場とは、ボードゲームとまったく無関係な市場のことではありません。
Manaさんは、ボードゲームに関する市場の中にも複数のレイヤーがあると考えています。多くの人は、まず身近な人に売り、そこからゲームマーケットなどで販売する流れをたどると話します。
最初の定義として挙げられるのが「ボードゲームファン」という市場です。ゲームマーケットに訪れたり、自分で新しいボードゲームの情報を探してキャッチアップしたりする、コアなファン層を指します。
Manaさんは、この層はゲームマーケットの参加者だけでも数万人規模おり、参加しない地方在住者や通販利用者も含めれば、市場として十分に成立していると見ています。
一般層を掘り起こすのが難しい理由
自分でボードゲームを作った場合、まずは日本国内のボードゲームファンに向けて販売するのが手っ取り早く、強いとManaさんは考えています。
一方でよく話題になるのが、普段ボードゲームで遊ばない一般層にも届けたほうがいい、という意見です。しかしManaさんは、これは難しい話だと指摘します。
ニーズがあまりないところからニーズを掘り起こすのは大変で、自ら情報を取りに来ない人たちに情報を届けるのも難しいというのが理由です。
ボードゲームファンであれば、Xで告知したり、ゲームマーケットのサイトに掲載したりすれば、自分で調べて購入検討に入ってくれます。しかし一般層は、日常でインディーズのボードゲームに出会う機会がそもそもありません。
そうなると宣伝の仕方も変わり、媒体もXよりインスタグラム、TikTok、YouTubeショートといった場での戦いになるとManaさんは話します。
ただし、これらはレコメンドが中心です。普段からボードゲームの情報に興味関心を示している人にようやく届く仕組みなので、結局はボードゲームファンに届く、という点をManaさんは強調します。
売れるための3要素、そして流通の壁
では、普段遊ばない人がボードゲームを知る場面はどこか。Manaさんは、普段見ているYouTubeのインフルエンサーや芸能人が遊んでいるのを見て知る流れを挙げます。
芸人がボードゲームで遊ぶ企画がYouTubeでよくあり、そこで「このゲーム面白いんだな」と知って買う流れです。ただし、有名な人に選ばれるハードルは高く、案件で依頼すれば大きな費用もかかります。
さらにManaさんは、欲しいと思っても買えなければ意味がないと指摘します。ここで、物が売れるための3つの要素を整理します。
コンテンツ
商品自体がしっかりしていること
宣伝
情報がその人たちに届くこと
流通
欲しいと思ったときに手軽に買えること
欲しいと思っても、お店や通販で売っていなければ買ってもらえません。特に一般層は、BOOTHのような場では買わず、Amazonなどで検索してすぐ出てくることがポイントになるとManaさんは話します。
一般の店頭で全国流通していれば、たまたま見かけて「これ知ってる、面白そう」と買ってもらえる可能性も出てきます。しかし流通も宣伝も大変で、お金があればできる一方、それは大手の戦い方になるとManaさんは述べます。
一般大衆市場は「別の市場」
一般のマス層に対して、インディーズで個人が作ったもので対抗するのはなかなか大変だとManaさんは話します。そもそも市場が分かれているというイメージです。
一般大衆層の市場を取れれば規模は大きく、何万個、何十万個という可能性も出てきて夢があります。しかし、その戦い方を熟知しているのは国内流通メーカーなどの企業だとManaさんは指摘します。
インディーズがそうした企業に見つけてもらい、扱ってもらうのも一つの手ではあります。ただ、それはゲームのライセンス販売のような形になってしまうとManaさんは言います。
それはそれで大成功だとしつつも、インディペンデントな独立した販売形態・企業形態としてどこまでできるかを考えると、敷居は高いという見方です。
企業に見つけてもらう方向を狙うと、作る方向性も変わってきます。世の中のニーズに合わせて作れればいいものの、作りたいものを作る人がニーズに合わせられるかはまた別問題だとManaさんは話します。
インディーズが見極めるべき市場
厳しい話が続きましたが、ではどうするか。Manaさんは、インディーズとしてまず実績を作り、独立した活動をするために、市場を見極めることが大切だと話します。
まずは、自分でボードゲームの情報を取りに来る層、つまりボードゲームファンをしっかり掴んでいくことが一つ目です。これを日本国内でしっかりやっていく方針です。
ただ、それはもうできている、そこを目指している、という人からは「もっとないの?」という声も出てきます。そこでManaさんが今回強調したいのが、日本国内だけに限らない、という視点です。
レッドオーシャンの日本、ブルーオーシャンの海外
ボードゲーム市場でいうと、日本はまだまだ小さく、ボードゲームファンとなるとさらに小さいとManaさんは話します。分母が少ない中で、みんなが席の取り合いをしている状況です。
新作は次々に発売され、制作者の数も増え続けています。そのため国内はレッドオーシャン化し、差別化という話に陥りがちだとManaさんは指摘します。
しかしManaさんは、市場の見方自体を広げれば、まだまだレッドオーシャンじゃないと言います。それが海外です。
ボードゲームファンは日本国内では限られますが、世界に目を向ければごまんといます。ボードゲームファンは自らボードゲーム情報を探し求めており、海外を輸入して翻訳するほど熱量の高い人もたくさんいるとManaさんは話します。
特に最近は日本のボードゲームが注目されており、ゲームマーケットに来る外国の方も増えています。そうした層を視野に入れることが、自分のボードゲームを広げるうえで重要になってくるという見方です。
すでに海外で売れているManaさんの実例
Manaさん自身、BGGを見ても、いろんな国で遊んでもらっていると感じています。実際にカナダやイギリスなどで販売しているとのことです。
Manaさんの場合、海外の出版社を通した海外版の発売経験はまだありません。その代わり、海外のボードゲームショップが作品をまとめて仕入れ、現地で販売するということがちょくちょく起きているそうです。
いわゆる海外のボードゲームのショップが私の作品をまとめて買って、で、海外で販売をする。そういったことがちょくちょく起こったりします。
そのきっかけになっているのが、やはりゲームマーケットだとManaさんは話します。会場で声をかけられて海外でも売りたいという話が出たり、遊びに来た人が自国の友達の分をまとめて買っていったりするそうです。
一方でManaさんは、海外に対して特別なアプローチをしていたわけではないと言います。翻訳機能が充実しても、海外へダイレクトに狙った情報を届けるのは難しく、それで何かを成し得たわけではないという立場です。
言語依存をなくすというゲーム作りの工夫
では何をしているのか。Manaさんは、ゲーム作りや準備、ゲームマーケットでの立ち回りに工夫があると話します。
一つ目は、言語依存のないゲームばかりにしている点です。カードに日本語がたくさん書かれていると、海外販売時にシールを貼る手間が生じるなど、ショップにとって敷居になると海外のショップの人から言われたそうです。
シールを貼らなければ、カードの意味がわからず遊ぶ人に負荷がかかり、売りにくくなります。そのため、コンポーネントに言語依存があるかないかが一つのポイントになるとManaさんは説明します。
説明書程度であれば、販売店が翻訳して別紙として送るなど、うまく対応してくれるそうです。しかし商品そのものに手を入れると、箱を開けて調整する手間がかかり、未開封でなくなってしまう問題もあります。
そのため、アイコンでできる限り示すなど、言語依存のないコンポーネントのデザイン作りが重要になるとManaさんは話します。ただし遊びやすさとの兼ね合いもあり、難しい面もあると付け加えます。
ジャンル選びも一つの視点です。作りたいものを作るのでよいとしつつ、トリックテイキングやアブストラクトなど海外で需要のあるジャンルを狙うと、そのメカニクスのファンが買ってくれやすくなるとManaさんは述べます。
多言語マニュアルが差別化になる
大きな差別化になるのが、多言語版のマニュアルが商品の中に入っているかどうかだとManaさんは強調します。別添えではまだ弱く、商品の中に各言語分が入っているかが検討段階で重要になるそうです。
Manaさんは先日「THE SCENT OF JEALOUSY」に英語版マニュアルを入れ、ゲームマーケットのサイトで公開しました。すると開催前から、海外にも日本のゲームマーケットの気になる新作を紹介するYouTuberがいて、作品を取り上げてくれたそうです。
それがあったのもやっぱり英語のマニュアルがあるっていうところで、実際にちゃんとルールを理解して、で、面白そうって思ってもらえたんだとは思います。
マニュアルがちゃんとあるかどうかは、ゲームマーケット前の事前調査の段階でも強みになります。海外のネットショップで販売される際も、母国語のマニュアル付きと説明でき、ショップが売りやすくなるとManaさんは話します。
Manaさんは、海外市場も目指すなら多言語版・海外版を用意したほうがいいと考えています。今はAI翻訳で以前より作りやすくなった一方、AIの翻訳もまだまだな面があると付け加えます。
特にボードゲームの翻訳は細かい定義があり、ニュアンスがずれると意味が変わってしまいます。そのため一度翻訳したら、できればネイティブに校正してもらって調整する必要があるとManaさんは述べます。
ゲームマーケット当日は「看板」で訴求する
英語版や多言語版を用意したら、積極的にゲームマーケットのサイトに掲載するのがよいとManaさんは話します。翻訳の善し悪しは読んだ人が判断してくれるという考えです。
当日の動きも重要です。「英語版マニュアルあります」といった看板を掲げていると、日本語ばかりの会場で母国語がポンとあるだけで、海外から来た人の目を引くとManaさんは説明します。
英語のマニュアルあるの?みたいな、そういうような形で駆け寄ってきてくれるような人たちも実際当日いました。
そこから、実は海外でショップをやっているといった話につながることもあります。海外向けを狙うなら、会場でもしっかり看板を掲げて訴求することが、まず知ってもらううえで重要になるとManaさんは話します。
一般層より海外ファンのほうがインディーズ向き
海外という市場を意識すると世界が変わるのではないか、とManaさんは述べます。海外は大変だとしつつも、普段遊ばない一般層より、海外のボドゲファンを狙うほうが難易度は楽で、特にインディーズ向きだと考えています。
海外の一般層となると難易度は跳ね上がります。しかしボードゲームファンなら、自分で掘り出し物を探して面白いものを見つけたいという欲求がそもそもあるからです。
海外から日本に来るユーザーは熱量が高く、ルールがわかるマニュアルがあるだけで購入検討に入るとManaさんは話します。面白ければ現地で広めてくれたり、事業関係者が海外の店で売ってくれたりする可能性もあります。
これからボードゲームを作る人も、海外市場を意識してやってみると面白いのではないか、とManaさんはこの回を締めくくります。
まとめ
この回でManaさんは、ボードゲームの市場を一括りにせず、ボードゲームファン・一般大衆層・海外という層に分けて捉えました。そのうえで、インディーズが狙うべきは一般層より海外のボドゲファンだと提案しています。
- ボードゲーム市場はファン層・一般大衆層に分かれ、一般層はニーズの掘り起こしも流通も大変で大手の戦い方になる
- 物が売れるにはコンテンツ・宣伝・流通の3要素が必要で、欲しくても買えなければ意味がない
- 国内のボードゲームファン市場はレッドオーシャン化しているが、世界に目を向ければファンはごまんといる
- 言語依存のないコンポーネントと、商品に同梱した多言語マニュアルが海外販売の鍵になる
- ゲームマーケットのサイト掲載や当日の看板で海外向けを訴求すると、そこから海外ショップとの縁につながる



