約900作品を調べてわかった、キャッチコピーの全体像
この回のテーマは、ボードゲームのキャッチコピーの作り方です。箱の裏やSNSの宣伝、ブースの看板など、キャッチコピーを使う機会は多いものの、どう作ればいいのかわからないという声に応える内容になっています。
Manaさんは、実際に約900作品弱のキャッチコピーを調査しました。数多あるキャッチコピーの傾向や、どういう考え方で作られているのかを分析したうえで話が進みます。
分析の結論として、キャッチコピーはおおまかに8つの要素(分類)に分けられ、それらを組み合わせる型が8つほどあり、それを3ステップで仕上げていくという構成が示されます。
世界観・メカニクス・感情——キャッチコピーの8分類(前半)
まず、キャッチコピーが何を前面に出しているかで分けられる8つの要素の前半が紹介されます。1つ目は世界観やテーマをメインに据えたものです。
世界観型は、プレイヤーがどんな世界観に没入するのかを伝えます。宇宙、魔法、三国志、ケーキ屋さんといった舞台や職業を示すもので、ゲームの雰囲気をわかりやすく伝えられます。
2つ目は、メカニクス(システム)をキャッチコピーに明記するものです。トリックテイキング、正体隠匿、紙ペンといった、ゲームの核となる仕組みを示します。
メカニクスを入れる作り方には難点もあります。名前と遊び方が結びつくボドゲ経験者には刺さる一方、普段遊ばない人には伝わりにくく、人を選ぶコピーになります。
特に取り手好きは結構取り手好きですし、正体隠匿好きは隠匿好きですし、紙ペンは紙ペン好きですし。
どこをターゲットにするかで使い道が分かれるため、そのゲームが好きな人にズバッと届けたいときにメカニクス名を入れるのが有効だと話されています。
3つ目は、感情や体験を想起させるものです。プレイ中にどんな感情が湧くか、どんな雰囲気になるかを、擬音で表すこともあります。ヒリヒリ、わちゃわちゃ、爆笑といった言葉が例に挙がります。
制約・ターゲット・コンポーネント・日常——8分類(後半)
4つ目は、制約やフックです。プレイヤーの興味を引く極端なルールや矛盾を示し、「何それ?」と引っ掛けるものです。会話禁止、5秒以内といった制約が例に挙がります。
みんなでわちゃわちゃ会話禁止とか、え?何それ?ってなるじゃないですか。
5つ目は、ターゲットをメインに据えたものです。所要時間、プレイ人数、軽量級・中量級・重量級といった重さ、対象となる習熟度など、ボードゲームの基本情報を使います。
たとえば「2人専用」「中量級なのに」「ボドゲ初心者向け」といった言い方で、あなた向けですよと正確に届けるコピーになります。
これに近いのがプレイ環境の情報です。インストから完了まで20分、ゲームマスター不要、箱のサイズなど。キャラメル箱サイズと書けば、カード枚数や軽さも伝わります。
6つ目は、コンポーネントや物理的なこだわりです。アナログゲームならではの木駒、ダイス、コインチップなどが魅力的なときに、それをコピーに含めます。
大量のダイス100個、箔押しタロット仕様、スマホで読み取る仕掛け、カードとカードが合体するギミックなど、特徴的な要素をメインに据える作り方です。
7つ目は、日常的な記憶や共感です。「あるある」や慣用句、プレイヤー自身が体験しただろうワードを混ぜ込みます。冷蔵庫のプリン泥棒、お泊まり会の恋バナなどが例です。
使い古された表現を使う手もあります。パンをくわえて曲がり角を曲がる、ぶつかって人格が入れ替わる、といったものです。シチュエーションや情景が目に浮かびやすいのがメリットです。
異種交配・逆説・極端な制約——組み合わせの8つの型(前半)
方向性が決まってもコピーはなかなか作れないため、要素を組み合わせる「型」が8つ紹介されます。型とは、何と何を掛け合わせてどんな形にするかのやり方です。
1つ目は異種交配型です。ゲームシステムに意外なテーマを掛け合わせ、「どういうこと?」と立ち止まらせて独自性を一発で伝えます。競馬とトリックテイキングを混ぜる、といった発想です。
2つ目は逆説・パラドックス型です。まず常識を提示し、それを裏切る展開を足すことで脳をバグらせ、詳細を知りたいと思わせます。
全員黒幕ってもう意味わかんないですよね。
黒幕は裏で一人だけというイメージなのに「全員黒幕」とすることで、当たり前を裏切る逆説を示す例が挙げられています。
3つ目は極端な制約型です。厳しい縛りのなかで何を達成するのかを示し、難易度やスリル、挑戦心を煽ります。「5秒で爆発する爆弾を他人に押し付けろ」などが例です。
ただし、単に制限時間があるだけではコピーに向きません。制約が極端であればあるほど、「そんなんでできるの?」というわちゃわちゃ感が伝わると話されています。
ここでManaさんは、コピー作りで最も大事な考え方に触れます。特徴でないところまで強引に入れると長くなるため、削って削って原石を見つけ、それをどう表現するかが重要だと述べます。
感情ダイレクト・ペルソナ直撃・シチュエーション——型(後半)
4つ目は感情ダイレクト型です。プレイ中の感情や行動にゲームシステムを掛け合わせ、その場の盛り上がりを直感的に連想させます。パーティーゲームに向いた型です。
「笑って叫んでダイスを振れ、わちゃわちゃ系アクションゲーム」「ついお腹が空いちゃうクイズゲーム」のように、どんな雰囲気のゲームか一発で伝わる例が挙げられます。
5つ目はペルソナ直撃型です。ターゲットの欲求や悩みに直撃し、需要を刈り取ります。拡張コンポーネントや、特定シチュエーションに特化した需要に向いています。
たとえば前の版で指摘された不満を解決したときに「コマやタイルのズレがなくなり、快適なプレイが楽しめます」と示す、といった使い方です。
2人用が加わった場合は「2人でじっくり遊びたい夜のための心理戦」のように届けます。カップルや夫婦、兄弟など2人で遊ぶ人には2人用の需要があるため、そこを刺しに行きます。
6つ目は条件・シチュエーション型です。特定の人数や提供できる体験を明記します。「2人で話しながら帰るだけの帰り道TRPG」「お泊まり会の夜に恋バナしよう」などが例です。
お泊まり会の恋バナは、修学旅行に持っていく女子会などにフィットする内容だと話されています。前半で挙げた記憶や体験を、ダイレクトにコピーへ落とし込む作り方です。
共感・問いかけと視覚的ギャップ——残りの2つの型
7つ目は共感・問いかけ型です。日常的な不満や疑問、あるあるで興味を引き、そこにゲームの目的を混ぜて関心を引きます。
「普通と変わり者。自分が言われたら嫌なのはどっち?」のように、あるあるとゲーム内容を掛け合わせる例が挙げられます。ゲームシーンと、何をするのかが明確になるのが利点です。
8つ目は視覚的ギャップ型です。美しいのに無関係なモチーフに硬派なシステムを掛け合わせ、意外性を生みます。綺麗な見た目なのにガチガチの殴り合い、といったギャップです。
Manaさんは具体例を思い出せない場面もありつつ、テーマは柔らかいのに殴り合いのアブストラクトがあった、と分類で見えたことに触れています。
洗い出し・組み合わせ・ブラッシュアップの3ステップ
最後に、実際にキャッチコピーを作る3ステップが示されます。掛け合わせるには、まず要素を洗い出す必要があります。
ステップ1は、ゲームのシステム、テーマ、一番面白い瞬間、動く感情などを、とにかく単語レベルで列挙することです。刺さるもの・伝えたいもの・特徴を表せるものにランキングをつけられるとなおよいと話されています。
ステップ2は、洗い出した単語を、接続詞のない状態で組み合わせていくことです。紹介した型を参考にしながら、これとこれを組み合わせるとどうかと試していきます。
ステップ3は、組み合わせたパターンをブラッシュアップすることです。接続詞を足して1つの文にし、微妙なら調整する、という流れで整えます。
仕上げの目安として、箱の裏やSNSでパッと理解できる文字数は、15から30文字程度がいいと示されます。列挙した単語の長さによって、入る要素は2つほどか3つほどになります。
一言でバンッと終わらせる作り方もありますが、それは上級のテクニックだとされています。まず作り方がわからない人は、この分類と型を踏まえて3ステップで進めるのがよいとまとめられています。
まとめ
この回では、約900作品の調査をもとに、ボードゲームのキャッチコピーを8つの分類・8つの型・3ステップで組み立てる方法が紹介されました。核心は、特徴でない部分まで詰め込まず、削って原石を見つけて表現することにあります。
- キャッチコピーは、世界観・メカニクス・感情・制約・ターゲット・環境・コンポーネント・日常の8分類で捉えられる
- 要素は、異種交配・逆説・極端な制約・感情ダイレクト・ペルソナ直撃・条件・共感・視覚的ギャップの8つの型で組み合わせられる
- 作り方は、要素を洗い出す→組み合わせる→ブラッシュアップする、の3ステップ
- メカニクス名など、経験者にしか伝わらない要素はターゲット次第で使い分ける
- 仕上げは15〜30文字程度が目安で、特徴を削り込んで表現することが重要



