そもそも「2人用アブスト」とは何か
この回のテーマは「2人用のアブストは売れないのか」です。まず、2人用とはチェスや将棋のように1対1で戦うプレイ人数を指します。
もう一つのキーワードであるアブストについて、Manaさんは聞き慣れない人もいるだろうと前置きしたうえで説明しています。
アブストは完全情報公開ゲーム ── プレイヤー同士が知らない情報を持たず、ルールも場の状況もすべて共有されているゲームのこととも呼ばれます。カードや盤のルールも全員が理解し、場の状況も誰もが見えている状態です。
つまり運の要素や隠れた手札のような不確定要素がなく、読み切ろうと思えば完全に読み切れるゲームだとされています。
このアブストは2人プレイのものが多いため、「2人プレイのアブストは売れないのではないか」という話題が定期的に出ると、Manaさんは指摘しています。
Manaさん自身も2人用ゲームをいくつか作っており、バーストオブマナはアブストラクトに属するゲームだと話しています。トリックテイキングやパーティーゲームなど、隠された情報のあるゲームも手がけているそうです。
「売れない」への結論と、需要のある人数
今回のテーマである「売れないのか」について、Manaさんの結論は明確です。
ただし、売れづらいと言われる理由もわかると、Manaさんは付け加えています。売れないのではないかと思わせる要素も多分にあるという立場です。
まず人数の話です。Manaさんは自身のXで、ゲームマーケットに来る人に「何人用がいいか」というアンケートを定期的に取ってきたと話しています。
そのアンケートで最も求められていた人数は4人プレイでした。4人でも遊べるゲームは需要が高い傾向にあるといいます。
世の中に出回っているゲームも、3〜4人用や4〜8人用など、4人をキーに人数を設定したものが多いと、Manaさんは説明します。商品も多く、求める人も多いということです。
一方で2人用は、需要としてはそれほど多くないとManaさんは認めています。ただし、その分だけ強い需要があるとも話しています。
集まりにくいからこそ生まれる2人用の需要
Manaさんは、ボードゲームは買ってすぐ遊べるものではなく、遊べる人数が集まって初めて遊べる点に注目します。
人数が多いほど集まりにくくなります。定期的に集まって遊ぶ機会がない人でも、ボードゲームを遊びたいという需要は確かにあるとManaさんは言います。
そのなかで2人用はシンプルで、確固たる需要があるとされています。具体的な層として挙げられたのがカップルや、友達同士・親友です。
ボードゲームカフェの人に聞いた話として、団体ではパーティーゲーム系が遊ばれる一方、2人で来る客も多いとManaさんは紹介しています。
団体で集団でわーっと遊びに来たっていう時は、やっぱりパーティーゲーム系を遊ばれるケースがあるらしいんですけども、実際の客層を見ていると、2人で来る人も多いみたいです。
2人で来る層はカップルや、友達と2人で行ってみようという感覚の人たちです。2人用ゲームは複数人用に比べて少ないため、取り扱う店から「2人用があると重宝する」という声を聞いたことがあるとManaさんは話しています。
もう一つの需要としてManaさんが挙げるのが、お家需要です。親子や夫婦など、2人で遊ぶケースです。
複数人用は「面白そう、今度友達とやりたい」と買っても遊ぶ機会がなく、家にしまい込まれることがあります。2人用なら、誰かが家にいれば遊べます。
2人でしか遊ぶ機会がない人は2人用しか遊べないため、その需要は動かしにくいものだとManaさんは考えています。
求められる人数としては4人用より少ないかもしれません。それでも、2人用という人数そのものが他の商品との差別化になり、決して売れないわけではないとManaさんは述べています。
口コミが広がりにくいという弱点
人数は口コミにも影響すると、Manaさんは指摘します。
ボードゲーム会で4人プレイのものを遊ぶと、一度に4人が経験者になります。経験した人が誰かに話すことで、掛け算的に知る人が増えていきます。
一方で2人用は2人しか遊べません。持ってきた人や知っていた人プラス1人にしか広がらないことが多いといいます。
さらにお家で遊ぶ場合、外に口コミを広げる機会もありません。買った人しか面白さに触れられず、世の中に広がりにくいという弱点があります。
加えて、2人用でカップルやお家で遊ぶ層は、SNSでプレイ報告をしないことも多いとManaさんは話しています。
情報公開ゲームゆえの「実力差」という壁
ここからManaさんは、2人用全般ではなく、アブスト独特の要素に話を進めます。アブストはゲーム性の好き嫌いが大きく分かれる点があるといいます。
情報がすべて公開され運の要素もないため、アブストは簡単に言えば強い人が勝つゲームです。強い人が負けるのはミスや手抜きのときだけで、運が悪かったという言い訳はできません。
運が悪かったみたいな言い訳はできないんですね。
その結果、片方がとても強く片方がとても弱い場合、実力差がありすぎて一方的な展開になりやすいとManaさんは説明します。
ボコボコにされた側は、何度も遊ぼうとは思いません。力関係の差が歴然としていると、リプレイ性も生まれにくいといいます。弱い人はそのジャンルから離れていってしまうこともあると、Manaさんは指摘しています。
実力が拮抗したときのアブストの面白さ
一方で、力関係が拮抗すると話は変わるとManaさんは言います。運のせいにできない分、読み合いをガチで楽しめるからです。
囲碁や将棋、チェスの試合のように、お互いが考え込んで一手を打つ遊び方になります。Manaさんはこうした真剣勝負が大好きだと語っています。
一度遊んで面白かったで終わるのではなく、プレイするたびに自分が強くなり、勝てなかった相手に勝てるようになる。対戦相手が違えば様相も変わると、Manaさんはアブストの魅力を挙げます。
どんどんプレイするたびに自分が強くなっていくっていうのもわかりますし、勝てなかったものが勝てるようになっていくっていうのもあります。
ルールは簡単でも時間をかけてじっくり考えられる点も特徴です。好みは分かれるものの、好きな人はずっと遊べて、成長感や大会という目標も楽しめるとManaさんは話しています。
リプレイ性と「地味なテーマ」の意味
いい対戦相手に恵まれてアブストが好きな人はどんどんハマっていくため、アブストはリプレイ性が高いとManaさんは考えています。
一般的なボードゲームは一度遊んで放置されることもありますが、アブストは複数回遊ばれやすいといいます。
その理由の一つとして、Manaさんはアブストのテーマが地味であることを挙げます。パーティーゲームには出落ち感のあるものもあると指摘しています。
何このテーマ面白い、で買って、面白かったね。でも、もう一回はいいかなとか。
一発芸的なゲームは、いろいろな人と遊ぶ機会がある人には登場機会があります。しかし常に同じメンバーで遊ぶ場合、一度遊んだらもういいとなりがちだとManaさんは言います。
固定メンバーには一発芸的な複数人ゲームは弱い一方、お互いに強くなり違う展開を楽しめるアブストは好まれる印象があると、Manaさんは述べています。
売れ方が違う——短期の爆発力か、長期のロングセラーか
Manaさんは「売れない」という言い方には違和感を示しつつ、売れていく進み方が違うのだと整理します。
複数人プレイのパーティーゲームは、刺さるときにポンと刺さって一気に売れます。口コミもSNSで広がり、プレイ画像や報告がどんどん上がっていきます。
一方でアブストは、大ヒットのように拡散されることはほとんど見ないとManaさんは言います。ただし、目にし続ける存在ではあります。
刺さると一気に売れる。SNSで口コミが広がりやすく、短期の爆発力がある
大ヒットは少ないが、長期間かけて確実に売れ続けやすく、ロングセラーになりやすい
アブストは単発でボンと売れるより、長期間かけて確実に少しずつ売れ続ける印象だとManaさんは話します。根強いファンに情報が届いたり、ヒリヒリした戦いの面白さに気づいた人が動くからです。
負けた人が自分用に買い足したり、ボードゲームカフェがカップル需要に対応したりして、じわじわ売れていくといいます。
つまり売れるかどうかは、どのくらいの期間で切り取るかによって印象が変わります。短期ではパーティーゲームが強く、長期間のロングセラーではアブスト2人用もかなり強いとManaさんは考えています。
売れないと感じる作者へ——諦めず、工夫して売る
長期的な収支で見ると、意外とアブスト2人用のほうが強いこともあると、Manaさんは付け加えます。
それでも「売れない」と言われる理由はわかるといいます。発売後に口コミが来ないと、作者自身が売れなかったという印象を持ちやすいからです。
Manaさんは、その気持ちを理解しつつも、諦めずに長期間腰を据えて売っていけば考えは変わるはずだと語りかけています。
売れないっていう投稿や話を受けて、作るのちょっとやめようかなとなったら、ちょっと悲しいかなとは思います。
たくさん売ることを考えるなら、ガチガチのアブストに少し運の要素を入れるだけでも遊びやすくなるとManaさんは提案します。誰をターゲットにし、どう売りたいかで工夫すればよいという考えです。
Manaさんは、アブストは好きな人に気づかれていないだけの「瞬間風速的なもの」だと表現し、届きさえすれば強い興味を持たれると話しています。
そのためインフルエンサーへの依頼やXでの訴求など、知ってもらう宣伝の工夫が必要になります。宣伝をしながら長期間かけて売っていけば、決して売れないわけではないというのが、この回の結論です。
まとめ
2人用のアブストは「売れない」わけではなく、パーティーゲームとは売れ方が違うというのが、Manaさんの一貫した見方です。短期の爆発力ではなく、長期のロングセラーとして根強く売れていく特性を踏まえ、宣伝の工夫と長い目線が大切だと語られました。
- 2人用はカップルや親子・夫婦などのお家需要があり、人数そのものが差別化になる
- 2人用は口コミが広がりにくく、SNSでの報告も少ないため世の中に伝わりにくい
- アブストは実力差があると一方的になりやすいが、拮抗すると読み合いの面白さとリプレイ性が高い
- パーティーゲームは短期の爆発力、アブストは長期のロングセラーに強い
- 届けば興味を持たれるので、宣伝を工夫しながら長期間腰を据えて売ることが重要





