初めて商品を売るとき、値付けはなぜこんなに悩ましいのか
この回のテーマは、ボードゲームの販売価格です。ゲームマーケットや通販などで自作のボドゲを売るとき、いくらで売るのかという問題を扱います。
Manaさんによれば、これは初めて自分で商品を作って売る人ほど悩むポイントだといいます。
一体いくらで売ったらいいんだろうですとか、いくらなら買っていただけるのかな、そういう風に悩んでいる方も多いのかなというふうに思います。
基準になるのは、いくらで作ったかという原価です。原価に対して販売価格を決め、利益率を計算する場合も多いといいます。
ただし今回は原価の話ではなく、いくらで売るのかという点に注力して話が進みます。
周りと比べてどうか──販売価格は相対的に決まる
値付けの一つの基準になるのが、ゲームマーケットです。ゲームマーケット ── 日本最大級のアナログゲームの見本市。同人・インディーズから商業まで、新作ボードゲームが多数出品・販売されるイベント。年に春と秋の2回開催される。
毎回、新作が千を超える数で出てくるため、どの価格帯が多いのかが十分に参考になるといいます。
例えば周りが2000円で売っている中で自分だけ5000円にすると高すぎに見え、周りが3000円のものを1000円で売ると安すぎに見える、というわけです。
一方で、コンポーネントや知名度、ゲーム内容に自信があれば、あえて高めに設定して利益を取る戦略もあります。逆に、安さで買いやすさを促す考え方もあります。
そのため販売価格は、自分だけの絶対的な指標というより、周りと比べてどうなのかという相対的な評価になりやすいと話されています。
Manaさんは、ゲームマーケットのたびにこうした価格情報を集計してグラフ化し、Xで投稿しているといいます。参考になると好評だそうです。
ゲームマーケット2026春を集計してわかった平均価格
今回も恒例として、ゲームマーケット2026春に登録された作品を集計しています。集計時点で全体は約900作品でした。
いつもより少なめだが、このタイミングで未登録の作品はその後もわずかしか増えないと見て、一旦集計したといいます。
900件すべての販売価格を調べたところ、平均は2658円になりました。2500円より少し高いくらいです。
端数が出ているのは全体の平均だからで、実際の各作品は切りのいい数字が多いといいます。千円単位や500円単位が中心で、大手や人気サークルには数十円単位で設定するところもあります。
ただし平均には注意が必要だと指摘します。とても高い商品が一つあるだけで平均は大きく引き上げられ、逆にとても安いものがあれば下がってしまうからです。
じゃあそれってそのめっちゃ安いとかめっちゃ高いとかが異常値なだけであって、実際一番多い数とは平均値ってなかなか言えないんですね。
一番多いのは「二千円」──中央値と最頻値が示すボリュームゾーン
そこで、平均とは別に中央値も取っています。中央値 ── データを数値の小さい順に並べたとき、ちょうど真ん中に来る値。極端に高い値や低い値の影響を受けにくく、実感に近い代表値になりやすい。
金額順に一列に並べたとき、真ん中に来る価格を見ると、中央値はちょうど2000円でした。
さらに、実際に一番多い価格帯も2000円でした。2000円で売っている人がとにかく多いといいます。
なので、それをベースに考えると、二千円以下であれば周りよりも安い、二千円よりも高ければ周りより高いっていう風にも捉えられるのかなっていうふうに思います。
この傾向は例年通りで、おおよそ1500円から2500円あたりが最も多い状態が続いてきたといいます。
なお、一番安いものは0円で、無料配布やキャンペーン的なものが含まれます。一番高いものは3万3000円で、豪華なデラックス版と見られます。
500円ごとに集計した内訳を見ると、価格帯ごとの件数がボリュームゾーンをはっきり示しています。
価格帯ごとの件数を並べると、2000円台に山があることがよくわかります。
| 価格帯 | 件数 |
|---|---|
| 1000〜1500円 | 81件 |
| 1500〜2000円 | 145件 |
| 2000〜2500円 | 215件 |
| 2500〜3000円 | 135件 |
| 3000〜3500円 | 95件 |
| 3500〜4000円 | 47件 |
2000円から2500円が215件と最も多く、その中でも2000円が断トツです。1500円から3000円がボリュームゾーンで、その中心に2000円があります。
なぜ二千円に集まるのか──小箱ゲームと初期投資のリスク
この傾向の背景には、ゲームマーケットが大箱や重ゲーよりも、小箱のゲームが多く出品される場だという事情があります。重ゲー ── ルールやコンポーネントが多く、プレイに時間がかかる重量級のボードゲームのこと。対して手軽に遊べるものは軽ゲー・小箱ゲームと呼ばれる。
高額になりやすい重いゲームは、内容量が多いぶん製作費もかさみます。初期投資が数百万円になる場合もあり、大きなリスクになります。
特にゲームマーケット初出展の人は、いきなり大きな初期投資をかけにくいものです。そのため、まず小箱から作って売ってみる人が多く、結果として出品されるゲームの多くが低価格帯に集まると考えられます。
この仮説を踏まえると、多くの人が2000円あたりを想定して作り、そこからあえて安くして目立たせたり買いやすくしたりする人が、2000円以下の層に出てくると見られます。
価格帯とコンポーネントの関係も、おおよそ次のように整理されています。
- 2000円前後:ちょっとしたカードセット
- 1000〜1500円:コンポーネントの数を絞ったもの
- 500円以下:化粧箱を作らずチャック袋で販売する超ミニマムなもの
化粧箱は原価に大きく影響します。化粧箱だけでもロットによっては400円ほどかかるため、入れるかどうかが販売価格を左右します。
化粧箱には工夫の余地もあります。既製品の箱に印刷だけする、百均のものをベースに自作するといった方法です。
ただし印刷会社に化粧箱の印刷から形作りまで頼むと、どうしても販売価格は1500円を超えてくるといいます。出始めの人は選ぶ印刷会社も似通うため、相場も似たり寄ったりになりやすいとのことです。
自信がある人は2500円や3000円に設定します。アブストラクトでコマが50個あるなど、そもそも内容量が多いものは3000円から4500円あたりになるイメージだと話されています。
一般流通の商品とも比べられる──初参加者が増えた時代の値付け
注意点として、最近は初出展だけでなく、ゲームマーケットに初めて参加する来場者も増えていると指摘します。
以前はインディーズの良いものを発掘したいという来場者が中心で、ゲームマーケット内の相場で価格を見ていました。しかし初参加者は事情が違います。
初参加者は、トイザらス、東急ハンズ、ロフト、ドン・キホーテ、TSUTAYAなど、一般流通で売られている商業ボードゲームの価格とも比較するのです。
大量生産されコンポーネントもしっかり作られた商品と比べられるため、極端に高すぎると「何これ高い」と敬遠される恐れがあります。逸脱しすぎないほうがよいといいます。
一方で、小ロットで作るぶん、ゲームマーケットの作品は全体的に価格が高くなりがちです。それでも、どれも同じくらいの価格だとわかると、来場者の常識がアップデートされていくといいます。
だからこそ、周りの価格帯に合わせ、逸脱しないことが重要になります。高いと思われたうえに、周りを見てもまだ高いとなると、買われにくくなるからです。
特に初参加者は事前の情報収集が難しく、一期一会です。会場で気になって近づき、ルール説明を聞いて最終的に買うかどうかを決めるとき、面白さだけでなくお財布事情が入ってくると話されています。
なぜ「二千円」なのか──おつり事情と、これからの値上げの波
1500円や2500円より2000円が多い理由の一つに、おつりの事情があると考えられます。
千円単位ならおつりも千円単位で済みますが、500円で刻むと500円玉も用意しなければなりません。中途半端に上げ下げするより2000円にしよう、と考える人が多いのではないかといいます。
今回の集計では、例年より少し安めの作品が増えている傾向も見られました。小箱がさらに増えたためではないかと推測されていますが、理由は謎だとしています。
ただし今後は状況が変わる可能性があります。印刷会社が軒並み値上げを発表しており、原油高や円安の影響で、作る費用そのものが上がっているからです。
原価が上がれば、利益ギリギリのまま2000円台を維持するのか、全体的に販売価格が上がるのか、どちらかになります。2026年秋には傾向が変わってくるのではないかと見ています。
今後ボードゲームの原価といったものはさらに上がってくると。
自分の作品を売るときの値付けは、今年や過去の価格を参考にしながら決めるとよい、というのがこの回の着地点です。
まとめ
ゲームマーケット2026春の集計から見えたのは、販売価格は絶対的な数字ではなく、周りとの相対で決まるということです。中央値も最頻値も2000円で、この基準を軸に、自作の内容や来場者の目線を踏まえて値付けを考えるのが現実的だと言えそうです。
- ゲームマーケット2026春は約900作品、平均2658円、中央値・最頻値ともに2000円
- 販売価格は絶対値ではなく、周りと比べた相対的な評価で決まりやすい
- 小箱ゲームが多く、初期投資のリスクから低価格帯にボリュームが集まる
- 近年は初参加者が増え、一般流通の商業ボードゲームとも価格を比較される
- 印刷会社の値上げが続いており、2026年秋には価格傾向が変わる可能性がある




