「トリテは初心者向きじゃない」は本当か
この回のテーマは、トリックテイキング、いわゆる「トリテ」がなぜ初心者向けじゃないと言われるのかです。トリックテイキング ── 手札からカードを1枚ずつ出し合い、1回ごとの強さ比べ(トリック)の勝敗を競うカードゲームのジャンル。「取りて」とも呼ばれる。
Manaさんによると、トリテはX界隈でもボードゲーム界隈でも「初心者向けじゃないよね」とよく言われるジャンルだといいます。
一方で、好きな人はとても好きで、特に海外ではメジャーで大人気のジャンルでもあると話されています。
(トリテで)普段遊ばない人は、なんか難しそうだとか、そういうふうに敬遠しているようなイメージがあるのかなと思っております。
結果として、トリテ好きはトリテばかり遊び、普段遊ばない人には広まりにくい、という状況がよく語られているそうです。
専門用語の多さは本当の原因なのか
トリテが初心者向けじゃない理由としてよく挙げられるのが、専門用語の多さだとManaさんは紹介します。
例として、マストフォロー、メイフォロー、マストノットフォロー、トリック、ラウンド、ランク、スートなどが挙げられています。マストフォロー ── 最初に出されたカードと同じ種類(スート)のカードを手札に持っていれば、必ず出さなければならないというルール。トリテでよく使われる基本的な制約。
ただしManaさんは、専門用語が多いのは他のボードゲームも同じだと指摘します。そもそもボードゲームで遊ぶこと自体が専門用語だらけだというのです。
手札とか山札とか、それもなかなかちょっとわからないっていう人もいますし。
ドロー、カードを引くみたいな形なんですけども、遊戯王ですか?みたいな感じで(普段遊ばない人から)言われたりもします。
トリテにも専門用語は多いものの、その言葉を使わずに説明しようと思えば説明はできる、とManaさんは話します。
マストフォローを言葉で言い換えるとどうなるか
専門用語は、わかっている人にとっては説明のショートカットになる、とManaさんは説明します。マストフォローと言えば、知っている人には一発で伝わるからです。
一方で、専門用語を使わずに同じことを説明するとどうなるかを、Manaさんは実際に言い換えて示しています。
親がまずカードを出して、その親が出したカードと同じ種類のものを持っていた場合は必ず出さなきゃいけない。
持っていなければ何を出してもいい。何を出すかというよりも、もう勝負に参加できないみたいな意味合いが強いので、場にカードを捨てるに近い。
「このゲームはマストフォローですよ」の一言と、いま説明したような言い換えとでは、文字量がそもそも大きく違うとManaさんは言います。
それでも、専門用語を使わない言い方をすれば伝わるはずだ、とManaさんは考えています。マストフォローとだけ言えば初心者は遊べなくても、こう説明すれば普通に遊べるというわけです。
初心者向けじゃないのは説明する側のケア不足なのか
以上を踏まえてManaさんは、初心者向けじゃないと言われる理由は、必ずしも専門用語の多さではないと結論づけます。
専門用語が多いから初心者が扱いにくいという考え方って、多分作者だとか、説明書を作る人、インストをする人が、そこまでトリテ初心者に向けてケアができていないからなんじゃないかなと思います。
つまり、普段トリテで遊ばない人でも理解できる説明やインストができれば、専門用語は大した問題ではないはずだ、とManaさんは話します。インスト ── ボードゲームのルールをプレイヤーに説明すること。インストラクションの略。ゲーム会などでは、経験者が初心者にルールを教える場面を指すことが多い。
ただしManaさんは、みんなが説明を怠っているとは思っていない、とも補足しています。
インストが上手な人は、初心者がいれば専門用語を使わないように説明をしますし、経験者ばっかりだとなったら専門用語でサクッと説明もします。
説明書を書く人も、普段遊ばない人にいかにわかりやすくするかを考えながら書いている、とManaさんは評価しています。
遊び方はわかっても「どう楽しむか」が伝わらない
では、なぜ新規の人が参入してこないのか。Manaさんは、面白さや楽しそうなゲーム展開がイメージしにくいからだと考えています。
ゲーム内容自体はシンプルだ、とManaさんは言います。親から順にカードを出し、持っているかどうかで出す制約が変わり、基本のアクションはカードを出すだけ。それを繰り返して得点の高い人が勝つゲームがほとんどだといいます。
これだけ聞いて面白そうって思えるのかっていうところなんですよ。
自分の手札から、親が出したものによる制約に従ってどれを出すかを考え、結果を見て、また考える。それを繰り返すゲームだと聞いただけで面白そうと思う人は、なかなかいないとManaさんは話します。
大富豪やUNOにはあって、トリテにはない「原体験」
面白さのイメージのしやすさは、過去に似た遊びを経験したかどうかで決まる、とManaさんは指摘します。
例としてゴーアウト系が挙げられます。子供の頃によくやった大富豪のように、手札を捨て切ったら勝ち、出ているものによって変動があるという構造は理解しやすく、面白さもイメージしやすいというのです。ゴーアウト ── 手札を早く出し切ることを目指すカードゲームのジャンル。大富豪やUNOなどが代表例で、トリックテイキングとは別系統の遊び方をする。
大富豪やUNO系、ババ抜き系、神経衰弱系、将棋系など、昔からある有名なゲームに類似していれば面白さをイメージできる、とManaさんは言います。
小さい頃にトリックテイキングで遊んだことがあるという人は、日本人ではそんなに多くないんじゃないのかなとは思いますね。
トランプのナポレオンなど面白いトリテもありますが、それを遊んでいる人はもともとトリテに馴染みがあって好きな人だ、とManaさんは見ています。
トランプのトリックテイキング好きな人って、基本的にトランプのトリックテイキングばっかりやってるイメージはありますけどね。
せーので出し合う遊びに感じた「単純さ」の壁
Manaさんは、多くの人がやったことのあるトランプ遊びを例に、単純さの壁を説明します。手札からせーので出し合い、数字が大きい方が勝ち、それを手札がなくなるまで繰り返す遊びです。
この遊びは、手札コントロールや相手が何を出すかの心理戦があって面白いはずなのに、数回で飽きてしまう人が多いとManaさんは言います。
結局は運ゲーなのかなだとか、手札からひたすら出していくだけだねとか、そういったもので、めちゃめちゃハマって遊んだという話は結構聞かなかったりすると思います。
Manaさんは、これも「やることの単純性」だと分析します。近いことをやっても、それが楽しかったと思っている日本人は少ないのではないか、というわけです。
一方で、実際のトリックテイキングは、出したカードでスートがどんどん枯れていくため、見た目より奥深いとManaさんは言い添えています。
カウンティングも読み合いもある、でも伝わらない
運ゲーに見えても、実際のトリテは違うとManaさんは説明します。出したカードが見えてくるので、強い人はカウンティングをしたり、親が何を打ち込んできたかを読んだりできるといいます。カウンティング ── すでに場に出たカードを覚えておき、まだ出ていないカードを推測するテクニック。トリックテイキングでは相手の手札読みや戦略に直結する。
思考を巡らせるにはとても味わい深く、Manaさん自身も好きだといいます。しかし、その魅力が伝えにくいことが問題なのだと話します。
ルールは説明できたとしても、何が面白いのか、魅力がなかなか言語化しにくいというか、伝えにくいところもありますね。
Manaさん自身、「麒麟」と「ザ・セント・オブ・ジェラシー」という2つのトリテを出しており、トリテ好きには説明が楽な一方、普段遊ばない人にどう伝えるかで頭を悩ませていると明かします。
テストプレイで見えた「やれば面白い」という手応え
Manaさんは、普段トリテで遊ばない人へのテストプレイでの経験を語ります。ルールを説明した段階では反応が薄くても、実際に遊ぶと評価が変わったといいます。
初めルールを説明したときは、あ、そういうやつなんで結構単純ねみたいな感じだったんですけど、実際プレイしてみたら、あ、これ面白いねと。
そのテストプレイをきっかけに、他のトリテもやってみたいとトリテの世界に飛び込んだ人も現れた、とManaさんは話します。
他のジャンルでは、ルールを聞いた段階で「面白そう」「考えそう」という感想が来るのに、トリテはなかなか来ず、「とりあえずやってみようか」になりやすい、とManaさんは振り返ります。
だからこそ、いかにやってもらえるかがポイントだと考えています。トリテはサクッと遊べ、人数や時間の調整も効きやすいため、ゲーム会では登場する機会がそこそこあるといいます。
ボドゲ会に行く人と、仲間内でしか遊ばない人の分かれ道
Manaさんは、トリテと出会える人と出会いにくい人の違いを整理します。ゲーム会に参加する人なら、普段遊ばなくてもやる機会があり、面白さに気づける可能性があるといいます。
一方で、自分が買ったゲームを仲間内でだけ遊ぶ人は、普段遊ばないジャンルに出会う機会がそもそも少ない、とManaさんは指摘します。
そういう機会がない人たちに対して、どうやって面白いよって伝えていいのかっていうのが、なかなか難しいところではありますね。
Manaさんは自身のゲームマーケット出店の経験も語ります。日曜日に出店することが多く、普段ボードゲームで遊ばない人も来店するといいます。ゲームマーケット ── 日本最大級のアナログゲームの展示・即売会。制作者が自作のボードゲームを出展・販売する場として知られる。
トリックテイキングのものはルールを説明しても、あ、そういうゲームなのねとわかったとしても、普段やってないんだなという人に対しては、なかなか反応がやっぱり薄い。
魅力は熱く語れる、でも聞く側にはピンとこない
実際にプレイすれば、思考の深さ、読み合い、手札コントロールなど面白い面はたくさんある、とManaさんは強調します。しかし、その面白さの言語化が難しいといいます。
Manaさんは、スートをあえて枯らしていく選択が取れることや、相手が出したものから状況が見えていくことなど、魅力を熱く語れると言います。スート ── カードの種類・組(トランプでいうスペードやハートなど)。特定のスートが手札から尽きることを「枯れる」と表現し、トリテの戦略に関わる。
聞いただけでは面白さがピンとこないという点にこそ、トリテが初心者向けじゃないと言われる本質があるのではないか、とManaさんは考えています。
「トリテ」と謳わずに広げる手法と、残る課題
うまくやっている例もある、とManaさんは紹介します。根っこはトリックテイキングでも、あえて「トリテです」と宣伝しないゲームです。
全体のゲームの流れやコンセプトが先にあり、その中にトリックテイキングのルールを組み込んで、まったく違う言い方をしているケースがあるといいます。
絶対面白そうって思ってルールを読み解いていくと、実質これってトリックテイキングに分類されるんじゃないのかなとか、そういうふうに思うゲームもちらほらあったりします。
こうしたゲームは普段トリテで遊ばない人も買って遊んでくれる、とManaさんは言います。ただし、遊んで面白いと思っても、それをトリックテイキングだとは認知しないだろうと指摘します。
そのため、この手法だけではトリテ好きを増やしたり一般層に届けたりする課題は解決しないのではないか、とManaさんは見ています。
「何々みたいなゲームです」という言い方も、トリテが日本で浸透していないためにできず、そこがまた難しいとManaさんは話します。
答えはまだない、それでも課題として向き合い続ける
どう説明すればいいか、どう普及させればいいかの明確な答えは、まだ持てていないとManaさんは率直に認めます。
それでも、自身もトリテを作っている以上、課題意識を強く感じ、どうにかしたいと考えていると話します。
いろいろとアイデアだとか、実際に実践した経験とかがどんどん蓄積されていきましたら、この配信でもどんどん公開していけたらなと考えております。
今回は「なんでなんだ」と思考を巡らせる考察回だった、とManaさんは締めくくっています。
まとめ
トリテが初心者向けじゃないと言われる理由は、専門用語の多さそのものよりも、ルールは説明できても「どう楽しむか」がイメージしにくい点にある、というのがManaさんの考察でした。似た遊びの原体験が少なく、魅力を語っても聞くだけではピンとこない。だからこそ「やってもらう機会」をどう作るかが課題として残ります。
- トリテが初心者向けじゃないのは、専門用語ではなく面白さのイメージのしにくさが本質だとManaさんは考える
- 専門用語は言い換えれば説明できるが、その分説明する側のケアが問われる
- 大富豪やUNOのような原体験がある遊びは面白さを想像しやすいが、トリテの原体験を持つ日本人は多くない
- テストプレイでは、ルール説明時の反応は薄くても、実際に遊ぶと面白いと評価が変わる傾向がある
- 「トリテ」と謳わずに組み込む手法もあるが、それだけではトリテ好きを増やす課題は解決しないとManaさんは見る



