テストプレイはなぜ「大変」なのか
ボードゲームを作るとき、企画とルールを固めた後に来るのがテストプレイです。製品化の前に、モックと呼ばれる簡易なコンポーネントを用意して実際に遊んでみる工程です。
テストプレイをやらないと、ルールの穴や、頭の中では面白いと思っていたのに実際は面白くない、といった問題に気づけません。遊びやすさなど、様々な観点を確認する重要な工程です。
Manaさんは、テストプレイはやればやるほどいいと話します。ただ、実際にやろうとすると大変な点が多いといいます。
まず、メンバーを集めるのが大変です。2人用ゲームなら1人見つければできますが、同じ人とばかりやると意見やプレイスタイルが偏ってしまいます。
多人数プレイのゲームだと、メンバー集めはさらに大変です。場所や時間の問題があり、みんなの予定を合わせる必要があります。
テストプレイは本当、繰り返し何回も何回もやっていきたいですし、思いついた時にこんなんどうだろうだとか、ちょっと調整してみようだとか、そんなレベルでも実際やってみたいわけなんですよ。
ところが、ちょっとした修正のために人を集めたり、モックを作り直したりするのは負担が大きい、とManaさんは指摘します。
オンラインで隙間時間にテストプレイする発想
そうした課題の中で、最近はデジタルを活用する制作者が増えているとManaさんは見ています。オンラインでテストプレイができるという発想です。
日中にみんなが集まる形ではなく、隙間時間にそれぞれの家からサクッと参加できます。「テストプレイやってくれる方募集」と声をかけると、そこそこ集まってくれることもあるといいます。
様々な人とテストプレイができる点も、オンラインの利点として挙げられます。
TRPG発の2Dツール「ココフォリア」
Manaさんが最初に紹介するのがココフォリアです。もともとTRPGのオンラインセッションでよく使われているツールだといいます。
ココフォリアは2D、つまり平面上に様々な画像を配置できるツールです。カードやタイルを置いたり、ダイス機能を使ったりできます。
デザインがしっかりしていなくても、数字を使うゲームなら「1234」といった数字の画像を用意するだけで、簡単なカードゲームが作れるとManaさんは説明します。
裏と表の概念もあり、自分からは表だが相手からは裏、といった状態も再現できます。しかも無料で使えるのも利点です。
誰かにURLを送って、ルームを立てましたよみたいな形で参加していただいて。あとはDiscordとか、通話をしながらテストプレイを実際に行うことができる。
Manaさんは、ココフォリアがスイッチ2に対応するというニュースにも触れ、一度慣れておくと将来的にも期待が持てるのではないかと話します。
3Dで機能拡張が続く「ユドナリウムコネクト」
もう1つ、最近よく見かけるツールとしてManaさんが挙げるのがユドナリウムコネクト、略してユドコネです。同じくルームを立てて招待し、同じ空間で画面上のものをいじれます。
ココフォリアとの違いは、ユドコネが3Dである点です。縦の概念があり、空間をぐるぐる回すこともできます。Manaさん自身もよく使うといいます。
機能拡張も続いており、制作者のDiscordで要望を出すと実装してくれたり、新機能の意見を積極的に求めたりする開発スタイルだと紹介します。
ユドコネはボードゲーム専用に近いツールで、今後に期待が持てるとManaさんは話します。
オンラインツールならではの使い方として、VTuberへの案件依頼が挙げられます。実物では手や顔が映ってしまうため依頼しにくいですが、オンラインでテストした後に本番のデザインデータを当てはめれば、VTuberにも遊んでもらえるといいます。
デジタルなら修正が楽という強み
これらのオンラインツールのもう1つのポイントが、修正のしやすさです。
テストプレイを進めると、カード枚数を変えたい、数字のバランスを変えたい、といった要望が出てきます。リアルのテストプレイでは、毎回モックを作り直したり書き換えたりするのが大変です。
ちょっとテキストの効果を変えたいよって時は、元画像のテキストを変えて、改めてユドコネとかココフォリアでポンとアップロードして登録するだけ。差し替えとかもできる。
Manaさんは、どんどんブラッシュアップして、数を多く繰り返してプレイしながら高めていく用途にはこれらが最適ではないかと話します。ユドコネも無料で扱いやすいといいます。
なお、Manaさん自身の作品では、ココフォリアで「バーストオブマナ」、ユドコネで「ザ・セント・オブ・ジェラシー」が遊べるようになっていると紹介しています。
物理演算もできる有料ツール「テーブルトップシミュレーター」
次にManaさんが紹介するのは、有料のテーブルトップシミュレーターです。Steamで配信されているツールだといいます。
ユドコネと同じく3Dで、さらに物理演算が内蔵されています。そのため、ジェンガのように高さや傾き、重力に影響するゲームもテストできる点が特徴です。
コマをコピペで増やしたり、盤面にデザインを当てはめたりでき、3Dなので視点も回せます。コマを掴んで移動させて離す動作もでき、実際のプレイ感にかなり近い状態で試せます。
Manaさん自身も、スイワークスさんという出版社にゲームデザインをライセンス提供した「ウカオの丘」というアブストラクトゲームで、このツールを使ったといいます。
本当一番初めは、デフォルトで用意されているようなコマを利用して、盤面とかも適当にマジックで描いたようなもの、そういったもので用意してテストプレイをしておりました。
デザインが出来上がってきたら実際に当てはめてテストする、という繰り返しで組み立てていったといいます。
さらに、3Dでカメラワークを変えられるため、プレイした様子をキャプチャーできます。箱の裏やパッケージに載っているような「遊んでいる姿」の写真も撮れる点は便利だとManaさんは話します。
無料で使えるオンラインツール。ココフォリアは2D、ユドコネは3D。ルームを立てて招待し、隙間時間に手軽にテストできる。
Steamで配信される有料ツール(4000円ほど)。3Dで物理演算を内蔵し、重力や傾きが関わるゲームもテストできる。
テーブルトップシミュレーターは4000円ほどで買え、資金に余裕があれば導入もありだとManaさんは話します。ただ、オンライン対戦は購入者同士でのプレイになるかもしれないので、改めて調べたいと補足しています。
AIにテストプレイをさせるという新しい潮流
ここまでのツールはやや前からある手法ですが、最近はAIを使ったテストプレイも研究されているとManaさんは話します。まだ自身も勉強中だといいます。
確率論や、こうなったら次はこうなる、といった展開をAIに計算させる考え方です。クロードなどは物体を動かすことも自由度高くできるため、自分とコンピュータの対戦ができるようになるといいます。
さらに、積極的にプレイする人、保守的にプレイする人といった性格をAIに設定し、そのAIたちと遊ぶこともできると説明します。
クロードを使ったテストプレイは、本当一人でやろうと思ったらできてしまいますので、それを活用してみるっていうのもいいのかなと思います。
テストプレイの質も変わるとManaさんは指摘します。人が相手だと、実際に起きたゲーム展開しかテストできず、網羅的に確かめるには膨大な回数が必要です。
AIを使えば、自分が参加すると偏りが出るところを、AI対AIで様々な展開を機械的に実行させ、AIに評価してもらうこともできるようになってきているといいます。Xでもそうした投稿を見かけるそうです。
性格を設定したAIを用意
積極的・保守的など、異なるプレイスタイルの登場人物をAIで作る
AI対AIで多数の展開を実行
人手では網羅しきれないゲーム展開を機械的に走らせる
AIに評価してもらう
ルール上のバグや不正が起こらないか、堅牢性を確認する
AIで確かめられること、人でしか確かめられないこと
一方でManaさんは、面白いかどうかは生身の人間でプレイしてみる必要があり、AIだけで完結するとは思わないと話します。
ゲームのルール自体の質というか、堅牢性、いわゆる不正が起こらないとか、ルール上のバグですね。それがないかどうかっていったものは、AIを使ってテストができるのかなと思います。
面白いかどうかは、オンラインで繰り返し遊ぶのもありだが、リアルの方が空気感が伝わっていいとManaさんは続けます。
微妙だと感じたとき、面と向かって「面白くない」と言える人は少なく、顔が見えないオンラインではなおさら伝わりにくいと指摘します。リアルなら、作業になっているのか、悩んでいるのか、めんどくさがっているのかが表情や空気感でわかるといいます。
遊びやすさはリアルでしか見えない
Manaさんは、ルールが面白くても遊びにくいと面白さが半減すると話します。
リアルでやると、どんなコンポーネントがいいか、コマの大きさやダイスかカードか、といった点が見えてきます。極端な例として、手札50枚はオンラインならできても、リアルだと手に持ちきれない、といった問題が挙げられます。
遊びやすさや没入感、コマを出して移動させるのにどれくらい時間がかかるか、といったことが全部見えるのはリアルなオフラインのテストプレイだとManaさんは話します。
ただし、それは最終チェックの位置づけです。そこに至る過程では繰り返しテストすべきなので、オンラインツールを活用したり、AIで事前に品質を高めたりできるようになってきている、というのがManaさんの整理です。
Manaさんは、テストプレイのやり方は今後変わっていくのではないかと展望します。AIでリアルな人物像を設定し、実際に盤が動く形で手軽に遊べるようになれば、とてもやりやすいといいます。
今はその辺りを勉強中で、やり方が明確になってきたら配信やXで共有していきたいと締めくくっています。
まとめ
テストプレイは繰り返すほど良いものの、人集めや場所、修正の手間で回数を確保しにくい工程です。ManaさんはオンラインツールとAIで下地を作り、最後はリアルで確かめるという役割分担を提案しました。
- テストプレイは重要だが、人集め・場所・時間・修正の手間で繰り返しにくい
- ココフォリアは2D、ユドコネは3D、どちらも無料でオンライン開催と修正がしやすい
- テーブルトップシミュレーターは有料だが物理演算で重力の関わるゲームも試せる
- AIはルールの堅牢性やバグの確認、網羅的な展開のテストに向く
- 面白さ・遊びやすさ・没入感の最終確認は、空気感が伝わるリアルが最適



