公開情報と秘匿情報とは何か
Manaさんはまず、公開情報と秘匿情報という2つの概念を整理しています。公開情報とは、自分だけでなく他のプレイヤーも見られる共通の情報のことです。
一方の秘匿情報については、自分だけが見えていて他のプレイヤーが見られないものや、さらには自分さえも中身がわからないものがある、と説明されています。
この違いは、ゲームを作るうえで重要な要素になると話されています。どういうプレイ感を与えたいのかが、ここで大きく変わってくるためです。
「見えている方がフランク」は実は逆
Manaさんは今、新作のテストプレイを進めていて、公開でも秘匿でもどちらでも成立してしまうため悩んでいる、と明かしています。ガチガチにバトルしたいのか、フランクに遊びたいのか、どちらが最適かを考えている段階だそうです。
ここでManaさんは、直感に反する指摘をしています。みんなが見えている方が楽でフランクに遊べそうに思われがちだが、実は逆だというのです。
理由は、情報が多く共有されているほど、全員が平等に情報を知ったうえでの戦いになるからだと説明されています。だからこそ情報が公開されているほど、ガチガチな勝負になっていくというわけです。
将棋・サイコロ・じゃんけんで見る情報の度合い
公開情報の極端な例として、Manaさんはアブストラクトゲームを挙げています。将棋やチェス、そして自身の作品バーストオブマナが該当するとのことです。
アブストラクトゲームでは、ルールも、自分の持ち物も、相手の持ち物も、盤面の駒の配置も、すべてが見えている状態だと説明されています。その中で相手の行動を予測し、自分が有利に進めていくゲームです。
ちょっと想像してみてください。あれしっかりやるとしたら、完全にもうガチガチのバトルですよね。
反対に、情報が一切公開されていない場合はどうか。ある程度の心理戦や駆け引きは発生するものの、想定しきれないため、確率論などを持ち出して戦うスタイルになるとManaさんは話します。
自分さえもわからないランダム性の例として挙げられたのがサイコロです。出目は運任せなので、そこを深く考え込んでも仕方がなく、いい目・悪い目を楽しむフランクな動きになる、という整理です。
では、じゃんけんはどうか。何を出せるかという情報しかなく、相手が次に何を出すかはわからないため、これもある種の秘匿情報だとManaさんは位置づけます。
じゃんけんには心理戦や癖、駆け引きが介在するので面白さは生まれます。ただ、それでも運任せの部分が大きく、考え込みすぎてもゲームが有利に進むわけではない、と述べられています。
新作がどちらでも成立してしまう悩み
Manaさんの新作は、カードを獲得して役を作っていくゲームですが、これが公開でも秘匿でも成立してしまう点が悩みどころだと語られます。獲得したカードを公開するのも一つの面白いポイントなのだそうです。
一般に、麻雀やポーカーでは自分が狙っている役を隠すのが基本です。ただそれは確率論や心理戦、つまり秘匿情報が多い状態になる、とManaさんは指摘します。
秘匿型の楽しみは、相手の動きから何を狙っているか予測することにあります。ただ、明確に相手を邪魔することはなかなか難しい、というのがManaさんの見方です。
反対に、相手の持ち物がすべてオープンで、次にこれを取ったら相手が有利になるとみんながわかる状態なら、妨害行動が明確に発生します。自分はいらないカードでも、相手に取らせないために先に取る、といった動きです。
自分はちゃんと有利に進めたい。だけど他からも全然妨害されてしまうっていうガチガチなバトルができる、それがカードを公開しているっていう状態。
相手の狙いが全員に見えるため、明確な妨害行動が発生し、ガチガチなバトルになる
麻雀のように相手の役を予測する楽しみはあるが、明確な妨害は難しく秘匿情報が多くなる
フランクさと戦略性のトレードオフ
Manaさんは、秘匿型のゲームにも難しさがあると話します。相手の役を予測する楽しみはあるものの、考え込んでもわからず、かといってフランクにやりすぎると戦略性がなくなってしまうというのです。
フランクに寄ると、相手に関係なく自分の得点を高めるだけの動きになりがちです。誰でもできるという点ではよいものの、みんなで勝負する楽しみがどうなるか、という懸念が語られます。
さらに秘匿型でしっかり戦おうとすると、カードのカウンティングなどが必要になります。フランクにも誰でも遊べる一方で、本気で取り組むには負荷がかかる、というのがManaさんの整理です。
ランダム性は「弱い人にも勝ち目」を生む
Manaさんは、秘匿やランダム性のあるゲームでは、強い人も弱い人も勝つ可能性がある点を利点として挙げています。ランダム性があるからこそ、実力差が結果に直結しにくいのです。
一方で完全公開のゲームでは、弱い人がいきなり勝つことはそうなく、強い人が勝つゲームになると説明されています。同じ相手と何度もプレイすれば、強い人が勝ち続けがちだそうです。
チェスや将棋のように、情報格差も運の要素も秘匿情報もなくなると、純粋なゲームの強さでのガチバトルになる、とManaさんはまとめています。
熱き戦い、そして格差が生まれるような結果を出したいのであれば、情報はできるだけ公開しておく。
反対に、フランクに遊んで勝った負けたと楽しんでほしいなら、情報は隠しておくのがいいというのがManaさんの結論です。目指す体験に応じて情報の公開度を選ぶ、という考え方です。
情報はできるだけ公開する。強い人が勝つガチバトルになる
情報を隠す。運の要素も入り、弱い人にも勝ち目が生まれる
新作の方向性がデザインにも及ぼす影響
Manaさんの新作は、公開か秘匿かがなかなか決まらず、悩ましいと語られます。少し変更しながらもう一度テストプレイをして、最終的にどちらに行くかを決める予定で、ギリギリまで悩みそうだとのことです。
この方向性は、見た目のインターフェイスにも影響します。公開ならテーブルにオープンで置けますが、自分だけが知る状態なら手札として持つやり方を考える必要がある、と説明されています。
必要なコンポーネントや配置、盤面の見え方も方向性次第で変わるため、考え直さなければならないとManaさんは話します。カード自体のアートワークは別で進んでいるものの、方向性が固まらないと説明書も固まらず、デザインの進行が鈍化しているそうです。
使われないルールは、いっそ削る
Manaさんはここから、ルールの足し引きという別の話題に触れています。面白いと思って足したルールでも、テストプレイでは全然使われないことがある、というのです。用意したアクションのうち特定のものが使われない、といったケースです。
使われない理由はいくつかあると整理されています。使いどころがわからない、進行のリズム感が悪い、考えるのやアクションがめんどくさい、あるいは勝つための思考のルートがそこまで至らない、といった可能性です。
Manaさんの場合、そうしたルールはいっそのこと削ることもあると言います。幅は広がって面白いが使われず、リズム感を損ない、コンポーネントも増えるなら、排除する判断をするそうです。
具体例として、トランプのような4スートの色の強さがあり、途中で色の強さをチェンジできるギミックを入れていた話が挙げられます。しかしテストプレイではチェンジできるのにしない、という結果でした。
結構これチェンジをしておくと強かったりだとかいろいろ考えてはいたんですけども、実際に使われないっていう点がありました。
そこでManaさんは、スートの強さはゲーム開始時にあらかじめ決めてしまい、そのルールの中で戦ってもらうスタイルに変えようと考えている、と話しています。ルールを追加すべきか外すべきかという考え方も、今後発信していきたいとのことです。
遊ぶ側も「得たい体験」で選べる
Manaさんは最後に、この視点は制作者だけでなく遊ぶ側にも役立つと話します。どういう体験を得たいのかで、情報が公開されているか隠されているかを見るのがポイントだ、というのです。
ガチガチにバトルしたい人は、情報ができるだけ公開されているゲームを選ぶとよいと勧められています。フランクに遊びたい人は、情報が隠されていたり運でわからない要素があるものを選ぶと、自分に合ったゲームに出会えるとのことです。
そして制作者は、自分がどういう体験を与えたいのかを考えて、情報の公開レベルを検討するといい、とManaさんはまとめています。
まとめ
公開情報か秘匿情報かは、ボードゲームがガチガチのバトルになるかフランクな遊びになるかを左右する重要な軸です。Manaさんは新作でどちらにするか悩みつつ、目指す体験から逆算して選ぶ考え方を語りました。
- 情報が公開されているほど、平等な条件でのガチガチな戦いになる
- 秘匿やランダム性が高いほどフランクになり、弱い人にも勝ち目が生まれる
- 公開か秘匿かはインターフェイスやコンポーネントの設計にも影響する
- 使われないルールは、リズムやコンポーネントの負担を考えていっそ削る判断もある
- 遊ぶ側も制作側も、得たい・与えたい体験から情報の公開度を選ぶとよい





