そもそも手札運とは何か、なぜ悩ましいのか
この回のテーマは「手札運を緩和する」です。手札運とは、ゲーム開始時に配られた札や駒の初期状態にあたるもので、配牌運とも呼ばれます。
Manaさんによれば、いくらルールがしっかりしていて戦略を練れるゲームでも、一番初めの初期状態だけはどうしても平等になりません。
もちろん、配られた内容に応じて戦略を柔軟に変える面白さはあります。ただ、初期の状態は結局は運なので、理不尽なほど勝てない状態からスタートすることもあると話されています。
もう手札運ないわだとか、今回配牌運ないわだとか、そういった状態で全然勝てないような状態からスタートっていうような時もあったりします。
これは制作者として悩ましい点だといいます。手札運が悪いとやる気をなくしたり、「面白くないじゃん」と思われたりする可能性があるからです。
どんな手札でも戦えるゲーム設計という理想
緩和策の一つが、手札が最悪でもちゃんと勝負になるようゲーム展開を設計することです。どんな状態でも戦えるかを制作段階で詰める発想です。
Manaさんは具体例として、数字の強さで勝負が決まるゲームを挙げます。上限が9なら、8や9のハイカードだけで揃った手札が最強、1や2など弱いカードだけで揃った手札が最弱になります。
重要なのは、その一番弱い手札でも、一番強い手札の相手に勝つ道筋があるかどうかだと話されています。
それを設計できていれば、配牌運や手札運はそこまで意識する必要がなく、状況に応じた戦略選択に面白みが出るといいます。
ただし、これは簡単ではありません。手札運の影響を消しすぎると、カードの強さそのものが薄まり、強いカードを引いたときの手応えや喜びも失われる恐れがあります。
強いものが引かれた時にそれを中心に考えるであったりだとか、それが配られてよっしゃって嬉しいだとか、そういった展開、感覚といったものも失われてしまう恐れがあるんですね。
複雑さや深みは増すものの、そこにも一長一短があり、ゲームによると整理されています。
複数ラウンド制で運を平準化する手法とその落とし穴
もっとも手っ取り早い緩和策として、Manaさんは複数回戦う方式を挙げます。3回戦って一番勝った人が優勝、といったルールです。
3回もやれば、毎回最悪の手札ということはなかなか起きず、運の要素が平準化され、いわゆる中央値に向かっていくと説明されています。この方式を採る作り手は多いのではないかとも話されています。
一方で、この複数ラウンド制には見過ごせないデメリットがあると指摘します。手札運以外の、プレイヤーの強い弱いが前の回から引き継がれてしまう点です。
たとえば1試合目と2試合目で大敗した人は、3試合目でもう逆転できないことがあります。そうなると3試合目は消化試合になってしまいます。
最下位の人は別にその優勝争いに参加できないですし、本当1位とか2位の人の戦いをするための、人数合わせというか、コンピューター的な役目をやらなきゃいけない。
逆転できないとやる気を失いやすく、プレイの終わり方こそが後々の印象として強く残るとManaさんは言います。
1試合目が面白くても、3試合目の消化試合がつまらなければ、そのゲームの印象は「面白くなかった」になりかねません。これは再プレイ性や口コミにも影響すると考えられています。
さらに再プレイの手間も増えます。もう一度遊ぼうとなれば、また3セットを繰り返すことになり、時間がかかって重くなり、そこでリプレイしてもらえない場合もあると話されています。
いっそ1ゲームで割り切るという選択
逆に、手札運が悪かったのはしょうがないと割り切ってしまうのも手だとManaさんは提案します。複数ラウンドをルールで縛らず、1ゲームごとに勝敗を決めて区切る考え方です。
もちろん手札運は強く出ます。ただ、1ゲームが手軽で、配られた手札が最悪で負けたなら、むしろもう一度やりたくなるのではないか、というのがこの発想の核です。
1ゲームが手軽で、で、一回配られた時に手札運が最悪だった、それで負けたってなると、もう一回やりたくなりませんか?
その繰り返しが何回か続けば、結果的に運は平準化されていきます。何回やれば平準化されるかの判断を、遊ぶ人に委ねてしまうわけです。
運を薄める作業をユーザー自身の再プレイに委ねることで、懸念していた運の要素は自然と減っていくとManaさんは話します。
そうすると、最終的な終わり方が「デッドヒート面白かった」になります。みんなが理不尽な手札のまま終わるのではなく、納得できるまで遊んでもらえるからです。
いわゆるみんながみんな手札の運が最悪だったっていう理不尽がないような状態でプレイをするっていうところまで繰り返し遊んでもらえる。
ただし、初めに配られた時点でやる気がなくなるほど完全に運ゲーなゲームは良くないと釘を刺しています。ある程度のものなら、判断をユーザーに委ねるのはありだという立場です。
1ゲームごとなら、ルールもシンプルでわかりやすく、隙間の時間でも遊べます。ボドゲ会で卓が空くのを待つ間に、軽く1ゲームやろうという場面でもサクッと使えると話されています。
割り切りが原価とコンポーネントに効く理由
Manaさんは、割り切ることには遊びの楽しさだけでなく、材料費や原価にもいい影響があると指摘します。
複数回ゲームをまたぐ方式では、得点や前のゲームの状況を記録する必要があります。理想は、他のものがなくてもそのゲームだけで遊べる状態だと話されています。
そうすると、得点を記録するカードや紙を商品に同梱する必要が出てきます。それはコストがかかり、箱の中身を圧迫して箱も大きくなりがちです。
一方、1ゲームで割り切れば得点を引き継ぐ必要がなく、得点記録用のコンポーネントそのものが不要になります。総合で遊びたい人は、自分たちで勝利条件を決めればよいという整理です。
コンポーネント削減
得点記録カードなどが不要になる
コスト低下
材料費が下がり箱も小さくできる
販売価格の低下
売価が下がりユーザーが手に取りやすくなる
遊びやすさ
1プレイで終わるので気軽に遊べる
なお、ルールで決められた必要なコンポーネントは、できる限り用意しておくべきだとも補足されています。委ねるのはあくまで再プレイの回数などであって、必須の道具を省くことではありません。
新作で単体決着を選んだManaさんの実感
今回の話題は、Manaさん自身が現在進めている制作から出てきたものです。以前は複数回プレイして総合で決める形のゲームを多く作っていたといいます。
今作でも初めは手札運を感じ、ラウンド制で平準化しようかと考えたそうです。ところが実際には手札運がそこまで強くなく、展開も戦略も十分にできるゲームだったと話します。
それでも最強・最弱の手札は発生してしまうため、ラウンド制にするか悩んだうえで、単体決着でも十分成り立つと判断したといいます。
全然単体でも、単体決着でも十分成し得られるかなっていうふうに思いましたので、次の新作みたいなものはそういうふうにしていこうかなというふうに思っている。
制作過程で自分の中に「どちらがいいか」という迷いが出たからこそ、この考え方は発信する価値があると感じ、今回のテーマにしたと締めくくっています。
まとめ
手札運は、どんなに設計を詰めても完全には消せない運の要素です。Manaさんは、複数ラウンドで平準化する方法と、1ゲームで割り切る方法を比較しつつ、割り切りが遊びやすさとコストの両面で効くと語りました。
- 手札運・配牌運は、ルールが優れていても初期状態だけは平等にできない
- どんな最弱手札でも最強手札に勝つ道筋を作れれば緩和できるが、設計は難しい
- 複数ラウンド制は運を平準化する反面、逆転不能な消化試合を生みやすい
- 1ゲームで割り切ると再プレイをユーザーに委ねられ、終わり方も楽しくなりやすい
- 割り切りは得点記録用コンポーネントを省け、コスト・売価・遊びやすさに好影響がある



