スタピ決めがゲーム展開を左右する理由
番組「ボードゲームの天下取り」、通称ボドテンの今回のテーマは、スタートプレイヤーの決め方です。ゲームを開始するにあたって、誰が一番初めにアクションを行うのかを決める方法について考えていきます。
制作者のManaさんは、自分でボードゲームを作る際にも、どうスタートプレイヤーを決めるか悩むことが多いといいます。ルールに決め方が書かれているゲームもあれば、書かれていないゲームもあります。
なぜこれが重要かというと、多くのゲームは先行が有利だからです。一番初めにアクションするプレイヤーが有利なゲームでは、誰がスタピをやるかが展開に大きく影響します。
なかなか誰がスタピをやるのかっていうものが、ゲーム展開にとても重要な要素になったりすることもあります。
そこで公平性を期すために平等に決めようと考えたり、揉めないようにまず決めるルールを足したりといったパターンが生まれます。今回は実際のゲームを紹介しながら、それぞれのメリット・デメリットや、どういう意図でそう決めているのかを見ていきます。
古いゲームに多い「一番若い人から」の意図
まずManaさんが挙げるのは、古いゲームに多い「一番年齢が若い人からスタート」という決め方です。様々な年齢の人が混ざって遊ぶことや、家族での遊びを想定したゲームに多い決め方だといいます。
その背景には、多くのボードゲームが頭を使ったり、相手の感情を読み取ったりするテクニックを要する点があります。全般的に、小さい子供の方が勝つための思考を巡らせるのは弱い場合が多いという見方です。
家族でトランプなどをやるときに、一番小さい子に「お先どうぞ」と譲る場面を、Manaさんは例に挙げます。先行が有利だからこそ、自然とハンデを渡す意味合いがあるといいます。
やっぱり先行が有利っていうところを、自然とハンデを渡すみたいな、そういった意味合いもあるんだと思います。
ただし、この決め方には問題点もあります。同じメンバーで遊ぶと、毎回スタートプレイヤーが固定化してしまう点です。
スタピが固定されると、後攻なりの楽しみ方を味わいにくくなります。これは実力差をできる限りフェアに標準化しようという意図の決め方だと、Manaさんは整理します。
ダイスとじゃんけん、運で決める方式の違い
平等さを重視するなら、運の要素に頼る方法もあります。ダイスを振って数字が一番高い人がスタート、という決め方は完全に運なので、かなり平等になります。
この方式の難点は、少し面倒くさいことです。運で決めるためのひと手間がユーザーにかかってしまいます。それでも一番平等だろうとManaさんは話します。
一見同じ運の要素に見えるのが、じゃんけんで勝った人からスタートという方式です。ただしManaさんは、じゃんけんはダイスとは少し違うと指摘します。
じゃんけん自体もある意味ゲームだからです。本番のゲームの前に小さなミニゲームで勝敗を決めて、スタートプレイヤーを決めていると捉えられます。
じゃんけん自体もある意味ゲームなわけなんですよ。本ちゃんのゲームの前に、ちっちゃなミニゲームで勝敗を決めて、それでスタートプレイヤーを決めましょうよっていうようなもの。
この考え方を重めのゲームに広げると、前のゲームで勝った人が次に有利に進められる仕組みを積み重ねる、ラウンドやフェーズで段階的にルールが変わるゲームにも近づきます。じゃんけんをミニゲームと捉えると、自分のゲームの展開の幅も広がるとManaさんは話します。
鬼遊びに見る「決め方が展開に影響する」仕掛け
ミニゲームとは少し違いますが、スタピ決めのアクションがその後のプレイに影響するかどうかも、Manaさんが注目するポイントです。
例として挙げるのが、Manaさんの作品である2人対戦ゲーム「鬼遊び」です。先行後攻の決め方は、山札からカードをドローし、数字が高い人が先行になります。
ポイントは、決めるのに使ったカードをそのまま得点記録のカードに使ってしまう点です。つまりスタピ決めの段階で、2人ともランダムに山札から2枚を失うことになります。
山札から引いて、そのカードでどっちが先なのかって決めたら、それをそのまま得点記録のカードに使っちゃうんですね。
そのため、重要なカードが消えたり、バランスよく配分された数字のバランスが崩れたりします。運で平等に決まりつつ、その結果がその後の展開に影響する仕掛けを、Manaさんは気に入っていると話します。
「最近◯◯した人から」が生む没入感と会話
最近のゲームにとても多いのが、「最近◯◯した人から」という決め方です。ゲームの世界観に合ったフレーバーとしてスタピ決めをルールに書く方式です。
例として、香水をテーマにした「ザ・セント・オブ・ジェラシー」では、最近魅力的な香りを嗅いだ人からスタートする、といったルールが挙げられます。
Manaさんによれば、これは順序の差をそこまでガチガチに意識しないゲームで使われます。誰が先行でもいいけれど、自由に決めるとつまらないので、没入感を高めるために世界観のフレーバーとして定義しているという解釈です。
もう一つの効果が、ゲーム開始前に自然と会話が生まれる点です。魅力的な香りのエピソードを各自が話す必要があり、初めて一緒に遊ぶ人ともコミュニケーションを経てプレイに進めます。
(ザ・セント・オブ・ジェラシーだと)その魅力的な香りのエピソードをみんな話す必要があるんですね。それで、そんなのあったんだ、っていうようなコミュニケーション。
一方で、毎回エピソードトークをやるのはしんどいので、何度もプレイしている人はじゃんけんや「この間負けたから何々先ね」で決めても問題ないとManaさんはいいます。それでもこうした決め方は面白いので、単純に好きだと話します。
「◯◯を持っている人から」に隠れた情報公開
手札に特定のカードを持っている人からスタート、という決め方もあります。例えば「スペードのエースを持っている人から先行」といった形です。
一見完全にランダムで平等に見えますが、ここにも隠された意図があるとManaさんは指摘します。鬼遊びと同じく、その時決まったものがその後のプレイングに影響する点です。
「何々を持っている人からスタート」と言われると、その人がそのカードを持っていることが他のプレイヤーにバレるからです。
指定されるのが強いカードや特殊なカードの場合もあり、それを持っているとバレた状態でどう立ち回るかがプレイングに影響します。それさえ面白くする狙いなら、ゲームの深みに関わるスタピ決めになると、Manaさんは整理します。
連続するゲームで親が変わる仕組みの選び方
ここまでは、ゲームを最初からスタートする場合の話でした。複数ラウンドや複数ターンを行うゲームでは、途中で親やスタートプレイヤーが変わる方式が問題になります。
よくあるのが、一つ前のゲームで勝った人からスタートという方式です。これが一番多く、勝った人が勝ち続けられるメリットから、このタイミングで勝ちたいという思考が働きます。連続性が重要なゲームに向いた決め方です。
ただし、連チャンで勝ち続けると一方的になってしまう難点があります。その偏りを防ぐには、勝敗に関係なくスタピが一定のルールで変わっていくスタイルもあります。
例えば、プレイヤーの人数分だけラウンドを回し、勝ち負けに関係なく一人一回はスタピをやる、当番制で順繰りに回す方式です。とても平等だとManaさんは評価します。
当番制は、調子に乗っているときに勝ち続ける面白さは少し削がれます。それでもフェアな仕組みだといえます。
連続性のあるゲーム向き。勝ち続けるメリットが生まれるが、一方的な展開になりやすい
人数分ラウンドを回すなどして一人一回スタピを担当。とても平等だが、勝ち続ける面白さは削がれる
また、スタートプレイヤーが単に先行というだけでなく、特別な役割を持つ場合もあります。1対3のように、ディーラーのようにゲームをコントロールする役や、一人だけ目的が違う役を、順番に回していくパターンです。
こうした方式なら、みんなに一巡してチャンスが平等に巡ってきます。特別な役割を公平に分け合う狙いがあるといえます。
適当に見えて深い、作者の意図を読み解く楽しみ
いろいろ紹介してきましたが、一見みんな適当に決めているように思えるスタピ決めも、実はゲームごとに変えられています。なぜこの決め方なのかを考えると、裏の読みや狙いが見えてくるとManaさんは話します。
スタピ決めに悩む作り手には、今回のメリット・デメリットを参考にしたり、まったく新しいユニークな決め方を開発したりしてほしいと呼びかけます。
Manaさんは、作者の意図を感じ取ること自体がボードゲームの楽しみ方の一つだといいます。それはクラシック音楽を聴くときに、作曲家の背景を想像する楽しみに近いと例えます。
そうした視点を意識してボードゲームを見てみるのも面白いのではないか、というのが今回の締めくくりです。
まとめ
スタートプレイヤーの決め方は適当に見えても、公平性・没入感・その後の展開への影響といった作者の狙いが隠れています。決め方ごとのメリットとデメリットを知ると、遊ぶ側も作る側も新しい視点を得られます。
- 古いゲームに多い「若い人から」は、実力差をフェアにする一方でスタピが固定化しやすい
- ダイスは平等だが手間がかかり、じゃんけんはミニゲームとして展開に応用できる
- 鬼遊びや「◯◯を持っている人から」は、決め方の結果がその後のプレイングに影響する仕掛け
- 「最近◯◯した人から」は世界観の没入感を高め、開始前の自然な会話も生む
- 連続ゲームでは「勝った人から」か「当番制」かで、勝ち続ける面白さと公平さのバランスが変わる

