なぜ多くの制作者はゲームマーケットに新作を合わせるのか
この回のテーマは、ボードゲームの新作をゲームマーケットに合わせて発表すべきか、という問いです。
ボードゲームの発表機会にはいろいろな選択肢があります。完成したタイミングで通販を始める人もいれば、地方イベントで初めてお披露目する人もいます。
そのなかでも、多くの人はゲームマーケットに合わせて新作を作り、そこでお披露目していると、Manaさんは見ています。
Manaさん自身の見解は明確で、ゲームマーケットにそこまで固執しなくていいのではないかというものです。
ただし、作り始めたばかりの頃は、ゲームマーケットは華々しい舞台で憧れの場所だったとも話しています。何作も出すうちに、当初の理想と実情との小さなズレを感じるようになったそうです。
ほんと華々しい舞台というか、ゲームマーケットに出れたらいいな、ゲームマーケットで販売したいなというような思いのもと、ボードゲームは作り始めておりました。
納期があるから作品は完成する
固執しなくていいと言いつつ、結局ゲームマーケットに落ち着いてしまうのも実情だと、Manaさんは話します。理由の一つが、年に2回という開催サイクルです。
制作者にとって納期はとても重要だと、Manaさんは繰り返し強調します。納期がなければ、永遠にブラッシュアップを続けてしまうからです。
納期もなければですね、ある意味永遠と作っていくわけですよ。もう作るたびに何かしらここ直したいなだとか、ブラッシュアップしたいなといったものは、もうずっと永遠と続いていきます。
多くの人はボードゲームを作りたいと思っても、なかなか完成させられません。だからこそ、作品を完成させられるだけでもすごいことだと、Manaさんは言います。
そして、ボードゲームの制作にはとにかく時間がかかります。ルール検討からテストプレイ、アートワーク、説明書、製造、広報までを積み上げると、体感で半年ほどかかるそうです。
この半年サイクルで考えると、次の作品のリミットとして次のゲームマーケットがちょうどよく、結果的にそこがターゲットになっていくと説明します。
通販のほうが売れる、という実感
ここからは、合わせなくてもいいのではないか、という側の話に移ります。
Manaさんの場合、ゲームマーケット当日の販売より、通販などのほうが実際の販売個数は多いそうです。
ゲームマーケット当日よりも通販とかそういったところの方が、実際売上というか販売してる個数は多いです。
これは日曜のみの出展という事情もありますが、当日に集まれる人数には限りがあるためだと考えられます。ゲームマーケット当日以外に買ってくれる人が、Manaさんの場合はとても多いのです。
Xやこのポッドキャストなどオンラインでの広報をメインにしていることも影響しているといいます。そうなると、時間や場所はあまり関係なく、自分が納得できたものを自分のタイミングで出せばよいと考えているそうです。
ただし、自分のタイミングだと発表日をなかなか決めきれないという難しさもあると付け加えています。
予約は「雰囲気」で取るしかない、という難しさ
ゲームマーケットで新作をお披露目する場合、売上を伸ばすにはいかに予約を取るかが勝負になります。
予約を取る段階では、まだ売れてもいなければ口コミもありません。だからこそ「面白そう」という雰囲気やプロモーション、予約への導線設計、ストーリー性での勝負になりがちです。
予約の取り方といったものは、やっぱり前情報、それこそまだ売ってもいなければ、もう口コミとかもないわけですし、ほんと雰囲気ですね。
作った後にプロモーションの時間を十分に取ることが予約獲得のコツではあります。ただ、みんなが同じタイミングでやるため、埋もれてしまうという問題もあると指摘します。
販売のピークを現場に合わせるという発想
そこで出てくるのが、初お披露目ではなく販売のピークをゲームマーケットに合わせる、という考え方です。
具体的には、名古屋の楽市のようなゲームマーケットより前のイベントで新作を先に発表し、そこである程度販売してしまう方法です。
先に売れば、実際に遊んだ人の口コミや販売実績が生まれます。その情報が出回った状態で、より多くの人が訪れるゲームマーケットで販売するという流れです。
前のイベントで発表
地方イベントなどで新作を先にお披露目・販売
口コミ・実績が生まれる
遊んだ人の声や販売実績が出回る
ゲームマーケットで予約促進
実績をもとに予約が伸びやすくなる
なんとなくの雰囲気だけで予約を取るのではなく、どれだけ売れたかという実績や、実際に遊んだ人の声を同時に使えるため、予約促進につながると説明します。
ゲームマーケットならではの特別さも残る
一方で、ゲームマーケットには他にはない特別さもあると、Manaさんは認めています。
多くの人が訪れ、インフルエンサーの紹介やプレゼントキャンペーンで盛り上がり、注目度が高い場だからです。
さらに業界関係者も多く訪れます。そこでのお披露目が商業出版や、店舗・流通・問屋からの買い付けの申し出につながることもあり、これはゲームマーケットならではだと話します。
ただし、ピークをそこに持っていければ十分注目は浴びられるとも考えています。みんなが同じことをするため埋もれるという課題も、変わらず存在します。
地方イベントに感じている価値と、口コミの質
Manaさん自身も、ゲームマーケットより前のタイミングでの発表に何度もチャレンジしていますが、制作に時間がかかることや、地方イベントの出展申し込みが半年前と早いことがネックになっています。結果として、今のところ新作はゲームマーケットに合わせるサイクルになっているそうです。
その一方で、地方イベントには価値があると感じています。前回の回で触れたように、ゲームマーケットは来場者も出展者も増え、1ブースあたりの客数が減っているという見立てがあります。
地方イベントは来場者も出展者も少ないものの、出展者数が少ないぶん1ブースあたりに来る客数はむしろ多い場合があると指摘します。ゲームマーケットほど混雑しないため、作者自身がルール説明や作品への思いをしっかり伝えられるのも利点です。
Manaさんは、この違いが口コミの質にも関わると考えています。ゲームマーケットで雰囲気で買ってもらうと、合わなかったという人も出やすく、次の口コミにつながりにくいからです。
だからこそ、雰囲気作りだけで戦うより、ゲーム本来の内容で勝負したい人は、地方イベントなど前のタイミングで発表し、しっかり告知していくのがよいのではないかと話します。
この話題は、Xで「新作をゲームマーケットに当てるべきか」が議論になっていたことがきっかけだったとも明かしています。Manaさん自身も、制作サイクルをずらしながらあちこちに遠征し、自分のボードゲームを広げていきたいと考えているそうです。
まとめ
ゲームマーケットは憧れの舞台であり、業界関係者も集まる特別な場ですが、必ずしも新作の初お披露目に固執する必要はない、というのがManaさんの見解です。納期としての使いやすさは認めつつ、通販や地方イベントを含めて発表タイミングを柔軟に考える姿勢が語られました。
- ボードゲーム制作には半年ほどかかり、納期があるからこそ作品は完成する
- 年2回のゲームマーケットは、次の作品のリミットとして使いやすい
- Manaさんの場合、当日より通販のほうが販売個数は多い
- 前のイベントで先に発表すれば、実績や口コミを武器にゲームマーケットの予約を促進できる
- 地方イベントは1ブースあたりの客数が多く、作品を丁寧に伝えて口コミの質を高めやすい



