なぜ弁理士事務所に「ファミマの入店音」の問い合わせが届くのか
TBSの夕方のニュース番組「Nスタ」のスタッフから、弁理士の岡村さんのもとに突然電話がかかってきました。ファミマの入店音を作曲した稲田康さんを紹介してほしい、という依頼です。
岡村さんの事務所には、以前から同じような問い合わせが定期的に届いています。2〜3年前に番組で稲田さんをゲストに招き、ファミマの入店音の作曲の経緯や著作権の考え方を聞いた回があり、その動画がYouTubeで見つかるためです。
結構そのYouTubeから流れ着いて、ぜひ音楽使わせてくださいみたいな、問い合わせがうちに来るんですよね。
あやさんは、この流れを稲田さんがそれだけの大家である証拠だと受け止めています。調べた人が、稲田さんとのつながりがあり、しかも著作権の話をしている番組にたどり着き、「ここに聞けば間違いない」と考えるのだろうという見立てです。
別にお金取ってるわけちゃうから。(稲田先生に)繋いでるだけやから。嘘ではない。
マネジメント事務所ではないものの、実際に紹介がきっかけで話がまとまったケースもあるといいます。岡村さんは、ホームページの記載を直す必要があるかもしれないと笑っています。
過去の配信
作曲家の稲田康さんをゲストに、作曲の経緯と著作権を聞いた回を配信
検索でたどり着く
入店音を使いたい人やメディアがYouTubeで番組を見つける
問い合わせ
稲田さんとつながりのある岡村さんの事務所に連絡が入る
紹介
岡村さんが稲田さんへ取り次ぐ
今回の「Nスタ」の依頼は、収録の前日、12日木曜日の午前中に届きました。何の話をするのか尋ねると、サウンドロゴの話題だといいます。
岡村さんは一瞬ためらいます。サウンドロゴといえば商標の話になりそうですが、ファミマの入店音は商標登録されていないはずだからです。それでも稲田さんのコメントをフリップで出したいという話だったため、つなぐ意味はあると判断しました。
で、今日放送ですって言われて。
依頼を受けたその日が放送日だったことに、岡村さんは驚きます。一方で、あやさんは「ニュースはそういうもの」と返します。毎日の企画会議で決まった内容が何度も差し替えられるのが当たり前で、1週間前の話では遅いという感覚です。
放送された「音商標」特集で何が差し替えられたのか
岡村さんはすぐに稲田さんへ連絡し、先方との話もつながったようでした。あやさんはたまたまテレビで「Nスタ」を見ていて、画面に「音商標」の文字が出たことに驚いたといいます。
あやさんによると、ニュースの流れは次のようなものでした。企業のサウンドロゴを歌うカラオケの全国大会があり、そこから音商標とは何かという話題に広がった、という構成です。
放送では「伯方の塩」のような有名なCMのサウンドロゴが紹介され、スタジオでは女性アナウンサーがミスタードーナツのサウンドロゴを歌っていました。ところが、その後に出てきたのは立体商標など、音とは関係のない商標のフリップでした。
そこまではサウンドロゴながらやってんけど、なんかこういうのがありますつって、立体商標とか字商標フリップ出して。全然関係ないやん。
結局、ファミマの入店音と稲田さんのコメントは放送に登場しませんでした。商標登録されていないことが理由なのか、連絡が時間に間に合わなかったのかはわからず、岡村さんは急きょ差し替えたのだろうと推測しています。
岡村さんは、音商標の話をするなら、すでに音商標 ── 音を使った商標。日本では2015年から登録できるようになり、CMで流れるサウンドロゴなどが登録されていますとして登録されている「伯方の塩」などを流すほうがよかったのではないかと話します。あやさんは、それがプロの目線とテレビの作り手の目線の違いかもしれないと受け止めています。
音商標として登録済みで、放送でも紹介された
サウンドロゴとは言えるが商標登録はされておらず、放送では取り上げられなかった
岡村さんは、番組の動画から引用し、出所をきちんと示してもらえれば許可を取らずに使ってもらってもかまわない、とも話しています。テレビに名前が出る一歩手前だった、という笑い話で締めくくられました。
音商標クイズの次回作には「歌詞あり」が加わる?
放送を見て、岡村さんは音商標をもっと面白く紹介できると感じたといいます。「松竹梅」や関西電気保安協会のように、音商標として登録されているサウンドロゴは身近にたくさんあります。
以前番組で出題した音商標クイズはイントロだけでしたが、次は歌詞のあるサウンドロゴも紹介したい、というのが岡村さんの構想です。ファミマの入店音には歌詞がないため、ここが新しい切り口になります。
いいね。共通で盛り上がれるのがいいね。男女世代超えて。
あやさんは関西電気保安協会の歌詞を「いい歌」と絶賛しますが、岡村さんは「口ずさめるのは関西の人だけでは」と返します。深い専門知識がなくても楽しめるのが音商標の魅力だ、という点で二人の意見は一致しています。
岡村さんは、音商標クイズでも許可取りではなく著作権法上の引用 ── 一定の条件を満たせば、他人の著作物を許可なく自分の作品に取り込める著作権法上のルール。出所の明示などが求められますの形で流すつもりだと話しています。
あやさんが広告業界で注目されていると紹介したのが、NetflixによるWBCの独占配信です。地上波で中継されないため、テレビ局も映像を使うにはNetflixから権利を買う必要があります。
一方でNetflixは、有名なYouTuberやインフルエンサーを何人か選び、試合映像を使う許可を与えていました。宣伝してもらうことが狙いで、YouTuberにとってもテレビ局ですら権利が必要な映像を使えるのはうれしい話です。
一応規約はあるのよ。あの、日本戦以外の試合も1試合以上取り上げることとかね。
あやさんは、地上波で放送されないため、WBCは世の中全体というより局所的に盛り上がっている印象があると話します。その穴をインフルエンサーで埋める手法に、広告業界が注目していたといいます。
さらにNetflixは、許可を与えたパブリックビューイングも実施していました。会場にはNetflixの担当者もいて、契約が難しい高齢者などにも届けたいという趣旨が示されていたそうです。
しっかりこの階段を上げるアプローチをこっちからしに行くってところがね、すごくなんかいいなと思いました。
あやさんは、無料だと思われてきた映像コンテンツを、単に「お金を払え」と迫るのではなく、自分から届けに行く形で有料に導く点を評価しています。
| 対象 | 方法 | ねらい |
|---|---|---|
| テレビ局 | 映像の権利を販売 | 権利ビジネス |
| YouTuber・インフルエンサー | 規約つきで映像の使用を許可 | 地上波がない分の話題づくり |
| 契約が難しい人 | 許可したパブリックビューイング | 高齢者などへのアプローチ |
「Netflixは時代遅れ」という声に何が欠けていたのか
岡村さんは、YouTuberへの開放もパブリックビューイングも知らなかったと驚きます。前々回の配信で扱った論点では、法律に詳しい人たちから「地上波ならスポーツバーで流せたのに、今回は流せない」「DAZNと比べてNetflixは時代遅れ」という声が出ていました。
多分今の話ね、知らんのかなっていう気もするよね。
あやさんは、ルールの話と広告の観点は別物だと整理します。岡村さんも、前々回はあやさんと一緒に話したほうがよかったと振り返っています。
スポーツバーで流せなくなり、DAZNと比べて時代遅れという声
インフルエンサーへの開放やパブリックビューイングで、自ら視聴者に届けに行く手法
岡村さんは、WBCの周辺で起きていたことも紹介します。ラジオの実況アナウンサーが40時間かけて相手選手の資料を作ったという話や、映像の権利を買っていないテレビ番組で、宮根誠司さんや元野球選手など4人が試合を見ながら解説する姿だけが流れていたという話です。
視聴者は試合映像を見られないため、Netflixで試合を見ている人でないと意味がわからない番組です。それでも、あやさんは副音声のように楽しむ人がいるのだろうと話し、甲子園のラジオ中継と同じだと付け加えます。岡村さんは、野球のラジオ中継が昔からあることに改めて気づいたと話しています。
岡村さんの「アイデア革命」出演で流せなかった曲とは
エンディングでは、岡村さんが知人の「おっくん」の番組「アイデア革命」に出演した話が出ます。これまでの話に加え、新しく掘り起こしてもらった話もあり、楽しかったといいます。
番組では曲を流す予定でした。当初は、この番組のエンディングに使っていたあやさんのリクエスト曲「ニューホープ」を候補にしていましたが、JASRAC ── 日本音楽著作権協会。作詞家・作曲家などから音楽の著作権を預かり、放送局などへの利用許諾と使用料の徴収を行う団体の管理下にない曲だったため、ラジオでは流せませんでした。
第1候補
番組のエンディングに使っていた「ニューホープ」
確認
JASRACの管理下にない曲だとわかり、ラジオでは流せない
代案
二人が高校生のときにライブに行った太陽族の「手をつなぐ」
岡村さんはリクエストを送る段階で権利関係を調べ、流せないだろうと見越して代案も送っていました。最後は、岡村さんに商標の依頼をしてきた大企業の担当者が奈良出身だった話など、関西ノリの雑談で締めくくられています。
まとめ
この回は、ファミマの入店音をめぐる取材依頼の裏話から、音商標の紹介方法、はるな愛さんの半生を描いた映画、NetflixのWBC配信戦略まで、知財と広告の視点が行き来する雑談回でした。
- 過去回の動画をきっかけに、岡村さんの事務所にはファミマ入店音の作曲家への問い合わせが定期的に届いている
- 「Nスタ」の音商標特集では、商標登録のないファミマの入店音は取り上げられず、岡村さんは登録済みのサウンドロゴを流すほうがよかったと話した
- あやさんは『This is I』を、違法とされた時代に手術を受け、努力で一番を勝ち取ったはるな愛さんと医師の物語として絶賛した
- NetflixはWBC映像をインフルエンサーに開放し、パブリックビューイングも行うことで、自ら視聴者に届けに行く手法をとったと紹介された
- ルールの視点だけでは見えない広告の視点があり、両方を合わせると見え方が変わるという点で二人は一致した





