課題設定力とは何だったのか、前編の振り返り
この回は、サエキタカフミさんが「課題設定力」について話す前後編の後編です。冒頭では、サエキさん自身が「なんか小難しそうですね」と笑いながら、前編で話した課題設定の構図を振り返っています。
サエキさんの説明では、課題設定はまず「何のために、何を目指すのか」というゴールを置くところから始まります。次に現在の状況を考え、ゴールラインとスタートラインのあいだの距離を「問題」と呼びます。
さらに、その問題を引き起こしている原因、つまり真因を分析します。真因を潰すためのテーマを「課題」と呼び、その課題を解決する手段を考えていく、という順番です。
前編で語られた課題設定の流れを整理すると、次のようになります。
ゴール
何のために、何を目指すのかを決める
現状と問題
現在の状況を考え、ゴールとのギャップを「問題」と呼ぶ
真因
問題を引き起こしている原因を分析する
課題と手段
真因を潰すテーマを「課題」とし、解決の手段を考える
この後編でサエキさんが話すテーマは2つです。1つは「なぜそんな面倒なことを考えないといけないのか」という問いです。もう1つは、案外難しいと感じている「ゴールの置き方」についての考えです。
なぜ面倒な課題設定をするのか?「無駄撃ち」をしたくない理由
課題設定をする理由について、サエキさんがまず挙げるのは「効率的になる」ことです。その根っこには、無駄撃ちをしたくないという気持ちがあると語っています。
無駄撃ちをしたくないんですよね、僕は。
サエキさんは、思いがけない出会いや偶然の価値を否定しているわけではありません。ただ、偶然だけに期待するのではなく、自分の目論見どおりに物事を進めようとする中にも、思いがけない出会いはあるはずだと考えています。
課題設定が必要な理由として、サエキさんは時間とお金が有限であることを強調します。例として挙げたのは、自分の年齢でした。
僕は今35歳ですけど、この35歳の1年っていうのは365日しかないわけですよ。
あと35歳の1年っていうのは大体180日ぐらいしかないわけですね。で、それを過ぎてしまうと35歳にはもう戻れないんですよ。知ってました?皆さん。
当たり前のことをあえて口にするサエキさんの語りには、時間は基本的に取り戻せないという実感がこもっています。時間もお金も人も、自分を取り巻く環境は有限なものばかりだ、というのがサエキさんの見立てです。
サエキさんによれば、思いつくままにやって成果が出る人もいますが、それは結果的に成果が出ただけです。実際には、成果が出ない失敗の場合のほうが多いと考えています。
成功者がよく「自分は実際は失敗ばかりですよ」と話すのも、そういうことだとサエキさんは受け止めています。だからこそ、なるべく失敗しないように考えるべきだという結論になります。
サエキさんの言葉はここで少し厳しくなります。有限なリソースから目をつぶらず、自分を律して考える覚悟や執念がないのであれば「その程度かな」と思ってしまう、と率直に語っています。
それをサボって成果が出ないのをあれのせい、これのせいにして言ってる、なんか他責的な人っていうのは、もうその程度の人なんだなって思ってたりするんですけど。
なんか急に口が悪くなってすいません。
サエキさんにとって、課題設定思考は全ての基礎のようなものだといいます。「これだけやっときゃ十分」とまで語り、なぜやるのかという問いには「やった方がいいから、正直それだけ」と答えています。
ゴールは「あるべき」か「ありたい」か
2つ目のテーマは、目標やゴール、理想をどうやって作るかという話です。サエキさんは、ビジネスの文脈では「TOBE ── 英語の「to be」に由来し、ビジネスでは「あるべき姿」「理想の状態」を指す言葉として使われます。現状を指す「As Is」と対で使われることが多いです」と呼ばれる「こうあるべき」という姿が、ある程度自動的に定まっていくと話します。
ビジネスでの「あるべき姿」は、会社の経済状況や部門に課せられたミッションなどから決まってきます。ただしサエキさんは、その「あるべき姿」は既存の枠を超えず、あまり自由度がないものだと感じています。
そこでサエキさんが提案するのが、爆発的な成果を出したいときは「あるべき」ではなく「ありたい」で考える、という発想です。TOBEに対する言い方として、サエキさんはこれを「wannabe ── 英語の「want to be」を縮めた言葉で、「〜になりたい人・もの」を意味します。サエキさんは「ありたい姿」の意味で使っています」と呼んでいます。
あるべきではなくて、ありたいって考えた方がいいと思うんですよ。
サエキさんによれば、「こうありたい」でゴールを置くと、既存の枠を無視して「でも俺はこうありたいんだ」という思いから全てが定まっていきます。その結果、手段を実行するモチベーションも内発的になり、推進力や枠にとらわれないブレイクスルーにつながると考えています。
サエキさんが語る2つのゴールの置き方を比べると、次のようになります。
会社の状況やミッションから自動的に定まる。既存の枠を超えず、自由度が低い
既存の枠を無視して自分の思いから定まる。内発的な動機が推進力になり、ブレイクスルーが起きやすい
一方で、サエキさんは「ありたい姿」の難しさも認めています。ありたい姿は基本的にあるべき姿より上に来るため、どれだけやってもギャップが縮まらない感覚が生まれうるといいます。
僕自身はね、自分を否定する回路が回っちゃうところもあって、なんか悩ましいなと思ったりするんですけど
それでもサエキさんは、音楽活動については「こうあるべき」や「このポジションで戦った方がいい」ではなく、どうありたいかを今一度定めて施策を打っていきたいと話しています。
WillCanMustでゴールの位置を考える
締めくくりにサエキさんが紹介したのは、リクルートが作ったとされる「WillCanMust」というフレームワークです。「ありたい」「あるべき」といったゴールの考え方を、3つに分類して整理するものだと説明しています。
サエキさんの説明では、Willはやりたいこと、Canはできること、Mustはやらないといけないことです。3つの輪が全部重なるところが、やりたいし、やれるし、やってほしいと思われている「スイートスポット」になります。
ただし、3つが全て重なることはなかなかない、とサエキさんは話します。そのうえで、どの位置を目指していくのかを考えるとよいとしつつ、この話は別のポッドキャストで話したいと述べています。
最後にサエキさんは後編の内容を振り返り、普段からこうしたことを小難しく考えながらいろいろやっていて「疲れてます」と笑って回を締めています。
まとめ
課題設定力の後編でサエキタカフミさんは、時間もお金も有限だからこそ無駄撃ちをせずに課題設定をするべきだと語りました。さらに、大きな成果を狙うなら、ゴールを「あるべき姿」ではなく「ありたい姿」で置くという考え方を示しています。
- 課題設定は、ゴール・現状・問題・真因・課題・手段の順に考える構図
- 時間やお金などのリソースは有限なので、思いつきではなく課題設定で無駄撃ちを減らす
- toBe(あるべき)は自動的に定まるが、既存の枠を超えにくい
- wannabe(ありたい)で置くゴールは内発的な推進力になる一方、ギャップが縮まらない苦しさも生む
- WillCanMustの3つの重なりを手がかりに、どの位置を目指すかを考える





