なぜ今「Will・Can・Must」を語り直すのか
サエキタカフミさんは、上場企業のサラリーマンとして働きながら、ミュージシャン活動を兼業しています。このポッドキャストは、そんなサエキさんの頭の中にある雑多な思考を吐き出しておく場所だと紹介されています。
今回のテーマである「Will・Can・Must」は、番組で以前に2回触れたことのある整理法です。「やりたいことは会社ではなく自分でやればいい」という回と、課題設定力を話した回の後編で登場していました。
サエキさんはその際「また別でやります」と予告していたため、今回あらためて取り上げることにしたそうです。調べ直したところ、以前に話した内容には違っていた点もあったといい、その訂正も含めて前後編で語る構成になっています。
調べた結果、ちょっと僕違ってたこと言ってたんですけど、その訂正みたいなのも含めて、また今回も前後編に分けてやっていこうかなと思っております。
リクルートの目標管理シートに込められた本当の狙い
「Will・Can・Must」がリクルート ── 求人広告や人材サービスなどで知られる日本の企業グループ。独自の人材育成や組織運営の手法でも知られています発祥の考え方だという点は、サエキさんの理解どおりでした。サエキさんはリクルートの採用サイトの記載を確認し、社内での実際の使われ方を紹介しています。
多くの会社では、期初に活動の目標を立て、半期や1年を通して上司と振り返り、評価をつける流れがあります。リクルートでは、その目標管理シート ── 期初に立てた目標と、その達成度を記録して上司と共有する書式。評価面談の土台として多くの企業で使われていますに「Will・Can・Must」の整理を入れているそうです。
採用サイトの説明によると、Willは本人が実現したいことです。Mustは業務上やらなければならないことや、自身の能力開発につながるミッションを書く欄だといいます。
サエキさんが勘違いしていたのはCanの欄でした。Canには今できること、つまり生かしたい強みを書くだけでなく、克服したい課題のように「これからできるようにしたいこと」も書くそうです。
今できることだけじゃなくて、その伸びしろみたいなものも含めてCANの部分に書くそうなんですね。
さらに、3つの円を描いて重なる部分を探すのではなく、上司との対話の中で3つの円をなるべく重ねに行くための道具だといいます。やりたくて、やれる、あるいは今後やれる伸びしろがあることが、やらなければならないことと一致する状態を目指すフォーマットだということです。
リクルートでの狙いは、面談をした本人が主体性を持って動けるようにすることだそうです。サエキさんは、解説記事で広まった内容を表面的にだけ受け取っていたと振り返っています。
Canは今できること。3つの円の重なりを探す整理法
Canには伸びしろも含む。上司との対話で3つの円を重ねに行く道具
感情が生まれるたびに置き場所を問う使い方
本来の使い方を知ったあとも、サエキさんは自分のやり方を否定するつもりはないといいます。サエキさん流の「Will・Can・Must」は、目標設定の節目に書き出すものではありません。
サエキさんは「やりたいな」「やった方がいいのかな」「こんなことやれそうだな」といった感情が生まれたとき、それが3つのどこに置くべきものかを癖として考えているそうです。
それやりたいって僕今口では言ったりしてるけど、それって実際、それをやらなきゃならないっていう、使命感的なものなのか、環境が僕にそう言わせてるのか。
そう考えると、口では「やりたい」と言っていることも、実はWillではなくMustに置くべきものかもしれない、という思考をしているといいます。
本家との一番大きな違いはMustの定義です。リクルートのシートでは、組織から課されたミッションがMustになります。一方でサエキさんにとってのMustは、課せられるものというより強いられるものだと自己分析しています。
サエキさんの言うMustには2種類あります。1つは世間一般で「普通こうあるべき」とされる世間体を気にした規範的なもの、もう1つは世の中や生物の仕組み上やらないと回らない構造上のものです。
子供がいる以上、なんもしないとね、ご飯あげないと死んじゃうんで、やらないと回らないっていうもの、そういう側面もね、否定はできないと思うんですよ。
サエキさんは、育児が完全にMustだというわけではないとしつつ、Mustに近い側面もあると話しています。
組織から自分に課せられたミッションや、能力開発につながる課題
世間体からくる規範や、育児のように構造上やらないと回らない「強いられるもの」
奈良の三輪素麺で抱えた罪悪感は、Mustか、Willか
サエキさんは、この整理を使った具体的なエピソードとして、家族で奈良県へ出かけた休日の話をしています。大阪に住むサエキさんの家族は奈良県の雰囲気が好きで、よく遊びに行くそうです。
その日は、天理や橿原のあたりで有名な三輪素麺を食べてみたいと、思いつきで出かけました。ただ家族みんな起きるのが遅く、出発は12時ごろで、食べ始めたのはかなり遅い時間になったといいます。
子どもたちは朝食も遅く、道中は車で寝ていたため、辛い思いはしていなかったかもしれないとサエキさんは話します。それでも、遅い昼食は夕食や就寝の遅れにつながり、世間体的には罪悪感を感じるべき振る舞いなのではないかと考えたそうです。
せっかくのパパママといれる土日って、(子供たちは)もっとフルに遊びたかったりするのかなとか思うと、なんかすごいね、こう美味しかったんですけど、なんか罪悪感みたいな気持ちをずっとね、抱えてたんですよ。
一方で、お店では店内で流し素麺ができ、子ども用・大人用の素麺を水の流れに入れて食べられる仕組みでした。そのエンタメ性も目当てで選んだお店で、案の定、子どもたちはとても楽しそうにしていたといいます。
食べ終わるころには、サエキさんは「これはこれで来てよかった」と感じたそうです。スタートが遅れても、30分や1時間だけでも新鮮な経験をさせるのはいいことだと納得でき、それを今後もしたいというWillに置き直したと話しています。
遅い出発
12時ごろに思いつきで奈良へ出発し、昼食が遅くなる
Mustの罪悪感
世間体的に子どもに悪いことをしているのではと感じる
子どもの反応
流し素麺で子どもたちが楽しそうにする
Willへ置き直す
短時間でも新鮮な経験をさせたいという自分のやりたいことだと納得する
本業はCan・Must、副業はWillという割り切り
最後にサエキさんは、サラリーマンとミュージシャン・発信活動を兼業する立場から、本業と副業の仕分けについて語っています。ビジネスパーソンとしての仕事が本業で、発信や音楽活動は副業にあたるという位置づけです。
サエキさんの仕分けでは、やりたいこと、つまりWillは副業である個人事業としての発信や音楽活動で実現します。やれることややるべきこと、つまりCanとMustは本業に紐づいており、そちらでしっかり実行して稼ぐという考え方です。
副業は基本Willに特化した、こうやりたいを実現する場所。やらねばとか、これは一応できるよねみたいなことを実現する場所ではない。
サエキさんがこの割り切りを置こうとしているのは、副業でもつい「これも一応できる」「これはやっておかなきゃ」と考えてしまう性分があるからだそうです。せっかくやりたいことのための場所を作っているのに、その考えに駆られるのはもったいないと話しています。
Can・Mustの場所。やれることや求められることでしっかり稼ぐ
Willに特化した場所。やりたいことを実現する
前編はここで締めくくられ、後編では、こうした仕分けをしているにもかかわらず起きることについて話す予定だと予告されています。
まとめ
サエキタカフミさんは、リクルートの目標管理で使われる「Will・Can・Must」を調べ直し、その本来の狙いを確認しました。そのうえで、日常の感情や本業・副業の線引きに、自分なりのやり方で応用していることが語られました。
- リクルートの「Will・Can・Must」は、上司との対話で3つの円を重ねに行き、主体性を引き出すための目標管理の道具
- Canには今の強みだけでなく、これから克服したい課題や伸びしろも含まれる
- サエキさんにとってのMustは、世間体や構造上の都合から「強いられるもの」
- 奈良の三輪素麺での罪悪感も、振り返るとWillとして置き直せた
- 本業はCan・Must、副業はWillの場所として割り切ろうとしている




