神戸のパーティー会場から、なぜ特別編?
今回の「あらたま・いくおのマネジメントRadio」は特別編で、二人は神戸で開催されたCTO Night & Day 2026 ── 日本各地のCTOや技術経営者が集まるカンファレンス。2026年は10月19日〜21日に神戸で開かれ、Findyが主催に名を連ねていますの会場から収録しています。
いくおさんによると、CTO Night & Dayは年に1回開かれ、日本全国のCTOが知見を持ち寄ったり、同じ立場の人にしか分かち合えない悩みを共有したりして、明日から前に進むためのイベントです。
俺たちもうCTOじゃないけどな。
CTOじゃなくなって結構久しいんだけど、しれっと潜り込んでることで定評があるイクオ。
あらたまさんは、このイベントで話される内容が基本的にオフレコである点を挙げます。そうした前提があるからこそ、参加者は安心して相談を持ち込めるといいます。
悩み、一緒に悩んでるのってなんか自分だけじゃないねみたいなことがわかるだけでもちょっと救われるっていうか。
あらたまさん自身、かつて強く悩んでいた時期にこのイベントで救われた経験があり、今年も呼んでもらえて嬉しいと話しています。収録はイベント最終日のクロージングパーティー中で、通りがかった参加者を捕まえて話を聞くという趣向です。
ひぐちさんの一言から始まった公開収録
最初のゲストは、YAMAPのCTOであるひぐちさんです。ひぐちさんは普段からこの番組を聴いているリスナーでもあります。
目の前でその二人のやりとりが聞けてすごく感動してます。
いくおさんが福岡・ホライズンテクノロジー株式会社主催の勉強会で著書『エンジニアのための自己管理入門』について話した際、ひぐちさんも参加しており、飲みの席で番組を聴いていると伝えられたそうです。そして神戸のCTO Night & Dayで収録したらいいのではと提案したのも、ひぐちさんでした。
というわけでマイクを買いました。
ひぐちさんのCTO Night & Day参加は6回目か7回目ほどで、初参加は2015年か2016年ごろ。間を空けながら参加を続けているそうです。あらたまさんがひぐちさんと初めて会ったのは、2022年の長崎開催の回でした。
いくおさんは、このイベントが毎年違う土地で開かれる点に触れます。IT企業は東京などの都市圏に集まりがちですが、あえて東京から離れた場所で、非日常の空間の中でたっぷり議論するのが特徴だといいます。
初参加者が5割、輪に入りやすくする工夫とは
ひぐちさんは今回の感想として、新しい参加者が多く、新しい出会いがあったと話します。いくおさんによれば、参加者のおよそ5割が初参加だったそうです。
あらたまさんが評価したのは、初参加者だとひと目でわかる設計です。初参加者はストラップの色が違うため、4〜5回参加している側からも話しかけに行きやすかったといいます。
こうした交流の工夫から関連して、一同は初参加の頃を思い返します。あらたまさんの初参加はオンラインで、しかもパネル登壇でした。
オンラインで。しかもパネルに呼んでいただいて、喋るんですけど、その喋る先の人のこと全員知らないみたいな。
当時のあらたまさんはCTO候補として採用されたものの、会社にまだ執行役員制度がなく、肩書は開発部長だったそうです。CTOというラベルの付いた人たちを前に、かなり緊張していたと振り返ります。
いくおさんはもう一つの交流施策として、かざすと名刺代わりになるカードが前回に続いて配られたことを挙げます。あらたまさんも、初対面の人ともそうでない人とも、カードをかざし合うことが話しかけるきっかけになると話しています。
CTOの次のキャリアは「無限大」なのか
ひぐちさんが今回参加した目的は、今後のキャリアパスのヒントを探すことでした。CTOに限らず、エンジニアからも「今後どうしたらいいのか」という相談を受けることが多いそうです。
明確な答えが見つかったわけではないものの、ひぐちさんは「結局は自分の取り組み方次第」だと感じたといいます。CTOとして新しいことに挑戦する人、CEOになった人、CTOを降りてFDE ── Forward Deployed Engineerの略。顧客の現場に入り込み、製品の導入や活用を技術面から支えるエンジニアの役割を指しますというロールを作る人など、CTOの先にさまざまな展開があることが、セッションからも表れていたそうです。
あらたまさんは、M3の山崎さん山崎さんの表記のセッションを紹介します。山崎さんはCTOやCPOなどのタイトルを数えると「八冠王」だと話していたそうです。
CTOのNextキャリアっていう問いに対して、「狭めて考えすぎるのは良くないよ」みたいなことを明確に言っていて。
「キャリアは無限大なんだから、その時一番いいと思ったものをやったらいいんだよ」みたいなことをおっしゃってて、みんなエンパワーされてましたね。
なぜ神戸? 100人規模が集まるのは日本だけ
収録中に、イベントを運営するAWSのはまーんさんが加わります。番組のリスナーには「ハマーン様」でおなじみの名前で、会場は笑いに包まれました。
はまーんさんによると、開催地は毎年、東京からできるだけ離れたオフサイト感のある場所を選んでいます。ただし、夜に繰り出せる繁華街があり、100〜200人を受け入れられる場所となると候補は限られるそうです。沖縄や北海道は毎年候補に挙がり、今年は仙台や福島も挙がったといいます。
その中で今年は神戸がよいのではという判断があり、はまーんさん自身が神戸出身で、関西に戻りたい気持ちもあったと明かしています。
はまーんさんは、CTO Night & Dayが前年からAPAC中心に各国で開かれていることにも触れます。100人や200人が集まっているのは日本だけで、日本の盛り上がりには違った色があると話しています。
「しくじり先生」はなぜ一番の人気コンテンツなのか
続いて加わったのが、primeNumberのVPoEで、青いストラップを付けた初参加のヤマカンさんです。
面白かったですね。3日間パワー使ったなという。
ヤマカンさんは今回、しくじり先生 ── CTO Night & Dayの名物セッション。外には出せない失敗談と、そこから得た学びを登壇者が赤裸々に共有します。コロナ前から続いていますにも登壇しました。内容はオフレコのため、番組では語られていません。
いくおさんは、しくじり先生が成り立つ条件として、コミュニティの積み重ね、オフラインの安心感、そして「ここの人たちなら漏らさないだろう」という信頼関係を挙げます。知見を外に発信することを大事にしている二人でも、しくじりは言いづらかったり、言えなかったりするといいます。
いいこといっぱいあるけど、失敗もいっぱいあるんですよ。そうやって学んでいくっていうものだと思うんで。
運営側のはまーんさんによると、このセッションには「一人の失敗は誰かの学び」といったキャッチフレーズがあり、CTO Night & Dayの一番の人気コンテンツであり代名詞だといいます。いくおさんは、CTOは社内に同じ立場の人がいないことが多く、失敗事例を聞く機会が貴重だと補足しています。
ヤマカンさんがこのイベントに来たきっかけは、AWSから届いた紹介を受けて、自社のCTOに「せっかくだから行ってみないか」と勧められたことでした。
そうやってなんか前進んでないとなんにも見えないと思うんで。
しくじり先生の魅力について、いくおさんは、大きな失敗をした人がそこに立っていること自体に価値があると話します。
あらたまさんは、登壇者が苦しかった経験を一度内省し、誰かの学びになるコンテンツへ昇華させるプロセスこそが尊いと語ります。失敗を内省してコンテンツに昇華させる過程を経たからこそ、登壇者は笑顔で生き生きと話せるのだといいます。
失敗の経験
当時は大変だった出来事
振り返り
やったことを棚卸しする
言語化
ぼんやりした気づきを、何を学んだかとして言葉にする
ノウハウ化
話す側にも聞く側にも学びとして残る
ヤマカンさんにとっても、初めてVPoEを務めた約1年を棚卸しするタイミングがこの登壇だったそうです。運営側のはまーんさんは、話す側がラーニングに変えるための場になっている点がいいと話し、いくおさんは「ただの愚痴や露悪的なものではなく、前を向いている」とまとめています。
AIトランスフォーメーションで、CTOの役割はどう変容する?
話題は、今回の参加者やセッションにキャリアの多様性が目立った点に戻ります。はまーんさんは、SNSでも「CTOを辞めて別のロールになります」といったニュースが多かった今年、キャリアは一つのテーマだったと話します。
今回のイベント全体のテーマはAIトランスフォーメーションでした。はまーんさんは、それに関わる部分として人や組織、そしてCTOを含むリーダーのロールそのものも変わっていくと語っています。
いくおさんは、参加者それぞれが現場で経験している変化を「点」にたとえます。それが集まると、キャリアや事業にも影響が及んでいることが「面」として浮かび上がり、自分が普段向き合っているものだけではわからないことが見えたといいます。
自分の現場で経験している、個別のAIによる変化
集まることで見える、キャリア・プロダクト・事業にまたがる変化
あらたまさんは、二人が主催するEM Conferenceでも今年、テーマに「変容」というキーワードを加えたことを紹介します。求められるケイパビリティも変容し、変化を余儀なくされる時代感があるからだといいます。
このCTONightでも自然に、「あ、もう変容してんな」っていうのがむちゃくちゃ体感できる。
参加者の5割が入れ替わったフレッシュさについて、はまーんさんは、CTOでなくなった人や違うロールの人が増えていることや業界トレンドの変化を挙げ、新しい人を巻き込むことに運営として挑戦していると話しています。
参加者が持ち帰ったもの
最後に、ゲストが一言ずつCTO Night & Dayの感想を述べます。初参加のヤマカンさんは、技術のトップランナーたちが変化していく様子を生で見られたことを挙げました。
本当にそれが実態としてあるっていうのはすごい体感した3日間で。
ひぐちさんは、エンジニアの今後のキャリアというテーマへのヒントを大いに得られたと話します。ロールが変わり続けているパーソナリティの二人からも学び、自社の事業に役立てたいと語りました。
はまーんさんは、CTOとしてポジティブに変わり続けようという空気を強く感じたと振り返ります。スポンサーや主催のFindyを含め、皆の力で今回も開催できてよかったと感謝を述べ、収録は締めくくられました。
まとめ
CTO Night & Day 2026の会場で語られたのは、オフレコと信頼関係に支えられた、失敗を学びに変える場の価値でした。そしてAIトランスフォーメーションの中で、CTOのキャリアが一本道ではなくなりつつある実感も、参加者の声から浮かび上がりました。
- CTO Night & Dayはオフレコが前提のため、同じ立場の人と安心して悩みを分かち合える
- 初参加者が約5割いた今回は、ストラップの色や名刺代わりのカードで交流しやすくする工夫があった
- しくじり先生は、登壇者が失敗を内省し言語化することで、話す側にも聞く側にも学びになっている
- CTOからCEOやFDEなど、CTOの先のキャリアは多様化しており「狭めて考えすぎない」ことが語られた
- 個々の現場の「点」の変化が集まり、AIによる変容が「面」として見えたことが参加の価値だった




