数字を「作る人」と「背負う人」
『ジャングリア沖縄』が大変なことになっています。
あれは結局、経営者の仕事なんだよ、という話なんですけど、そもそもマーケターと経営者って何がどう違うのかを考えてみたいんです。
どちらも数字を扱う仕事なんですね。売上、来場者数、顧客満足度、広告効果、認知度。
マーケターやコンサルタントは、そういった数字を見ながら、何を改善すれば成果が出るのかを考えるお仕事です。経営者ももちろん、同じ数字を見ます。
ただ、この両者には大きな大きな違いがあって、それは数字を作る人と、数字を背負う人の違いなんです。
「初の黒字化」の中身を見てみると
例えば、ある施設が「営業利益で初の黒字化に成功しました」と発表したとします。
これだけ聞くと、黒字化したんだ、すごいなと受け取る人は少なくないと思います。
ところが、よくよく見てみると、その数字が減価償却 ── 設備などへの投資額を、使える年数に分けて毎年の費用として計上していく会計処理前の営業利益だった、ということがある。そうだった場合、話はちょっと変わってくる訳です。
単純化して、100億円を投じて施設を作り、それを年間10億円ずつ償却するとします。
営業活動で8億円の利益が出たとしても、それは償却前営業利益でプラス8億円ということ。そこから減価償却費の10億円を差し引いたら、営業利益ではマイナス2億円になるんです。
つまり、償却前では黒字だけど、償却後では大赤字、ということが普通に起こりうるんですね。
もちろん、償却前の営業利益にも意味はあります。減価償却は、その年に現金が10億円出ていくという意味ではなく、既に行なった設備投資を耐用年数に応じて会計上配分していくものなので。
償却前の数字を見れば、いまの営業活動そのものがどれぐらいの収益力を持っているのかはわかります。
問題は、その数字だけを見て「事業が黒字化した」と理解してしまうことなんです。
経営者は、そこで終われない
100億円を投じたのであれば、その100億円が最終的にいくらの利益を生むのかまで考えなきゃいけないんです。
さらに、金利はどうするのか。税金はどうするのか。設備の修繕費は、数年後の追加投資は。
借入金はどうやって返すのか、手元のキャッシュは足りるのか。そして、投じた資本に対して十分なリターンを生んでいるのか。
経営者は、こういった数字から逃げることができないんですね。
誤解のないように言っておくと、マーケターやコンサルタントが数字を盛っていると言いたい訳じゃないんです。むしろ優秀な人ほど、数字を正確に扱います。
ただ、仕事の構造が違うんです。マーケターやコンサルタントは「この施策によってこの数字を改善しました」と成果を提示できる。
一方で経営者は、「じゃあその結果、会社全体として儲かったの?」というところまで問われる訳です。
一つひとつの成果は、最終回答じゃない
来場者数が増えた。顧客満足度が上がった。SNSのエンゲージメントが上がった。売り上げが過去最高になった。
どれも成果です。ただ、それらを積み上げた結果、会社が儲かっていないのであれば、経営者はそこで立ち止まらなきゃいけない。
逆に、満足度を上げるためにスタッフを大量に投入して、その結果として満足度が上がったとしても、運営コストで会社が持続できなくなれば、経営者としては別の問題が発生しちゃうんですね。
経営者にとって重要なのは、どの数字が良くなったかではなく、全ての数字を合わせた結果、事業が持続可能なのかなんです。
PLだけじゃありません。BSもキャッシュフローも、借入も人件費も、契約も将来の設備投資も、社員の離脱もある。
経営者は、これらすべてを引き受けなきゃいけないんです。全部引き受けて、責任を取らなきゃいけない。
マーケターは「このKPIを改善しました」と言えるし、コンサルタントは「この課題を解決しました」と言える。でも経営者は、「それで会社はどうなったの?」という問いから逃げられないんです。
一つひとつの成果は大切だけど、経営者にとっては最終回答じゃない。むしろ、そこからが本番なんですよ。
- その数字を作るためにいくら使ったのか
- その数字は来年以降も維持できるのか
- 投じた資本に対して十分なリターンがあるのか
- 会社に現金はいくら残っているのか
- この事業は5年後、10年後も続けられるのか
プロジェクトがこけてしまったとき、スタッフのモチベーションや彼らのプライドをどうやって守り抜くのか。そこまで見て、初めて経営なんですね。
都合の悪い数字まで見る覚悟
なので、経営者に必要なのは、都合のいい数字を見つける能力ではなく、都合の悪い数字まで見る覚悟なんです。
数字はいくらでも切り取れる。でも、会社の現実は切り取れないんですよ。
最終的には、売り上げも利益もキャッシュも借入も人件費も投資も顧客も従業員も、全部つながっています。その全部を引き受けて会社を守るのが経営者です。
経営者は数字を発表する人じゃなくて、数字の当事者なんです。そして、その数字の先にいる人たちの生活まで背負っている。
ここが、マーケターやコンサルタントと経営者の大きな違いなのかなと思います。
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それでは素敵な一日をお過ごしください。じゃあまたね。
まとめ
マーケターと経営者の違いは、数字を作る人か、数字を背負う人か、だと僕は考えています。経営者は一つひとつの成果ではなく、すべての数字を合わせて事業が続くのかまで引き受けなきゃいけないんです。
- 償却前営業利益が黒字でも、減価償却後には赤字ということが普通に起こりうる
- マーケターやコンサルタントは個別の成果を示せるが、経営者は「会社はどうなったのか」から逃げられない
- 来場者数や満足度などの成果は、経営者にとって最終回答ではなく本番の始まり
- 経営者に必要なのは、都合の悪い数字まで見る覚悟





