GENDAとはどんな会社か
今回のテーマは、M&Aを繰り返して事業を拡大する「ロールアップ戦略」です。清沢さんは、国内でロールアップといえばGENDAだと考えており、その戦略や創業の経緯を深掘りしていくと切り出します。
GENDAは2018年創業と、会社としては新しい存在です。もともとは「ミダス」という事業体が創業者の片岡さんと立ち上げたアミューズメント業界のビジネスで、その後に社名変更しています。
浜田さんによれば、GENDAは元々アミューズメントマシン ── ゲームセンターに置かれる業務用のゲーム機。クレーンゲームやメダルゲーム、格闘ゲーム機などを指しますのレンタルから始まり、オペレーションへと事業を広げていきました。今では多くのゲームセンターを保有し、それをどんどん買って伸ばしていく会社になっています。
一番有名なのは、ともかくゲームセンターを買って、その買ったゲームセンターの売上を伸ばして急成長しているっていうのが、一般的なイメージかなと思いますね。
現在は国内のゲームセンターにとどまらず、海外やゲームセンター以外のアミューズメントにも展開する総合アミューズメント企業になっています。
アミューズメントのプロと金融のプロの融合
GENDAは片岡さんと申さんによる共同創業で、経営陣の構成そのものが強みだと二人は指摘します。片岡さんはゲームセンター業界のベテランで、業界の知見を持ち込みました。
一方の申さんはゴールドマン ── ゴールドマン・サックス。世界的な投資銀行で、M&Aや資金調達などのファイナンス業務に強みを持ちますの出身で、ファイナンスの知見を担います。業界知見とファイナンス知見を組み合わせた体制が、GENDAのロールアップを支えているという見立てです。
片岡さんは元々ジャスコに雇用され、イオンファンタジーへ転籍した経歴を持ちます。GENDAは2020年12月にセガグループからセガエンターテインメントの株式を取得し、商号変更も行っています。
今GiGOっていうチェーン名でやってますけど、それが彼らのブランドで、もともとセガだったものをGiGOにしてやってるみたいですね。
浜田さんは、こうしたM&Aや買収では、買ったあとの改善よりも「いかに安く買うか」で勝負の8割が決まると話します。GENDAには会社を安く買える金融専門の人たちがいて、そこが強いと指摘します。
安く買うための「ソーシング」と「規律」
浜田さんは、GENDAの強みを具体的に案件発掘、つまりソーシングに求めます。通常は市場に出回らないM&A情報を持ち込み、デューデリ ── デューデリジェンス。買収先の財務や事業の実態を詳しく調査すること。買収の判断材料になりますを行って、いい案件を早期に見つけてくる力です。
浜田さんが実際にGENDA側から聞いた話として、利益に対して何倍までしか出さないという厳格なルールがあると紹介します。このルールを守ろうとすると、対象はほぼ小規模案件になるといいます。
お子さんは継ぐ気がなくて、無理に継いでも相続税がかかっちゃう。でも事業は続けてほしいねっていうところを買いに行くと、比較的安く買えるんです。
逆に、今まさに伸びている事業を買いに行くと、利益の10倍20倍出さなければ売らないという案件になってしまい、それを買うと極めて厳しくなると浜田さんは説明します。だからこそ、目利きと規律が効いていることが強みだといいます。
目利きと、規律というか、ディシプリンみたいなものがしっかりできているところは強みなのかなと思ってます。
クレーンゲームで坪当たり売上を上げる勝ち筋
事業の変遷を見ると、GENDAはレンタル事業から始まり、ゲームセンターを買いながら海外版も展開しています。2020年末にGiGOへ切り替えてから、全国各地のゲームチェーンを一気に取り込んでいきました。
グローバル展開も積極的で、アメリカや中国での買収に加え、台湾発のVR企業の日本法人買収や、アミューズメント施設向けのDXツール提供など、周辺領域も押さえていると清沢さんは整理します。
一方で浜田さんは、多角化には難しい論点があると付け加えます。本当はゲームセンターを買い続けるのが一番儲かるのかもしれず、買えるゲームセンターがないから他のことをやっている可能性もあるという見方です。
前回のラクスルの回で触れたコングロマリット化への嫌われ方と同じで、「もっとゲームセンターを買ってほしい」と思う投資家もいるのではないかと浜田さんは推測します。
浜田さんによれば、GENDAの勝ち筋はクレーンゲームにあります。ゲームセンターは場所商売なので、飲食店と同じく坪当たり売上が重要で、それを上げる一番早い手段がクレーンだといいます。
ゲームセンターは場所なんで、坪当たり売上を上げる一番早いのがクレーンらしいです。
清沢さんは、コンビニのガチャガチャの強さを例に挙げます。人気作品のガチャは発売日に3店舗回っても売り切れているほどで、集客に効いていると話し、着実に売上が立つ構造の共通点を確認しました。
ロールアップはなぜ企業価値に貢献するのか
ここからは、ロールアップの理論とメカニズムに話が移ります。ロールアップとは基本的に同業他社を買収し、市場シェアを上げていく戦略のことです。
浜田さんは、なぜやるのかを成長率の観点から説明します。ゲームセンターや飲食店のように、場所がないと売上が立たない業態では、ある駅前にすでに店があれば隣に新しく作る意味は薄く、既存のプレイヤーを買うのが合理的になります。
もう一つ大事なのが、買う側と買われる側の価値評価の差です。浜田さんは具体的な数字で説明します。
利益1億円の会社を5億円で買って、GENDAの利益が1億円上がると、GENDAの時価総額は10億円上がるわけですよ。
これは、GENDAが利益に対して10倍で市場から評価されている一方、買う会社を利益の5倍で買えるために起こります。買うだけで株価が上がるのは、市場が「GENDAが買えばその会社の利益率はさらに上がる」と信じているからだと浜田さんは補足します。
清沢さんは、これをマルチプルアービトラージ ── 買う側と買われる側で利益に対する評価倍率(マルチプル)が違うことを利用して価値を生む考え方。安く評価された会社を、高く評価された会社が買うことで差益が生まれますと呼びました。安く評価された会社を、高く評価された会社が買っていけばよいという構図です。
どんな事業がロールアップに向くのか
浜田さんは、ロールアップに適した事業の条件を挙げます。第一に、すでに各駅前に店があるような成熟市場であることです。新しい業態ならまず自分で出店すればよく、買う必要がないからです。
第二に、成熟市場ゆえにオペレーターが高齢化しているなどで「出物」があること。第三に、勝ちパターンがはっきりしていることです。GENDAならクレーンゲームを増やせば大体儲かるという型が明確でした。
成熟市場かつ勝ちパターンがはっきりしている業界っていうのが、やっぱロールアップに向くのかなっていう感じですね。
他業界の例として、浜田さんは日本で増えているSESやSIといったIT人材領域を挙げます。QAから始めてIT人材を持つ会社を買い、より高い値段で評価されていく企業として、SHIFTの名前を出しました。
海外では広告代理店やコンサルティング、さらにコンビニエンスストアなどの店舗系でもロールアップがうまく機能していると浜田さんは付け加えます。セブン-イレブンがアメリカで大きくなったのもM&Aの成功によるものだといいます。
ロールアップの本質は「安く買ってくる力」
ロールアップを実施する側に求められる能力は、ソーシングと規律だと清沢さんは整理します。浜田さんは、投資業界にいた経験から印象的だった言葉を紹介します。
私はもうバリューアップとか、どのくらい売上を増やせたかは見てなくて、どれだけ安く買えたかしか見てないです。
浜田さんは、これが真理だと感じたといいます。買ったあとの改善は難しく、伸ばせる余地は少ない一方、安く買えた時点でほぼ利益が確定するからです。ロールアップの本質は、バリューアップではなく安く買ってくる力だという見立てです。
安く買うための実務として、浜田さんはソーシングの進め方を説明します。買収候補を並べたロングリストを作り、全先に接点を持ち続けるやり方は、マーケティングのナーチャリングに近いといいます。
定期的に会って情報が入る状態にしておき、経営者が引退しそうだという情報が入ったらすぐ買いに行く。計画的にリストとパイプラインを作るプレイだと浜田さんは述べます。
もう一つがタイミングです。GENDAが2019年以降に急成長したのは、コロナの影響が大きいと浜田さんは見ています。売上が立たず店を畳む人が増えた一方、駅前のゲームセンターは人が戻れば必ず儲かるからです。
その出物がある瞬間にいたっていうところがすごく強くて、そういう要素がないとなかなか安く買えないんです。
スタートアップがロールアップで成長できる条件
最後に、GENDAから学べるポイントとして、スタートアップやITの経営者、マーケターが持ち帰れるものを整理します。浜田さんは、ロールアップはスタートアップで注目されているものの、業界知見もファイナンス知見もない人がやるものではないとはっきり述べます。
日本のプレイヤーの構造を理解し、どこにレバーを入れれば儲かるかがわかっている人が、安く安定して買ってくる力を持つ人とパートナーを組む必要があるといいます。それは、新しいものを自分で切り開こうというスタートアップ的な感覚とはかなり異なると浜田さんは指摘します。
逆に、成熟産業をディスラプトしていくといったテーマがはっきりして、明らかにロールアップが向いている人がやるべきだとも述べます。市場の成熟度と、組織が持つ人材面の資本の両方が問われるため、難易度も採用難易度も極めて高いと二人は確認しました。
浜田さんは、金融の専門家を採用するには相応の報酬が必要だと補足します。ゴールドマン出身のような人材に見合う現金や株を渡すには、成熟しているが大きい市場でなければ成り立ちません。
小さい市場のロールアップをしても最終売上が数十億にしかならないと、優秀な金融マン、M&Aの人材が入ってこないんです。
フェーズについても議論が及びました。浜田さんは、タクシー会社の買収を進めるニューモの青柳さんを例に挙げ、圧倒的な実績のある人に資本が集まる構図を説明します。買収は借り入れだけでは難しく、相応のリスクマネーを入れてもらう必要があるからです。
清沢さんは、ロールアップを漠然と理解していたが、解像度が上がったことでリスクとリターンを見ながら判断できるようになったと振り返ります。成功すれば大きな事業を作れる一方、ハードルは高いという両面を確認して締めくくりました。
まとめ
GENDAは、業界のプロと金融のプロが組み、成熟市場で安く買い、クレーンゲームで売上を伸ばすという勝ち筋を積み重ねてきました。ロールアップの本質は買収後の改善よりも「安く買ってくる力」にあり、スタートアップが安易に成長の軸にするのはリスキーだというのが二人の見立てです。
- GENDAは業界知見の片岡さんと金融知見の申さんの体制が、安く買うソーシングと規律を支えている
- ロールアップが価値を生むのは、買う側と買われる側の評価倍率の差を使うマルチプルアービトラージが働くから
- 向くのは成熟市場かつ勝ちパターンが明確な業界で、SESやコンビニなど他業界でも機能している
- 本質はバリューアップではなく安く買う力で、ソーシングのパイプラインとタイミングが鍵
- スタートアップがロールアップを主軸にするには、業界知見・ファイナンス人材・大きな市場が必要で難易度は高い





