香りのグッズの中で、匂い袋はどんな存在か?
「聴くお香ラジオ」は、お香が好きすぎてお香ブランドを立ち上げた仏壇店四代目の阪本琢磨さんが、お香や香りを中心にさまざまな話をする番組です。この回からリニューアルし、BGMやサムネイルが変わる予定だと話されています。
阪本さんはまず、身の回りにある香りのグッズを挙げていきます。火をつけるお香やアロマキャンドル、部屋に香りをつけるルームフレグランスやディフューザー、体につける香水や香り付きのハンドクリームなどです。
そのうえで阪本さんがリスナーに投げかけたのが、「匂い袋を知っていますか」という問いでした。匂い袋は、字のとおり香りのするものを入れた袋のことです。
って言ってしまえば、まあ身も蓋もない感じするんですけども、これ(匂い袋)実は結構歴史が古くてですね、お線香よりも歴史が古いものなんですけども。
阪本さんによると、匂い袋は奈良時代に中国から日本へ伝来したといわれています。シンプルな道具に見えて、お線香より長い歴史を持つという点が、この回の出発点です。
始まりは防虫剤だった?正倉院に残る最古の匂い袋
奈良時代の匂い袋が何に使われていたかについて、阪本さんは諸説あるとしつつ、最初は防虫剤として使われていたのではないかと紹介しています。
その根拠として挙げられるのが、正倉院 ── 奈良・東大寺にある宝物庫。聖武天皇ゆかりの品をはじめ、奈良時代の美術工芸品や文書が数多く伝わっていますに残る日本最古の匂い袋です。阪本さんによれば、この匂い袋は服や書物を片付けた場所に一緒に入れられていました。
阪本さんは、この使い方を現代の衣替えにたとえています。衣替えのときに虫が寄ってこないようにナフタリン ── 衣類の防虫剤として広く使われてきた化学物質。独特の強いにおいがあり、タンスなどに入れて使われますなどの防虫剤を入れるのと、同じような使い方をしていたとみられます。
紙も絹も綿も全てね、虫に食べられやすい素材だったので、まあそれを避けるために天然の香料をね、あの袋に入れたものを使ってたらしいんですよ。
化学繊維のない奈良時代、衣類や書物はどれも虫に食べられやすいものでした。匂い袋は、香りを楽しむ前に、大切なものを虫から守る道具として使われていたと考えられます。
平安貴族は匂い袋をどう使っていたのか
平安時代になると、匂い袋の使い方が変わってきたと阪本さんは話します。香りのするものを袋に入れて部屋にかけておき、ルームフレグランスのようにふわっと香らせる使い方も広まりました。
それだけじゃありませんよ。あの私が作った香りはこんな香りですっていうのを身につけたりして、防虫以外にですね、あのおしゃれの一環としても使ってたらしいです。
平安時代の匂い袋のレシピも、かなり残っているそうです。阪本さんが材料として挙げたのは、白檀、丁字、竜脳の3つでした。
丁字は、T字のような形をしたスパイスで、今でいうクローブです。阪本さんは、ビーフシチューなどに使われるものだと説明しています。
竜脳について阪本さんは、クスノキの一種だったと思うとしたうえで、木の中にできる結晶状のもので、樟脳 ── クスノキから得られる香り成分。すっとした香りがあり、古くから衣類の防虫剤などに使われてきましたの一種だと紹介しています。とてもすっきりした香りがするそうです。
阪本さんが当時のレシピの材料として最初に挙げた香料
T字のような形のスパイス。今でいうクローブで、ビーフシチューなどにも使われる
木の中にできる結晶状のもの。樟脳の一種で、すっきりした香りがする
阪本さんが注目するのは、これらの材料がすべて防虫効果を持つという点です。そのうえで平安時代の人々は、材料の混ぜ加減によって自分の香りを演出していたといいます。
源氏物語に描かれた、香りによる自己アピール
阪本さんは、匂い袋が自己アピールにも使われていた例として、源氏物語 ── 平安時代中期に紫式部が書いた長編物語。光源氏を主人公に、宮廷の恋愛や人間模様を描いていますの一節を挙げています。
源氏物語には、荒れ果てた屋敷に住む姫君の話があるそうです。阪本さんの記憶では、その姫君の古びた服からとてもいい香りがして、源氏の心がドキドキするという一節があったといいます。
やっぱそういうね、あの自己アピールとしても使ってたし、まあ香りをお部屋に、お部屋を彩るためにも使ってたし、防虫剤としても、まあ使ってた。そういうのが匂い袋です。
阪本さんのまとめによると、平安時代の匂い袋には3つの役割がありました。部屋を彩る香り、身につける自己アピール、そして防虫剤です。
貴族の雅なグッズから、江戸の庶民の帯飾りへ
平安時代の匂い袋は、貴族に許された雅なグッズでした。ところが江戸時代になると、多くの人が帯などに小さな巾着状の匂い袋をつけるようになったと阪本さんは話します。
阪本さんはこの江戸時代の様子を、今の人が香水やハンドクリームで香りを楽しむのと同じようなものだと例えています。
阪本さんによると、お線香ができる前は、香りの材料を袋に入れたり、火をつけたりする使い方が中心でした。匂い袋は、日本の香りの文化の中でも古い形のひとつといえそうです。
今も買える匂い袋、暮らしの中での楽しみ方
阪本さんは、匂い袋は今でも売っているとリスナーに伝えています。インターネットで調べるとたくさん出てきて、値段もそれほど高くないそうです。
阪本さんがすすめる使い方は2つです。ひとつは、奈良時代の防虫剤のように、タンスの中に入れておく使い方です。
ちょっと疲れたなっていう時に、まあタバコを吸う人やったらタバコ吸うんでしょうけどね。あの匂い袋手元に置いといて、ちょっと鼻でスッと香りを聞いてみたりすると、リラックスできてええんちゃいかな。
もうひとつは、疲れたときに手元の匂い袋の香りをかいで一息つく使い方です。阪本さんは、タバコ休憩の代わりに香りで気分を切り替えるというイメージで紹介しています。
京都・哲学の道ブルーでのポップアップと匂い袋づくり
最後に阪本さんは、2026年5月20日から25日まで、京都の哲学の道の近くにあるアトリエ「哲学の道ブルー」でポップアップストアに出店することを告知しました。
このポップアップは、和歌山にある縫製工場が手がけるファクトリーブランド「ヌー」の出店です。阪本さんのお香ブランドは、その末席を借りて参加するそうです。
会場では阪本さんが作ったお香の香りを実際に試すことができます。また、5月20日、21日、24日、25日の4日間は阪本さん本人も会場にいるとのことです。
さらに、匂い袋を作るワークショップも開かれます。すべて天然素材で匂い袋を作り、そのまま持ち帰れる内容です。エピソード説明によると、ワークショップは数種類の香りを調合してオリジナルの匂い袋を作るもので、参加費は30分1,500円(税別)、予約は不要です。
詳細はリンクを貼っておくと阪本さんは話しています。エピソード説明では、「哲学の道ブルー」で検索するよう案内されています。
まとめ
匂い袋は、奈良時代に中国から伝わり、防虫剤として使われたのが始まりとみられます。平安時代には貴族が部屋の香りや身につけるおしゃれに使い、江戸時代には多くの人が帯につけて楽しむようになりました。今でも手軽に買える香りの道具として、阪本さんは暮らしの中で試してみることをすすめています。
- 匂い袋はお線香より歴史が古く、奈良時代に中国から伝来したといわれている
- 正倉院の最古の匂い袋は服や書物と一緒に保管され、防虫剤として使われていたとみられる
- 平安時代には白檀・丁字・竜脳などを調合し、部屋の香りやおしゃれ、自己アピールにも使われた
- 江戸時代には多くの人が帯に小さな巾着状の匂い袋をつけ、今の香水のように楽しんだ
- 阪本さんは2026年5月、京都の哲学の道ブルーで天然素材の匂い袋づくりワークショップを開く


