キャリアは、起業やフリーランス自体を目的にしない
「今後どんなキャリアを作っていくのか」と考え始める方に、まずお伝えしたいことがあります。
起業をするとかフリーランスになるとか、その働き方自体を目的にはしない方がいいということです。
こういうことをしたいから起業、こういうことをしたいからフリーランス、なんです。
たとえば4桁万円以上の案件をやってみたいなら、それが受けられる会社に行くのがいい。一人二人でフリーランスとして直受けするのは、現実問題なかなか難しいですからね。
クリエイティブをガンガンやりたいならクリエイティブに強い会社、システムをゴリゴリやりたいならスクラッチ開発が得意な会社。ARやMRをやりたいなら、それが好きな会社に行ってみるのもいいと思います。
つまり、自分がどんな興味を持っていて、それを実現するために会社に行くのか、独立するのか、という順番なんじゃないかと思うんです。
Web業界だけに固定しない方がいい
今後のキャリアって、正直けっこう難しいなと思っていて。私は、Webだけで何かを固定しない方がいいと思っているんです。
別にいきなりラーメン屋をやれと言っているわけじゃないですよ。
ただ、Webを作るという仕事が、今の形のまま10年続くかというと、私はそれは100パーないくらいに思っているんです。
今「ディレクター」と呼ばれている仕事や肩書き自体、下手したらなくなるかもしれない。そう思っているんですね。
だから、自分はディレクターだからディレクターの仕事、と延長線上だけで考えるんじゃなくて、Webに関わる仕事、デジタルに関わる仕事、ともう少し広く見ておく方がいいんじゃないかと。
私は自分がずっと広告業界にいると思っているので、たとえば「本当のマーケティングって何なの」となったら、代理店に行くのも面白いかもしれない。デジタルは関係ないけど、みたいなね。
だからできるだけ視野を広く持っておいてほしいなと思います。
チャンスは、スコープの外から来ることもある
もう一つ、目の前にチャンスがありそうだったら、30手前くらいなら、とりあえずやってみた方がいいんじゃないかと思うんです。
「こういうとこ来る?」「こういうことやってみる?」と言われたときに、手を挙げないと、チャンスはどんどん来なくなってくるはずなので。
自分が「こうなるかな」と思っているスコープの外から依頼が来たときに、「それ俺が考えてることじゃないから違うかな」じゃなくて。
やったことがないし考えたこともないけど、とりあえず誘われたから行ってみよう、やってみよう。
そんなふうに思っていると、視野が少しずつ広がって、「自分がやりたかったことって、もしかしてこっちかも」と、ピュピュンって見つかるかもしれないですからね。
能力の掛け合わせと、希少性
「将来活躍できるディレクターになるには」というおハガキもいただきました。これはディレクターに限らずですが、能力の掛け合わせを意識してほしいなと思うんです。
私が多少なりとも仕事を続けられている理由は、たぶん「Webディレクター×不動産業界」なんですよ。
今年で25年くらい、不動産のサイトやシステムばかり作ってきていて、そのうち9割くらいは不動産に関わっていると思います。
ただ、総合制作をされている方は、私みたいに業種を固定して強みにするのは難しいと思うんですね。
だとしたら、デジタルマーケなのか、アクセス解析なのか、UIやUXなのか。「プロジェクト進行×何々」という、もう一個を持っておく必要があるかなと。
ここで気をつけたいのは、そのもう一個が、マーケットで認知やニーズのあるものじゃないと、掛け合わせても意味がなくなりかねないということです。
たとえば、今の時代にディレクターが「HTMLを読めるようになりましょう」というのは、正直ほとんど価値は生まれないと思います。
フロントエンドの方はたくさんいますし、ChatGPTに聞けばそれなりのものを書いてくれる時代ですからね。
仮にフロントエンドエンジニアと同じくらい書けるようになったとしても、今度は「それって誰得なんでしょう」となる。
自分の時間は24時間しかないので、職能が2つに増えても倍働けるわけじゃない。ディレクションの時間が半分になってコーディング半分、それはどういうバリューなんですか、という話になっちゃうんです。
数字とファクトで話せることが、生き残る道
じゃあ何を掛け合わせるといいのか。ディレクターというところで言うと、私は「数字」だと思っています。
私は自分がずっと広告業界にいると思っているので、何かが売れる、ブランディングが行われる、という結果を出さないと自分がいる価値はない、と思いながらこの仕事をしているんです。
「いいブランディングになりました」というふわっとした定性的なものだけでやっていくのは、たぶん無理があるんですよ。
だから数字を見ましょう。アクセス解析でもいいし、お問い合わせからの歩留まりや成約率でもいい。ファクトを持ってちゃんと話ができるかが、ディレクターにはすごく重要だと思っています。
経済的な知見があるとか、外注費が案件全体のどれくらいの割合かを空気を吸うように考えられるとか。そこまでいくと、単なるラインマネージャーではなくなるんですよね。
ワイヤーを引けます、というのも同じで。何の根拠で引いているか、なんです。
情報アーキテクチャの考えを持っているとか、色彩学で人の情感に訴えてコンバージョンを上げる、とか。どうレイアウトすると何が起こるかを設計するのがワイヤーの作業だと私は思うので、そういう学術的なものを学ぶのも一つですね。
結局、社会人の価値って最後は希少性に帰結すると思っているんです。学習コストは高いかもしれないけど、達成できたときに「それできるんですか?」と言われるものを、もう一個持っておく。それがこの後の生き残る道じゃないかなと思います。
まとめ
正直、「こうすれば大丈夫」という答えを私も持っているわけではありません。ただ、いまの時点では、視野を広げつつ、価値のある掛け合わせを一つ育てておくのがいいんじゃないかと考えています。あなたなら、何をもう一個くっつけてみたいですか。
- 起業やフリーランスは目的ではなく、やりたいことを実現する手段として選ぶ
- Web業界だけに固定せず、デジタルや広告まで視野を広げておく
- マーケットに価値のある能力を、ディレクションに掛け合わせて持つ
- 数字とファクトで語れることが、これから生き残る大きな武器になる






