「転職したら100万上がった」の中身を疑う
結論から言うと、お金だけで判断するなら、私は転職した方がいいと思っています。
IT業界にいる私からすれば、転職そのものは全然悪いことじゃないんですよ。
ただ、問題はその同期の年収がなぜ100万近く上がったのかという中身の方なんです。
「転職したら給料が上がる」というのは、正直、都市伝説だと思っています。
だって基本的には、能力に対して評価されるわけですから。
ここで一つ変数になるのが、金回りのいい業界の存在です。
たとえば冠婚葬祭に関わるような業界は、そもそもお金の動きが潤沢で、会社自体が利益体質になっていることがあるんですね。
だから同じ能力でも、いる会社によって給料のベースが全然違う、ということがたまに起きます。
うちの会社でも一度だけありました。新卒3年目くらいの方が転職で面接に来られて、いまもらっている給料を見て、正直、目玉が飛び出そうになったんです。
「こんなにもらえてるんだ」と思って、言えなかったんですけど、そのまま今の会社にいた方がいいですよ、という話をした記憶があります。
だから、その同期が上がったのは本人の能力なのか、それとも会社の収益構造がよくてベースが高いだけなのか。ここの見極めを間違えると、「転職すれば給料は上がる」という話に流れてしまうんです。
昇給には2種類あるという話
もう一つ整理しておきたいのが、そもそも昇給には2つの種類があるということです。
一つは昇進による給料アップ。主任から課長、部長へと立場が上がって、テーブルそのものが変わるパターンです。
もう一つが、同じ職域のまま、自分の練度が上がることによる昇給です。今まで10日かかっていたことが5日でできるようになった、といったものですね。
私が思うに、この練度が上がったぶんの昇給って、そんなに大きくはできないんですよ。
給料を上げるというのは、基本的にできないことをできるようにする必要があると考えています。
今できることの練度を上げていくやり方は、どこかで上限が来ちゃうんですね。
ちゃんと結果を出しているのに昇進させてもらえないのなら、それは何か理由があるか、会社に言うか転職した方がいいです。
でも、年に一度・数千円単位という昇給をすごく期待して、自分の練度だけを上げていっても、行けていいところ平均給料くらいが限界じゃないかと思うんです。頑張ったとして、ですけどね。
「正社員はサブスク」と経営者のリスク
これは、うちにいるスタッフがすごく面白いことを言っていたんですけど、「正社員というのはサブスクだ」と。
言い得て妙だなと思いました。よほどのことがない限り、給料がなくなったり大幅に下がったりはしないわけですよね。
一方で、私は代表なので、極端に言えば明日、自分の給料がゼロになる可能性があるわけです。
これはラジオだから言っちゃいますけど、10年くらい前は、2ヶ月、3ヶ月給料がなかったことも普通にありました。手元の現金がないので、みんなの給料を払って自分のを我慢すればなんとかなる、という時期です。
会社を作った1年目に、大きなコンペに出たことがあります。作って5ヶ月くらいの会社が数千万規模の案件に出ているので、状況証拠的には100%落ちると思っていました。結果的には通ったんですけどね。
その頃は、独立前に貯めていたポイントで1ヶ月ずっとご飯を食べていた時期もありました。現金は持っているんですけど、使ったらなくなるのが怖いんですよ。一番汎用性があるのが現金ですから。
だから、会社の偉い人ほど大きなリスクを背負っている、とも言えます。役員まで行けば、成果が出なければクビになることもある。そのリスクに対する給料だと考えれば、私はさもありなんと思っています。
生産性は「上げて当たり前」の世界で戦っている
ここが今日いちばん書いておきたいところなんですけど、練度が上がったこと自体は、そんなに大きな評価にはつながりにくいんです。
なぜかというと、生産性は人類が進化している限り、必ず上がっていくものだからです。
今まで4時間かかっていたことが3時間半でできるようになった。これは成果ですし、自分が早くなったのも事実です。
でも、世の中のどの会社でも普通に3時間半になっているのなら、社会の速度に追いついただけで、社会構造的には進化していないんですよ。
個人で見れば4時間が3時間半になったのは成長です。でもそれは人類である以上、当たり前とされる成長なので、給料の伸びしろはそんなに高くならないんですね。
たまに「4時間の仕事が5分で終わるようになったんだから、残りの時間は遊んでいてもいいだろう」という考えを見かけるんですが、これは私は間違いだと思っています。
8時間という労務契約の中で、どれだけ生産性を上げられるか。資本主義の構造上、生産性は上げなければいけないんです。
もし4時間が本当に5分になるくらいの圧倒的な効率化ができたなら、それはもう革命です。そこまでいったら、昇給ではなく昇進をさせてくださいと言うべきなんですよ。テーブルが変わりますからね。
だから見るべきは、自分の会社で同じ給料くらいの人がどれだけ成長しているか。周りも同じように早くなっているなら、それはトントンで、価値としては上がりにくい。さらに社外の速度感も持っていないと、「転職で100万」という話は出てこないんです。
それでも給料を上げたいなら
では、本当に給料を上げたいならどうするか。やっぱり、できないことをできるようにすることだと思います。
ただし、それはその会社が求めていることじゃないとダメなんです。
たとえばIT屋なのにフォークリフトの資格を取っても、「それ、うちの何に使うの」となりますよね。頑張って勉強したのに評価されない、というのはここに原因があるんです。
最近ならAIもそうで、流行っているからと自分の判断でワーッとやっても、「それじゃないよ」と言われることがある。だから会社がどんなスキルを求めているのかは、ちゃんと聞いてすり合わせた方がいいです。
そのうえで、会社が望む方向と自分が成長したい方向がずれているなら、やれる会社に行った方がいい。大きな効率化やできなかったことをできるようにしたのに評価の幅が少ないなら、それも別の会社に行く方がいいと私は思っています。
まとめ
若手の方には少し厳しい話になったかもしれません。でもいまの私は、給料の上がり幅に驚くときこそ、社会全体の速度と自分の成長を並べて見てみるといいんじゃないか、と考えています。それでもモヤモヤが残るなら、そのときはまた声を聞かせてほしいです。
- 転職で給料が上がった同期は、本人の能力か、会社の収益構造か、まず中身を見極める
- 昇給には昇進によるものと練度によるものがあり、練度の伸びだけでは上がり幅は小さい
- 生産性は社会全体で上がって当たり前なので、追いついただけでは評価につながりにくい
- 本当に上げたいなら、会社が求める方向で「できないこと」をできるようにする






