これはデザイナーだけの話じゃないんです
いただいたおハガキは、若手デザイナーの作る画面がAIやテンプレートをベースに感覚で整えられていて、フィードバックしようにも本人が意図を言語化できない、というものでした。
正直に言ってしまうと、これはデザイナーさんだけの話じゃないんですよね。
エンジニアさんもそうだし、もっと言えばディレクターだって同じだと思うんです。
なぜこの色にしたのか、なぜこのコードにしたのか。多分もう、言語化できない時代になっちゃうんじゃないかと私は思っています。
私自身は、たぶん説明できます。ずっとやってきたので、今までのやり方が肌に馴染んでるんですよね。
というか、逆に説明できないことが気持ち悪いという感覚を持っているんです。
お客さんに何かを提案するのに、自分が説明できなくて「なんとなく」なんて基本的には言えないですよね。
商業デザインに「なんとなく綺麗だから」はない
ここで大事なのは、私たちがやっているのは商業デザインだということです。
特にウェブって、作りきって印刷して配って終わり、というものじゃないんですよね。一定期間は絶対に残ります。
そしてPDCAを回す、つまり何かしらの成果を求められるはずなんです。
その成果を出そうとしたときに、こういう意図でこういう結果を出そうと思っていたという前提がないまま「なんとなく綺麗だから」というのは、本質的には商業デザインではないと私は思っているんです。
芸術はいいんですよ。絵画でもイラストでも、自分が好きならそれでいい。
でも商業デザイン、特にウェブは、最終的にコンバージョンや売上といった成果が求められます。
だから「元々こういうつもりだった」という前提がないと、良かったのか悪かったのかもわからないし、改善点も見いだせなくなってくるんですよね。
作った本人も、いろんなものを作っていれば成功も失敗もあるでしょう。
でも「こういう意図だったけど、うまくいかなかった」なら、自分の感覚がずれていたという答え合わせになります。「なんとなくいいと思ったけどダメでした」では答え合わせにすらならないんです。
コードの良し悪しは、実はもっと難しい
ちなみにこれ、コードの世界だともっと難しいなと思っているんです。
昔、私が若かった頃はサーバーもローカルマシンも性能が悪くて、SQLを1本書くにもちゃんとチューニングしないと応答が返ってこない、みたいな時代でした。
そのくらいシビアだと良し悪しもわかるんですけど、今のサーバーはめちゃめちゃハイスペックですからね。
とんでもないトラフィックでもない限り、ほとんどオーバーヘッドがないわけです。
そうすると、動いているコードが30行なのか15行なのか、その差の良し悪しって比較のしようが難しい領域になっちゃうんですよね。
だからデザイナーさんに限らず、企画も同じです。「なぜこの企画にしたのか」がないと、動線設計が正しいのか間違っているのかのフィードバックすらできなくなってしまいます。
言語化しないのは、その意義がわかっていないから
そこまで考えて思ったのは、言語化せずに出してくるということは、言語化することに意義を感じていないんだろうな、ということです。
私たちはお客様からお金をいただいて、成果に責任を負っています。
一旦このデザインで決めます、と決めて進むわけですよね。
でも自分が「こういうつもりでやりました」というものがなかったら、お客さんに「今回うまくいったんですか」と聞かれたときに、デザイナーさんは返事ができないんです。
だから育て方としては、別にAIを使ってもテンプレートを使ってもいいんですよ。説明できないことが悪いんです。
極端な話、せめてAIにちゃんと聞け、と。
ただ、ここが難しいところで、意図までAIに聞いて「生成AIに聞いたらこういう意図でした」と上司に伝えたとしますよね。
それでみんなが納得したとして、じゃあそのとき、そのデザイナーはそこに必要ですか、という話になるんです。完全に伝書鳩になってしまっているじゃないですか。
作った意図まで自分の頭を使わずAIに聞いて説明するなら、私やクライアント、ディレクターが直接AIと話せばいいわけですから。
「君の代わりは掃いて捨てるほどいる」
この、頭を使って自分で答えを出さないという部分は、実は自分の存在できる場所をどんどん削ることに繋がっているんです。そこに気づいているかどうかだと思うんですよね。
だから若手に対しては、こう伝えるのがいいんじゃないかと思っています。
今はいいけど、3年後もそのまま頭を使わずに生成AIの言うことを右から左にやっていたら、君はいらないよ、と。君の代わりは掃いて捨てるほどいるからね、と。
これ、私が声優をしていた時に本当に言われた言葉なんです。「君の代わりは掃いて捨てるほどいる」って、一度はっきり言われました。
だからこそ、その怖さみたいなものをちゃんと教えてあげるのがいいんじゃないかなと思います。
ちょっと厳しいかもしれませんが、これは意地悪で言っているんじゃないんですよね。
まとめ
AIやテンプレートを使うこと自体は、まったく悪くないんです。悪いのは、自分がなぜそうしたのかを説明できないこと。いまの私はそう考えています。もし育成でまた行き詰まったら、ぜひおハガキをください。
- デザイナーもエンジニアもディレクターも、「なぜそうしたか」を説明できないと成果の答え合わせができない
- 商業デザインの前提は「こういう意図でこういう結果を出す」という仮説を持つこと
- 意図までAIに聞いて説明するだけなら、その人は伝書鳩になってしまう
- 頭を使わずに右から左にやっていると、自分の存在できる場所が削られていく







