「遅延した人は罰を受けるべきか」という問い
いただいた感想の中に、こんな一節がありました。
自分はデザイナーもしているので、私のセッションが耳が痛くて痛くて、たった10分だったけど、やらかした時のことを思い出して最後はちょっときつかった、というものです。
そして最後にこう書かれていました。「プロジェクト進行では遅延は許されないし、それをした人は大きな罰を受けるべきなのでしょうか?」と。
この問いを読んで、私はその裏側にある気持ちを想像しました。
どうしようもない場合まで許されないのか、悪いことをしたら本当に罰を受けなきゃいけないのか。そういう思いがあるんじゃないかなと。
若い頃の私も、あの場で例に出したような言い訳を、ごまかそうと思って何度か口にしたことがあります。だから、耳が痛いという気持ちはよくわかるんです。
「許す・許さない」を決めているのは誰か
まず、遅延を「許すか許さないか」を決めているのは、ディレクターではありません。極論ですが、それはお客様です。
お客様が遅延してもいいよと言うなら、遅延は許されます。でもほとんどの場合、堂々と遅れていいよという方はいないんですよね。
だから私は、私自身が誰かに「明日までにやっといてね」と頼んだものを何食わぬ顔で遅らされたら、やっぱりイラッとすると思うんです。
人にされて怒るのなら、自分も遅延を起こさないようにしなきゃいけない。私はこういうスタンスだということです。
ディレクターの仕事とは、どんな手段を使ってもリソースとコストとスケジュールの中でプロジェクトを完遂させることだと、私はこの番組でも定義してきました。
では「罰」とは何か。個人の感覚だと「なんでそんな罰を受けるの」と思うかもしれません。
でも業務委託基本契約では、遅延した場合に遅延損害金が発生することが、ほぼ間違いなく明記されているんです。
これは「見せしめだコラ」という気持ちで発生するものではなくて、淡々と契約書に書いてあるからこうですね、という話なんです。
法人同士、時には社長同士のあいだで、金銭という罰が実際に有効になる。それが担当者レベルにも還元されていく、ということなんですよね。
なぜ私はあのセッションをしたのか
だからこそ、こういう経験をしたくないなら、どうやったら遅れないか、遅れたなら少しでも早くディレクターに言ってリカバリーする方法を取ってほしい。そういうつもりでスライドを書きました。
私が過去の失敗をほじくり返したかったわけではないんです。
もしその失敗が自分にとって痛い思い出なら、二度と自分も感じたくないし、周りにもお客様にも迷惑をかけたくない。じゃあ自分の仕事の仕方をどうしたらいいんだっけ、というところに思いを至らせてほしかったんです。
どうあっても遅れるケースは、一定の可能性でありますよ。でもだとしたら、全体に迷惑をかけないために早く話をしてほしいなと。
早めに言えば、交渉の結果として遅れた分だけ待ってもらえる可能性もあるんです。
ただ、それが1週間前や1ヶ月前なら許容でも、納期の前日に「どうあっても明日までにないんです」と言われたら、「もっと早よ分かったやろ」となります。
それはもう「終わらなさそうです」ではなくて「終わらなかった」という事後報告になってしまうんですよね。
「作業したいから進捗報告は後で」は違うと思う
もう一つ、こんなコメントも目にしました。進捗報告するより作業したいタイミングもあるから調整中ですって場合もある、ケースバイケースだ、というものです。
これは、私は正直ちょっと違うんじゃないかと思っています。
進捗報告が業務なのであれば、「作業したいタイミングだから」というのは言っちゃいけないと私は思うんです。
納期やお客様への報告責任を持っているのがディレクターなので、報告のタイミングで報告できるように仕事を進めるのが、本来のプロだと思っているんですね。
報告してもらえないと、私はその人を守れなくなるんです。わからないものはお客様に報告できない。お客様から詰められた時に、報告を拒否されたので全責任はあなたですよね、となってしまう。
もちろん私もエンジニアやデザイナーをやっていたので、ゾーンに入って「今は声かけるな」という感覚はすごくわかります。
でも一人で全責任を負っているわけではないので、集中を切らしても、次の仕事へ戻る切り替えを短くするスキルを持つのが本来のプロだと思っているんです。
私はマルチタスクは絶対にできません。だからこそ、シングルタスクの切り替えをいかに早くできるか。アプリケーションを切り替えるくらいの勢いでパチパチと戻れるか、を目指しているんですよね。
ただ、誤解のないように言うと、いきなり隣に来て「今の進捗教えて」とか、予定外にいきなり電話で「進捗どう?」と言われたら、「ちょっと待てこら」と私も言うと思います。それはすごくよくわかります。
私が言っていたのは、朝礼・夕礼・週次ミーティングのような、予定していることを前提にした報告です。
そういう決まったタイミングでの報告は、全員がプロジェクトに関わる限り守らなきゃいけないルールだと思っているので、そこは私にとってはケースバイケースではないんです。
まとめ
遅延した人が罰を受けるべきか、という問いへの私の答えは、罰を与えたいのではなく、その痛みを次に活かしてほしい、というものです。いまの時点では、私はそう考えています。あのセッションが厳しく響いたなら、自分のリカバリーの仕方を振り返るきっかけにしてもらえたら、私はとても嬉しいです。
- 遅延を許すか許さないかを決めているのは、ディレクターではなくお客様
- 契約上の「罰」は感情ではなく、契約書に淡々と書かれている取り決め
- 大事なのは失敗を責めることより、早く報告してリカバリーの道を残すこと
- 予定された報告のタイミングは、どんなに仕事が乗っていても守るのがプロ





