自分でやった方が早い、と思っていた頃の私
35歳で中間管理職という方から、周りが思ったように動いてくれなくて、時折期待を裏切られたと感じてしまう、という相談をいただきました。
これ、すごくよくわかるんです。というのも、昔の私がまさにそうだったからなんですよね。
私は比較的フルスタックにやれてしまうタイプで、「自分でやった方が早いや」と思う時期がすごく長くありました。
35歳というと、ちょうど私が会社を作った頃です。それより前、前の会社にいた頃や独立してしばらくの間は、自分で作るし、作るのが楽しいしという感じでやっていたんです。
そこに部下ができて「よろしく」となると、自分が思っている自分の速度でやってくれることを期待しちゃうわけですよ。
それができていないと「なんでこんな時間かかるの」とか、出来上がったものを見て「なんだこれ」とか思ってしまう。今振り返ると、自分の価値観を無理やり押し付けていたなと思います。
たぶん私、その頃はあんまり良くないマネージャーだったんでしょうね。
マネージャーの仕事は「5人前」を作ること
マネジメントって、人に何かをお願いしてやってもらう立場で、自分がものを作らないことで、かえって全体の生産性を上げるのが仕事だと思うんです。
たとえば私が一人でやったら1人前ができます。私を含めた4人でやって、私も手を動かせば4人前です。
でも4人でやっているのに3人前しかできないなら意味がない。私が手を動かさなくても、4人で5人前の仕事ができるようにする。それがマネージャーの仕事だと思っているんです。
相談をくれた頃のご年齢の私は、これが全然できていませんでした。人にどう指示を出して、自分は手を動かさないのにパフォーマンスを上げるか、やり方もわからなかったんです。
そんな時期にすごく見ていた番組があります。『プロフェッショナル 仕事の流儀』の、佐藤章さんが出ている回です。
佐藤さんとは大昔にご一緒したことがあって、当時はキリンで商品開発部長をされていました。ファイアやアミノサプリを作られた方です。
自分が企画マンとして前に出るというより、周りにお願いして化学反応を起こすのがものすごく上手な方なんですよね。人をやる気にさせるのが上手なんです。
自分がマネジメント側になってから見返すと、「ああ、そうか」とすごく思うことが多くて。同じように悩んでいる方には、ぜひあの回を見てほしいなと思います。
遅延や失敗は憎んでも、人は憎まない
周りに期待して、その通りにならないことは当然あります。だって人間だもん、という話で。
でも、それ自体をマネジメント側は「前提として組み込んでおくべき」だと私は思っているんです。
そして失敗が起こった時にリカバリーをするのも、中間管理職やマネジメントの仕事なんですよね。
だから私がよく言っているのは、遅延や失敗を憎むことはあっても、その人を憎んではいけないということです。
この気持ちでいられるようになると、「じゃあどうやって回復しようか」という感じでいられます。辛い時にズーンと落ち込むことも、だんだん減ってくるんじゃないかと思うんです。
後を濁さず辞めたい、という気持ちについて
初めての転職で、今の会社を後を濁して辞めたくない、という相談もいただきました。悪い会社ではなかったけれど、やりたい事業をしている会社に移る、という方です。
正直に言うと、後を濁さず辞めるのを100パーセント達成するのは無理だと思います。引き継ぎをしても、どうしても引き継げないことは出てきますから。
ただ、濁すというのは引き継ぎの不足というより、引き継ぐ時の態度やアウトプットの話じゃないかなと思うんです。後を濁したくないと思えている時点で、もう十分だと思いますよ。
なぜそこまで言うかというと、この業界は本当に狭いからなんです。
「もうこの会社辞めるんだからどうでもいいわ」という辞め方をすると、大きなイベントなんかで意外とばったり会うんですよね。その時にばつが悪いと、顔を伏せて通り過ぎる人生になってしまう。
私自身、最初に勤めた会社を辞めて10年弱経った頃、その会社とうちとお客さんの三社で一緒に仕事をすることになったんです。しかも先方の担当が、私がいた頃の新卒でした。
「ご無沙汰してます」と言ってもらえて、すごく嬉しかったのを覚えています。ああ、私の辞め方は決して悪くなかったのかな、と思えたんですよね。
だから、外で会っても「また一緒に仕事できますね」とニコニコ言い合えるような関係って何だろう、と考えて辞めるのがいちばんいいんじゃないかなと思います。有給は全部使えばいいですし、そこは気にしなくていいですよ。
管理職は「カリスマ」より「手法」で育てたい
もう一つ、管理職層の育成にどう取り組んでいるか、という相談もいただきました。
これは私、はっきり答えられます。うちの会社は、識学さんのマネジメント方法を採用しています。
うちは360度評価はしません。今後もするつもりはないです。乱暴に言えば、上意下達のピラミッド型で、上司が部下を評価する流れに徹底しています。
私がマネジメントをどうしようか悩み始めたのは10年前、2015年頃です。社員が12、3人になってきて、もう一人で仕事が回せない規模になってきた時でした。
人数が増えると評価が生まれます。デザイナーが二人いて、どっちを今期評価するのか、と。うちは評価結果をオープンにはしていませんが、仮に聞かれても「だからこの人の方が上なんだ」と説明できる状態を意識しているんです。
相談の中に「管理職は少数精鋭時代の戦場を乗り越えてきた層」という話がありましたが、それはたぶん最終的に破綻すると思います。感覚や経験則でやっていると、再現性のないマネジメントになってしまうんですよね。
先に言っておくと、私は「識学をやれ」と言いたいわけじゃないんです。360度評価の方がいいなら、それでいいと思っています。私はたまたまその手法を取っただけなので。
大事にしてほしいのは、ちゃんとセオリーを持って、再現性があるマネジメントにすることです。会社として首尾一貫した評価基準がある状態じゃないと、たぶん辛いんじゃないかと思うんです。
「何々さんがやるなら俺はついていく」というカリスマ的な人もいますよ。でも裏を返すと、その人が辞めたら全員辞めますからね。
だから管理職は手法でやるべきだと思っていて、その手法を会社の中で構築するのが先かなという気がしています。
辞める理由が「仕組み」なのか「文化」なのか
相談には、新人は早期退職、いい感じに育ってきた中間層が辞める、という悩みもありました。
ここで一つ分けて考えたいのが、辞める理由です。まず、会社の仕組みが悪いから辞めるなら、これは会社の責任ですよね。
一方で、会社の文化が変わるタイミングで辞める人もいるんです。私自身、最初の会社を辞めたのがまさにそうでした。
その会社は受託をやりながら自社サービスを黒字にしようとしていて、私が辞める頃にちょうど黒字になって、受託をやめようという時だったんです。私はやりたいことが変わっていくなら違うところに行こう、と思っただけで、嫌な思いは何もなかったんですよ。
今でもその会社とは普通にシェイクハンドできますし、OB会にも顔を出しています。だから文化の変化で辞める人がいるのは、決して悪いことじゃないと思うんです。
ただ、報酬や仕組みへの不満で「やってらんねえ」と辞めるなら話は別です。新人なら研修制度がない、育成してもらえる感じがない、というのも仕組みの話なんですよね。
これは管理職がどうこうではなく、会社の仕組みの問題です。仕組みがないまま「管理しろ」と言われると、武器がないまま戦えと言われているようなもので、管理職の負担ばかり上がってしまう。
だから管理職の育成と、会社の仕組みづくり。この両軸で考えていくのがいいんじゃないかなと思います。
まとめ
昔の私は、自分でやった方が早いと思って周りに苛立ってばかりでした。いまは、失敗も前提に組み込んで、遅延は憎んでも人は憎まない、というくらいの心持ちでいられるようになってきた気がします。まだ完璧にできているとは言えませんが、みなさんはどう向き合っていますか。
- マネージャーの仕事は、自分が手を動かすことより、チーム全体で1人分以上多くの成果を出すこと
- 遅延や失敗は前提として組み込み、人ではなく失敗そのものと向き合う
- 業界は狭いので、外で会っても笑って挨拶し合える辞め方をするのがいちばんいい
- 管理職はカリスマ頼みではなく、再現性のある手法で育てる。辞める理由が仕組みか文化かも分けて考える





