追加された薬で、効いていた薬が効かなくなった?
今回の話のきっかけは、たいぞーさんの店舗に所属する新人薬剤師から受けた相談です。ある患者さんの状態の変化に、薬が影響しているかどうかを意見がほしいという内容でした。
相談の患者さんには、もともと継続している薬がありました。そこに別の薬が追加され、そのタイミングから、それまでうまく効いていた継続中の薬が効果を発揮していないように感じられる、つまり状態が悪くなっているという変化があったといいます。
たいぞーさんは、患者さんの詳しい状況は控えつつ、この事例を題材に話を進めています。
相談してきた新人薬剤師は、添付文書 ── 医薬品に添付される公的な説明書。効能・効果、用法・用量、副作用、相互作用、使用上の注意などが記載され、薬剤師が情報確認の基本とする資料ですなどの情報を踏まえ、薬理学、薬物動態学 ── 薬が体内でどのように吸収・分布・代謝・排泄されるかを扱う学問。血中濃度の変化などから薬の効き方を考える土台になります、相互作用といった観点を一通り確認していました。そのうえで、薬はあまり影響していないのではないかと考えつつ、判断に迷って相談してきたそうです。
「影響はない」は本当か。一歩立ち止まってAIに抜け漏れを問う
たいぞーさん自身も、新人薬剤師の話を聞いた時点では、薬が影響している可能性はあまりなさそうだと感じていました。
ただちょっとこの薬の影響がないっていうのは本当なのかなというところが、自分の中でもちょっと気になるところがやっぱりあって。
そこでたいぞーさんは、一歩立ち止まってもう一度考え直すことにしました。その際、自分の思考の抜け漏れを探るために、自分の思考プロセスをAIにインプットし、意見を求めたといいます。
AIから出力された内容も、薬同士が相互作用を起こしている可能性はあまりなさそうだというものでした。あわせて、そうした影響に関わる要素として、教科書的な情報が整理されて示されたそうです。
直接ではなく「間接的な連鎖反応」という仮説
AIが整理した教科書的な情報を見ていく中で、たいぞーさんには1つ気になるポイントがありました。薬同士が直接影響し合っているのではなく、体の中で間接的な連鎖反応のようなものが起きているのではないか、という視点です。
薬の働きと体の生理作用を整理していくと、なんとなくこう、その理屈が一本筋が通って説明できる仮説というのに気がついて見えてくるものがありました。
たいぞーさんによると、しっかり考えてみた結果、最初は「なさそう」と思えた薬の影響について、少し可能性が見えてきたことになります。
この事例での思考の流れを整理すると、次のようになります。
一通りの確認
添付文書をもとに薬理・薬物動態・相互作用を確認し、影響はなさそうと判断
立ち止まる
「影響がないのは本当か」という引っかかりから考え直す
AIで抜け漏れ確認
思考プロセスを入力し、教科書的な情報を整理してもらう
間接的な視点
直接の相互作用ではなく、体の生理作用を介した連鎖反応を考える
仮説が見える
薬の働きと生理作用がつながり、影響の可能性が浮かぶ
可能性が見えても、すぐ薬をやめないのはなぜか
間接的な連鎖反応という仮説が見えたからといって、たいぞーさんは「薬が悪さをしているかもしれないから、その薬をやめましょう」とはならないと考えました。
理由は、その仮説があくまで仮説にすぎないからです。その患者さんの体の中で本当に起きているのか、そもそもその薬の組み合わせで実際にそうした変化が起こるのかを、確認したり立証したりする術はなかなか難しいといいます。
そのため、たいぞーさんが至った考え方は、まず可能性の高いところ、つまり薬以外の要因をきちんと精査することでした。そのうえで、少ない可能性にかけて薬を変更するという判断に進む順序が妥当だと話しています。
この事例の詳細は、たいぞーさんが運営するオンラインサロンで記事としてまとめられていると紹介されています。
薬を安易に悪者にしない、プロのバランス感覚
最後にたいぞーさんは、薬学的に考えることで、患者さんの体の変化や薬の影響がいろいろ見えてくるようになると振り返ります。
薬の影響を深く読み解く力と、見えた可能性を過大評価しない視点。たいぞーさんは、この絶妙なバランス感覚が薬学を語るうえでとても大事だと話します。
そしてそのバランス感覚が必要だからこそ、そうした判断の中に薬剤師というプロの仕事が生まれてくるのではないか、とたいぞーさんは考えています。
まとめ
今回の放送は、新人薬剤師の相談事例を通して、薬の影響を深く考える思考プロセスと、見つけた結論の取り扱い方を考える内容でした。影響を見抜く力と、それを安易に結論にしない慎重さの両方が、薬剤師の専門性につながると語られています。
- 一通り確認して「影響はなさそう」と思えても、引っかかりがあれば一歩立ち止まって考え直す
- AIに自分の思考プロセスを入力し、抜け漏れの確認に活用する
- 直接の相互作用だけでなく、生理作用を介した間接的な連鎖反応という視点も持つ
- 見えた仮説は立証が難しいため、まず薬以外の要因を精査してから薬の変更を判断する
- 薬を安易に悪者にしないバランス感覚が、薬剤師というプロの仕事を生む



