薬の準備ミスはなぜ治療全体を崩すのか?
たいぞーさんが勤める店舗では、来週から新しい調剤機器が導入されます。一包化 ── 服用時点ごとに複数の薬を1袋にまとめて分包すること。飲み間違いや飲み忘れを防ぐ目的で、高齢者や服用薬の多い患者に行われることが多い調剤方法ですを行った薬を画像で撮影し、中身が正しいかを確認してくれる機械です。
たいぞーさんは、この機械の導入をきっかけに、機械と服薬指導のやり方の関係について話したいと切り出します。
たいぞーさんがまず強調するのは、薬の準備でのミスの重さです。間違えた薬を準備すると、薬物治療のいちばん最初の段階でつまずくことになります。
(準備で)最初のところでつまずくと、医師の満たしている治療戦略も崩れてしまいますし、様々な医療職が患者さんに関わっているその関わりも、最初から全員でつまずくということになってしまいかねません。
準備のミス
薬剤師が間違えた薬を準備してしまう
スタートでのつまずき
薬物治療の一番最初の段階で問題が起きる
治療戦略の崩れ
医師の治療戦略や、多くの医療職の関わりが最初から崩れかねない
そのため、たいぞーさん自身も、ミスなく業務を行うことを大事にし、毎日緊張感を持って仕事をしているといいます。
確認作業の時間は、誰の時間を削っているのか
確認の工程を設けて薬を準備することは大切な仕事です。一方でたいぞーさんは、そこに時間と労力をかけすぎることの副作用も指摘します。
薬剤師が患者と関われる時間は無限ではありません。確認作業に時間を割いた分だけ、その患者や他の患者との関わりの時間が圧迫されかねない、というのがたいぞーさんの見立てです。
機械を導入すれば確認作業の時間に余裕が生まれ、患者にしっかり関わるための余白を作れます。たいぞーさんは、これを機械導入のメリットの1つとして挙げています。
ただし、機械による確認は人の目で確認するより時間がかかるというデメリットもあると、たいぞーさんは付け加えます。
薬が揃うまで待つ流れのままでいいのか?
今の薬局では、薬をすべて揃えてから患者対応を始めるという流れが一般的です。たいぞーさんは、この流れのまま機械を入れると、患者と関わる時間は結局少ないままになり、効果的な業務の組み立てにならないかもしれないと考えています。
そこでたいぞーさんは、機械の導入にあたって業務の流れも含めて見直すべき点はないかを考えるようになりました。とくに気になったのが、機械が一包化の中身を確認している間、薬が揃うのをただ待ち続ける時間です。
(機械が)一包化している薬の中のものを確認している時間、薬が揃うまでずっと待ち続けている時間というのが、まあ非常に勿体ないなということを思います。
その待ち時間の使い方として、たいぞーさんは2つの選択肢を示します。1つは、その間に他の患者の薬を準備して患者対応に回すという、効率重視のやり方です。
もう1つが、薬の確認をしている間に患者を呼び、服薬指導を先に始めてしまうという方法です。
確認待ちの間に別の患者の薬を揃え、患者対応に回していく効率重視のやり方
確認待ちの間に患者を呼び、薬が揃う前から服薬指導を開始するやり方
患者にとっての「ただの待ち時間」をどう変えるか?
たいぞーさんは、患者の気持ちから考えます。患者は治療を始めるために薬が必要なので、薬が欲しいという思いを持って薬局に来ています。
薬がすでに目の前に揃っていれば、早く受け取って帰りたいと思うのは当然だと、たいぞーさんは言います。一方で、薬がまだ準備できていなければ、患者は待つしかなく、それはただの待ち時間になります。
その待ち時間を患者対応の時間に変えられれば、薬局で過ごす時間のストレスを軽くできるのではないか、というのがたいぞーさんの考えです。
患者さんはもうその時間を待つしかない時間なので、薬剤師と話していても、じっと待合で座って待っていても、どちらにしても同じ時間なわけなんですね。
待つ時間が薬剤師とのやりとりの時間に変わると、患者も「じゃあ少し薬剤師と話してみるか」と前向きな気持ちになりやすいのではないか、とたいぞーさんは見ています。
薬が揃うまで待合で待つだけの時間になり、揃えば早く受け取って帰りたくなる
待つしかない時間が薬剤師とのやりとりの時間になり、話してみようという気持ちが生まれやすい
ただし、たいぞーさんは無駄話を勧めているわけではありません。薬剤師が無駄に話すことは薬剤師にとっても良くなく、他の患者の待ち時間を長くすることにもつながると断っています。
たいぞーさんが目指すのは、患者が前向きに関わろうとする環境の中で、きちんと情報を集めることです。その情報をもとに薬物治療を評価し、より良い選択肢や方向性を示すきっかけが生まれると考えています。
機械の導入は、薬剤師の原点を問い直す機会
たいぞーさんは、今回の一包化監査機の導入で、患者を呼んで服薬指導を始めるタイミングは見直しどころだと考えています。具体的な実践方法は、機械が入ってから実際に試しながら考えていくつもりだといいます。
さらにたいぞーさんは、機械の導入そのものが、これまでの仕事を見直すきっかけになると話します。
自分たちがそもそも何のために患者さんに関わり、どういったものをサービスとして提供しようとしているのか、何を届けたくて僕たちは患者さんに関わっているのか。
たいぞーさんによれば、機械やシステムを導入するタイミングでこうした問いを考えれば、新しいテクノロジーを使いながら業務のあり方を抜本的に見直し、より良いサービスを構築することにつなげられます。
たいぞーさんはリスナーに向けて、自分たちは何のために薬剤師として患者に関わり、何を届けたくて日々仕事をしていたのかを思い返す時間にしてほしいと呼びかけています。
12月のWEBセミナーと2月の姫路講演会の告知
放送の最後には、たいぞーさんが講師を務める2つのイベントが告知されました。1つ目は、12月8日に開かれるWEBセミナーです。
このWEBセミナーでは、薬学的アセスメントを通じて薬剤師ならではの視点で患者を見ることで、どんな価値を届けられるのか、そしてその実践のために何を考え、どう患者に関わればよいのかを、90分かけて話す予定です。
2つ目は、2月14日に兵庫県姫路市の姫路文学館で計画している講演会です。テーマは、専門性を活かして患者に関わるキャリアを積む中で、やりがいや面白さという内的報酬だけでなく、賃金などの外的報酬も得るにはどうすればよいか、というものです。
たいぞーさんは、薬剤師がプロとして臨床現場で生きていく未来を参加者と一緒に考えたいと話します。対象には、キャリアに関心のある薬剤師だけでなく、専門性を持った薬剤師を育てたい薬局経営者や組織運営者も含まれています。
講演会の申し込みページは最終調整中で、たいぞーさんは今のうちから予定を確保してほしいと呼びかけて、放送を締めくくりました。
まとめ
一包化監査機の導入は、人の確認作業の負担を減らす一方で、確認に時間がかかるという面もあります。たいぞーさんは、その待ち時間を服薬指導の時間に変えることで、患者との前向きな関わりを生み出せると考え、機械導入を薬剤師の役割そのものを問い直す機会と位置づけています。
- 薬の準備ミスは治療のスタートでつまずくことになり、医師の治療戦略や多職種の関わりまで崩しかねない
- 機械導入は患者に関わる余白を生む一方、機械の確認は人の目より時間がかかる
- 確認待ちの間に患者を呼んで服薬指導を始めれば、ただの待ち時間を薬剤師とのやりとりの時間に変えられる
- 機械やシステムの導入は、何のために患者に関わり、何を届けたいのかを見直すきっかけになる


