「そこに薬学はあるんかい」という問いはどこから来たのか
今回のテーマは「そこに薬学はあるんかい」という問いです。
きっかけは、アイフルのCMアイフルのCM ── 消費者金融アイフルのテレビCM。「そこに愛はあるんか」というフレーズが繰り返される演出で知られるでよく流れる「そこに愛はあるんかい」というフレーズだと言います。たいぞーさんは、それを見るたびに薬剤師版の問いを思い浮かべるそうです。
そのCMを見るたびに、僕ら薬剤師には「そこに薬学はあるんかい」という問いかけ、これがとても大事だなということをいつも思います。
患者は薬局でさまざまな症状を訴えます。薬剤師はその困りごとを解決したいと思いながら、あらゆる知識を網羅して患者と一緒に解決策を探っていく。そうした関わりの真ん中に、この問いが必要だと話されています。
情報を集めて医師に伝えるだけなら、薬剤師でなくてもいい
たいぞーさんが気にかけるのは、患者の症状に対して、ただ情報を集め、薬歴に記録し、必要なら医師に伝えるだけの関わりになっていないか、という点です。
極端に言えば、それだけなら薬剤師でなくてもできてしまう可能性がある。だからこそ、薬剤師が関わる価値がどこにあるのかを、薬剤師自身も患者自身も感じられるようにしておくことが大切だと語ります。
その価値の在りかとして挙げられるのが、患者の訴える症状に薬学を乗せて考えるという姿勢です。
「食欲がない」をどう受け止めるかで、関わりは変わる
具体例として「最近食欲がなくて」という訴えが取り上げられます。
これに対して「気温の変動も激しいですし、胃腸も弱っているのかもしれませんね。ゆっくり休んで、消化にいいものを食べてください」と返す。これも大事な介入の一つだとしたうえで、そこに本当に薬学があるのかと問い直します。
薬学的に考えるなら、その食欲不振がいつ頃からなのか、いつもの食事量に対してどれくらい食べられていないのか、他に症状はないのか、といった点を確認していきます。
そうやって確認していくと、服用している薬が食欲不振を引き起こしている可能性が見えてくるかもしれません。
この薬はこういうメカニズムで体に効果をもたらす薬であるとともに、この変化を起こすと消化管の動きがこうなって食欲が落ちるよね、というようなことが思い浮かんでくる。それが薬学的に考えるというところになってくるのかなと思います。
薬学の視点が、医師への提案という選択肢を開く
薬学的な視点で捉えると、患者の体で起こっていることを薬剤師ならではの視点で読み解けるようになります。
すると、今もらいに来ている薬で対処するだけでなく、その薬を上手に使う、あるいは別の薬に変えることで解決するという選択肢も見えてきます。
たとえば、医師が処方した薬でひとまず経過を見たものの症状が改善しない場合。そのときに「飲んでいるこの薬が改善しない原因かもしれない」と気づけるかどうかが分かれ目になります。
そこまで見えていれば、医師に対して「食欲が落ちているのが改善していない」と伝えるだけでなく、この薬も要因かもしれない、別の薬としてこういうものはどうかという薬剤師の視点からの提案ができるようになる、と話されています。
知識を蓄えるだけでは「薬学で患者を語る」にならない
こうした関わりは、薬の名前を知っているだけではできません。副作用や作用機序を暗記しているだけでも実践できないと、たいぞーさんははっきり述べます。
必要なのは、その知識を使って目の前の患者に起こっている症状を思考することです。症状の中に薬学を入れる、つまり「そこに薬学がある」状態にするために、この思考が欠かせないと整理されています。
情報を集めて薬歴に記録し、必要なら医師に伝える。一般的な養生のアドバイスで終わる
症状の経過や量を確認し、服用薬との関係をメカニズムから思考して、薬の提案につなげる
この違いが生まれて初めて、薬学の専門知識を持つ人としての価値ある介入が成立するのだと語られています。
「そこに薬学はあるんかい」と問い直すと、仕事はどう変わるか
薬剤師ならではの視点で患者の状態が見えると、これまでより一歩踏み込んだ深い関わりができるようになります。
その介入がうまくいって症状が良くなれば、患者は「薬剤師に関わってもらって良かった」と感じ、薬剤師自身も自分の専門知識が役に立った実感から、医療者としての面白さややりがいを見出せる、と話されています。
たいぞーさんは、日々の自分の関わりを振り返り、患者に接する際に「そこに薬学はあるんかい」という問いを自分の中に立ててみてほしいと呼びかけます。
改めて自分の中に本当に薬学があるのかということを見つめ直してもらうと、仕事に対する向き合い方や感じ方、そういったものも変化していくのではないかなと思います。
まとめ
患者の訴えにただ対応するのではなく、「そこに薬学はあるんかい」と自分に問うこと。それが薬剤師ならではの価値と、仕事のやりがいをつくり直す起点になる、という回でした。
- 情報を集めて医師に伝えるだけの関わりは、薬剤師でなくてもできてしまう
- 患者の症状に薬学を乗せて思考することが、薬剤師ならではの価値になる
- 「食欲がない」も、経過・量・服用薬との関係から読み解くと提案につながる
- 知識を蓄えるだけでは足りず、目の前の症状を思考することが欠かせない
- 「そこに薬学はあるんかい」という問いが、仕事への向き合い方を変えていく



