天声人語が取り上げた「手書きのお便り」とは?
第33回の題材は、2026年10月8日の朝日新聞天声人語 ── 朝日新聞の朝刊1面に毎日掲載されるコラム。時事や季節の話題を短い文章でつづる、同紙の看板コラムですです。パーソナリティによると、この日のコラムは、手書きの手紙やお便りをもらうのは嬉しいことだ、という話から始まっています。
パーソナリティは、平日は毎日ポッドキャストを録り、11時までに文章をメールで送る締め切りがあるといいます。この回も締め切りを気にしながら、記事を読みつつ自分の話を織り交ぜていくスタイルで進みます。
手書きの手紙をもらえば嬉しい、という天声人語の書き出しに、パーソナリティは「そりゃ嬉しいですよね」と同意します。そのうえで、自分がもらう手書きの手紙は娘の誕生日の手紙くらいかもしれない、と振り返ります。
職場の寄せ書きは本当に嬉しいのか
手書きの話から、パーソナリティは話を職場の寄せ書きに飛ばします。お別れのときに色紙に寄せ書きを贈る習慣について、嬉しいのか困るのか疑問だと語ります。
パーソナリティの職場では、退職だけでなく人事異動のときにも寄せ書きを集めるそうです。翌日も顔を合わせる相手に向けて、5センチ四方ほどのカードに手書きでメッセージを書くよう、スタッフ全員に募るといいます。
いや、そんなこと(寄せ書き)する必要ある?と思って。
寄せ書きについて3人ほどで話したところ、「いらないっすよね」という声が出たそうです。この間辞めたまるさんに色紙をどうしたか直接聞くと、「燃えるゴミで捨てました。資源ゴミですよね」という答えが返ってきたといいます。
パーソナリティが寄せ書きで気になる点はもう一つあります。まとめ役の担当者が、それぞれの書いたメッセージを一度目にする形になることです。
書くんだったら直接本人に渡す文書にしようよみたいな。
それほど熱い思いがあるわけではないので、寄せ書きはみんな定型文になりがちだとパーソナリティは指摘します。娘の小学校の卒業アルバムでも、「ありがとうございました。楽しかったです。また中学校でもよろしくね」のような言葉が並んでいたそうです。
一方でパーソナリティは、小学校低学年の子が遠くへ引っ越す場合の寄せ書きなら意味があるかもしれない、とも話します。転校先でまだ友達ができず寂しいとき、親友からのメッセージが元気をくれるなら良い、という考えです。
一言添えるだけで何が変わる?
天声人語に戻ると、手紙やはがきは手書きの一言が加えられたもののほうがいい、と答えた人が8割強だったという調査が紹介されています。パーソナリティは「これはある」と強くうなずきます。
パーソナリティは仕事の場面を例に挙げます。レシート1枚のような必要書類だけが封筒に入って届くと、思わず封筒の中を探してしまうといいます。
付箋でね、ペロッとつけて一言書いてあるとかね。それがあるとないとでは大きな違いですよね。
数年前、学生選手に必要書類を送ってもらったとき、パーソナリティは「一言でもいいから添えてください」と伝えたい気持ちになったそうです。ただ、パワハラになりかねないと思い、実際には言わなかったと振り返ります。
書類だけが封筒に入っていて、受け手は「何もないの?」と中身を探してしまう
付箋に一言が添えてあり、受け手にとって大きな違いになる
ラブレターを書いたことがあるか、という父の一言
一言添えない人の話を両親にしたとき、パーソナリティの父親は「そういう人はラブレター書いたことないんだよ」と言ったそうです。パーソナリティは「なるほど」と納得したといいます。
天声人語によると、これからの時代も手書きを大切にすべきだと答えた人は、意外にも16〜19歳が85%で最も多かったそうです。パーソナリティは、スマホネイティブの世代も手書きのメッセージに重きを置いているのは昔も今も変わらないのだろう、と受け止めます。
ラブレターの話から、パーソナリティは中学時代を思い出します。中2の終わりごろに付き合い始めた同級生のアヤちゃんとは、中3の夏にパーソナリティがアメリカへ引っ越したあと、エアメールでやり取りを続けたそうです。
当時は薄い便箋に何枚も手書きで書き、週に1〜2回送っていたといいます。便箋が薄いのは、郵便料金が重さで決まるため、軽くして料金を抑えるためだったと説明しています。
向こうからもね、綺麗な手紙が届いて、毎日ポスト開けるのが楽しみだったね。
右筆の代書とAIの代筆は同じことか
天声人語の中盤から後半では、かつて武家に右筆 ── 武家に仕えて文書の作成や記録を担当した書記役。主君に代わって書状を書くことも多く、室町・江戸時代には役職として整えられましたという職があったことが紹介されています。記録を取ったり代書をしたりする役目だったそうです。
パーソナリティは「織田信長は自分で書いてなかったんかい」と驚きます。ただし、信長の自筆の文書が見つかったという記事を最近見た気もするが定かではない、と断りを入れています。
右筆の話を、パーソナリティは現代のAIに重ねます。パーソナリティ自身、ちょっとBTSやGemini、Claudeなどを立ち上げて話しかけ、「これをこういう風にまとめてください」と頼むことがあるといいます。
さらにパーソナリティは、石器時代に石に絵を彫って残したものも、職人が権力者に言われて作っていたのだろう、と想像を広げます。代わりに書く、代わりに残すという営みは、ずっと前からあったという見方です。
ツバキ文具店の代書屋とAIはどこが重なる?
天声人語は、小川糸さんの『ツバキ文具店』にも触れています。パーソナリティは、NHKでドラマ化されていたことを今回初めて知ったそうです。
物語の舞台は神奈川県鎌倉の文具店で、主人公は文房具を売るだけでなく代書屋も営んでいます。離婚の挨拶状や借金に関する手紙など、依頼人の思いを汲み取り、ふさわしい紙とペンを選び、文字のスタイルを決めて書くといいます。
これもAIですよ。AIができることだし。今すごい手軽にできるようになったっていうだけの話ですよね。
| 担い手 | 時代・舞台 | していること |
|---|---|---|
| 右筆 | 武家 | 記録を取る、代書をする |
| 代書屋 | 『ツバキ文具店』の鎌倉 | 依頼人の思いを汲み、紙・ペン・字のスタイルを選んで書く |
| 生成AI | 現代 | 話した内容を指示どおりにまとめる |
筆跡ににじむものと、人が手で書く理由
締め切り15分前になり、パーソナリティはテーマの結論へ向かいます。手書きの良さは、筆跡から誰が書いたか、急いで書いたのか丁寧に書いたのかといった状況まで伝わることだと語ります。
にじみ出るじゃないですか。その筆跡によって、その人自体が。
パーソナリティは手紙の場面で、AIに下書きしてもらった文章を手で写すこともあると明かします。「あんま良くないんだろうけど」と前置きしつつの告白です。
理想として挙げるのは、万年筆で一発で書き上げて政治家に手紙をしたためる冨名腰隆さんのような姿です。ただし、これはあくまで想像で言っていると断っています。
なぜ人は手で文字を書くのかを考えるにあたり、パーソナリティは石器時代の話に一歩戻ります。言葉は残らないので、石や亀の甲羅、動物の肩甲骨などに刻んで残そうとした、という流れです。
言葉が残らない
語って伝えていくことが不確か
何かに刻む
石や亀の甲羅、肩甲骨に残す
文字が生まれる
言葉を書いて誰かに届けたくなる
相互関係
受け取って嬉しく、返事が来てまた嬉しい
文字より声、声より音楽のほうが本質的?
パーソナリティは、ポッドキャストで声にしていること自体が、人に伝えたい、残したいという思いの表れだと考えます。今は音声認識で話した言葉が上手に文字起こしされるため、文字だけで伝え残すことは「別文脈になってきている」のかもしれない、と話します。
もちろん、声に出さず文字を書いたり打ったりするほうが得意な人もいて、そのほうが良い場合もある、とパーソナリティは付け加えます。そのうえで、体から外に思いを出すという意味では声に出すことが一番だと語ります。
話はさらに広がり、別の言語なら別のニュアンスになること、唸り声や叫び声、鳴き声、そして歌や音楽にまで及びます。パーソナリティは自分の話し方について、近藤康太郎さんの影響を受けていると冗談めかしています。
言葉で伝えるよりももっと前にあったかもしれない、原始的かもしれない、本質的かもしれない。
言語のほうがむしろ不完全だという話を聞いて「なるほど」と思った、とパーソナリティは語ります。音楽が得意な人は音楽で、言語が得意な人は喋ったり書いたりすればいい、という結論です。
言葉にできない人に、どう思いを外へ出してもらうか
パーソナリティは、言葉にできない人もいると話を進めます。最たる例は赤ちゃんで、多くの人は成長して話したり書いたりできるようになりますが、その力を身につけないまま過ごす人もいます。
パーソナリティは最近、そうした人たちのためにアプリ開発をしているそうです。「おやつください」のようなカードを選ぶと端末が音声を出してくれる、単純な仕組みのものだといいます。
もっとね、なんか感情の揺れや動きみたいなのがね、わかるように出せるようなことができればいいなぁなんて思うんですけど。
ただし、感情まで出せる技術は、脳に直接つないで情報を出し入れするような、もう少し先の世界の話だろうとパーソナリティは見ています。
突き詰めると、人は社会的動物なので誰かに何かを伝えたいのだ、とパーソナリティは語ります。孤独になりすぎると不健康になり、前回取り上げたロマンス詐欺の被害者のようなことになりかねないとも話します。
パーソナリティ自身も、一日中言葉を発しない日が続くとどんどんダメになってしまう、と打ち明けています。本編は、ポッドキャストを「インターネットの海に瓶詰めで残す」自分の書き起こしだと位置づけ、100回までがリハーサルだと語って締めくくられます。
ポッドキャストは「声のおたより」になるか
本編の収録後、パーソナリティは急いで締め切りの文章をメールで送り、そのうえで改めて録音を足しています。書きながら整理したのは、今やっていることの流れでした。
文字にも筆圧や傾き、かすれといった個性があるように、声には抑揚、間、息遣い、言いよどみ、笑いなど、さらに多くの情報がある、とパーソナリティは語ります。そうした情報ごと、声のお便りとして記者に届けたいと考えているそうです。
パーソナリティによると、手書きではないテキストだけの文章は冷たく感じられることがあり、受け取る側によって印象が大きく変わって勘違いされやすいといいます。声で聞けばニュアンスが伝わりやすいというのが、パーソナリティの考えです。
一方でパーソナリティは、知らない人の声は聞きたくないという人もいること、音声は時間がかかることも認めています。2倍速で聞けば速いものの、ニュアンスも変わってしまうだろうと話します。
まとめ
天声人語の手書きの手紙の話から、パーソナリティは寄せ書きへの違和感、エアメールの思い出、右筆や代書屋とAIの共通点を語りました。最後に、文字に筆跡があるように声にも筆跡があると考え、ポッドキャストを「声のおたより」として届けたいという思いにたどり着いています。
- 手書きの一言があるほうがいいと答えた人は8割強で、16〜19歳の85%が手書きを大切にすべきと答えています。
- 職場の寄せ書きは定型文になりやすく、直接本人に渡す文書のほうがいいというのがパーソナリティの意見です。
- 右筆や『ツバキ文具店』の代書屋のような代筆は昔からあり、AIはそれを手軽にしただけだと捉えています。
- 人は社会的動物として誰かに伝えたい存在で、文字、声、音楽はその表現のかたちだと語られています。
- 抑揚や間、息遣いを含む声には、文字の筆跡以上の個性があるという考えが示されています。




