縄を扱う技術は、なぜ「物理」なのか?
たかせ秦之助さんは、東京・新宿で緊縛教室「縛楽式」を運営する縛師です。この配信では、教室で教えている内容をもとに、緊縛の技術の考え方やコツを解説しています。
たかせさんは冒頭で、緊縛は一般にアダルトなイメージが強いものの、あくまで表現やコミュニケーションの手段であり、この配信ではアダルトな内容は扱わないと断っています。
今回のテーマは「テコの原理をそれなりに理解する」です。たかせさんによれば、緊縛の技術を理解していく過程で、テコの原理はかなりの頻度で登場するといいます。
緊縛の技術、特に縄を扱う技術の部分っていうのは、基本はやっぱり物理なんですよね。
緊縛全体で見れば人間工学や心理学なども関わりますが、純粋に縄を扱う技術に絞ると、物理的な理解が欠かせないとたかせさんは話します。その代表例がテコの原理です。
ただし、テコの原理を深く理解しようとすると非常に大変で、たかせさん自身も物理学の専門家のレベルでは理解していないといいます。今回扱うのは、小学6年生ぐらいで習うとされる支点・力点・作用点 ── テコの原理を説明する3つの位置。棒を支える点が支点、力を加える点が力点、力がはたらいて物が動く点が作用点と一般に呼ばれますという、ごくシンプルな理屈です。
支点・力点・作用点は「点」で捉える
支点・力点・作用点を理解するうえで、たかせさんがまず大事だと考えているのは、それぞれが「点」であるということです。以前の配信で話した「テンションは点で捉える」という話と同じ考え方だといいます。
たかせさんの説明では、支点は支えるポイント、力点は力が入るポイント、作用点は作用をさせるポイントです。どれも基本は点として捉えるのが出発点になります。
支えるポイント
力が入るポイント
作用をさせるポイント
この「点で捉える」ことが、最初はできていない人が多いとたかせさんは指摘します。特に難しいのが力点です。
一回こう、引っ張れば、その(体の)曲線に対して満遍なくテンションが入るなんてことは基本的にはないわけですよ。
人間の体は曲線でできているため、一度引けば体全体に均等に力がかかるわけではありません。テンションをかけるときは、体のカーブに沿って力のかかるポイントが少しずつ進んでいくように縄をかけていく、というのがたかせさんの説明です。
支点・力点・作用点のどの点に力がかかっているのかをしっかり把握することが、縄さばきの第一歩とされています。
支点を見落とすと、テンションはどうなる?
たかせさんがもう一つ強調するのは支点です。支点を捉えられていない人がとても多いといいます。
受け手さんにテンションを入れる、つまり縄に張力をかけるとき、多くの人は縄を持っている手と受け手さんの体という2点だけで操作しようとしてしまうそうです。たかせさんはこれを、力点と作用点だけで操作している状態だと表現します。
その支点をなしにテンションを入れようと思うと、受け手さんが動いてしまったら、実はそこではテンションがうまく入らなかったりするんですね。
支点なしでテンションを入れてきたという人の場合、実は受け手さんが協力して、引っ張られないように耐えてくれているケースが多いとたかせさんは見ています。
たかせさんによれば、支点は縛り手の体を安定させるものであり、同時に受け手さんの状態を安定させるものでもあります。だからこそ、支点を適切に設定することが非常に大事になるといいます。
縄を持つ手と受け手の体だけで引く。力が入りにくく、受け手が動くとテンションがうまく入らない
縛り手と受け手の状態が安定し、支点があるからこそ作用点の作用が力点に及ぶ
たかせさんは、支点があるからこそ力点にかかる力が作用点に及ぶ、というイメージで捉えるとよいと話しています。
頭で理解するより「身体で捉える」
支点・力点・作用点の関係は、頭だけで考えるとかなり難しいため、実際に縛りながら試していく必要があるとたかせさんは話します。
理解というよりは、僕は個人的に感覚的には捉えるという言葉をよく使ってるんですけど。
たかせさんが言う「捉える」とは、頭の中だけで理解するのではなく、身体的につかむことです。ここに力点を置きたいならこの位置で支点を取り、この方向に作用させる、という計算のようなものが、数をこなすうちに感覚として身についてくるといいます。
ただし、ただ回数をこなすだけでは身につかないとも念を押しています。ここに支点を取り、ここで力を入れると、ここに作用する、という3点の位置関係を意識して取り組むことが大切だとされています。
3点の位置関係を捉えられると、無駄なく綺麗にテンションが入るようになるといいます。たかせさん自身はこれを中級以上の話かもしれないとしつつ、意識して取り組んでほしいと締めくくっています。
まとめ
今回の回では、緊縛の縄を扱う技術の土台として、小学校レベルのテコの原理である支点・力点・作用点の考え方が解説されました。点で捉えること、支点を適切に設定すること、そしてそれを身体で捉えることが、綺麗なテンションにつながるとされています。
- 縄を扱う技術は基本的に物理であり、テコの原理が頻繁に関わる
- 支点・力点・作用点はいずれも「点」で捉え、体の曲線に沿って力点を進めていく
- 支点がないと力が入りにくく、受け手の協力に頼る状態になりやすい
- 支点は縛り手と受け手の双方を安定させる役割を持つ
- 3点の位置関係は、意識して数をこなすことで身体的に捉えられるようになる

