返済方式は大きく分けて何種類?
今回のテーマは融資の返済方法です。若林さんは創業融資の支援では返済方法がほぼ決まっている一方、ステージが進むと選択肢が増え、方式によってキャッシュフローやランウェイが大きく変わる印象を持っていると話します。
若林さんから返済方法は何種類ぐらいあるかと聞かれた菅井さんは、少し迷いながら次のように答えました。
多分(返済方法は)3種類しかないんじゃないかなと思ってるんですけど。
若林さんは「月々返す」「期限に一括で返す」「月々返しつつ最後などに大きく返す」の3つを想定していました。一方の菅井さんは、月々返す方法を元金均等と元利均等に分けて数えていたため、3つの中身がずれていたことがわかります。
そこで二人は、元利均等、元金均等、期限一括の3つを基本形として、順に確認していきます。
元利均等・元金均等・期限一括はどう違う?
菅井さんによると、元利均等返済は月々の返済額が定額になる方式です。身近な例は住宅ローンで、基本的には元利均等になっているといいます。
若林さんの整理では、元利均等は元金と利息を合わせた金額が一定になるように、内部で元金と利息の割合が変動している状態です。これに対して元金均等返済は、元金の返済額が一定で、残高に応じて利息が変わるため、月々の返済額は変わっていきます。
菅井さんが3つ目に挙げたのが期限一括返済です。途中は利息だけを支払い、期限にまとめて元金を返す方式で、スタートアップでは資本性ローン ── 返済順位が他の債務より劣後するなどの条件により、金融機関の審査上は自己資本とみなせる融資。日本政策金融公庫などが扱っていますなどがこれにあたると若林さんは紹介します。
期限一括は英語でバレット、スケジュールに沿って分割で返していく方式はアモチと呼ばれます。菅井さんは、アモチゼーションやアモタイゼーションとも言うと補足しています。
| 方式 | 月々の支払い | 特徴 |
|---|---|---|
| 元利均等 | 元金と利息の合計が定額 | 住宅ローンなどで一般的 |
| 元金均等 | 元金は一定、利息は残高で減少 | 銀行の法人向け融資で一般的 |
| 期限一括(バレット) | 利息のみ | 元金は期限にまとめて返す |
バルーン返済はどんな場面で使われる?
基本形の組み合わせとして若林さんが挙げたのがバルーン返済です。菅井さんは、用途はいろいろあるとしたうえで、銀行の法人向け融資は一般的に元金均等返済だという前提から説明を始めます。
菅井さんによると、バルーン返済は本来キャッシュフローで返済すべき融資なのに、手前のキャッシュフローの創出力が弱いかもしれない場合に使われることが多いといいます。期限は一度区切りたいが、返済も少しはつけたい、という形です。
じゃあその実際の返済期限が来た時に、じゃあその残った部分、そのまさにバルーンになってる部分を一括で返せるのかどうかっていうのは当然あの論点にはなるんですね。
その場合は、スケジュールを引き直して借り換えるかという議論になることもあります。菅井さんは、そうした余地を残しながら融資している形態だと説明しています。
若林さんは、風船のように膨らんだ部分があるからバルーンと呼ぶのだと納得します。後半に聞かれたテールヘビー ── 融資の返済が後半(テール)に偏り、最終回の返済額が大きくなる返済形態を指す呼び方ですについても、菅井さんは「お尻が重い」という意味で基本的にバルーンと同じだと答えています。
据置期間と当座貸越は何のためにある?
若林さんは、返済の亜種として据置期間にも触れます。菅井さんが挙げた典型例は設備資金で、最初にキャッシュアウトがあるのに、設備が完成するまでキャッシュを生まないケースです。
まあ工場作りますとかっていうんであれば、資金は最初出すんだけど、工場完成して稼働してお金を生み出してから返済してくださいみたいな感じで、2年後から返してくださいみたいな感じの条件ケースってのはあるかなと思います。
若林さんは、コロナ融資のような緊急避難的な融資でも、苦しい期間の返済を据え置く形で使われたことがあったと補足しています。
さらに若林さんは当座貸越 ── あらかじめ決めた限度額の範囲内で、必要なときに借りたり返したりできる融資の形ですにも言及します。菅井さんは、返済期日が決まっていないという言い方が近いとし、実運用上は一旦期日を決めるものの、枠があれば借り換えられる「明確な期日のない枠の融資」というイメージだと説明します。
期限一括は銀行にとってどれほどのリスク?
基本形と応用形を確認したところで、若林さんはどの返済方式を選べるとよいのか、また金融機関がリスクの取り方としてどの方式を選びがちなのかを尋ねます。
菅井さんはまず大前提として、与信枠の提供や期限一括は、銀行がかなりリスクを許容している形だと答えます。そのうえで、期限一括のリスクを図形で説明しました。
縦が金額で横が時間だとした時に、期限一括の場合っていうのは、1億掛ける5年だと、1億掛ける5年の長方形になると思うんですよね。
で、これがまさに銀行が取っているリスクですと。
元金均等返済の場合は、1億円の5年融資の残高が時間とともに均等に減っていくため、図形はゼロに向かう三角形になります。菅井さんは、元金均等ならリスク量は半分になると説明しています。
満期まで1億円のリスクが続き、図形は長方形になる
残高が均等に減り、図形は三角形でリスク量は半分になる
期限一括はいきなり選べるのか?
このリスクの違いから、菅井さんは期限一括を最初から得るのは相当難しいと話します。期限一括は手前の資金の融通が利く一方で、銀行側にとっては大きくリスクを許容する形だからです。
まずはこう、期限一括ではなくて、えっと、まあ元利均等返済で、実績、まあお返しする実績、返済する実績を作りながらリレーションを作っていくっていうのが、一般的というか、まああるべきなのかなというふうに思います。
若林さんはこれを受けて、期限一括を提案された、あるいは希望が通ったということは、金融機関から相当にリスクを許容してよいと評価された状態だと言い換えます。ただしそれは一日にしてならずで、分割返済の実績と信用が積まれて初めて実現することがほとんどだと整理しました。
分割返済で借りる
最初は元金均等などで返済スケジュールに沿って返す
返済実績を積む
約束どおり返し続け、銀行とのリレーションを作る
信用が評価される
銀行がより大きなリスクを許容できると判断する
期限一括が可能に
手前の資金の自由度が高い条件を得られる
選べるなら期限一括を選ぶべき?
若林さんは、スタートアップ側から見ると期限一括は毎月の返済でキャッシュが減らず、自由度が高く使いやすく見えると話します。菅井さんは、選べるものではないとしたうえで、仮に選べても選んでよいかは吟味すべきだと付け加えました。
期限までの間はお金は返さなくていいんですけど、エクイティと違って期限が存在するので、期限の時には原則返さないといけないんですっていうものになるので。
2年後に1億返せばいいのかって思ってたものが、なんかあれよあれよのうちに3ヶ月後に1億返さなきゃいけないってなった時に、次のファイナンスが必要だけど手当てできてないっていうのは、急にこう、資金繰りの逼迫を迫られてしまうので。
菅井さんによると、少しずつ返していればキャッシュフローは読みやすい一方、期限一括では満期が近づいてから資金繰りが一気に苦しくなるおそれがあります。この点は大いに注意が必要だといいます。
若林さんは、この話が現実に起きていると応じます。2020年から2021年頃に出たコロナ型の資本性ローンは最低期間が5年1ヶ月で、ちょうど今頃、期限一括返済の期限を迎えるスタートアップが多いそうです。
若林さんのもとにも、ここ数ヶ月でどうしようという相談が数回寄せられたといい、菅井さんの指摘はスタートアップに実際に起こり得ることだと改めて感じたと話しています。
ローマは一日にして成らず、銀行は何を見ている?
返済方式を選べる立場になるには、先に信用を積むことが必要なのか。若林さんの問いに菅井さんはうなずき、ローマは一日にして成らずのような話だと答えます。
結局にも人間なので、えっと、定量に表れない、その定性的な、その、この人は信用できるのかとか、この会社は信用できるのかっていうのをやっぱり見ているので。
菅井さんは、ロジカルに説明するのは難しいとしながらも、銀行は数字だけでなく相手が信用できるかを見ていると話します。若林さんは最後に、早いうちから金融機関と取引を始めて信用を積んでおけば、返済方式を選ぶ自由が多少増えるかもしれないとまとめました。
まとめ
融資の返済方式は元利均等、元金均等、期限一括の3つが基本で、バルーンや据置期間などの応用形があります。期限一括は資金の自由度が高い反面、銀行にとっては大きなリスクで、借り手にも満期の資金繰りという落とし穴があります。返済の自由度は、分割返済の実績と信頼関係を時間をかけて積み上げた先に得られるものだと語られました。
- 返済方式は元利均等・元金均等・期限一括の3つが基本で、バルーンやテールヘビー、据置期間はその応用形
- 期限一括は銀行のリスクが長方形、元金均等は三角形となり、リスク量は約半分になる
- 期限一括は最初から得るのが難しく、提案されること自体が銀行からの評価の表れ
- 期限一括を選べても、満期に返済原資がないと資金繰りが急に逼迫するため吟味が必要
- コロナ型資本性ローンの満期を迎えるスタートアップから相談が増えており、早めの信用づくりが重要




