映画のジャンルとゲームのジャンルは何が違うのか
今回のメインテーマは、アクションゲームやRPGといった「ゲームのジャンル」です。夜中たわしさんは、当初は軽く話すつもりだったと明かします。
全然軽くないわこれ。調べてたらね、だんだん様子がおかしくなってくるんよね。
途中でね、ドイツで開かれた国際会議の話を理解する必要が出てきて。
さらにポーランドの大学の論文にたどり着き、翻訳しながら読んでいたら哲学者の名前まで出てきたそう。マリオやドラクエの話をするはずが、思わぬ方向に転がっていきます。
話を整理するために、夜中たわしさんはまず本屋の話から始めます。本屋はミステリー、SF、恋愛、ホラーのように棚が分かれていて、ジャンルがわかりやすいからです。
映画も同じで、アクション、コメディ、ドキュメンタリーのように分かれています。ここで大事なのは、これらが「何の話か」でジャンルを分けているという点です。
これがどういう分類かっていうと、何の話かなんよね。お話の種類で分けてる。
殺人事件が出てくればミステリー、怖い話ならホラー、という具合にわかりやすいわけです。ちなみに映画の世界最大のデータベースIMDBでは、基本的な分類が23種類だといいます。
ゲームのジャンルは「遊び方」で決まる
一方でゲームのジャンルは事情が違います。アクション、パズル、レースといった代表的なジャンルは、映画と違って話の内容がまったくわからないのが特徴です。
たとえばマリオもモンスターハンターも同じアクションゲームの括りですが、ストーリーは全然違います。ゲームのジャンルは、話の内容ではなく遊び方が基準になっているのです。
(インベーダーゲームは)あれが映画になってたらジャンルはSFなんよね。宇宙人やっつけてるから。
つまり、映画や小説が「何の話か」でジャンルを決めているのに対して、ゲームは「どう遊ぶか」でジャンルが決まっている。これがゲームの特殊なところの1つ目です。
「何の話か」で決まる。殺人事件ならミステリー、怖い話ならホラー
「どう遊ぶか」で決まる。マリオもモンハンも同じアクション
ゲームのジャンルは平気で掛け算される
ゲームの特殊なところの2つ目は、ジャンルが平気で掛け算されることです。夜中たわしさんは、あるゲームを想像してほしいと投げかけます。
舞台は未来、一人称視点で拳銃を持って戦い、経験値でキャラが成長し、マップがとても広くて自由に動ける。そんなゲームのジャンルは何になるでしょうか。
これはでも全部要素入れたくなっちゃいますね。
答えは、SFでシューティングでRPGでオープンワールド、と全部を並べるしかありません。要素が並列に存在しているからです。
こうしたゲームは今や普通で、最近のゼルダもアクションでオープンワールドでアドベンチャーの要素があります。映画なら組み合わせは2つまでが多いのに対し、ゲームは3つ4つと平気で重なります。
ゲームだとプレイヤーが操作して介入できるっていうおかげで、軸が一個多いんよね。
プレイヤーが操作して介入できる分、「どう遊べる作りにしているか」という軸が増えます。この2つの理由から、ゲームのジャンルは爆発的に増えているのです。
各ストアのジャンル分けは、担当者が困っている
では、ゲームのジャンルは実際どれだけあるのでしょうか。映画のIMDBのような権威ある基準がないため、夜中たわしさんはまず任天堂のジャンル数を調べに行きました。
Nintendo Storeのジャンル一覧を見ると、意外にもたった16種類。映画の23種類より少なく、夜中たわしさんは拍子抜けしたと話します。
いやもう30、40あってくれって思って見に行ったら、映画より少ないんかいって。
ジャンルはアクションやRPGのほか、後半には学習、教育、トレーニング、ツールなどゲームらしくないものも並びます。これだけで全ゲームを表せるのか、という疑問が残ります。
たとえばアクションゲーム1つとっても、マリオ、モンハン、スマブラ、ボンバーマンが同じ箱に入ります。夜中たわしさんは、任天堂は苦肉の策でジャンルを減らす方向にいったのだろうと推測します。
PlayStation Storeは19種類ですが、内容が独特です。オープンワールドやリラックス、基本プレイ無料といった項目が「おすすめのゲームジャンル」として並んでいました。
基本プレイ、無料?ジャンル?
モダンリメイクという項目もあり、リメイクをジャンル扱いするのかという状態です。夜中たわしさんは、担当者もかなり困ったはずだと繰り返します。
そしてPCゲーム販売サイトのSteamは、ジャンル表記をほぼやめて「タグ」で表現しており、その数は400ほど。ゲームのジャンルは単純比較できないほど膨らんでいます。
RPGはなぜ本来の意味からずれたのか
ここから特定のジャンルの話に入ります。夜中たわしさんが「一番の厄介者」と呼ぶのがRPGです。
RPGはロールプレイングゲームの略で、直訳すれば「役割を演じるゲーム」。元ネタはテーブルトークRPGという、なりきりボードゲームのようなものでした。
ところが日本のRPGは、ドラクエやFFのように主人公が決まっていて、人格もストーリーもほぼ固定です。プレイヤーが自由にキャラを演じているとは言い難い形になっています。
クラウドが急に目覚めてさ、(セフィロス倒しをやめて)バレットとゴールドソーサーで暮らしますわとかでけへんよね。
キャラメイクができて好き放題できるスカイリムやウィザードリィのような形が海外では主流で、そちらが本来のRPGに近いポジション。だから日本のRPGはJRPGと呼ばれがちです。
ではRPGと呼ぶのをやめればいいのかというと、そうはなりません。JRPGという言葉が市民権を得すぎているからです。
JRPGって聞いただけで、コマンドで戦って仲間を集めてラスボスを倒しに行く、あのアニメっぽい絵柄のやつって完全に共通認識できてるでしょ。
語源的にはおかしくても、伝達力は群を抜いています。ジャンルの名前は本来の意味からずれていきがち、というのがRPGの示す教訓です。
ローグライクとは何か、名前がジャンルになる不思議
ジャンルのずれの極みとして登場するのが、今回の主役ローグライクです。まずは元になったゲームから説明されます。
1980年頃に「ローグ」というゲームがありました。ダンジョンに潜り、入るたびにマップの形が変わり、やられるとアイテムも経験値もすべて失う、という特徴を持っています。
これに似たシステムのゲームをローグライクと呼びます。ライクは「似ている」の意味で、日本では風来のシレンやトルネコの大冒険が有名です。
ここでおかしいのは、ゲームの名前がそのままジャンル名になっている点です。イチィゴォーさんもこの点に触れていました。
マリオライクみたいなことやからね。もののけ姫ライクの映画とかあかんでしょ。
映画なら「タイタニックライク」のような呼び方はまずしませんが、ゲームは似たシステムを作ることに寛容なため、新ジャンルにゲーム名がそのままつくことがあります。
同じ例として、DARK SOULSを受け継ぐソウルライクや、メトロイドとキャッスルヴァニアが合体したメトロイドヴァニアもあります。名前だけ見ると意味がわからない、独特なジャンルです。
ベルリン解釈という、大仰な名前の「目安」
ローグライクは繰り返し遊べる面白さで人気になり、似たゲームがたくさん登場しました。すると、ローグライクなのかどうか微妙なゲームも出てきます。
当時問題になったのがディアブロです。見下ろし型のアクションゲームで、ダンジョンやランダムなアイテム、やられたら終わりのモードなどローグライクの要素を持っていました。
まさかアクションゲームなのにローグライクを名乗るんじゃあるまいなと。
そんな中、2008年にドイツのベルリンで「国際ローグライク開発会議」が開かれ、そこで生まれたのが「ベルリン解釈」です。
ベルリン解釈は、マップが毎回変わる、やられたら復活しない、ターン制でマップがマス目で構成されているなど、ローグライクの条件をまとめたものです。
大事なのは、これが厳密な定義ではなく「目安」だという点です。当てはまるほどローグライクに近い、という程度問題として作られています。
これは厳密な定義じゃなくて目安ですと。ベルリン解釈を作った方々が言ってるんですね。
しかも会議自体はローグライク開発者が13人集まった、オフ会のようなものだったそう。設計やプログラミングの共有がメインで、定義決めはそのついでだったといいます。
ローグライトと「伝統的ローグライク」の混乱
比較的最近登場したのがローグライトです。夜中たわしさんは、初めて見た人は全員ローグライクのタイピングミスだと思うだろう、と話します。
ローグライトはよく、プレイするごとにやられても何らかの強化要素が残るゲームを指します。ハデスやデッドセルズのような、少し緩いローグライクをそう呼ぶ派閥があります。
ただし解釈は諸説あり、ベルリン解釈から少しでも逸脱したらローグライトだ、という過激派もいます。明確に説明できる人はいない、というのが実情です。
なんか楽なローグライクなんかなくらいの認識でいいと思います。
このローグライトが大流行した結果、逆にそれらもまとめてローグライクと呼ばれるようになり、ジャンルの枠がどんどん広がっています。
すると、本来の風来のシレンのようなゲームが見分けづらくなるという問題が起きました。そこで生まれた言葉が「伝統的ローグライク」です。
もともと単なるローグライクだったものが、後から「伝統的」とつけられた形です。夜中たわしさんは、これをレトロニムだと説明します。
ローグライク警察と、ジャンル分けの限界
ここまで話すと触れざるを得ないのが「ローグライク警察」です。ローグライクの定義に厳しく、ガチガチのローグライクしか認めない人々を指します。
アクションゲームの要素入ってたらローグライクちゃうやんと。永続強化されるんやったら、全然ローグライクじゃないでしょうにと。
夜中たわしさん自身も近い感覚を持っていたそうで、チョコボの不思議なダンジョンでレベルが1に戻らないことに驚いた経験を挙げます。
ただし、ベルリン解釈そのものが「目安」であり、ある程度の逸脱を許すルールです。だからローグライクの範囲が広くてもよい、というのが夜中たわしさんの立場です。
目安やからローグライクで大丈夫です警察みたいな、(警察の)が発足してくれないとちょっと良くないかも。
こうしてジャンル分け自体が無理なのではないか、という話になってきます。実際、この問題を研究している学者もいるといいます。
論文が出した結論は「ジャンル分けをやめてタグを使え」
冒頭で触れたポーランドの大学の論文が、ここで登場します。タイトルは「ゲームを分類する複雑な方法」で、ゲームの分類方法を扱った論文を調べた論文です。
心理学の研究では、「このジャンルのゲームを遊ぶと暴力的になるのでは」といった形でゲームジャンルが登場します。この論文は、そうした論文を96本調べました。
すると、ゲームジャンルの分類方法は論文ごとに異なり、46種類もの違った分類が見つかったそう。学者でもジャンル分けを統一できていないことがわかります。
学者でもゲームのジャンル分け全然決められてへんやんっていう。こういうルールでジャンル分けしたらええでっていう手法の正解がないんです。
そして論文の結論は、ジャンル分けはやめて、代わりにタグを使えというもの。しかも論文には、具体的にSteamのタグを使えと書かれていたそうです。
「カピバラ」タグが優秀な理由
ここでタグの話を掘り下げます。タグはユーザーが自由につけられるキーワードで、ジャンル的なものだけでなく、独特なものもあります。
たとえば「意図的に不便な動作」というタグ。わざと操作しにくくしたゲームにつけられていて、以前ひゅうまさんが紹介した竹馬のゲームStilt Fellaにもついていたそうです。
このタグがついてたら一発でわかるやん。あ、しんどいゲームやって。
ほかにも「掃除」「整理整頓」など、内容が一目でわかるタグがあります。夜中たわしさんが特に優秀だと推すのが「カピバラ」タグです。
(カピバラタグは)カピバラを探してる人にとって見つけやすすぎるから。
カピバラが出てくるゲームを探している人にとっては、アクションやRPGよりもよほど役に立つ。これが論文の言う「タグにしておけ」という発想です。
タグにも弱点がある、「濃さ」を表現できない問題
では全部タグにすればいいのかというと、そう単純でもありません。夜中たわしさんは、ローグライクタグの問題を挙げます。
Steamでローグライクタグがついたゲームは1万5000本以上。しかも、あまりローグライクじゃないものから、すごくローグライクなものまでグラデーションがあります。
こっちのゲームはローグライク成分30パーセントやなみたいな、いろいろあるんですよ。それが全部同じタグ。
その点、カピバラは出るか出ないかしかなく、50パーセントのカピバラというものが存在しません。だからタグとしてきれいに機能します。
一方でローグライクは中途半端な状態があり、要素の強弱までタグでは表現しきれません。もし「ローグライク50パーセント」と表現できれば、警察も納得するかもしれない、と夜中たわしさんは話します。
ジャンルは正しさより「見つけやすさ」のためにある
まとめに入ります。ここまでジャンルやタグの良くないところを語ってきましたが、そもそもジャンルは何のためにあるのか、という問いに戻ります。
(ジャンルがあると)めちゃくちゃ探しやすい。
そう、目的はそれだけです。ものが溢れているなかで目的のものを見つけ出す、地図のような役割こそがジャンルの意味だといいます。
そう考えると発想が逆転します。正しい分類をしなくても、目的のものが見つけやすければそれでいいのです。完璧な分類は最終目的ではありません。
だから、多少ローグライクじゃないものが混ざっていても勘弁してあげてほしい、というのが夜中たわしさんの着地点です。ざっくりでいい、というわけです。
冥王星もローグライク?分類の話は宇宙にも通じる
この分類の話はゲーム以外にも通じる、と夜中たわしさんは「惑星警察」の話を持ち出します。冥王星が惑星でなくなった一件です。
ベルリン解釈が「ローグライクとは何か」を決めた会議だったのと同じように、惑星の世界でも「惑星とは何か」を決める会議が開かれました。
その条件から冥王星は外れ、準惑星になりました。観測技術が上がって冥王星サイズの星がたくさん見つかったことが原因で、ローグライクが増えたのと似た構図です。
そいつら(小さい星)がね、我々も惑星ですよね、ローグライクですよねって仲間に入れてくださいって言って肩組んできたんですけど。
いや冥王星は惑星でないとダメだ、という人がいて、そこに定義的には準惑星だと指摘する「警察」が出動する。ゲームと同じことが宇宙でも起きている、という話です。
夜中たわしさんは、トマトが裁判で果物から野菜に変えられた「トマト裁判」の話にも触れつつ、ゲームジャンルは奥深すぎるとまとめました。今回は第一章で、話しきれていないことがまだたくさんあるそうです。
まとめ
ゲームのジャンルは「どう遊ぶか」で決まり、平気で掛け算されるため、映画よりはるかにややこしくなっています。ローグライクを軸にたどると、名前のずれや定義の混乱が次々に見えてきますが、最終的には「見つけやすければいい」というシンプルな着地に落ち着く回でした。
- 映画は「何の話か」、ゲームは「どう遊ぶか」でジャンルが決まり、ゲームは要素が掛け算されて増える
- RPGやローグライクのように、ジャンルの名前は本来の意味からずれていきがち
- ベルリン解釈は厳密な定義ではなく「目安」で、ローグライクの範囲は広くてよい
- 論文の結論はジャンル分けより「タグ」を使うこと。ただしタグは要素の濃さを表現できない弱点がある
- ジャンルは正しさより、目的のものを見つけやすくするための地図として機能すればよい





