レンさんもロンドンへ。1年越しの結論
研究者のレンさんとOLのエマさんが科学をエンタメっぽく語るサイエントーク。今回は科学の話ではなく、2人の人生の話をする「人生史」の回です。
レンさんは冒頭で、お便りの紹介が長くできていなかった理由を「言い訳」として打ち明けます。その結論は、レンさん自身もロンドンに行くことにした、というものでした。
結論から言うと、僕もロンドンに行くことにしました。
おー、おめでとうございます。
エマさんによれば、これまでリスナーから届いたコメントは「99%」がレンさんもロンドンに行ったほうがいいという内容でした。レンさんがロンドン行きを口にしたのは2024年の初めごろで、そこから約1年かけてようやく結論にたどり着いたことになります。
まあ目の前真っ暗だった。あの時。
結婚、エマさんの赴任、そして揺れ続けた日々
レンさんは改めて経緯を説明します。2人は2023年に結婚し、同年の年末ごろに結婚式を挙げました。その前後にエマさんのロンドン行きの話が持ち上がり、エマさんは2024年5月から現地で暮らしています。
レンさん自身がどうするかは、番組内で正式に報告していませんでした。その間、レンさんはいろいろな人に話を聞いたり、会社と話し合ったりしていたといいます。詳細は語られていませんが、精神的にはかなり追い込まれていたようです。
もうね、頭おかしくなりそう。
この回は、毎月10日ごろに複数番組が共通テーマで配信する科学系ポッドキャストの日 ── 科学系のポッドキャスト番組が同じ日に共通テーマで配信する企画。毎回ホスト番組がテーマを設定し、科学系以外の番組が参加することもありますの企画回でもあり、今回のテーマは「ドタバタ」です。テーマを設定したのは、2組の夫婦系ポッドキャストの夫側が集まった番組「けいちゃんまあくんのドタバタグッドボタン」だと紹介されました。
エマさんは、この1年でレンさんの姿勢が大きく変わったと振り返ります。最初は、エマさんがロンドンへ行くこと自体に反対されたところから始まりました。
その後レンさんはエマさんの渡英を受け入れ、今度は自分もついて行くかどうかで悩みます。リスナーの後押しもあって行く方向に傾いたものの、社内でのやりとりで「行けそう」と「やっぱり行けない」を繰り返したといいます。
いや、申し訳ない。なんかすごくね、君には精神的負担をかけましたね。
エマさんが体調不良もそのせいではと尋ねると、レンさんは「鳥刺しを食べてカンピロバクター」だったので関係ないと笑って否定しました。
1年間のロンドン生活は「人生の夏休み」?
レンさんの渡航は2025年5月ごろからの予定です。エマさんの赴任期間は2年なので、2026年の4月か5月ごろまでの約1年を一緒に過ごし、そろって帰国するイメージだといいます。
ただし、帰国時期はまだわかりません。エマさんは、他社の駐在員の話では赴任期間が延ばされることもあると聞いたそうです。
いやまあでもね、人生の夏休みだと思って、もうエンジョイしたらいいと思いますよ。
レンさんは、1年ぐらいなら一瞬で終わるだろうと感じつつ、自分のために時間を使える機会だと捉えています。留学も結局は自己研鑽であり、今回のロンドン行きもスキルアップの時間にしたいという考えです。エマさんはそれを「社会人がする留学」と表現しました。
何も決まってない時が結構きつかったな。
エマさんは、たった1年と思う人もいるかもしれないが、レンさんのキャリアにも関わる問題だったので、行くか行かないかの判断はとても大きかったと補足します。行くことと、現地で勉強することが決まっただけで心が安定した、と2人は口をそろえます。
迷っていた時期のレンさんは「可能性無限大」と言い、ロンドンで寿司職人になるかもしれないとまで話していました。結果として寿司職人にはならないものの、空いた時間に何をするかはこれから決めるそうです。
ロンドンを選べたことと、エマさんの期待
エマさんは、行き先がロンドンでよかったと話します。何かしようと思えば遊びも食も何でもそろっていて、さまざまな国のレストランがあり、ほかの国へも行きやすいからです。
レンさんもすでに2回ロンドンを訪れており、住みやすく便利そうだという印象を持っています。一方でエマさんには、レンさんに期待していることがありました。
私もなんか一人だと何かダラダラしちゃったりとか、(最近は)慣れてきて、そこまでこう開拓しようみたいな気分じゃないんだけど。
それを連くんが来ることによって、連くんが外に引っ張り出してくれるかなって思ってる。
レンさんは、せっかく行くなら現地のグループやコミュニティに参加するなど、ロンドンでしかできないことをしたいと応じます。一生のうちにロンドンに住む機会はなかなかない、というのがレンさんの実感です。
雑誌掲載に受賞、てんてこ舞いだった裏側
ロンドン行きの話と並行して、サイエントークの活動でも動きがありました。レンさんは、これまで番組で報告しそびれていた実績をまとめて紹介します。
- 都市出版の雑誌『東京人』2024年9月号に掲載
- 海外日本人研究者ネットワーク(UJA)から科学広報賞の表彰
- ポッドキャスターアワードの一次選考を突破
- 理科の先生向けの雑誌へのコラム執筆やインタビュー取材
雑誌名は書き起こしでは「東京事」と聞き取られており、表記は東京人です。レンさんはこうした活動で「てんてこ舞い」だった一方、今は「スーパーモチベーションアップ状態」だと話しました。
エマさんは、これまで仕事と両立してきたレンさんがロンドンで時間を得れば、ポッドキャストやYouTubeの質も上がるはずだと期待します。2人は2025年を、サイエントークにとって飛躍の年にしたいと意気込みました。
じゃんじゃんポッドキャスト関連のこう、お仕事ください。
1年越しのお便り。「起承承承承」からの転
後半は、長らく紹介できていなかったお便りを読む時間です。最初は常連のアダムサーティーンさんから、エマさんのロンドン行きを発表した回への感想が届いていました。
タイトルから衝撃的すぎて繰り返し聞いています。起承転結の人生史。起承承承承くらいに思っていたら、まさかの転。
一回目に聞いた時はさすがにレンさん気の毒だなと思ったのですが、もう一度聞き直してみると、生き生きとしたエマさんが印象的で、これは思いのままに飛び立たせてあげたいという気持ちが強くなりました。
アダムサーティーンさんは、自身も仕事とは関係なく5年ほど別居していた経験があり、今は夫婦仲良く過ごしていることから、2年くらいは問題ないと思うと書いてくれていました。
レンさんも、エマさんを「飛び立たせてあげたい」という気持ちは同じだと応じます。エマさんがロンドン行きを決めた理由は、行かないと後で後悔しそうだと思ったからでした。
結局こう10年後ぐらいに振り返った時に後悔しないのどっちかなみたいな。っていうのはあったね。
1年間なんか仕事しないからお金がちょっとなくなるとか、もうそういうのよりも人生の経験とか後悔しないかとか、そっちで選んだ方が絶対いいよね。
エマさんが「私が家計の柱になります」と言うと、レンさんは、エマさんの家族も聞いているから笑ってはいけないと慌て、ちゃんと頑張ると宣言しました。
「選んだ道を正解にしていく」という言葉
次は、以前は「俺様」の名前でお便りを送っていたタタタさんです。毎週必ずお便りをくれる、番組でもトップクラスの常連だと紹介されました。
自分ならどうするかと考えました。目一杯休職してロンドンへ渡り、ヒモ生活ですね。お金が足りなきゃ借りてでも行きますね。後から返せばいいんだから。今の大切な2年間をとにかく楽しむと思います。
私も新卒で入った会社を辞めて2ヶ月ほど無職の時期がありました。妻は朝から仕事、私は朝ジムで運動して、プールで泳いでサウナでのんびり、その後家事全般をやってました。平日に2人で旅行も行きました。
タタタさんは、レンさんには日本語教師が似合いそうだとも書いています。「お金は後から返せばいい」という考えは今も家庭で変わらず、子どもたちがやりたいと言い出したことはできる限りやらせているそうです。
選んだ道を正解にしていくという言葉が好きです。応援しています。きっとうまくいく。
レンさんは、2年間別々に暮らす選択肢も十分あったと明かします。そのうえで、こうした経験談を聞いたことは、自分の決断に多少なりとも影響したと話しました。
やっぱりこう、自分の考えって狭いなみたいな感じもした。
やっぱ第三者から見たらこうかっていうのはやっぱ大事だなと思ったね。
エマさんも、自分より経験のある人たちから「行ったほうがいい」と言ってもらえることは、背中を押してもらえる自信になると共感しました。
クマムシが量子もつれ?キーホルダーの行方
続いて、こちらも常連のフェリックスさんからのお便りです。ロンドンの話とは関係ないものの面白い内容として紹介されました。
クマムシキーホルダー届きました。カフェインキーホルダーと共にカバンにつけて通勤しています。先日娘と話していると話題がクマムシの実験に移りました。何でもクマムシを量子もつれ状態にすることに成功というニュースを読んだとのこと。
娘にクマムシを量子もつれ状態にするってどういうこと?と聞かれ、記事を3度読みましたが、よく理解できませんでした。また機会があれば、クマムシは一体どうなっているのか教えてください。
娘さんは前年の大学入学共通テストの英語でクマムシが出題されたことが頭に残っていて、このニュースに反応したそうです。クマムシ ── 体長1mm以下の小さな動物。乾燥や高温・低温、放射線など極端な環境に耐えることで知られ、サイエントークでもたびたび話題になっていますをめぐって親子でこうした会話をしていることに、エマさんは感心していました。
レンさんもこのニュースは見たものの、まだうまく説明を整理できていないため、2025年中に量子の話をする回でじっくり扱いたいと答えます。番組ではこれまでに量子ドットの話はしたものの、量子そのものを詳しくは話していないそうです。
クマムシをなんか雑巾にして、雑巾で絞られたみたいな形を想像してる、今。めっちゃ描きたい。
話はクマムシキーホルダーに移ります。購入者から「土台だけ残ってクマムシが消えた」という投稿があり、エマさん自身も金具部分だけ残ってキーホルダー本体をなくしてしまったそうです。レンさんは謝罪しつつ、在庫限りでオンライン販売が始まったことを告知しました。
25年前、新婚でドイツへ単身赴任した先輩
ここからは初めてお便りをくれた人たちです。ヒロさんは、2人より随分年上で、同じような境遇を経験したと書いてくれました。
私は男で、25年ほど前に結婚と海外赴任を同時期に経験しました。二人で話し合い、式をして籍を入れてから半年後に単身でドイツへ行きました。妻も仕事があり、辞めたくなかったのと、妻はドイツに住むことにはそんなに興味がないということでそうなりました。
当時はネットもあまり普及しておらず、メールや週1回の電話でやりとりしていたそうです。転機は、数ヶ月後に妻がドイツへ遊びに来たときでした。
ドイツに住むことにあまり興味がなく、仕事もあるため日本に残る
2週間ほどドイツに滞在して住むのもいいかもと思い、途中から2人でドイツで暮らす
ドイツでは休みに国内や周辺国を旅し、日本ではできない経験を2人でできたことが今でも大きな宝だといいます。ヒロさんの場合は1年ほどでしたが、レンさんが追いかけていけるといいと思う、と書いていました。
エマさんは、25年前の話でもこれほど鮮明に覚えていることから、行けばきっと思い出になると受け止めます。レンさんは、妻が現地に来て気持ちが変わったという点に注目しました。
こう、なんか行ってみないとわかんないみたいなのも結構あるなって思うんだよな。
レンさん自身も、年末年始にイギリスを訪れたことで、現地で暮らす姿を具体的に想像できるようになったそうです。年末年始の旅の話は、別の回でするとのことでした。
まだ不安でも「贅沢な悩み」
レンさんは、海外赴任経験のあるリスナーから大変なことも多いと聞いており、行く前の今はまだ不安があると率直に語ります。それでも、大変さを上回る良いことがあるのだろうと考えています。
エマさんは、ロンドンでの安全面の心配が少なく、生活の立ち上げもすでに自分が済ませていると指摘しました。
(君の悩みは)何をして時間を過ごすかっていうだけの悩みといったら、だけって言ったらあれだけど。だからいいんじゃない?贅沢な悩みじゃない?
レンさんは博士課程のころにアメリカで暮らした際、1週間前まで家が決まっておらず、立ち上げに苦労した経験があります。それと比べて、エマさんが先に現地にいることは「めちゃくちゃでかい」と感謝しました。
会社に反対されても、子連れでイギリスへ
モニカさんは、2人そろってイギリスに行くことを勧めるお便りをくれました。
私は夫がイギリスの研究所に行くことになった時、会社は反対しましたが、3歳の子供と妊娠中の身でしたが、行きました。自費で家を借りて、イギリスの会社の人がとても協力的で温かく迎えてくれました。
私は何でもチャレンジがいいと思っているので、ぜひレンさんもまだまだ若いので一緒にイギリスに行くことを考えてください。
モニカさんは、ポッドキャスト「バイリンガルニュース」のマミさんが今イギリスにいることにも触れ、連絡を取ってみてはと提案していました。
レンさんは、似た境遇の人がこれほどいて、率直なアドバイスをもらえることに驚きます。普通はもらえないアドバイスであり、意図せずポッドキャストの「いい使い方」をしていると感じたそうです。
エマさんは、レンさんにも会社との間で似た状況があったのではと尋ねます。レンさんは詳細は控えつつ、すんなり送り出してもらえる状況ではなかったと認めました。
(会社の反応は)「はい、OK、仕事ここにあるから行ってらっしゃい」みたいなものでは全然なかったですよ、正直。
レンさんは、ポジションを任されている以上、会社の立場も理解していると話します。そのうえで、長期的な視点で考えたことも明かしました。
今すぐのことが大事で、ポジションを持つ社員が離れるのは受け入れにくい
長期的に自分が成長すれば、会社にプラスで還元できるかもしれない
エマさんは、会社から反対されると自分が正しくないのかと落ち込むこともあるが、モニカさんのような人の言葉が支えになったと話します。レンさんは、こうした会話が同じ境遇の誰かのプラスになればいいとも語りました。
研究職を手放し、教員の夢へ回り道した決断
ゆずっこさんは、結婚のタイミングで夫の海外赴任が決まり、レンさんと同じ「ついて行くかどうか」の立場に立った経験を詳しく書いてくれました。
付き合って7年目で、2人とも30歳手前。主人の仕事の関係で遠距離恋愛をしてました。再来年ぐらいに結婚しようかと話していた時、主人の海外赴任が決まりました。
私は製薬会社で研究員3年目でした。元々は教員になりたかったけれど、視野を広げるために自分の専門でできる仕事に就いてました。
家族なら一緒に行けるとわかり、2人はすぐに結婚し、ついて行くかどうかはゆずっこさん自身が後で決めることにしました。お便りでは、そこから結論に至るまでの考えの道のりが丁寧につづられています。
| 選択肢 | 懸念 | 得られそうなもの |
|---|---|---|
| 一緒に行く | 研究職を手放すと簡単には戻れない | 海外生活で視野が広がり、教員の夢にプラス |
| 日本に残る | 会えず価値観がすれ違うかもしれない | 研究員としてのキャリアが増える |
ゆずっこさんは、子どもができた後に母親が一人で海外に出るのはハードルが高く、自力で海外生活をするのは難しそうだとも考えました。最終的に、後悔が少ないのは一緒に行くほうだと結論づけ、仕事を辞めてアメリカへ渡ります。
アメリカではコミュニティカレッジで英語を学び、地域のテニススクールで近所の人と交流し、現地での出産も経験して3人で帰国しました。今は念願の教員として働き、その経験が子どもたちの進路相談に役立っているそうです。
あくまでも私は一緒に行きましたが、残る選択肢でも絶対にお二人にとっていい道があるはずです。応援しています。
エマさんは、結果だけでなく考えた経緯まで書かれていたことで、未来が見えずに悩んでいる今の自分たちも納得感を持って受け止められたと話します。そして、キャリアへの影響を不安がっていたレンさんにとっても、そもそも人生でやりたいことは何かという視点で考えるのは大切だと語りました。
一直線の人生から、初めて自分で外れる
レンさんは、帰国後に経験を生かして研究を頑張る道も残っており、プラスアルファでやりたいことが見つかるかもしれないと話します。日本で同じ1年を過ごせば、先の見通しがついてしまうという感覚もあったそうです。
多分ね、日本にいて同じ1年だったら、なんとなくこの1年見通せちゃうなという気もするんだよね。
レンさんは、受験して大学に入り、会社に就職するという一直線の道を歩んできました。博士課程時代のアメリカ滞在も研究の延長線上で、自分で決めて海外で暮らすのは初めてに近いといいます。そのため、外れることで何が得られるのか想像できない怖さもあったそうです。
エマさんは、この年齢になれば人それぞれの人生があり、決まったレールはもうないと応じます。一本道から多少外れても、そこから学びがあるかもしれないという考えです。
もう多少さ、一本道から外れても全然いいと思うし。
君がいて、ちょっとこう視点が広がったみたいなのもあるかもしれない。
遅れた返信と、これからの1年
レンさんは、人生史と言いつつ、お便りを通じていろいろな人の人生の話が聞けてよかったと振り返ります。どのお便りも数ヶ月以上前に届いたもので、今も聞いてくれているか心配だとも話しました。
エマさんは、リアルタイムで返信できなかったのは申し訳ないが、当時は悩みすぎてそれどころではなく、今だからこそ返信できたと話します。レンさんも、決断した今のタイミングで読めたことで、肯定してもらえていると感じ、頑張ろうという気持ちになったそうです。
紹介しきれなかったお便りはまた別の回で取り上げる予定です。最後にレンさんは、今年どうなるかはわからないものの、引き続き番組を頑張っていくと語り、応援を呼びかけました。
まとめ
妻のエマさんのロンドン駐在をきっかけに、レンさんは約1年迷った末、2025年5月ごろから自分もロンドンへ行くと決めました。決断の背景には、10年後に後悔しないかという視点と、同じ境遇を経験したリスナーたちの具体的な経験談がありました。
- レンさんは2025年5月ごろからロンドンへ渡り、エマさんの赴任期間に合わせて約1年過ごす予定
- 迷いの中心は会社との調整とキャリアへの影響で、「行けそう」と「行けない」を何度も繰り返した
- 決め手の1つは、お金や目先のキャリアより、後悔しないかや人生の経験で選ぶという考え方
- 海外赴任や帯同を経験したリスナーのお便りが、自分の考えの狭さに気づかせ、背中を押した
- 一直線に生きてきたレンさんにとって、自分で決めて道を外れるのは初めてに近い挑戦になる




