なぜ今、ハーレーダビッドソンを取り上げるのか
この回のきっかけは、ジェラードンがコント芸人の頂点を決めるキングオブコント2026で優勝し、賞金1000万円の使い道を「二人でハーレーダビッドソンを買います」とコメントしたことです。
CEOセオさんはYouTubeでジェラードンのコントをたまに見ているといい、自身もハーレー乗りであることから、このコメントを機にハーレーダビッドソンを取り上げることにしたと話しています。
こういった時のは「バイクを乗りますイコールハーレー」と。なんかこう憧れのイメージというのがあってですね。
CEOセオさんによれば、ハーレーには「男のロマン」やアメリカを象徴するブランドというイメージがあり、とくに40代から70代ぐらいの人たちにとって憧れの存在です。CEOセオさん自身も、中学生の頃にハーレーダビッドソンの財布をよく見かけたといいます。
40代、50代になると、若い頃にバイクに乗っていた人が再び大型バイクに乗りたくなるリターンライダー ── 若い頃にバイクに乗り、一度離れた後、中高年になって再びバイクに戻ってくるライダーのことが急増しているとCEOセオさんは指摘します。
一方でハーレーは難題も抱えています。約1年前に話題になった販売店への過剰な押し付けと公正取引委員会の問題を深掘りしつつ、ビジネスの可能性を考えるのがこの回のテーマです。
公正取引委員会の処分は何を問題にしたのか
2025年9月、公正取引委員会がハーレーダビッドソンジャパンを処分しました。独禁法上の優越的地位の濫用 ── 取引上強い立場にある事業者が、その立場を利用して取引先に不当な不利益を与える行為。独占禁止法で規制されていますにあたるとして、課徴金は2億1147万円にのぼりました。
問題の中身は、ハーレーダビッドソンジャパンが販売店に高い販売目標を設定し、その台数を買い取らせていたことです。
ハーレーの流通は、アメリカの本体からハーレーダビッドソンジャパンが仕入れ、ジャパンが販売店へ車両を売り、販売店がユーザーに売るという形です。販売店はジャパンから車両を「買い取り」で仕入れる必要があります。
米国本社
ハーレーダビッドソン本体が車両を供給する
ハーレーダビッドソンジャパン
本社から仕入れ、販売店に車両を売る
販売店
ジャパンから車両を買い取り、在庫リスクを持つ
ユーザー
販売店から購入する。ここで初めて販売店にお金が入る
さらに販売店の契約期間は通常3年で、自動更新がありません。在庫リスクを販売店が持つ構造のなかで、「去年の130%を買いなさい」と言われれば、販売店は買うしかなかったとCEOセオさんは説明します。
じゃあもう(契約を)更新しないよと言われちゃうと、店を畳まなきゃいけないと、いうこともありますから。
その結果、販売店は自腹で車両を買ったり、自社や従業員の名義で登録したりする「自社登録」を余儀なくされていました。実際には売れていない新車が登録されるため、新車価格も崩れていきます。
告発の対象となった販売店は38社で、前年比130%のノルマを抱えさせられていたといいます。
本社は売上が立ち、販売店は苦しむ構造とは
CEOセオさんは、ノルマ問題の本質を「出荷」と「実売」のずれに見ています。ハーレーダビッドソンジャパンは販売店に買い取らせた瞬間に売上が立つため、130%を買い取らせれば売上も130%に増えます。
一方の販売店は、顧客に売れて初めてお金になります。売れなければどんどん厳しくなり、出荷と実売のリスクを販売店が全部抱えていたというのがCEOセオさんの見立てです。
販売店に買い取らせた時点で売上が立つ。130%買い取らせれば売上も増える
顧客に売れて初めてお金になる。売れ残りの在庫リスクをすべて負う
これに対して、アメリカの本社は2025年の通期決算で、販売店の信頼回復と、卸の量を実際の小売需要に合わせる方針を示しました。
だから「97%で買ってくれ」とかそういう話になっていて。
世界の販売店の在庫は前年末で17%減っているといいます。2026年6月には新戦略を掲げ、販売店の収益性を上げることで本社にも利益が還元されるという、CEOセオさんいわく「至極当たり前」の方向へ舵を切りました。
販売店に前年比130%のノルマで買い取らせ、本社の売上を作る
卸を実際の小売需要に合わせ、販売店の収益性を上げて本社にも還元する
本業の赤字を支えた金融事業と、その限界
ただし2025年のハーレーのバイク事業は営業赤字で、厳しい状況だったとCEOセオさんは説明します。
一方で同じ2025年、金融子会社は過去最高益でした。バイク購入時のローンで金利を得るファイナンス事業が大きなプラスになっていたわけです。
しかしこのローン債権はバランスシート上で重いため、ハーレーはKKR ── アメリカの大手投資会社。企業買収やプライベート・エクイティ投資で知られていますとピムコに売却し、資本を軽くする方向を取りました。そのため、ローンで収益を上げる道もなかなか難しくなっているといいます。
量産からブランドへ、ハーレーの歴史が示すもの
ハーレーは1903年にミルウォーキーで創業され、創業から123年ほどになります。エンジンが「ミルウォーキーエンジン」と呼ばれるのも、この創業地にちなんだ名前です。
1969年にはレジャー用品大手のAMFに買収され、量産主義に走ったことでブランドが落ち込みました。
1981年には経営陣13人がAMFからMBO ── 経営陣が自社の株式を買い取って経営権を取得すること。マネジメント・バイアウトの略ですで買い戻し、その後、日本での大型バイクブームや関税などの動きもあって、ブランドが再び高まっていきます。CEOセオさんの話では「創業者13人」とされていますが、書き起こし上の表現です。
1980年代にはコミュニティの立ち上げにも成功し、数で売る量産から質へ転じたことでブランドが向上し、アパレルが爆発的に売れたとCEOセオさんは振り返ります。
映画の影響も大きく、ターミネーター2でアーノルド・シュワルツェネッガーが乗ったファットボーイというモデルは爆発的な人気になりました。
やっぱあれかっこよかったですよね。やっぱね、シュワちゃんの、あのハーレーね。
国内販売21%減、BMWはどこまで迫ったのか
日本でのハーレーは厳しくなっています。2025年の新規登録台数は6948台で、2024年の約8700台から21%減り、7000台を割り込みました。
CEOセオさんは、この減少には販売店が強いられていた自社登録が撤廃された影響も重なっているかもしれない、と留保をつけています。
そこへ肉薄しているのがBMWです。BMWは6451台で前年比8%増、トライアンフも4865台でした。ハーレーはまだ国内1位ですが、BMWとの差は約500台まで縮まっています。
| ブランド | 台数 | 前年比 |
|---|---|---|
| ハーレーダビッドソン | 6948台 | 21%減 |
| BMW | 6451台 | 8%増 |
| トライアンフ | 4865台 | 言及なし |
縮む二輪市場で、なぜ中型だけが伸びるのか
日本の二輪市場全体も縮小しています。2025年の国内総需要は36万台で前年比98%、250ccを超える小型二輪は8万4000台で前年比95%でした。
そのなかで唯一伸びているのが、126ccから250ccの車検のない軽二輪 ── 排気量126cc〜250ccのバイク区分。車検が不要で、維持費を抑えやすいのが特徴ですで、6万1199台、前年比108%です。
この軽二輪の伸びを牽引しているのがロイヤルエンフィールドで、前年比116%です。CEOセオさんの息子さんも最近ロイヤルエンフィールドを買ったといいます。
(ロイヤルエンフィールドは)ちょうどいいんですよね。サイズ感とか。
CEOセオさんは、日本には狭い道路も多く、大きすぎないサイズ感が支持されていると見ています。
バイクを買っているのは誰か、平均年齢50代の現実
CEOセオさんは、バイクは若い人が乗るものだと思っていたそうです。しかしデータでは、新車の二輪購入者の平均年齢は国産で56歳、輸入車で54歳でした。
輸入車の新車購入者のうち、50代と60代で72%を占めます。多くは一度バイクを降り、中断を経て再購入するリターンライダーで、中断期間は全体で約20年、輸入車では約16年だといいます。
再びバイクに乗る理由として挙げられたのは、次のようなものです。
- 趣味として楽しみたい
- 今乗らないと二度と乗れなくなる
- 経済的に余裕ができた
もう今じゃないと乗れない。大型って大きいんで、できるだけ若いうちに乗っておきたいってなるんですよね。
ハーレーは200万〜300万円する価格帯で、若い人には手が届きにくい商品です。CEOセオさんは、ハーレーが売っているのは人生の余暇のロマンのようなものだと表現しています。
バイクの事故リスクはどれほど高いのか
CEOセオさんは、バイクの事故リスクも数字で確認します。米国の2023年のデータでは、走行距離あたりの死亡率でバイクは車の28倍でした。
ただし登録台数あたりで比べると6倍になります。とくに大型バイクは日常の足として使う人が少なく、走行距離が短いためだとCEOセオさんは説明します。
車種でも差があり、スピードの出るスーパースポーツはクルーザーより死亡率が4倍高いといいます。2024年の30歳未満の死亡運転者では、スーパースポーツが60%、クルーザー・スタンダードが20%、ツーリングが7%でした。
CEOセオさんは、10代や20代前半でナナハンなどのスーパースポーツに乗る人が最も死亡確率が高いとして、注意を呼びかけています。
排気量で見ると、米国で死亡した運転者のうち1400ccのバイクは約32%で、小型は7倍死亡しているといいます。ただし排気量の大きいバイクに乗る人が増えているため、大型での死者も増えているのが現実だと補足しています。
死亡者が多い年代と、技術が命を救うという話
日本では、2025年の自動二輪乗車中の死亡者は342人で、前年比8.1%減でした。
年齢別では40〜69歳が最も多く、CEOセオさんは約70%がこの層だと述べています。東京都でも2025年の死者は50代が最多でした。バイクを買う層と亡くなる層が重なっているのが現実です。
死亡事故の原因にはスキルの問題もあり、年齢とともに体力が落ちるほど練習が大切になるとCEOセオさんは話します。CEOセオさん自身も、ハーレーの練習施設に通っているといいます。
アパレルも縮小、ハーレーはどこで稼ぐのか
ハーレーといえばアパレルが伸びているイメージがありますが、CEOセオさんによれば実態は違います。2022年の420億をピークに減少が続き、2025年には340億まで下がりました。
新宿にはバイクを売らないアパレル専用店もできましたが、アパレル事業も厳しい状況にあるといいます。
バイク事業
2025年は営業赤字
金融事業
過去最高益だが、ローン債権は売却へ
アパレル
2022年の420億から2025年は340億に減少
カスタム
購入後のカスタム需要を取り込み、伸びている
一方で伸びているのがカスタムです。そのまま買うよりカスタムしたいというニーズを取り込み、アップセル ── 顧客がすでに購入・検討している商品に対して、より高価なものや追加オプションを提案して単価を上げる手法につなげている点を、CEOセオさんは「うまい」と評価しています。
ただ、バイクに乗る人が今後増えるのは難しいとCEOセオさんは見ています。ブランドを生かして、アパレルを含むさまざまなサービスで伸ばしていく必要がある、というのがCEOセオさんの考えです。
中高年がハーレーに乗るなら、何に気をつけるべきか
締めくくりにCEOセオさんは、ジェラードンが「ハーレーを買います」と言うほど、いまだにハーレーに乗りたい人は多いだろうと話します。
そのうえで、事故の数字を冷静に見て、スキルを学ぶことを前提に、40代から60代が趣味としてバイクに乗るのはいいものではないかと語っています。
無理に勧められないですけども、非常に自然と触れられていいですよ。
まとめ
ハーレーダビッドソンは、過剰ノルマによる公正取引委員会の処分と国内販売21%減という転機にあります。CEOセオさんは、販売店に在庫リスクを押し付けて数字を作るやり方から、実需に合わせて販売店とともに稼ぐ形へ戻ることが、市場が縮む時代の名門の生きる道だと示しています。
- ハーレーダビッドソンジャパンは前年比130%のノルマで販売店38社に買い取らせ、課徴金2億1147万円の処分を受けた
- 2025年の国内新規登録は6948台で21%減、BMWが約500台差まで迫っている
- 二輪購入者は平均50代で、ハーレーは中高年のリターンライダーにロマンを売るビジネスになっている
- バイク事業は赤字、アパレルも縮小するなか、カスタム需要が伸びている
- 事故の死亡者も40〜69歳が多く、スキルを磨くことが重要だとCEOセオさんは強調する






