テスラの「空飛ぶ車」は、なぜ人を惹きつけるのか
テスラが「空飛ぶ車」を開発したとして、先週大きな話題になりました。CEOセオさんの説明では、イベントの中でテスラのロードスターが空中に浮き上がり、白い煙のようなジェット噴射を出しながらフラフラと着陸する様子が披露されたといいます。
イーロン・マスクは、こうしたことが今後できるようになるだろうと、空飛ぶ車をプレゼンテーションしました。CEOセオさんは、その映像がパッと見ではAIで作ったもののように見える点に、むしろうまさを感じています。
イーロン・マスクってやっぱり、今、AI時代であらゆるものがAIに見えるわけですけど、このAIに見えるようなものをリアルでやっているってことですね。
ここ(リアルでやっていること)に非常に大きな価値があるなと思うんです。
今回のエピソードでCEOセオさんは、少し筋を変えて「今更聞けないイーロン・マスク」を取り上げます。なぜイノベーティブな事業を次々と作り、世界一のお金持ちになれたのかを深掘りし、経営者マインドを考えるのが狙いです。
イーロン・マスクの資産は146兆円といわれています。ただしCEOセオさんは、大半は株式であり、売れば株価が下がるため、実際にそのまま現金化できるわけではないとも補足しています。
お金の星がゼロの男と、南アフリカからの旅立ち
CEOセオさんは、少し変わった観点としてイーロン・マスクを四柱推命 ── 生年月日と生まれた時刻をもとに、その人の性格や運勢を読み解く中国発祥の占術。年・月・日・時の4つの柱で命式を組み立てますで調べてみたといいます。1971年6月28日という生年月日から見ると、財にあたる「土」がゼロで、お金の星が1つもないそうです。
CEOセオさんは、だからどうというわけではないと断ったうえで、「お金を追わない人がお金持ちになる」という見方もできるかもしれない、と話しています。
イーロン・マスクの生い立ちも、意外と知られていない部分が多いといいます。南アフリカのプレトリアで生まれ、父は南アフリカ人、母はカナダ人です。12歳のときには自作のビデオゲームを作り、コンピューター雑誌に売っていました。
イーロン・マスクは1988年、17歳でカナダのパスポートを取得して南アフリカを出ました。理由は、アパルトヘイト下の徴兵に行きたくなかったことと、アメリカでのチャンスを取りに行くためだったといいます。CEOセオさんは、ずっとシリコンバレーにいたようなイメージとは違う、生々しい移動の仕方だと受け止めています。
その後イーロン・マスクは、カナダのクイーンズ大学から1992年にペンシルベニア大学へ転校し、1997年に物理学と経済学の学士号を取得しました。破天荒なイメージとは裏腹に、勉強もしっかりやってきた人物だというのがCEOセオさんの見立てです。
勉強が本当に不要か論、不要なんじゃないか論ってよくポジショントークで言いますけど、大体そういう人ってね、いい大学出てるんですよね。
イーロン・マスクはスタンフォード大学の大学院(物理)にも進みましたが、2日で退学しています。物理よりインターネットのほうが面白そうで、社会を変えると判断したためです。幼少期にはいじめや父親との複雑な関係もあったようだと、CEOセオさんは紹介しています。
400億円の売却後も止まらなかった投資と、スペースXの瀬戸際
イーロン・マスクが最初に成功したのは、新聞社向けのオンライン地図・店舗案内サービスを手がけるZip2です。CEOセオさんによると、1995年の創業から4年後、コンパックが当時3億ドル、今の価値で480億円ほどで買収しました。
CEOセオさんは、通常の起業家なら400億円規模の売却をすればもう働かない人が多いと話します。その状態を「お金の力に負けちゃう」と表現しています。
ところがイーロン・マスクは、1999年にネット銀行のX.comを創業しました。2000年3月には、PayPalを開発していた競合と合併します。同年9月、新婚旅行中に取締役会がCEO交代を決め、後任はピーター・ティールになりました。
2002年にはeBayがPayPalを15億ドル、今でいえば2300億円ほどで買収しました。イーロン・マスクの取り分は約1億6500万ドル(約260億円)とされ、CEOセオさんは「実は最初の創業のほうが儲けている」と指摘しています。PayPalは、PayPalマフィア ── PayPal出身者たちが、のちにYouTubeやLinkedInなど多くの有力企業を生み出したことから付いた呼び名ですと呼ばれる人材との出会いに意味があったのかもしれない、という見方です。
イーロン・マスクは2002年にスペースXを創業し、2004年にはテスラの大口出資者になりました。ところがロケット「ファルコン1」は2006年から3回続けて失敗します。4回目となる2008年9月28日、民間開発の液体燃料ロケットとして初めて地球周回軌道に到達しました。
スペースXの危機はそこで終わりませんでした。2008年12月23日、NASAが国際宇宙ステーションへの物資輸送をスペースXに発注し、12便で16億ドル(約2500億円)を受注します。イーロン・マスクは、この発注がなければスペースXは潰れていたと語っています。
ファルコン1が3連続失敗
2006年から3回続けて打ち上げに失敗する
4回目で軌道到達
2008年9月28日、民間開発の液体燃料ロケットで初めて地球周回軌道へ
NASAの発注
2008年12月23日、12便で16億ドルを受注
存続
本人いわく、どちらが欠けてもスペースXは終わっていた
資金調達が遅れていれば、「最後の1時間、間に合わなければ2日後に給料が払えなかった」とイーロン・マスクは振り返っているそうです。CEOセオさんは自身の起業経験と重ね、次のように話します。
本当にギリギリのすれすれの、もうこれ以上はもう無理っていうところまでいかないと、神様が手を差し伸べてくれないんですよね。
余裕のある状態っていうのは、実は救いの手は来ないんです。
CEOセオさんによれば、ギリギリまで追い込むことは、お金がある人ほど難しくなります。お金がない人は常にきついから頑張れますが、お金がある人は、それを全部投下してなくなるところまで弓を引かなければならないからです。
CEOセオさんは、イーロン・マスクはこれをやったからこそ、大きい金額を張るほど大きく戻ってくるレバレッジが効いたのだと見ています。持つ金額が大きいほど決断は難しくなり、その難しい決断を重ねてきたのがイーロン・マスクだという指摘です。
炎上、Twitter買収、政治、そして史上最大のIPOへ
イーロン・マスクの歩みは、成功ばかりではありません。2018年には、テスラ株を1株420ドルで非公開化する資金は確保済みだと投稿して大炎上しました。SEC ── 米国証券取引委員会。株式市場の公正さを監督するアメリカの政府機関ですから証券詐欺で訴えられ、本人とテスラがそれぞれ2000万ドル(約30億円)を払って和解し、イーロン・マスクは会長を退任しています。
2022年には、イーロン・マスクがTwitterを440億ドル、今でいえば7兆円ほどで買収しました。名前はXに変わります。CEOセオさんは、この名前の由来は最初に作ったX.comにあると説明しています。さらに自身のAI企業xAIがXを買収し、SNSとAIが一体になりました。
2025年には、イーロン・マスクがトランプ大統領とともに政府の役職(番組内では「ドッジ」ドッジと言及)で活動しました。その後トランプ大統領とは決裂し、新党「アメリカ党」の結成を宣言しています。その間にテスラの業績が2年連続で減少したこともあり、ビジネスへ戻ってきたといいます。
その後、スペースXがxAIを買収しました。OpenAIのサム・アルトマンとの訴訟では敗訴しています。それでも2026年6月12日、スペースXはナスダックに史上最大のIPOとして上場し、12〜13兆円ほどを調達、300兆円近い時価総額をつけました。
大型ロケット「スターシップ」も14回目の試験で地球周回軌道に到達し、スターリンク衛星を26機放出したといいます。こうした積み重ねの結果、イーロン・マスクの資産は146兆円に達しました。
オールベットと、言ったことを本当にやるプレゼン力
CEOセオさんは、ここまでの歩みからイーロン・マスクの本質を読み取ります。お金を持っている人ほど、遊びや旅行ではなく事業にもう一度オールベットしている、という点です。
CEOセオさんがもう1つ挙げるのは、イーロン・マスクのプレゼンテーションの上手さです。火星や持続可能エネルギー、宇宙といった、まだ人がわからない世界を解き明かすという圧倒的なプレゼンテーションをしています。
その一方で、イーロン・マスクは資金面では政府とがっちり組んでいます。CEOセオさんによれば、NASAの輸送契約が最大の顧客になっており、売上は実は政府にかなり支えられているといいます。
資産額でも、イーロン・マスクは2位のジェフ・ベゾスに2.5倍ほどの差をつけています。スペースXの株価も公開価格を10%ほど上回って推移しています。一方でテスラは売上が伸びても利益が出ず、営業利益率が1%ほどという厳しい状況です。
CEOセオさんは、テスラが苦しいなかで「空飛ぶ車」を出してくる点こそ上手いと話します。宇宙や空飛ぶ車のようなドラえもんの世界を語られると、みんながワクワクするからです。
結局スタートアップとかベンチャーっていうのはワクワクしなきゃダメなんです。ワクワクしない事業に誰も投資しないし。
だからピエロみたいなことになんないといけないんですよね。堅実な経営も必要だけど、やっぱりピエロにもなって、夢を語る。
ただしCEOセオさんは、言っていることは大きいのにやっていることが小さいケースもよくあると指摘します。イーロン・マスクの場合は、宇宙と言いながら本当にロケットを飛ばし、空飛ぶと言いながら本当に飛ばしている点がミソだといいます。
しゃがまなければ跳べない。あなたは弓を引けているか
CEOセオさんは、四柱推命に加えてイーロン・マスクのMBTI ── 人の性格を、内向・外向など4つの指標の組み合わせで16タイプに分類する性格診断の枠組みですも見てみたといいます。本人が公式の診断結果を出しているわけではないため断定はできないとしつつ、INTJ(建築家)、INTP(論理学者)、ENTJのいずれかではないかといわれているそうです。
そうした気質を踏まえても、CEOセオさんがイーロン・マスクの凄さとして挙げるのは「やりきる力」です。この番組でもいつも話している通り、一度決めたことにコミットしてやりきることは、どんなに小さいレベルでも必要だといいます。
CEOセオさんが「やりきる力」と並べて強調するのが、レバレッジをかけること、つまり「とにかく弓を引く」ことです。CEOセオさんは、大好きだというMr.Childrenの『星になれたら』を例に挙げます。
やっぱりしゃがまないとジャンプもできないわけじゃないですか。だからやっぱ弓を引くってことです。
CEOセオさんの見立てでは、もともと数百億円でイグジットした人が146兆円の資産家になるには、全部を引かなければ無理だったといいます。飛ばすよりもまず引くこと、つまりリスクを取ることが先だという点が、イーロン・マスクから学べることだという結論です。
Zip2やPayPalで数百億円規模のイグジットを果たした起業家
売却益を次の事業へ投じ続け、資産146兆円の世界一の資産家に
まとめ
イーロン・マスクは、Zip2やPayPalで得た巨額の売却益を休まず次の事業に投じ、スペースXでは倒産寸前まで追い込まれながら道を開いてきました。CEOセオさんは、その「弓を引く」覚悟と、大きな夢を本当に実行するプレゼン力に、世界が惹きつけられる理由を見ています。
- イーロン・マスクは400億円規模の売却後も働き続け、利益を次の事業へ全額投じてきた
- スペースXは打ち上げの3連続失敗の後、4回目の成功とNASAの受注で倒産寸前から救われた
- お金がある人ほど、全部を投じるところまで弓を引く決断は難しくなる
- 夢を語るだけでなく、ロケットや空飛ぶ車を本当に実現させることが人を惹きつける
- 大きなリターンを得るには、まずリスクを取って「引く」ことが先だと考えられる






