中国の新作ショートドラマ、9割がAIに?
今回取り上げるのは、中国で公開される新作ショートドラマの9割超がAI作品になっているというニュースです。CEOセオさんは、中国ではショートドラマが大ブームになっていて、日本で想像する以上に大きなマーケットになっていると説明します。
ショートドラマは1話が約60秒と短く、最初の3秒で視聴者をつかむインパクトのある映像から始まるのが特徴です。セオさんは、気づけば1時間見てしまうような作りに、我慢のできない現代人の姿も感じると話します。
パッと、もう最初の3秒で、なんか掴まれるようなね、独特の、インパクトのある映像が流れてきていて、そこから見ていくと、気づいたら1時間見ちゃったとかね。
ニュースの要約として、セオさんは数字を挙げます。2026年1月から8月までの中国でのショートドラマ公開本数は43万本を超え、2025年と比べて13倍になりました。そのうちAI作品が9割を超えており、シンプルにAI作品が急増しているという状況です。
カメラも照明もないオフィスで作られるドラマ
AI化によって、制作現場の姿も変わりました。制作会社では、カメラも照明もないオフィスで、20〜30代の若者が脚本やカット割りをAIで作っているといいます。セオさんは、イメージとしては室内だけでドラマを作ってしまう状態だと表現します。
コスト面の変化も大きく、実写なら約1400万円かかっていた制作費が、AIなら70万〜100万円ほどで済むといいます。必要な人数も、70〜80人から数人にまで減ったとされます。
実写制作: 制作費は約1400万円、スタッフは70〜80人
AI制作: 制作費は70万〜100万円ほど、スタッフは数人でオフィス内で完結
転機となったのは、2026年2月12日にリリースされたSeedance 2.0 ── ByteDanceが提供する動画生成AI。テキストや画像から高品質な映像を生成でき、ショートドラマ制作の現場で急速に使われるようになったとされます書き起こしでは「C-Dance二点ゼロ」です。セオさんによれば、これはByteDanceが提供する動画生成のアプリケーションで、中国では業界を大きく変えたと言われています。
リリース直後の春節の休暇を挟んだ1週間で、ショートドラマ業界が一変したとも言われているそうです。
撮影地の横店と俳優の日当に何が起きたか
AI化の影響は、実写の撮影現場にも表れています。中国には横店 ── 浙江省にある巨大な撮影所の街。宮殿などの時代劇セットが並び、「中国のハリウッド」とも呼ばれますという撮影地があり、中国の時代劇ショートドラマの約9割がここで撮影されてきました。
しかし横店が2026年1月から5月に受け入れた撮影チームは、前年同期比で少なくとも半減したといいます。俳優の日当も10分の1になっているのではないかという証言も出ていると、セオさんは紹介します。
セオさんは、高品質な動画を生成できるモデルをByteDanceが作ったことで、業界の受け止めが変わったと見ています。
これ(Seedance)によって、「これでいいんじゃん」と、「全然作れるじゃん」というふうになってったということですね。
爆増するAI作品に、中国政府はどう動いたか
AI作品の急増に対し、中国では規制も動き出しています。2026年4月1日からは、AIアニメ系のショートドラマについて、届け出をしてから公開するルールになりました。未届けで作品を出すと、配信が全面的に停止されるといいます。
さらに9月には、AI生成作品の表示義務についての管理規制も施行されました。セオさんは、作ってすぐ勝手に出すことはもうできなくなっていると説明します。
2026年に違反として削除された作品は約7万本にのぼり、その9割以上がAI作品だといいます。あらゆる人がドラマを作れるようになって数は大量に増えた一方で、規制と淘汰も始まっているのが今のステータスだと、セオさんはまとめます。
ショートドラマの胴元はなぜ儲かるのか
ショートドラマのビジネスモデルも、実写時代とは異なります。以前は制作会社がお金をかけて実写を作り、配給会社に出す形でした。AIのショートドラマでは、制作会社が作品を配信プラットフォームに出していきます。
視聴者は最初は無料で見て、途中から1話ごとに課金するか、広告を見ることで無料で視聴します。プラットフォームはこうして集めたお金を、制作会社に分配する仕組みです。
制作会社
AIで作品を大量に作り、配信プラットフォームに出す
視聴者
途中から1話ごとに課金するか、広告視聴で無料で見る
プラットフォーム
課金と広告の収入を集め、制作会社に分配する
制作会社の回収
大量の作品のうち、当たった数本で収益を回収する
制作会社は大量に作品を作り、そのうち当たった数本で回収するため、薄利多売のモデルに切り替わったとセオさんは指摘します。作品は無造作に増えていますが、収益を得られるのはその一部だけです。
セオさんは、この構造をゴールドラッシュにたとえます。金を掘る人よりも、ツルハシとジーンズを売る人が儲かるという話と同じで、儲かるのは動画生成AIツールの会社と配信プラットフォームだといいます。
逆に作る側はですね、そんなに儲かってないというのが今の現状で起きてるんですね。
具体的には、ByteDanceや快手 ── 中国の大手ショート動画プラットフォーム。TikTokの中国版である抖音と並ぶ存在で、ショートドラマ配信でも大きな存在感を持ちますがめちゃくちゃ儲かっている一方、制作会社は一部しか儲からないといいます。セオさんは、配信化でアーティストが増えて聴かれる曲が分散しても、Spotifyは儲かる音楽業界と似ていると話します。
ヒットを狙わない?中国の制作現場の発想
AI化で人件費やロケ、時間といった制作コストがほぼ消えた分、制作会社の支出はツールや広告費、大量生産へとシフトしています。作ること自体は当たり前になり、いい作品をどう届けるかというマーケティングにお金を使うようになっているといいます。
セオさんは数カ月前に中国を視察し、ショートドラマを制作するDramaBoxドラマボックスやByteDanceを訪問して話を聞いてきました。そこで感じたのは、ヒットする作品を作るかどうかを、もう誰も考えていないという空気だったそうです。
昔であれば、この作品は絶対にヒットするので、このターゲットにこうでこうでみたいなことを考えて作るわけじゃないですか。
今のAIは、誰が当たるかなんてわからないんだから、とにかく大量に生産して、ヒットされそうなものをどんどん作っていく。
ヒットを狙ってターゲットを考え抜き、作り手の思いを込めて作る(プロダクトアウト)
当たるかはわからない前提で大量生産し、売れたものを当たりとする(マーケットイン)
セオさんは、中国の制作現場にはプロダクトアウト ── 作り手の思いや技術を起点に商品を作る考え方。顧客や市場のニーズを起点にする「マーケットイン」と対比して使われますの発想がもうゼロだと言います。作り手の思想よりも、量産して当たったものを売れたものとする、アジャイル ── 短いサイクルで作って試し、反応を見ながら改善を重ねていく開発手法。もともとはソフトウェア開発の言葉ですのような感覚で物作りがされているという見立てです。
製作者の思いとかね、あんま関係ないんですよね。もうはっきり言って。
クリエイティブ業界がこんなに合理的になるんかっていうぐらい非常に変わってますよね。
映画市場を超えたショートドラマ市場の規模
中国のショートドラマ市場は、数字で見ても急拡大しています。2024年には市場規模が1兆1900億円となり、同年の中国本土の映画興行収入である1兆30億円を超えました。
さらに2025年には2兆3600億円を突破し、1年で約2倍になりました。セオさんは、2026年はさらに1.5倍になり、4兆円規模の市場になるかもしれないと見ています。
視聴時間も伸びています。中国人は1人あたり1日平均129分もショートドラマを見ていて、2025年12月と比べて28%増えたといいます。長尺の動画を抜き、TikTokのような短尺動画に次いで2位になりました。
毎日2時間以上縦型ドラマを見てるのが中国人という状況ですね。
ショートに囚われた脳と社会への影響
セオさんは、短尺動画やショートドラマばかりを見る生活が、人の集中力に与える影響を心配します。長いものが見られなくなり、普通の会話にもついていけなくなるのではないかと話します。
TikTokとかみたいな短尺動画見て、で、ショートドラマ見て、もう長いもの見れないでしょ、みたいな。
セオさんは、人間の脳は2倍速にするとほぼ定着しないと言われていると紹介します。短尺の視聴が脳に良くないというデータも出ていて、それをめぐって裁判でも訴えられていると話します。
特に未成年の若い子たちが、ドーパミンを刺激するような短い視聴しかできなくなっていることについて、セオさんは、これが社会にとって本当にいいことなのか考えさせられると述べます。
1000本作って大ヒットは5本、実写とAIのヒット率
2026年8月までに公開された43万本のうち9割がAI作品ですが、ヒット率には大きな差があります。再生1億回を超えた作品は1055本で、全体の約0.48%にとどまります。セオさんは、1000本作って大ヒットは5本という現状だと表現します。
2026年上半期に再生10億回を超えた作品は、実写が16作品、AIが7作品でした。本数ではAIが9割を占める一方、大ヒットでは実写が7割を占めていることになります。
| 指標 | AI作品 | 実写作品 |
|---|---|---|
| 2026年1〜8月の公開本数に占める割合 | 9割超 | 1割未満 |
| 2026年上半期の再生10億回超え | 7作品 | 16作品 |
実写はお金もかかっているという前提はあるものの、メガヒットを生んでいるのはやはり実写だとセオさんは見ています。
AIスロープと言われますが、大量にゴミを生産している可能性がありますね、AIはね。
セオさんはさらに、AI作品はゴミを出すだけでなく、若者がドーパミンに刺激された脳の使い方をする状況を加速させているかもしれないと指摘します。長い会話ができない、人の話が聞けない、刺激がないと生きていけないといった状態になりかねないという懸念です。
感動とか、そういったことよりは、快楽ですよね。快楽を追求するだけの選択になっていると、いうことなのかもしれません。
一方でセオさんは、これだけの市場がある以上、世の中の変化として見ていくしかないのかもしれないとも話しています。
AIで儲けるにはツールか流通の側に立つしかない?
セオさんは、ショートドラマで儲かっているのは、ツールと配信を持つ快手やByteDanceのような胴元だと改めて強調します。今のAIは、モデル開発に関わらないと収益がほとんど出ていないと言えるのではないか、という見方です。
例として、AnthropicやOpenAIは大赤字ではあるものの、売上は垂直に伸びているとセオさんは挙げます。数字を作るには、生成AIのモデル側か、AI生成コンテンツの流通プラットフォーム側に入るしかない、というのが今の結論だといいます。
反対に制作会社の側は、作りまくってもほとんど当たらず、赤字の会社も多いとセオさんは話します。ショートドラマ市場の勝ちパターンは、意外にも作る会社ではなくなっているのかもしれません。
AIが置き換えたのは中堅クラス、実写は二極化へ
ニュースの論調としては、AIが俳優やカメラマンの仕事を奪い、制作費20分の1で誰でもドラマが作れるようになったと語られています。ただセオさんは、実際にAIが置き換えたのは中クラスの作品だと見ています。
トップクラスは実写が多く、AI作品も一部入り込んではいるものの、中堅クラスはかなりAIに置き換わっています。そのため一番厳しいのは、中途半端な実写作品を作ってしまうことだといいます。
お金を大量に投下しないと無駄になる。ボラティリティが高く、ハイリスク・ハイリターン
トップクラスに当たるのは難しく、中堅を取る。ローリスク・ローリターン
ヒット率は約0.48%と低く、撤退する制作会社もかなり増えているそうです。AIの表示義務などの規制も、大量に作るほど負担が増えるため、勝てる会社はさらに限られてくるとセオさんは指摘します。
中堅作品が消えると、未来のトップ俳優は育つのか
セオさんが最後に紹介するのは、ニュースの裏にある論調です。実写の中級作品は、本来は新人俳優やスタッフの育成の場であり、そこで育った人が上位作品に出ていく流れがありました。
中級作品がAIに置き換わると、この新人育成の場がなくなります。その結果、トップの俳優やトップの実写コンテンツを作る人たちがいなくなっていくとも言われています。
中級作品のAI化
新人が経験を積んできた実写の中級作品がAIに置き換わる
育成の場の消失
新人の俳優や制作者が育たなくなる
トップ層の枯渇
5年後、10年後にトップの実写作品を作れる人がいなくなる恐れ
セオさんは、5年後、10年後には、トップの実写作品を作り出せる人がいなくなるのではないかという見方を紹介します。完全に文化が失われていく可能性があるとも言われていて、時代の変化を感じると語ります。
まとめ
中国のショートドラマは、AI作品が9割を超えるほどの急拡大を見せていますが、儲かっているのはツールと配信を握る胴元で、制作会社は薄利多売に追い込まれています。セオさんは、メガヒットはいまだ実写が多いことや、中堅作品のAI化が人材育成の場を奪いかねないことに目を向け、目先の効率と長期的な文化の両方を考えるきっかけを示しています。
- 2026年1〜8月の中国ショートドラマ公開本数は43万本超で、9割以上がAI作品。制作費は約1400万円から70万〜100万円ほどに下がった
- 儲かっているのは動画生成AIツールと配信プラットフォームで、制作会社は大量生産で当たりを狙う薄利多売になっている
- 再生1億回超えは約0.48%で、再生10億回超えは実写16作品に対しAI7作品と、メガヒットはいまだ実写が多い
- AIが置き換えたのは中堅クラスで、実写はハイリスク・ハイリターン、AIはローリスク・ローリターンに分かれつつある
- 中級作品のAI化で新人育成の場が失われ、将来トップの俳優や制作者が育たなくなる懸念も語られている






