勉強嫌いだった大人が、お金を払って学びに来るのはなぜ?
この回のオープニングで、仙福さんは「学年主任」、hayateさんは「図書委員」を名乗り、先生と生徒という設定で始まります。そこから「教頭は漫画などでいじられがちなポジションだ」という脱線をはさみつつ、話は学びの姿勢へ移っていきます。
仙福さんが学校の設定を選んだのは、二人が開いているセミナーの参加者に感心したからです。学生時代、二人とも授業をまじめに受けていたわけではありませんでした。
いかに後ろの人に隠れて漫画描くかってやってました。
俺は寝てました。成長期なんで。
そんな二人も、大人になった今は数万円を払ってセミナーに通っています。仙福さんは、セミナー参加者が家族や友人との時間の優先度を下げてまでランニングのために投資している点を「すごい」と表現します。
仙福さんは、学校とセミナーの違いを「受動的か能動的か」で説明します。学校では好きでもない内容も受けなければならず受け身になりますが、大人になると「これを知りたい」という目的がはっきりしているため、能動的に学べるというのです。
だからセミナーに来て寝る人とかもいないじゃないですか。
自分で情報を取りに行く能動的な姿勢があるからこそ、学びの吸収率も上がるはずだ、と仙福さんは考えています。最後は「僕らのセミナーにもっと来てください」と締め、hayateさんから「めっちゃ真面目」とつっこまれました。
富山県砺波市の「戦後のような給食」がバズった話
hayateさんにも、学校つながりで話したい雑談がありました。仙福さんの実家がある富山県砺波市で、ある小学校の給食の写真がSNSで話題になっていたのです。
写真の給食は、大皿にミートボールが2個、キュウリらしき野菜、汁物、コッペパン、牛乳という内容でした。仙福さんは見た瞬間に驚き、懐かしいとは感じなかったと振り返ります。
タンパク質って知ってる?
hayateさんによると、この給食は「戦後の給食みたいだ」と大きくバズり、炎上に近い反応が起きていました。それでも仙福さんは、砺波市だけを責める見方には距離を置きます。
(給食は)どこもそうなんじゃないですか、やっぱ。物価高で予算の中でなんかやろうみたいな。
仙福さんは、現場は苦労しているのではないかと受け止めていました。話の締めには「給食のおばちゃんになって、しっかり盛ってあげたい」という冗談も飛び出します。
バランスを司る「前庭」とは何か
本題は、hayateさんが質問する「私が聞きたい」シリーズの2回目です。前回のプランクに続き、今回のテーマは「前庭」でした。hayateさんは、前庭を三半規管のような体のバランスを司る場所だと捉えていました。
hayateさんが前庭に興味を持ったきっかけは、シューズコンサルでの出来事です。片足立ちや片足スクワットで足の安定感を見ていたところ、筋力や可動域には問題がなさそうなのに、バランスが取れないお客さんがいました。
目をつぶって、まあいろんな片足立ちとか、前庭をちょっと測定するような(テスト)をいくつかさせたら、もうまさに何かビンゴって感じで。
このお客さんは、過去にメニエール病 ── 内耳の異常によって、回転性のめまい、難聴、耳鳴り、耳のつまり感などをくり返す病気です。原因は内耳のリンパ液が増えることと考えられていますのような病気を経験していたそうです。hayateさんはこの経験から、筋力ではなく脳機能としてのバランスとランニングの関係を知りたいと考えました。
仙福さんの解説によると、前庭は耳の奥、内耳にあるバランスのセンサーです。耳の見えている部分が外耳、その奥の通路が中耳で、さらに奥にある内耳でバランスを制御しています。
前庭は、三半規管と耳石器という2つのセンサーに分かれます。2つの違いは、感知している動きの方向です。
3つの半規管で回転を感知する。たとえば外側半規管の機能が落ちると、回転を感知しにくくなる
上下・前後・左右といった直線方向の動きを感知する
ランニングエコノミーを下げる「力み」はどこから来る?
仙福さんは、前庭を鍛えるメリットを「ランニングエコノミーが爆上がりする」と表現しました。hayateさんからは「急に詐欺っぽくなった」と笑われますが、仙福さんは理由を順に説明していきます。
ランニングエコノミーが下がる場面として、hayateさんは「うまく着地できない」「地面に力を加えられない」を挙げました。仙福さんによると、うまく立てない人の体の中では力みが起きています。
バランスが取れずにグラグラすると、体は姿勢を保とうとして足部で地面をつかんだり、ふくらはぎに力を入れたりします。仙福さんは、この力みこそが避けたいものだと話しています。
hayateさんは、ランニング業界でよく聞く「バランスを保つために耐えられる筋肉をつけよう」という考え方をどう見るかを尋ねました。仙福さんの答えは「わかってねえな」という率直なものでした。
仙福さんによると、筋肉は力を出す装置であると同時に、関節の揺らぎや重心の状態を知らせるセンサーでもあります。筋肉はバランスを感じ取るセンサーでもあるという点を、仙福さんは「めっちゃ面白い」と強調しました。
仙福さんは、体の状態を認知するセンサーは主に3つあると整理します。前庭、目、そして筋肉による固有感覚 ── 筋肉や腱、関節にある受容器が、手足の位置や動き、力の入り具合を感じ取る感覚です。目を閉じていても自分の手足の位置がわかるのは、この感覚のおかげですの3つが、ランニングフォームを無意識に制御している柱です。
| センサー | 担う役割 |
|---|---|
| 前庭(三半規管など) | 頭部がどの方向にどんな速度で揺れているかを感知する |
| 目(視覚) | 見ることで体の状態を把握し、揺れを補正する |
| 固有感覚(筋肉) | 関節の揺らぎや重心の状態を知らせる |
このうちどれか、あるいはすべての機能が落ちると、自分の体がどういう状態にあるのかを認知できなくなります。仙福さんは、バランスが悪い人は自分の軸を定められない状態だと説明しました。
仙福さんはこれを車のセンサーにたとえます。バックカメラが壊れて後ろが見えなければ、怖くてかなり手前で止まってしまいます。ランニングで同じことが起きた状態が力みだ、というのです。
手ブレ補正が狂うと、走り方はどう変わる?
仙福さんによると、三半規管が感知しているのは、より細かく言えば頭部の加速度です。三半規管の機能が落ちると、頭をまっすぐ支えられなくなります。
頭が傾いたまま走る人がいると、hayateさんは話します。仙福さんは、頭が傾くと見え方も変わり、気持ちが悪いので首に強く力を入れて頭を直そうとすると説明しました。これも力みにつながります。
hayateさんが前庭を「スマホの手ブレ補正機能」にたとえると、仙福さんは、手ブレ補正には特に目が深く関わっていると補足しました。ランニングでは体が上下しますが、私たちの視界は大きく揺れません。上下動を察知して目の揺れを補正する機能があるからです。
手ブレ補正機能がないカメラで走りながら写真を撮るなら、どうするか。hayateさんの答えは「止まる」でした。仙福さんは、止まったり脇を締めてカメラを固定したりする反応こそが力みだと話します。
仙福さんは、ほとんど上下動しない足もばしりの走り方をする人も、同じ理由で説明できる可能性があるといいます。
上下したら目線ぐわん揺れるから、もう揺らしたくないんですよ。だから揺らさない走りを戦略的に取ってるんですよ。
そのため、そうした人に「腰を高く、弾むように走りましょう」とアドバイスすると、目線が大きく揺れて危険な状態になりかねません。仙福さんは、フォームを言葉だけで変えさせることの矛盾を指摘しています。
前庭はなぜ衰え、どう鍛えればいいのか
前庭の機能が落ちる原因として、仙福さんは、先天的な要因がなければ、ほとんどの人は運動不足だと話します。社会人は座りっぱなしの時間が長く、ランニングをしていても運動としての多様性がありません。
ランニングは一定の速度でまっすぐ進む運動で、首を回すような回転の動きはほとんどありません。体は使う機能が良くなり、使わない機能は衰えるため、三半規管も使わなければ衰えていきます。
回転しない
座りっぱなしの生活や、まっすぐ走るだけのランニング
三半規管が衰える
使わない機能は落ちていく
バランスが取れない
自分の軸を定められなくなる
力む
姿勢を保とうと体を固める
エコノミー低下
ランニングエコノミーが下がる
hayateさんが「テニスは効いているのか」と聞くと、仙福さんは「マジで効いていると思う」と答えました。バスケットボールや、頭をさまざまな方向に動かすヨガ風の動きも刺激になるそうです。hayateさんは、多様性が大事という「つまらない結論」になりそうだと笑います。
パーソナルの現場では、仙福さんは最初から前庭に介入することはほとんどないといいます。前庭が狂っている人は、目や固有感覚も狂っていることが多いためです。まず頭の傾きや前へのずれを整え、そのうえで頭の位置を保てるように三半規管を鍛えるという順番をとります。
三半規管を鍛える具体的な方法として、hayateさんがでんぐり返しや側転を挙げると、仙福さんは「そういうこと」と同意しました。この日のセミナーでも、でんぐり返しを取り入れる予定だったそうです。
仙福さんによると、前庭を鍛えると片足のバランスが良くなるだけでなく、柔軟性や筋出力も上がります。力みが取れれば力が抜けて体は柔らかくなり、力みが取れると筋力も増すというのです。
仙福さんは、これをパンツのゴム紐にたとえます。力んでいる人のゴム紐は一定の長さで固まっています。前庭を鍛えると、そのゴム紐が伸び縮みできるようになり、縮む力が生まれて結果的に力が増すというわけです。
hayateさんは「だいぶわかってきた」と話し、次回は目の働きについても聞きたいと予告しました。番組では、リスナーからの質問も目安箱で受け付けています。
まとめ
この回では、バランス能力を筋力の問題としてだけでなく、前庭・目・固有感覚という感覚センサーの問題として捉え直しました。センサーの機能が落ちると、体は自分の状態を把握できずに力み、ランニングエコノミーが下がるというのが仙福さんの見立てです。
- 前庭は内耳にあるバランスのセンサーで、回転を感知する三半規管と、直線の動きを感知する耳石器からなる
- バランスが取れないと体は力み、ランニングエコノミーが下がる
- 筋肉は力を出す装置であると同時に、体の状態を知らせるセンサーでもある
- まっすぐ走るだけのランニングでは回転の刺激がなく、三半規管が衰えやすい
- でんぐり返しや側転などの回る動きで前庭を刺激すると、柔軟性や筋出力の向上も期待できる




